SAシステムアーキテクト試験 午後Ⅰ

令和5年度春期 システムアーキテクト 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 融資保証システムの再構築に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。 L社は,大手クレジットカード会社である。L社は,融資保証で利用している融資保証システム(以下,現行システムという)の老朽化に伴い,新システムを構築することにした。 〔融資保証の概要〕 L社は,金融機関と提携し,法人顧客(以下,顧客という)に融資保証をしている。融資保証をすることで,顧客から所定の信用保証料(以下,保証料という)を受け取り,万が一,顧客の借入金の返済が滞った場合に,顧客に代わって金融機関に立替払をする。L社が融資保証をすることで,顧客には金融機関から融資枠の拡大や融資を受けやすくなるというメリットがある。融資保証の概要は,次のとおりである。 (1) 申込み 顧客は,事業資金を調達するために,金融機関へ融資の申込みと同時にL社への保証委託を申し込む。L社への保証委託の申込みは,金融機関を通じて行う。 (2) 承諾 L社は,顧客の事業内容,経営計画や申込人である顧客代表者の信用情報などを確認し,保証可能と判断した場合は金融機関に保証を承諾する旨を連絡する。 (3) 融資 金融機関は,顧客と融資契約を締結し,顧客へ融資を実行する。この際,顧客は,所定の保証料を,金融機関を通じてL社へ支払う。L社は,金融機関と保証契約を締結し,顧客と保証委託契約を締結する。 (4) 返済 顧客は,返済条件に基づき借入金を金融機関に返済する。 (5) 代位弁済 諸事情で顧客の借入金の返済が滞った場合,金融機関からの請求に基づき,L社が借入金残高の全額を顧客に代わって金融機関に立替払をし,その後,顧客はL社に返済する。 それぞれの契約関係の概要を図1に示す。 図1 それぞれの契約関係の概要 〔現在の業務と現行システムの概要〕 L社では,現行システムを利用し,融資保証をしている。金融機関と事前に締結している保証取引基本契約に基づき決められた融資保証の条件を融資保証商品(以下,商品という)として管理している。金融機関からの融資保証の申込みは,金融機関側の都合によりファックス(以下,FAXという)で受け付けている。申込みには,新規申込と契約変更申込の二つの種別(以下,申込種別という)があり,申込種別の単位に異なるFAX番号を設定して,金融機関と申込種別の単位で担当者を割り当てている。また,個人信用情報を外部信用機関から取得し,審査に利用している。L社では,全てのシステムで遵守が求められている情報セキュリティ規則で,外部信用機関との接続は特定の端末(以下,外信端末という)に限定しており,社内のネットワーク及びシステムとの接続を許可していない。現在の主な業務と現行システムの概要は,次のとおりである。ここで,契約変更申込の業務は省略している。 (1) 保証申込業務 L社は,金融機関から顧客の財務諸表,保証委託契約申込書及びその他必要な書類(以下,申込書類という)をFAXで受信する。申込対象の商品は,保証委託契約申込書に記載されている。商品ごとに必要な申込書類が異なっており,担当者は必要な申込書類とその内容を業務マニュアルで確認している。申込書類に不備があった場合,FAX送信元の金融機関に問い合わせる。不備がなかった場合,現行システムに申込書類の内容を入力し,保証案件として登録する。現行システムは,保証案件の契約状態を管理しており,保証申込の受付時の契約状態を“受付中”にする。 (2) 保証審査業務 担当者は,申込書類の記載内容を基に申込人の個人信用情報を外信端末で確認し,確認した内容を現行システムに入力する。また,顧客の売上高,信用格付及び商品ごとの保証料の算出に用いる利率から保証料を計算し,現行システムに入力する。審査に必要な内容を現行システムに入力した後,保証審査を決裁者に依頼する。決裁者は,現行システムに入力されている保証案件の内容を確認して審査を行い,保証可能と判断した場合,可決と判定し,契約状態を“実行待ち”にする。保証不可能と判断した場合,否決と判定し,契約状態を“無効”にする。担当者は,契約状態を基に回答書を作成し,金融機関へFAXで送信する。回答書には,判定の結果と保証可能な場合だけ保証料を記載している。 (3) 保証料入金及び保証契約書類受領業務 金融機関で顧客に融資が実行された際,顧客が金融機関を通じて保証料を入金する。L社は,保証料が全額入金されていること,及び金融機関から保証契約書類を受領していることを確認し,対応する保証案件の契約状態を“実行中”にする。また,外部信用機関に保証開始の報告をする。 (4) 融資残高管理業務 L社は,金融機関から融資残高のデータ(以下,残高データという)を,毎月,第1営業日に受領する。金融機関から送付された残高データを現行システムに取り込み,保証案件ごとに融資残高を更新する。完済された融資があった場合,対応する保証案件の契約状態を“終了”にして,外部信用機関に保証完了の報告をする。また,担当者は,必要に応じて現行システムを参照し,融資残高レポートを作成して経営層に報告している。融資残高レポートには,全ての保証案件が代位弁済になった場合にL社が金融機関に支払う金額を記載する。 (5) 代位弁済管理業務 金融機関から代位弁済請求書を受領した場合,対応する保証案件の契約状態を“代弁”にする。契約状態が“代弁”となった保証案件は,債権管理システムに登録し,その後の業務を債権管理システムで実施する。 〔新システムへの要望〕 新システムに対して,利用部門の担当者から次のような要望が出された。 (a) インターネット経由で申込みができるポータルサイトを金融機関に提供したい。ポータルサイトでは,金融機関から審査状況の問合せや保証申込の結果を照会できるようにしたい。ただし,ポータルサイトが利用できない金融機関もあるので,FAXでの受付は継続したい。 (b) FAXで受信した申込書類を電子化し,新システムで参照できるようにしてほしい。また,受信した申込書類を一覧化し,担当者を割り当ててほしい。 (c) 申込書類の内容を新システムに入力する業務を効率的にしてほしい。 (d) 業務マニュアルを用いて実施している,必要な申込書類がそろっているかどうかのチェックを新システムで行ってほしい。 (e) 外部信用機関から情報を取得する機能を設けて,新システムで確認できるようにしてほしい。 (f) 保証審査業務で必要な保証料を新システムで算出してほしい。 (g) 保証審査業務で決裁者が審査する前に,新システムで確認可能な項目を用いて顧客に関する1次審査を行ってほしい。 (h) 新システムで作成した回答書をFAXで金融機関に送付してほしい。 (i) 保証申込業務と保証審査業務の作業の進捗状況が分かるようにしてほしい。 (j) 金融機関からの保証料の入金を入金データとして新システムに取り込み,保証案件と突合してほしい。また,保証料が全額入金されたことが分かるようにしてほしい。 (k) 保証可能と判断した後に,ある条件を満たした場合,新システムで契約状態を“実行中”に変更してほしい。 (l) 融資残高レポートを新システムから出力してほしい。 〔新システムの方針〕 L社情報システム部のM課長は,次のような新システム構築の方針を立てた。①新システムへの要望のうち,一部の要望は,ある理由から新システムへの実装はL社として不適合と判断し,見送ることで利用部門と合意した。 ・保証申込業務と保証審査業務の作業の進捗状況の可視化を目的として,保証案件に申込状態を設けて,管理する。 ・保証料が全額入金されたことを管理するために,保証案件に入金状態を設ける。 ・保証契約書類を金融機関から受領したことを管理するために,保証案件に書類受領状態を設ける。 ・FAXで受信した情報を電子化するFAXサーバを導入する。FAXサーバからは,ヘッダー情報として送信日時,送信元FAX番号,受信日時及び受信FAX番号,明細情報として申込書類イメージデータを取得する。 ・申込書類の内容を新システムに入力する業務の効率化を目的として,OCRを導入しFAXで受信した申込書類イメージデータを読み取る。 〔新システムの設計〕 新システムへの要望と方針を踏まえ,M課長は,新システムの設計を次のように検討している。新システムの主な機能概要を表1に示す。 表1 新システムの主な機能概要 表1 新システムの主な機能概要(続き) 設問1 本文中の下線①について,見送ることにした要望を〔新システムへの要望〕中の(a)~(l)で答えよ。また,見送ることにした理由を40字以内で答えよ。 設問2 FAX受信管理機能について,表1中の【a】~【d】に入れる適切な字句を答えよ。 設問3 実行管理機能において,ある条件がそろった場合に保証案件の契約状態を“実行中”に変更している。その条件を設定している機能を表1中の機能名から全て答えよ。 設問4 融資残高管理機能について答えよ。 (1) 融資残高がゼロになった保証案件の一覧を出力した帳票の利用目的を,業務的観点から25字以内で答えよ。 (2) 融資残高レポートに記載する“L社が金融機関に支払う金額”を求める方法を,契約状態を用いて35字以内で答えよ。 設問5 新システムへの要望を実現するために新システムで新たに商品ごとに管理しなければならない内容を,30字以内で全て答えよ。
図1 それぞれの契約関係の概要。顧客・金融機関・L社の三者の契約関係を示す図。顧客と金融機関は融資契約で結ばれ、顧客とL社は保証委託契約で、L社と金融機関は保証契約で結ばれていることが双方向の矢印で示されている。
図1 それぞれの契約関係の概要。顧客・金融機関・L社の三者の契約関係を示す図。顧客と金融機関は融資契約で結ばれ、顧客とL社は保証委託契約で、L社と金融機関は保証契約で結ばれていることが双方向の矢印で示されている。
表1 新システムの主な機能概要。新システムの機能名と機能概要の表。金融機関用ポータルサイト管理、FAX受信管理(空欄a~dを含む)、保証案件管理、審査管理、回答管理、保証料管理の各機能について、申込状態や契約状態の設定・更新内容などが記載されている。
表1 新システムの主な機能概要。新システムの機能名と機能概要の表。金融機関用ポータルサイト管理、FAX受信管理(空欄a~dを含む)、保証案件管理、審査管理、回答管理、保証料管理の各機能について、申込状態や契約状態の設定・更新内容などが記載されている。
表1 新システムの主な機能概要(続き)。表1の続き。書類管理、実行管理、融資残高管理、代位弁済管理、金融機関管理、商品管理の各機能について、書類受領状態や契約状態の更新、帳票・レポートの出力、管理する情報項目が記載されている。
表1 新システムの主な機能概要(続き)。表1の続き。書類管理、実行管理、融資残高管理、代位弁済管理、金融機関管理、商品管理の各機能について、書類受領状態や契約状態の更新、帳票・レポートの出力、管理する情報項目が記載されている。
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業務の目的と設計のつながり

業務要件と機能設計を考える際は、業務で実現したい目的と、設計上の判断とのつながりに注目しましょう。用語の印象だけで判断せず、目的との関係を自分の言葉で説明できるかを確かめることが、検討の足場になります。

この問題で問われていること

この話題では、業務の目的が設計を検討する際の根拠としてどう位置付けられているか、という一点を意識してください。示されている内容を捉えるときも、その目的とのつながりを説明するために何を確認したいかを考えましょう。

視点

業務の目的と設計の関係を整理するときは、両者のつながりを説明する根拠に目を向けます。自分の経験から想像した目的と、示された内容から読み取れる目的を混同していないか意識しましょう。

確認ポイント

  • 業務の目的を、自分の思い込みで補っていないか
  • 目的と設計のつながりを考える根拠は何か
  • そのつながりについて、確認が必要な点はどこか
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解説

融資保証の現行業務を基に、要望を実現する機能と必要な管理情報を導く問題です。接続制約、FAX番号の用途、保証開始の条件、契約状態に応じた集計対象、商品別のルールと利率を対応付けることが要点です。

問題の全体像

L社は、金融機関を通じて法人顧客に融資保証を提供しており、老朽化したシステムを再構築します。現行のFAX受付や手作業を、ポータルサイト、OCR、書類チェック、保証料計算などで効率化する事例です。公式の出題趣旨では、現行業務を正しく把握し、利用部門の要望をシステム要件として設計する能力を問うとしています。本文の業務手順と表1の機能を結び付け、制約、状態の更新条件、集計対象、商品別に必要な情報を読み取ります。

設問1(要望)

〔現在の業務と現行システムの概要〕にある、外部信用機関との接続制約に着目します。外部信用機関との接続は外信端末に限定され、社内のネットワークやシステムとの接続は許可されていません。要望(e)は、新システムが外部信用機関から情報を取得する機能を求めており、この制約に抵触します。したがって、公式解答例では、見送る要望を「(e)」としています。

設問1(理由)

見送る理由は、情報セキュリティ規則による接続先の制限です。この規則は全てのシステムで遵守が求められるため、新システムにも適用されます。40字以内の答案では、規則と外信端末への接続限定を押さえます。公式解答例では「情報セキュリティ規則で外部信用機関との接続は外信端末に限定しているから」としています。開発の難しさや費用ではなく、本文に明記された制約を理由にします。

設問2(a)

表1のFAX受信管理は、ヘッダー情報から担当者の割当てに必要な情報を導出します。現行業務では、金融機関と申込種別の単位で担当者を割り当てています。まず、どの金融機関から届いたFAXかを特定するため、送信側の番号に着目します。公式解答例では、aを「送信元FAX番号」としています。送信日時や受信日時は、送信元の金融機関を導出する情報には当たりません。

設問2(b)

bは、aの情報から導出する対象です。送信元FAX番号を金融機関の情報と対応付ければ、申込書類を送った金融機関を特定できます。表1の金融機関管理にも、管理する情報としてFAX番号が挙げられています。したがって、公式解答例ではbを「金融機関」としています。この情報を申込種別と組み合わせて、担当者を割り当てます。

設問2(c)

現行業務では、新規申込と契約変更申込という申込種別ごとに、異なるFAX番号を設定しています。そのため、L社のどの番号でFAXを受けたかが、申込種別を判別する手掛かりになります。公式解答例では、cを「受信FAX番号」としています。送信元FAX番号が送った金融機関を示すのに対し、受信FAX番号はL社側の受付先を示します。

設問2(d)

dは、受信FAX番号から導出する対象です。申込種別ごとに受付用のFAX番号を分けているので、受信FAX番号から新規申込か契約変更申込かを判別できます。公式解答例ではdを「申込種別」としています。公式解答例の備考では、a・bの組とc・dの組は順不同とされています。「送信元FAX番号→金融機関」と「受信FAX番号→申込種別」の対応を保つことが要点です。

設問3

現行の保証料入金及び保証契約書類受領業務では、保証料の全額入金と保証契約書類の受領を確認して、契約状態を「実行中」にします。表1では、保証料管理が全額入金を確認して入金状態を「入金済」にし、書類管理が契約書類の受領時に書類受領状態を「受領済」にします。したがって、公式解答例は「保証料管理,書類管理」です。審査管理は契約状態を「実行待ち」にする機能であり、その後にそろえる二つの条件を設定する機能を答えます。

設問4(1)

〔現在の業務と現行システムの概要〕の融資残高管理業務には、完済された融資の契約状態を「終了」にし、外部信用機関に保証完了を報告するとあります。融資残高がゼロになった案件の一覧は、この報告対象を把握するために使います。25字以内の答案では、報告先と報告内容を示します。公式解答例は「外部信用機関に保証完了の報告をするため」です。設問は業務的な利用目的を求めているので、一覧表示や状態更新というシステム処理だけでは目的を説明できません。

設問4(2)

融資保証の概要では、代位弁済時にL社が借入金残高の全額を立替払いするとあります。レポートで求めるのは、保証が継続している案件が全て代位弁済になった場合の支払額です。そのため、契約状態が「実行中」の案件を対象に、融資残高を合計します。「実行待ち」は保証開始前、「終了」は保証完了後であり、「代弁」の案件はその後の業務を債権管理システムで扱います。35字以内の公式解答例は「保証案件の契約状態が“実行中”である融資残高を合計する。」です。採点講評では、現行業務と契約状態の示す状況を正しく理解することが求められています。

設問5

「商品ごと」「新たに」「全て」という指定に着目し、複数の要望を確認します。要望(d)の書類チェックを実現するには、商品ごとに異なる必要書類を判断するチェックのルールが必要です。また、要望(f)の保証料算出を実現するには、現行業務で計算に使っている商品ごとの利率を管理する必要があります。30字以内の公式解答例は「申込書類のチェックのルールと保証料の算出に用いる利率」です。採点講評では、一つの要望に対応する項目だけを答えた解答が多かったとされており、二つの管理内容を漏れなく挙げることが要点です。

学習のポイント

業務目的とシステム処理を区別し、状態の意味と更新条件を理解して、複数の要望に必要な管理情報を漏れなく導く練習をしましょう。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和5年度春期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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