SAシステムアーキテクト試験 午後Ⅰ
平成29年度秋期 システムアーキテクト 午後Ⅰ 問4
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題



解き方のヒントを見る
与えられた条件と仮定を分ける
設計の検討では、与えられた条件と、自分で補った仮定を区別することが大切です。まず条件の根拠を確認し、一般的な経験やイメージを無意識に加えていないか、一つずつ振り返りながら考えましょう。
この問題で問われていること
この問題では、判断の根拠が与えられた条件にあるかという一点に注目しましょう。考えを進める際は、条件から読み取った内容と、自分が推測した内容を分け、推測だけに頼って結論を急いでいないか確かめてください。
視点
条件に基づく内容と、自分の経験から補った内容は分けて整理します。考えに迷ったときは、判断を支える根拠がどちらに由来するかを確かめると、検討の出発点を見直せます。
確認ポイント
- 判断の根拠を与えられた条件に戻せるか
- 自分で補った仮定を条件と混同していないか
- 推測だけで結論を急いでいないか
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解説
スマート農業の実現に向け、環境測定、無線LAN中継、高精度な測位、自動走行、保守支援を結び付けて機能を設計する問題です。本文のデータの流れを根拠に、通信障害時の安全確保、受信確認、通信遅延による位置ずれ、クラウドへの機能配置を判断します。
問題の全体像
X社は、自動走行する農業機械の製造・販売から、農場内のデータを活用する農業生産システムへ事業を広げようとしています。モニタリングポスト、農業機械、サーバを無線LANで接続し、生産計画、協調走行、保守支援を実現する事例です。公式の出題趣旨では、機能性、確実性、安全対策などを考慮したシステムアーキテクチャの決定と機能仕様の策定が問われています。機器の役割を読み取るだけでなく、通信が途切れたり遅れたりしたときの影響まで考えることが解答の軸になります。
設問1(1)
開発項目(2)の、モニタリングポストは「環境モニタリング機能と無線LAN中継機能を併せもつ」という記述に着目します。設置後は、農場の環境を測定できることと、農場内の通信を中継できることを確認する必要があります。表1にも、センサによる測定と機器間の無線LAN中継が示されています。公式解答例では「環境モニタリング機能」「無線LAN中継機能」の二つです。それぞれ15字以内なので、個々のセンサや通信相手を列挙せず、二つの主要機能を名称で答えます。
設問1(2)
表1では各ポストが太陽電池パネルの発電量を送信し、その後の本文では隣接するポストのデータが同じ傾向を示す場合があるとされています。近隣の発電量を比較すれば、周囲と異なる値を示すパネルの異常を検出する手掛かりになります。公式解答例では「隣接するモニタリングポストの発電量データと比較する。」としています。30字以内の答案では、比較対象が隣接ポストの発電量であることを押さえます。採点講評では、発電量は気象状況にも左右されるため、「サーバで予測した発電量と比較する」という解答は誤りとして挙げられています。
設問2(1)(a)
サーバ算出測位では、農業機械が距離と方位などを送信し、サーバから算出済みの現在位置を受け取ります。通信が切断されると、この方式による正確な現在位置を取得できず、走行を続けることが安全上の問題になります。したがって、通信断を契機として農業機械自身が停止する機能が必要です。公式解答例では「データ通信切断時に自動的に走行を停止する。」としています。25字以内で、通信切断という条件と、自動停止という対策を結び付けて答えます。
設問2(1)(b)
表2には、農業機械からサーバへ動作履歴などを送信する機能が示されています。通信復帰後にデータを漏れなく送るには、一時保管に加え、送信したデータがサーバに届いたことを確認する必要があります。送信を実行しただけでは、相手が受信できたとは判断できないためです。公式解答例では「サーバがデータを受け取ったことを確認する機能」としています。25字以内の答案では、設問で除外された一時保管を繰り返さず、サーバの受信を確認する機能を明示します。
設問2(2)(a)
自律算出測位では、農業機械が測定した距離・方位と、モニタリングポストの位置情報を用いて現在位置を算出します。一方、ポストの正確な設置位置は、検討結果(2)でサーバに登録するとされています。農業機械が自ら位置を算出するためには、走行開始前にその登録済みの位置情報を取得する必要があります。公式解答例では「モニタリングポストの位置情報」です。20字以内で、対象と必要な情報を特定します。GPSによる測位データだけでは、ポストを基準とした高精度な位置算出に必要な情報がそろいません。
設問2(2)(b)
サーバ算出測位では、測定データの送信から算出済みの位置データの受信までに時間が掛かります。その間にも農業機械は移動するので、受信した位置と、その時点の実際の位置にずれが生じます。公式解答例では「データ送受信の遅延による位置ずれ」としています。20字以内で、遅延の存在だけでなく、走行制御に影響する位置ずれまで述べることが重要です。採点講評でも、送受信に時間が掛かるという説明に加え、その間に農業機械が移動していることを記述してほしかったとされています。
設問2(3)
検討結果(5)では、ステレオカメラで前方の農業機械を監視し、両機械の間の障害物も検出できるとされています。表2にも、前方の障害物を高精度に検出する機能が明記されています。前方機械の走行経路を受信するだけでは把握できない、後方機械の進路上の障害物を直接検出できる点が利点です。公式解答例では「前方の障害物を高精度に検出できる。」としています。20字以内で、障害物の検出と、その精度の高さを押さえます。
設問3(データ)
現状と課題では、農業機械の動作履歴が内部に記録されるとされています。さらに表2では、その動作履歴をサーバへ送信する機能が示されています。保守サービスを支援するためにサーバで利用できる、機械の稼働状況を表すデータとして、この履歴に着目します。公式解答例では「農業機械の動作履歴」です。10字以内の答案では、環境データや生産結果ではなく、保守対象である農業機械の動作履歴を特定します。
設問3(機能)
利用者が求めているのは、適切かつ迅速な保守サービスです。サーバに集めた農業機械の動作履歴を分析し、故障を予測できれば、保守の必要性を事前に判断して対応を準備することにつながります。公式解答例では、実現する機能を「故障予測」としています。10字以内なので、抽象的な「保守支援」や単なる履歴の保存ではなく、履歴を活用して何を判断するのかを、この機能名で明確に答えます。
設問4
サーバの機能には、走行指示、測位の支援、農場内機器の監視・制御などがあります。こうした機能のうち、現在の機器状態にすぐ対応する必要があるものは、通信遅延が処理結果の有効性や安全性に影響します。設問2(2)(b)の位置ずれも、その具体例です。クラウドへの配置を判断する際は、機能が要求する応答の速さに着目します。公式解答例では、共通する特徴を「高い応答性が要求される。」としています。15字以内で、個別の機能名を列挙せず、応答性という共通の要求を答えます。
学習のポイント
本文の機能とデータの対応を整理し、通信の切断・遅延が安全性、確実性、応答性に与える影響を具体的に説明する練習が重要です。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成29年度秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問4(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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