SAシステムアーキテクト試験 午後Ⅰ

平成25年度秋期 システムアーキテクト 午後Ⅰ 問1

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問1 安否確認システムの導入に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。 A社は,中堅の総合商社であり,配下に10社のグループ会社を保有している。A社グループでは,大規模地震を想定した安否確認システムの導入を行うことにした。情報システム部のB課長がリーダとなって本案件を担当することになった。 〔安否確認システムの導入に向けての検討〕 B課長は,安否確認システムの要件を決定するに当たって,総務担当役員,総務部担当者などにヒアリングを行い,次のようにまとめた。 (1) 社員に対する安否確認は,A社グループの国内営業地域内で震度5強以上の地震が発生したときに発動する。安否確認が発動されると,社員に対して緊急連絡が行われ,これを受けた社員は安否情報の登録(以下,安否登録という)を行う。 (2) 緊急連絡は,電子メール,電話のどちらでも行えるようにする。A社グループでは,ほとんどの社員が携帯電話を保有しているので,これを有効に活用する。 (3) 社員の緊急連絡先は,社員が自ら登録する。社員ごとに複数の連絡先が登録できるようにする。 (4) 安否確認システムの利用者管理には,人事マスタを利用する。安否確認システム以外の既存のシステム(以下,社内システムという)は社員コードを共通の利用者IDとしてシングルサインオンを実現しているので,各社員は自分の社員コードを覚えている。 (5) 安否登録は,電子メール,電話のどちらでも行えるようにする。入力はできるだけ容易にし,本人の現在地,本人及び家族の安否,出社可能かどうかなどを登録できるようにする。 (6) 会社単位,部単位に,安否登録状況の一覧が参照できるようにする。 (7) 安否確認発動時に,社員の中から安否確認作業の担当者(以下,確認担当者という)を決めて作業が進められるようにする。 (8) 安否情報が一定時間以内に確認できない社員のうち,地震区域にいないことが明らかな社員については,一旦,安否確認作業の対象外とする。地震区域にいる可能性がある社員については,確認担当者が様々な手段で安否の確認を行う。この作業を個別確認という。個別確認は短時間で行うことが望まれるので,対象となる人数はできるだけ少なくなるようにする。 (9) (8)で一旦安否確認の対象外とした,地震区域にいないことが明らかな社員については,個別確認終了後に別途安否確認を行う。 B課長は,以上の要件を基に,複数のソフトウェアパッケージ及びASPサービスを比較検討した結果,C社のASPサービスを利用した安否確認システム(以下,新システムという)を導入することを決定した。 〔現状調査の結果〕 新システムには,社員情報を登録する必要がある。登録には,人事マスタを利用するので,人事マスタの調査を実施した。その結果,次のことが判明した。 (1) 人事マスタの主キーは社員コードである。社員コードは,1桁目がグループ内の各会社を表すアルファベット,2桁目が雇用形態を表すアルファベット,3桁目から6桁目までが各社員に割り当てられた数字の連番になっている。 (2) A社グループの社内システムは,シングルサインオンを実現しており,共通パスワードは人事マスタに対応して管理されている。共通パスワードは社員が随時変更可能であり,社内システムにリアルタイムで反映される。 (3) 社員の所属部署は人事マスタで管理され,組織変更や人事異動の際には,発令日の前夜のバッチ処理で新所属部署に変更される。 また,A社グループの海外出張の実態を調査したところ,常時,全社員の数%に当たる約100人が海外出張をしていることが分かった。海外出張者については,危機管理の観点から,誰がどの都市に出張しているかの情報を,総務部が正確に把握している。 〔新システムの機能〕 新システムの機能の概要は,次のとおりである。 (1) アクセス方法 ・PC及び携帯電話からの入力,参照が可能である。 ・固定電話からの入力が可能である。 ・Webページへのアクセスの際は,利用者ID及びパスワードによる認証を行う。 (2) 緊急連絡先登録機能 ・緊急連絡先を1人最大5件まで,優先順位を付けて登録する。電子メールアドレス,携帯電話メールアドレス,固定電話番号及び携帯電話番号が登録可能である。 (3) 安否確認応答機能 ・安否確認メッセージは,あらかじめ準備されたパターンの中から選択する。確認する安否情報は,本人の現在地,本人及び家族の安否,出社可能かどうかなどである。 ・登録された緊急連絡先がメールアドレスか電話番号かを自動判別し,メール送信又は電話の発呼を行う。メールには応答用WebページのURLを埋め込み,このURLにアクセスすることによって社員が自動認証されて安否情報を登録することができる。電話では,質問に対して数字キーで応答し,その結果が登録される。 ・電話の発呼に応答しない場合は,発呼を指定回数繰り返す。この回数はシステムの初期設定時に任意に指定できる。 ・対象者全員に送信又は発呼が終了すると,安否情報が登録されていない社員について,第2連絡先へ送信又は発呼を行う。同様に第5連絡先まで繰り返す。 (4) 安否情報自主登録機能 ・社員が,安否確認システムへ直接アクセスすることによって,自主的に安否情報を登録する。 (5) 安否情報参照機能 ・安否確認メッセージに対する応答の有無,登録された安否情報の明細及び集計表を参照する。集計表の集計単位は,会社,本部,部など5階層まで指定できる。 (6) 個人マスタ管理機能 ・利用者ID,氏名,所属部署,役職及びパスワードを管理する。 ・利用者IDは10桁以内の数字である。 〔新システムの導入に当たっての対応〕 B課長は,新システムの導入に当たり,社内システムとのインタフェースを確認し,対応が必要な項目を洗い出した。それらの対応内容を検討した結果,新システムの特性上,カスタマイズは行わず,社内システム側のインタフェースの変更,システム運用の変更及び業務の変更によって対応することを決定した。B課長が検討した内容及び結果を次に示す。 (1) 社員コード変換 新システムの利用者IDを各社員に割り当てるに当たり,次の三つの方式を考えた。 ① 各社員に新たに一意の番号を割り当てる。 ② 会社及び雇用形態を表す2桁のアルファベットの組合せを,それと対応する数字3桁に変換し,その後に社員コードの下4桁の数字を加え,7桁の新番号を作成する。 ③ 会社及び雇用形態を表す2桁のアルファベットを,それぞれ01~26の数字に置き換えて4桁の数字とし,その後に社員コードの下4桁の数字を加え,8桁の新番号を作成する。 B課長は,安否確認システムの利用頻度が少なく,また,社員が緊急時に利用しなければならないことを考慮して③を採用することを決定した。 (2) パスワード連携 新システムのパスワードに利用できる文字及び桁数は,現在の社内システムで使用しているパスワードに利用できる文字及び桁数と変わらないので,同じパスワードが使用できる。しかし,社内システムのパスワードをリアルタイムで新システムに反映させるには,大幅な改修が必要になる。そこで,リアルタイムでの反映は行わず,夜間のバッチ処理で反映させることにした。 社内システムと同じパスワードに限定するために,新システムのパスワード変更機能は使用させないことにした。 (3) 所属部署の変更 組織変更や人事異動に伴う所属部署の変更は,発令日の前夜のバッチ処理で実施しているので,新システムも同じタイミングで更新することにした。 〔新システムの運用の検討〕 B課長は,新システムの概要を総務部に説明し,併せて新システムの運用について協議して次のとおり決定した。 ・新システムにアクセスするためのURLは,全社員が常時携帯している危機管理ハンドブックに記載する。 ・新システムに登録する緊急連絡先の優先順位は,携帯電話メールアドレス,電子メールアドレス,携帯電話番号,自宅電話番号の順とする。 また,B課長は,次の三つの目的のために,今後,年2回定期的に安否確認訓練を行うことを提言した。 ① システムが正常に動作することを確認するため ② 社員が操作に慣れるため ③ 全社員への緊急連絡という観点から,あるリスクを回避するため さらに,個別確認の対象となる人数を少なくするために,ある情報を確認担当者に提供すべきであることを提言した。 設問1 新システムには,安否確認応答機能があるにもかかわらず,安否情報自主登録機能が実装されている。安否情報自主登録機能は,どのような場合にどのように利用することを想定して実装されているか。35字以内で述べよ。 設問2 〔新システムの導入に当たっての対応〕について,(1),(2)に答えよ。 (1) 社員コード変換の方式について,③を採用した理由を25字以内で述べよ。 (2) パスワード連携について,社内システムのシングルサインオンのパスワードのリアルタイム連携を採用しなかったことによって,全社員に周知すべき事項がある。その内容を40字以内で述べよ。 設問3 〔新システムの運用の検討〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1) 緊急連絡先について,携帯電話メールアドレスを最優先にしたのはなぜか。40字以内で述べよ。 (2) 安否確認訓練を年2回定期的に行うことにした目的に挙げられている,回避すべきリスクとはどのようなリスクか。35字以内で述べよ。 (3) 個別確認の対象となる人数を少なくするために,確認担当者に提供すべき情報はどのような情報か。その内容を10字以内で,また,その情報を提供する理由を30字以内で述べよ。
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検討の前提と対象範囲をそろえる

この分野を検討するときは、まず各情報がどのような前提の下で述べられているかに注目しましょう。対象や場面の範囲を確かめ、異なる前提を混ぜたまま判断していないかを立ち止まって確認することが大切です。

この問題で問われていること

考える際は、判断の対象となる範囲が途中で変わっていないかを意識しましょう。明示された条件と、自分が補っている想定を分けて捉えると、どこまでを根拠に考えてよいか整理しやすくなります。

視点

同じ話題でも、想定する対象や場面が違えば、判断の土台も変わります。まず、与えられた情報が扱う範囲を捉え、その範囲を越える想定を自分で加えていないか確かめましょう。

確認ポイント

  • 判断の対象となる範囲を捉えているか
  • 明示された条件と自分の想定を区別しているか
  • 途中で検討の前提を変えていないか
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解説

本問は、安否確認の要件をASPサービスの機能に照らし、利用者IDの変換、パスワードの反映時期、連絡先の管理、個別確認の対象選定を検討する問題です。機能だけでなく、緊急時に社員が利用でき、確認担当者が効率よく作業できる運用まで具体化することが要点となる。

問題の全体像

A社グループは、大規模地震に備えてC社のASPサービスによる安否確認システムを導入する。新システムはカスタマイズせず、社内システム側のインタフェース、システム運用、業務の変更で要件に対応する方針です。公式の出題趣旨では、フィット&ギャップの分析と、その差を解消する業務・運用の変更、現行システムとのインタフェース設計が問われている。各設問では、本文にある機能や制約を、緊急時の社員の行動や確認担当者の作業に結び付けて説明する。

設問1

〔新システムの機能〕(3)の安否確認応答機能は、送信されたメールや電話を受けて応答する仕組みです。一方、(4)の自主登録機能は、社員がシステムへ直接アクセスして登録できる。緊急連絡を受けられない場合でも、この機能で安否情報を伝えられる。アクセス先のURLを常時携帯する危機管理ハンドブックに記載する運用も、この利用を支える。公式解答例では「緊急連絡を受けられない場合」と「自主的に安否情報を登録すること」を挙げている。採点講評では、場合だけを答えた答案が多かったとされている。35字以内では「緊急連絡を受けられない場合に、自主的に安否情報を登録する」と、場合と利用方法の両方を押さえる。

設問2(1)

社員は自分の社員コードを覚えているが、新システムの利用者IDは数字に限られる。方式①では別の番号を覚える必要があり、方式②では先頭のアルファベットの組合せに対応する3桁の数字を知る必要がある。方式③は各アルファベットを01~26に置き換え、下4桁をそのまま使うため、変換規則が分かれば社員コードだけからIDを導ける。利用頻度が少なく、緊急時に使うシステムであることが、この利点につながる。公式解答例でも、社員コードだけで容易に導ける点を理由としている。採点講評では、単に「覚えやすいから」とする客観的根拠に乏しい答案が指摘されている。25字以内では「社員コードだけで利用者IDを容易に導けるから」と具体化する。

設問2(2)

〔パスワード連携〕では、社内システムの変更を新システムへ反映するのは夜間のバッチ処理です。社内システムのパスワードを変更しても、バッチ処理が行われるまでは新システムに旧パスワードが残る。そのため、同じパスワードを使用する方針でも、変更直後は両システムで認証に使うパスワードが異なる。公式解答例では、変更した日は安否確認システムへ旧パスワードでアクセスすることを周知事項としている。採点講評でも、反映のタイミングを理解することが解答につながったとされている。40字以内では「パスワードを変更した日は、新システムには旧パスワードでアクセスする」と、社員が取るべき行動を示します。

設問3(1)

本文では、ほとんどの社員が携帯電話を保有しており、それを有効活用するとしている。携帯電話は常時持ち歩いている可能性が高いため、緊急連絡を受ける端末として適している。さらに、メールには応答用WebページのURLが含まれるので、社員はメールを確認した時点でアクセスして登録できる。電話の発呼と異なり、着信時に応答する必要がない点も理由となる。公式解答例では、常時携帯している可能性の高さと、任意のタイミングで応答できる点を挙げている。40字以内では「携帯電話は常時携帯する可能性が高く、任意の時点で応答できるから」と、携帯電話とメールそれぞれの利点をまとめる。

設問3(2)

着目するのは、緊急連絡先を社員自身が登録するという要件です。メールアドレスや電話番号が変わっても、社員が登録内容を更新しなければ、システムが正常に動作していても緊急連絡は届かない。定期的な訓練は、実際に連絡が届くかを確認し、変更の登録漏れに気付く機会となる。設問は既に挙げられている動作確認や操作習熟とは別に、全社員への緊急連絡に関するリスクを求めている。公式解答例では、連絡先の変更を登録しないために緊急連絡が届かなくなるリスクを示している。35字以内では「緊急連絡先の変更が未登録で、緊急連絡が届かなくなるリスク」と、原因と結果を結び付ける。

設問3(3)(内容)

〔現状調査の結果〕では、常時約100人が海外出張しており、総務部が誰がどの都市に出張しているかを正確に把握している。この情報から、国内の地震区域にいないことが明らかな社員を特定できる。確認担当者に提供すべきなのは、この判断に使える海外出張者の一覧です。公式解答例の内容は「海外出張者の一覧」で、10字以内に収まる。採点講評では、勤務場所や担当営業区域では地震区域にいないと判断できないことが指摘されている。通常の所属や担当範囲ではなく、現在海外にいる社員を把握できる情報を選ぶ。

設問3(3)(理由)

〔導入に向けての検討〕(8)では、安否が未確認の社員でも、地震区域にいないことが明らかなら一旦対象外とし、地震区域にいる可能性がある社員に個別確認を行う。海外出張者は国内の地震区域にいないため、一覧を使って個別確認の対象から外せば、対象人数を減らせる。公式解答例でも、海外出張で国内にいない社員は個別確認の対象としないことを理由としている。30字以内では「海外出張で国内にいない社員は個別確認の対象外だから」とまとめる。ただし、要件(9)では対象外とした社員にも個別確認終了後に別途安否確認を行うので、安否確認そのものを省略するという意味ではありません。

学習のポイント

本文の制約と運用条件から因果関係を組み立て、設問が求める要素を字数内で具体的に記述する力を養う。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成25年度秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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