SAシステムアーキテクト試験 午後Ⅰ
平成21年度秋期 システムアーキテクト 午後Ⅰ 問1
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題



解き方のヒントを見る
情報の対象範囲をそろえて考える
業務とデータの関係を考えるときは、扱う情報の対象範囲に注目しましょう。同じ言葉が使われていても、何をひとまとまりとして捉えているかを確認し、範囲が曖昧なまま判断を進めないことが大切です。
この問題で問われていること
この問題では、提示された情報が何を対象としているかという一点を意識して考えましょう。関係を整理する前に、対象範囲が明示されている部分と、自分で補って解釈している部分を区別しておくと、検討の土台が整います。
視点
情報同士の関係を考えるには、それぞれが指す対象の範囲を把握することが役立ちます。用語の印象だけで範囲を決めず、提示された条件を根拠に整理しましょう。
確認ポイント
- 情報が指す対象の範囲を確認したか
- 対象の範囲を根拠なく広げたり狭めたりしていないか
- 明示された範囲と自分の推測を区別できているか
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解説
売上数を利用する補充処理の依存関係を読み取り、棚卸業務をDFDへ反映する問題です。さらに、倉庫在庫への積込積降の反映、複数HTの実績を使った在庫再計算、ロット管理に伴う処理とファイルの対応を整理します。
問題の全体像
A社は、営業担当者がHTを使って自販機の売上回収と商品補充を行い、営業所でトラックの棚卸しと積込積降を行っています。HTのデータは巡回前にダウンロードされ、業務終了後にサーバへアップロードされます。本問では、この業務とデータの対応を読み取り、処理順序の理由やDFDの不足部分を説明します。また、複数担当者による同一自販機の巡回と、ロット別の賞味期限管理に必要な変更を検討します。提示された出題趣旨では、組込みシステムとの連携設計、業務変更に伴うシステム変更点の把握、業務要件をDFDへ反映する能力が評価対象とされています。
設問1(1)
営業担当者の業務③にある「売上処理で取得した売上数を基にコラムごとの最適補充数を計算する」に着目します。補充処理の入力となる売上数を、先に売上処理で取得する必要があります。図にも売上プロセスから補充プロセスへ「コラム番号、売上数」が渡されています。公式解答例では、このデータへの依存を理由としており、30字以内の答案では「補充プロセスの処理では売上数を必要とするから」と要点をまとめます。
設問1(2)
売上処理でコラムごとの売上数を取得し、補充処理の最後にその数をゼロにする流れに着目します。ゼロにしなければ、次の巡回時に取得する売上数に、今回取得済みの売上数も累積されます。その結果、今回の巡回後に売れた数量を区別できません。公式解答例では、売上数の累積を防ぐことを理由としており、30字以内では「売上数をゼロにしないと売上数が累積されてしまうから」と表現します。
設問1(3)
営業担当者の業務④と表1の「トラック棚卸」「トラック棚卸明細」を照合します。図には営業担当者からの「トラックコード、商品コード、実地棚卸数」と、商品マスタからの情報の矢印が途中まで描かれているため、その受け先として「トラック棚卸」プロセスを追加します。公式解答例で追加する三つのデータフローは、①トラック棚卸プロセス→トラック在庫マスタ:「トラックコード、商品コード、在庫数」、②トラック棚卸プロセス→トラック棚卸:「棚卸日、トラックコード」、③トラック棚卸プロセス→トラック棚卸明細:「商品コード、実地棚卸数」です。①では実地棚卸数を在庫マスタの在庫数として更新し、②③では棚卸結果を保存します。HT番号と各伝票番号だけを省略し、棚卸日などの残りの属性は省略しません。機能強化は反映しないので、ロット番号も追加しません。
設問2(1)
営業所の業務⑤にある「HTから当日アップロードされたデータを入力として、倉庫在庫マスタを更新する」に着目します。倉庫とトラックの間の商品移動は積込積降処理で記録されるため、その記録が入力になります。公式解答例では「積込積降、積込積降明細」です。表1によると、積込積降には倉庫コードなどがあり、積込積降明細には商品コード、積込積降フラグ、積込積降数があります。両者を伝票のキーで対応させることで、どの倉庫のどの商品を何本増減するかを判断できます。
設問2(2)
積込積降処理ではHT内のトラック在庫が更新されますが、表1の倉庫在庫マスタはサーバだけに存在します。したがって、トラックへの積込みによる倉庫在庫の減少と、トラックからの積降ろしによる増加を、アップロードされた実績から倉庫在庫へ反映する必要があります。公式解答例では、この反映を理由としています。35字以内では「積込み・積降ろしした分を倉庫在庫に反映させる必要があるから」とまとめます。
設問3(1)
機能強化によって、同じ日に複数の営業担当者が同一自販機を巡回する点に着目します。各HTは巡回前にダウンロードした在庫を基に計算するため、あるHTの在庫数には、ほかのHTによる売上や補充が反映されていない可能性があります。その値でサーバの在庫を置き換えると、ほかの担当者の実績が反映されなくなります。公式解答例では、巡回したすべてのHTの売上と補充の情報から計算する必要があることを理由としています。40字以内では「在庫数は巡回したすべてのHT内の売上と補充の情報から計算する必要があるから」と表現します。
設問3(2)
在庫数は、売上数を差し引き、補充数を加えて計算します。この数量を持つのは表1の「売上補充明細」です。ただし、同ファイルには自販機コードがなく、コラム番号だけでは対象の自販機を特定できません。「売上補充」にある自販機コードを、HT番号と売上補充伝票番号で明細に対応させる必要があります。したがって、公式解答例では「売上補充」と「売上補充明細」の二つを選びます。
設問4(a)
表2のa列では、HT上のトラック在庫マスタがCU、積込積降明細がCとなっています。商品をトラックへ積み込み、または倉庫へ降ろした数量を記録し、その結果でトラック在庫を更新する業務⑤に対応します。公式解答例では「積込積降処理」です。ロット別に在庫を管理するため、移動した商品のロットと数量を明細に記録し、トラック側の在庫へ反映する関係を読み取ります。
設問4(b)
表2のb列では、サーバ上の倉庫在庫マスタがCU、入出庫明細がCとなっています。倉庫へ商品が入った実績を記録し、対応するロットの在庫を登録・更新する処理です。公式解答例では「入庫処理」としています。工場から商品が届き、検品後に登録するという営業所の業務①に対応します。なお、公式解答例ではbとcは順不同とされています。
設問4(c)
表2のc列も、倉庫在庫マスタがCU、入出庫明細がCで、b列と同じ関係です。ほかの倉庫から届いた商品を移動先で検品後に登録する、営業所の業務③に対応します。公式解答例では「移動入庫処理」です。ロット別の在庫が移動先にまだなければ登録し、既にあれば数量を更新する関係として読み取れます。公式解答例ではbとcは順不同です。
設問4(d)
表2のd列では、倉庫在庫マスタがU、入出庫明細がCとなっています。既存の倉庫在庫を減らし、その出庫実績を記録する処理に対応します。公式解答例では、営業所の業務④である「返品出庫処理」です。商品を工場へ返品する際、対象ロットの倉庫在庫を減らすとともに、入出庫明細へ記録します。なお、公式解答例ではdとeは順不同とされています。
設問4(e)
表2のe列も、倉庫在庫マスタがU、入出庫明細がCで、d列と同じ関係です。ほかの倉庫へ商品を移動する際に、移動元倉庫で出庫を登録する営業所の業務②に対応します。公式解答例では「移動出庫処理」です。移動元の対象ロットの在庫を減らし、その移動出庫実績を入出庫明細に記録します。公式解答例ではdとeは順不同です。
設問4(f)
表2のf列では、サーバ上の積込積降明細がR、倉庫在庫マスタがUとなっています。HTからアップロードされた積込積降の実績を参照し、倉庫在庫を更新する営業所の業務⑤に一致します。公式解答例では「倉庫在庫確定処理」です。表2は関連の一部を抜き出したものなので、設問2(1)で必要となる積込積降ファイルが表2に載っていないことと矛盾しません。
設問4(g)
表2のg列では、HT上のトラック棚卸明細がC、トラック在庫マスタがUとなっています。実地棚卸数を記録し、その数量でトラック在庫を更新する営業担当者の業務④に対応します。公式解答例では「トラック棚卸処理」です。賞味期限一覧でロットごとの所在を把握するには、棚卸結果もロット別の在庫へ反映できるようにする必要があります。
学習のポイント
業務記述からデータの入出力と更新時点を特定し、在庫の増減を場所別・処理別に追跡する力を養いましょう。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成21年度秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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