SAシステムアーキテクト試験 午後Ⅰ

平成27年度秋期 システムアーキテクト 午後Ⅰ 問4

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問4 災害監視用小型無人航空機システムの開発に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。 F社は、無人航空機システム(Unmanned Aircraft Systems,以下、UASという)の開発・製造を行っている。 近年、UASを用いた監視システムの活用が進んでおり、災害監視に適したUASも実用化されている。その背景には、台風、豪雨、地震などの自然災害に備え、災害発生後に迅速に対応できる監視システムの充実が欠かせないということがある。地上に設置する災害監視システムの場合は、設置工事を要し、監視範囲が固定されてしまうといった制約がある。UASは、地上に設置する災害監視システムを補うもの、又はそれに代わるものとして、機能の充実が期待されている。同時に、使いやすさ、安全性、高信頼性も求められている。 F社では従来、災害監視用小型無人航空機システム(以下、監視UASという)を製造してきたが、今回、政府、自治体及び関連企業の要望を踏まえた新たな監視UAS(以下、新監視UASという)を開発することになった。 〔従来の監視UASの概要〕 従来の監視UASは、図1に示すように、小型無人航空機(以下、無人機という)と地上局で構成されている。無人機は、監視カメラ、監視用センサなどの機器を搭載している。搭載する機器の荷重については、最大値を定め、機体と合わせた重量でも、飛行時間・速度が確保できるようにしている。 地上局と無人機間は、無線データ通信でデータをやり取りしている。無線データ通信は、見通せる範囲に限られるので、山や構築物の陰などでは通信できない。 図1 従来の監視UASの構成 無人機は、バッテリを動力源とし、自律又は遠隔操縦のどちらかで飛行する。 自律飛行では、地上局から指示された飛行経路に従って、搭載している航法センサのデータを参照しながら自律制御によって飛行する。オペレータが、無人機に監視させたい地点、時間及び着陸地点を含む飛行計画を指定すると、地上局は、無人機の現在位置から自律飛行に必要な複数の飛行経由地点を自動的に決定する。このとき、飛行禁止空域を含む、航空法に適合した3次元地形データを参照する。 飛行経由地点は緯度、経度及び高度で示され、着陸地点に戻るまでの連続した複数の飛行経由地点をまとめた情報(以下、ウェイポイント情報という)として無人機に送信される。 遠隔操縦飛行では、無人機が、航法センサの情報を地上局に送信し、操縦者が、操縦端末を用いて地形図、航法センサの情報などを参照しながら操縦する。操縦者の操作によって、操縦指令が地上局から無人機へ送信され、無人機に飛行制御させる。操縦者は、バッテリ残量を確認し、無人機を帰還させるかどうかを判断する。 〔新監視UASに対する要望〕 新監視UASの開発に当たって、F社のシステムアーキテクトであるG氏は、F社に寄せられた、監視UASに対する要望を次のようにまとめた。 ① 飛行中に、自律飛行と遠隔操縦飛行の切替えができるようにしてほしい。 ② 自律飛行中でも、経路変更ができるようにしてほしい。 ③ 自律飛行、遠隔操縦飛行にかかわらず、無人機のバッテリ残量が低下したとき、指定した場所に確実に帰還できるようにしてほしい。 ④ 地上局から見通せない場所もリアルタイムで監視できるようにしてほしい。 ⑤ 連続監視時間を長くしてほしい。 ⑥ 地上局と防災センタを通信回線で接続し、防災センタでも監視対象の情報をリアルタイムで共有できるようにしてほしい。 〔新監視UASの構成〕 G氏は、新監視UASの構成を次のようにまとめた。 ① 1~2機の無人機と地上局で構成し、これら一式を自動車で運搬できる大きさ、重量とする。運用時は、無人機と地上局間、及び無人機が2機の場合は無人機相互間で無線データ通信を行う。一つの地上局で、無人機2機まで同時に運用できるようにする。 ② 無人機は、自律又は遠隔操縦によって飛行する。バッテリを搭載し、プロペラ及び操だ翼をモータで駆動する。飛行制御、監視、無線データ通信などに必要な電力もバッテリから供給する。監視を行うために、監視カメラ及び監視用センサを搭載する。 ③ 地上局は、制御部、通信部、アンテナ、ディスプレイ、操縦端末及び監視カメラ操作端末で構成する。 ④ 地上局と防災センタ間は、高速通信回線で接続する。防災センタでは、地上局と同じ映像を表示でき、監視カメラの操作もできる。 新監視UASの構成を図2に示す。 図2 新監視UASの構成 〔新監視UASの運用〕 G氏は、新監視UASの運用について検討し、次のように定めた。 ① 災害時などに無人機を飛行させ、監視カメラ、監視用センサからのデータを地上局で受信し、危険箇所の探索、被害状況の確認などに用いる。また、防災センタでも同時に監視できるようにし、監視対象の情報を共有する。一つの地上局には、設営と監視カメラの操作を行う要員を配置する。さらに遠隔操縦を行う場合は専任の要員が必要である。 ② 飛行中に、自律飛行と遠隔操縦飛行の切替え、自律飛行の経路変更ができる。 ③ 地上局は、自律飛行の経路変更時に、変更位置からのウェイポイント情報を生成し、無人機に送信する。 ④ 地上局は、遠隔操縦飛行中、無人機から現在位置を受信するたびに、そこからのウェイポイント情報を常に生成し、無人機に送信する。バッテリ残量を確認し、飛行可能な距離の限界に近づいたと判断した場合は、最後に送信したウェイポイント情報を用いた自律飛行に切り替える。 〔無人機の2機同時運用〕 ① 地上局の設備能力及び要員の制約から、一つの地上局で2機の無人機を同時に飛行させる場合、遠隔操縦飛行はどちらか1機だけとし、もう1機は自律飛行とする。具体的には、1機を地上局から電波の届く範囲内で自律飛行させておくことによって、もう1機に地上局から電波が届かなくても、無人機間の無線データ通信ができれば、無線中継によって遠隔操縦飛行及び監視を行うことができる。 ② 2機の無人機の飛行開始時刻をずらして運用することによって、【a】という要望にも応えることができる。 ③ 無線データ通信は、他のアクセスポイントを介さずに行う方式とする。地上局は、5kmの範囲で無人機と無線データ通信ができる。無人機相互間は2kmの範囲で無線データ通信ができる。伝送速度は、無人機2機の飛行制御に必要な情報の送受信ができ、さらに無人機1機の監視カメラ及び監視用センサの制御と映像データなどの送受が支障なく行えるように定める。 〔新監視UASにおける無人機の機能〕 無人機の機能を表1に示す。 表1 無人機の機能 〔新監視UASにおける地上局の機能〕 地上局の機能を表2に示す。 表2 地上局の機能 〔操縦端末の表示画像の検討〕 地上局から見通せない範囲を飛行中の場合の対応として、無人機にカメラを追加し、追加したカメラからの進行方向の映像を操縦端末で見ながら操縦することを検討した。しかし、無線データ通信の制約から、この方法は困難と判断した。その代わり、制御部で、【d】と【e】を利用して、ナビゲーションに用いる模擬画像を生成し、操縦端末に表示させるようにする。 〔遠隔操縦飛行の検討〕 遠隔操縦飛行中の無人機は、自機の現在位置を把握できても、その位置から着陸地点までの最短経路が分からないので、着陸地点まで飛行できる範囲内かどうか判断できない。そこで、地上局が、無人機からの航法センサ及び【f】のデータを受信するたびに、ウェイポイント情報を生成して無人機に送信するとともに、無人機が着陸地点まで飛行できるかどうか判断する。【f】が着陸地点までの飛行分しかないと判断した場合、強制的に自律飛行に切り替える。 また、遠隔操縦飛行時に、無人機と地上局間の無線データ通信ができなくなった場合を想定し、その対策について検討した。一定時間連続して無線データ通信ができなかった場合、無人機は、現在位置を中心とした旋回飛行に移行する。さらに一定時間経過後も無線データ通信ができなかった場合は、最後に受信したウェイポイント情報を用いた【g】に切り替える。 設問1 新監視UASについて、(1)、(2)に答えよ。 (1) 表2中の【b】、【c】に入れる適切な字句を答えよ。 (2) 防災センタから監視カメラを操作できるようにすることによって、運用上どのような利点が考えられるか。45字以内で述べよ。 設問2 〔無人機の2機同時運用〕について、(1)、(2)に答えよ。 (1) 本文中の【a】に入れる適切な内容を、20字以内で述べよ。 (2) 無線中継を実現している無人機の通信機能を、55字以内で述べよ。 設問3 〔操縦端末の表示画像の検討〕について、(1)、(2)に答えよ。 (1) 本文中の【d】、【e】に入れる適切な字句を答えよ。 (2) 追加したカメラからの進行方向の映像を操縦端末で見ながら操縦することは、困難と判断した。この判断の根拠となった、無線データ通信の制約として考えられることを、35字以内で述べよ。 設問4 〔遠隔操縦飛行の検討〕について、(1)、(2)に答えよ。 (1) 無人機が着陸地点までの最短経路を生成できない理由を、20字以内で述べよ。 (2) 本文中の【f】、【g】に入れる適切な字句を答えよ。
図1 従来の監視UASの構成。地上局と無人機がアンテナを介した無線データ通信で接続される従来の監視UASの構成図。
図1 従来の監視UASの構成。地上局と無人機がアンテナを介した無線データ通信で接続される従来の監視UASの構成図。
図2 新監視UASの構成。防災センタと地上局を高速通信回線で接続し、地上局から無人機1・2を通信する新監視UASの構成図。
図2 新監視UASの構成。防災センタと地上局を高速通信回線で接続し、地上局から無人機1・2を通信する新監視UASの構成図。
表1 無人機の機能。無人機の電源、飛行時間・速度、重量、操縦、航法センサ、監視機能、通信機能を整理した表。
表1 無人機の機能。無人機の電源、飛行時間・速度、重量、操縦、航法センサ、監視機能、通信機能を整理した表。
表2 地上局の機能。地上局の制御部、通信部、ディスプレイ、操縦端末、監視カメラ操作端末の機能を整理した表。
表2 地上局の機能。地上局の制御部、通信部、ディスプレイ、操縦端末、監視カメラ操作端末の機能を整理した表。
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構成要素と連携を見極める視点

無人航空機に関する設問では、個々の用語を単独で覚えるよりも、構成要素がどの役割を担い、どの情報がどの経路を通って全体の運用に関係するかを整理しながら読み進めることが大切です。

この問題で問われていること

確認の中心は、機体側・操作側・通信に関わる要素の役割分担と、それらの間で情報が行き交う関係が、設問中の説明と矛盾なく対応しているかという一点に置いてください。

視点

用語の印象だけで判断せず、各要素の役割、関係する情報、接続や連携の向きを分けて捉えます。そのうえで、設問の記述が示す関係を全体の構成として整理し、部分的な言い回しに引きずられないように検討します。

確認ポイント

  • 各要素が担う役割を区別できているか
  • 情報の流れと関係性を整理できているか
  • 説明全体に矛盾がないかを確認したか
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解説

災害監視UASの要望を実現するため、地上局・無人機・防災センタの機能分担、無線中継、経路生成、自律飛行への切替えを問う問題です。

問題の全体像

災害発生後に迅速かつ広範囲を監視する新監視UASについて、従来の地上局と無人機の構成を拡張し、2機運用、無線中継、防災センタとの情報共有、自律飛行と遠隔操縦の切替えを実現する事例です。出題趣旨では、機能性、確実性、効率向上などを考慮して機能仕様を策定するシステムアーキテクトの能力を評価するとしている。

設問1(1)

表2の制御部は、飛行計画と3次元地形データから無人機の飛行経路を作り、通信部へ送る。本文では飛行経路を緯度・経度・高度で表す連続した情報をウェイポイント情報と定義しているため、bは「ウェイポイント情報」となる。また、通信部は監視カメラ映像や監視用センサのデータを制御部、ディスプレイ及び防災センタへ送るので、cは「防災センタ」となる。

設問1(2)

防災センタでも地上局と同じ映像を表示し、監視カメラを操作できる構成が示されている。したがって、利点は防災センタの担当者が地上局の要員を介さず、監視カメラ操作によって監視対象の情報を得られることです。45字以内では、操作の主体と情報取得の効果を簡潔に押さえる。公式解答例では「防災センタから地上局の要員を介さずに、監視カメラ操作で監視対象の情報が得られる」としている。

設問2(1)

2機の飛行開始時刻をずらすと、一方の飛行中に他方を交代させる運用が可能になる。これは監視を途切れさせず、連続監視時間を延ばすための工夫です。したがって、aは要望⑤の「連続監視時間を長くしてほしい」となる。

設問2(2)

無線中継を行う機体は、地上局から直接届かない別の無人機のデータを受け取る。そのデータが自機宛てではなく、元々自機から送信したものでもない場合、そのまま送信することで中継する。公式解答例も、この受信データの条件と再送処理を通信機能として示している。

設問3(1)

追加カメラの映像を使わず、制御部でナビゲーション用の模擬画像を生成する場面です。本文の従来機能では、飛行経路の生成に3次元地形データと航法センサのデータを用いているため、dとeは「3次元地形データ」「航法センサのデータ」となる。公式解答例ではこの2つは順不同としている。

設問3(2)

追加カメラの映像は無線で操縦端末へ送る必要がある。一方、通信には飛行制御情報、監視カメラ・センサのデータなども流れるため、通信速度や容量の制約から映像を遅延なく送れない。公式解答例では、追加カメラ映像のリアルタイム性を確保できない点を根拠としている。

設問4(1)

無人機は現在位置を把握できても、最短経路の計算に必要な飛行禁止空域や地形を含む3次元地形データを持っていない。従来の自律飛行では地上局がこのデータを参照して経路を決めるため、理由は「3次元地形データをもっていないから」となる。

設問4(2)

地上局は、無人機から航法センサのデータとともにバッテリ残量を受信し、着陸地点まで飛行可能か判断する。残量が不足すると判断した場合は、最後に送信したウェイポイント情報を使った自律飛行へ切り替える。したがって、fは「バッテリ残量」、gは「自律飛行」となる。

学習のポイント

要件から機能を対応付け、通信制約と安全確保の条件を答案に反映する力を養う。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成27年度秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問4(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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