SAシステムアーキテクト試験 午後Ⅰ

平成21年度秋期 システムアーキテクト 午後Ⅰ 問4

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問4 新入退室管理システムの開発に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 J社は,定められた区画に,許可された人だけが入退室できるようにするための入退室管理システムを製造・販売している。これまでは,個別の企業,事業所などの入退室管理システムを,利用者の要望に合わせて構築していた。今回は,大規模賃貸オフィスビル向けの新入退室管理システム(以下,新システムという)を企画し,要件定義を行った。この新システムは,複数のテナントが入っているオフィスビル全体を対象とし,各テナント個別の入退室管理を実現する。 テナントは,1区画だけを使う場合から,フロアを越えて複数の区画を使う場合まで多様である。このため新システムでは,テナント単位に専有する区画(以下,専有エリアという)を柔軟に変更できる方式を検討する。テナントの専有エリアと区画との関係を図1に示す。 〔既存の個別企業向け入退室管理システムの概要〕 既存の個別企業向け入退室管理システム(以下,既存システムという)の構成を図2に示す。既存システムでは,必要な数の認証端末及び電気錠が設置され,専用配線を介して1台の入退室コントローラと個別に接続されている。入退室コントローラは,あらかじめ記録された認証データを保持し,認証端末からの入力データと認証データとを照合して,認証に成功したら対応するドアの電気錠を開錠する。システムの管理者は,入退室コントローラに接続された運用端末を操作して,入室許可者の登録及び認証データの登録を行う。 〔新システムの要件〕 新システムの開発に当たり,次に示す要件がシステムアーキテクトに提示された。システムアーキテクトには,これらの要件を検討し,新システムの機能仕様を決定することが求められている。 ・テナントの要求に応じて,認証端末は複数種類から選択できる。 ・区画ごとに入退室コントローラを1台設置する。 ・1区画は,上限はあるが,複数のドアをもつことができる。1ドア単位の入退室管理も,複数のドアをまとめた入退室管理もできる。さらに,専有エリアが複数区画となる場合は,入退室コントローラを連携させることで,複数区画をまとめた入退室管理も行うことができる。 ・テナントの入替りによって,専有エリアの区画や認証方式を変更しなければならない場合にも,ドアの新設がなければ,認証端末,電気錠などと入退室コントローラの間の配線工事やインタフェースの変更が不要で,短時間で対応できるようにする。 ・運用端末をテナントごとに1台設置する。テナントの管理者が運用端末を操作して,入室許可者の登録及び認証データの登録を行う。 ・入退室履歴を残すことを標準機能に含めるものとする。入退室履歴は,ドアの開閉を行ったときの日時,ドア番号,入退室者などのデータであり,履歴の参照には運用端末を用いる。 ・新システム全体の管理や監視のためにシステム管理端末を設置する。 ・これからのオフィスビルでは,入退室管理システムの情報を利用することによるビルの省エネルギー化,警備の自動化など,ビル設備を監視・制御するシステムの統合運用を進めることが求められている。新システムには,それらに対応できる機能をもたせる。 設問1 新システムの要件を検討した結果,専有エリアごとの入退室管理を容易に実現でき,専有エリアの区画の変更に柔軟に対応できるアーキテクチャを提供することが主要な課題であることが明らかとなった。 この課題にこたえるために,入退室コントローラ及び運用端末はどのようなインタフェースで接続するのが適切か。45字以内で述べよ。 設問2 システム管理機能について検討する。 新システムでは,専有エリア単位の入退室管理を実現するとともに,専有エリアの区画の変更にも対応する必要がある。 (1) システム管理端末で上記の変更を柔軟に行うために必要な情報は何か。20字以内で述べよ。 (2) (1)で述べた情報を用いて,専有エリア単位の入退室管理を実現するためにシステム管理端末にもたせるべき機能は何か。40字以内で述べよ。 設問3 認証データの管理について検討する。 照合処理は,既存システムと同様に,入退室コントローラで行うことにする。 新システムでは,認証データの管理面で注意すべきことは何か。50字以内で述べよ。 設問4 ビル内の他システムとの連携機能について検討する。 空調・照明制御システムによる省エネルギー化を進めるために,新システムの情報を利用することを検討している。その場合,新システムはどのような情報を提供すべきか。20字以内で述べよ。
図1 テナントの専有エリアと区画との関係
図1 テナントの専有エリアと区画との関係
図2 既存システムの構成
図2 既存システムの構成
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検討の前提をそろえて考える

検討を始める前に、扱う範囲や条件がどこまで示されているかを確かめましょう。普段の知識から前提を補いすぎず、与えられた条件と自分の想定を分けておくと、考える対象を整理しやすくなります。

この問題で問われていること

この分野を考えるときは、検討の途中で前提が変わっていないかに注目しましょう。ある条件の下で考えた内容を別の条件にもそのまま当てはめていないか、判断に使っている前提を一つずつ確かめることが大切です。

視点

前提とは、考える際に出発点として置く条件です。明示された条件と、経験から自分で補った条件を区別し、同じ前提の下で検討しているかを意識しましょう。

確認ポイント

  • 判断の出発点となる条件を把握したか
  • 自分で補った条件を、示された条件と混同していないか
  • 検討の途中で、置いている前提が変わっていないか
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解説

本問は、テナントの専有エリア変更に対応する入退室管理システムの設計を問う。LANによる機器接続、区画と専有エリアの対応情報の配信、分散して保持する認証データの一元管理、空調・照明制御への有人・無人情報の提供が要点となる。

問題の全体像

J社は、個別企業向けの既存システムを基に、複数テナントが入居する大規模賃貸オフィスビル向けの新システムを企画している。図1では専有エリアが複数区画から構成され、要件では区画ごとにコントローラ、テナントごとに運用端末を設置する。この設置単位の違いを踏まえ、専有エリア変更に柔軟に対応する仕組みを考える。提示された出題趣旨では、要件の分析に基づいて機能仕様やシステムアーキテクチャを決定する能力が評価対象とされている。

設問1

「区画ごとに入退室コントローラを1台設置する」「運用端末をテナントごとに1台設置する」と、複数区画のコントローラを連携させる要件に着目する。専有エリアの変更に対応するには、運用端末と複数のコントローラが通信できる接続方式が必要になる。公式解答例では、すべての入退室コントローラ及び運用端末をビル内に配線したLANで接続する。45字以内の答案では、「すべての入退室コントローラと運用端末をビル内のLANで接続する。」という粒度で、接続対象と方式を示します。

設問2(1)

図1の専有エリアと区画との関係、及び専有エリアの区画を変更する要件に着目する。コントローラは区画ごとに設置されるため、専有エリア単位で管理するには、各区画がどの専有エリアに属するかを把握する必要がある。公式解答例では「各区画と専有エリアの対応情報」を挙げている。20字以内の答案でもこの表現で、必要な情報が二つの管理単位の対応関係であることを明確にする。

設問2(2)

設問2(1)の対応情報を用いて、区画ごとに設置されたコントローラを専有エリア単位で動作させる点に着目する。システム管理端末が対応情報を保持するだけでは、各コントローラは自分の区画が属する専有エリアを把握できない。そのため、対応する専有エリアの情報を各コントローラへ届ける機能が必要になる。公式解答例では、この情報を配信する機能を挙げている。40字以内の答案は「各入退室コントローラへ、対応する専有エリアの情報を配信する機能」とし、配信先と配信内容を押さえる。

設問3

照合処理を入退室コントローラで行うという設問の条件と、専有エリアが複数区画にまたがる要件に着目する。新システムではコントローラが区画ごとに設置されるので、認証データを複数のコントローラで保持することになる。個別に管理すると、登録や変更の内容に不整合が生じるおそれがある。公式解答例では、各コントローラで認証データを保持するため、データの一元管理が必要になるとしている。50字以内の答案では「認証データを各入退室コントローラで保持するので、データの一元管理が必要になる。」と、理由と管理上の要点を示します。

設問4

空調・照明制御による省エネルギー化という利用目的に着目する。設備を制御する側にとっては、区画に人がいるかどうかが、空調や照明の運転を判断するための情報になる。公式解答例では「区画ごとに有人か無人かの情報」を提供するとしている。20字以内の答案でもこの表現を用い、対象の単位が区画であり、提供内容が有人・無人の状態であることを押さえる。入退室履歴の日時やドア番号を列挙するだけでは、省エネルギー化に利用する情報を十分に特定できない。

学習のポイント

機器を設置する単位と業務上の管理単位の違いを捉え、要件から接続方式、構成情報、データ管理、設備連携の仕様を導く力を養う。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成21年度秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問4(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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