NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ

令和7年度春期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問1

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問1 社内ネットワークのIPv6対応に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。 Q社は全国に拠点をもつ大手の電機メーカーである。Q社で利用される社内ネットワークにはIPv4アドレスだけが割り当てられており,従業員は社内ネットワークに接続されたPCを利用して,社内Web,電子メール,ファイル共有,チャットやWeb会議などのサービスを提供するV社SaaS,及びインターネット上のWebサイトにアクセスして業務を行っている。 Q社で利用しているSaaSやWebサイトのIPv6の対応状況,及び近年のIPv6普及率の向上を踏まえ,情報システム部はIPv6の調査と社内ネットワークのIPv6対応について検討することにした。IPv6の調査と社内ネットワークのIPv6対応の検討は,情報システム部のP主任が担当することになった。 〔社内ネットワークの概要〕 Q社の現状の社内ネットワーク構成を図1に示す。 図1 Q社の現状の社内ネットワーク構成(抜粋) 図1の概要を次に示す。 ・社内ネットワークのPC,ネットワーク機器及びサーバにはIPv4アドレスを割り当てている。 ・ルータBにはデフォルトルート及びNAPTを設定している。 ・FWでは,ステートフルパケットインスペクションを用いたアクセス制御を行っていて,許可及び拒否した通信のログを記録している。 ・ルータB,FW及び各拠点のL3SWは,OSPFv2を用いて経路制御を行っている。 ・ルータBは,OSPFv2でデフォルトルートを配布している。 ・データセンターと各拠点との間は,レイヤー2の広域イーサ網で接続されている。 ・PCは,IPv4アドレス,デフォルトゲートウェイ及びキャッシュDNSサーバに関する情報を,DHCPサーバから取得している。 〔IPv6対応の方針〕 V社SaaSの一部及びインターネット上のWebサイトの一部は,現時点ではIPv6に対応していない。P主任は,社内ネットワークのIPv6対応後もIPv4のネットワークへの接続を確保する必要があると考えて,社内ネットワークには,IPv4とIPv6のデュアルスタックのネットワークを採用する方針で,IPv6対応について検討することにした。 〔IPv6におけるアドレス解決〕 IPv6におけるアドレス解決では,IPv4のARPに相当する機能をもつ,RFC 4861で規定されたNeighbor Discovery Protocol(以下,NDPという)が用いられる。 IPv4のARPによるアドレス解決では,要求元のノードは,求めるMACアドレスに対応するIPv4アドレスをARPリクエストの【a】フィールドに入れて,【b】キャストで送信する。次に,ARPリクエストを受信した,要求されたIPv4アドレスをもつノードは,自身のMACアドレスをARP【c】の送信元MACアドレスフィールドに入れて,要求元のノード宛てに送信する。 IPv6のNDPによるアドレス解決では,要求元のノードは,求めるMACアドレスに対応するIPv6アドレスをICMPv6のNeighbor Solicitation(以下,NSという)メッセージに入れて,マルチキャストで送信する。次に,NSメッセージを受信した,要求されたIPv6アドレスをもつノードは,Neighbor Advertisement(以下,NAという)メッセージに自身のMACアドレスを入れて,要求元のノード宛てに送信する。 〔IPv6アドレスの割当て〕 NDPは,ICMPv6のNSメッセージ及びNAメッセージに加えてRouter Solicitation(以下,RSという)メッセージやRouter Advertisement(以下,RAという)メッセージなども用いて,アドレス解決以外の次の機能を実現している。 ・データリンク層で通信可能な範囲にあるルータを発見する機能 ・サブネットプレフィックスやデフォルトルータを決定するための情報を,ノードに通知する機能 ・利用予定のIPv6アドレスがほかのノードで利用されていないか確認する重複アドレス検出機能 IPv6アドレスの構造,使用方法及び自動設定については,RFC 4291で規定されたIPv6アドレス体系,及びRFC 4862で規定されたSLAAC(IPv6 Stateless Address Autoconfiguration)に規定されている。 IPv6アドレスは128ビットで構成され,【d】ビットずつを“:”で区切って表される。2001:db8:aabb:1::1/64を例とするIPv6アドレスの構造を図2に示す。 図2 2001:db8:aabb:1::1/64を例とするIPv6アドレスの構造 IPv6アドレスには,リンクローカルユニキャストアドレス(以下,LLAという)とグローバルユニキャストアドレス(以下,GUAという)がある。①LLAはある範囲でネットワークインタフェースを一意に識別できるIPv6アドレスであり,サブネットプレフィックスには“fe80::/64”を用いる。GUAは,IPv6で構成されるインターネットを含むグローバルなネットワークで,ネットワークインタフェースを一意に識別できるIPv6アドレスである。 インタフェース識別子の生成方法を次に示す。 ・疑似乱数関数を用いてランダムなインタフェース識別子を生成する方法 ・【e】ビットのMACアドレスから【f】ビットのModified EUI-64形式のインタフェース識別子を生成する方法 ノード1におけるNDP及びSLAACを用いたIPv6アドレスの生成処理を図3に示す。なお,Q社の社内ネットワークの拠点1においては,ノード1及びノード2はPCであり,ノード3はL3SW1である。 図3 ノード1におけるNDP及びSLAACを用いたIPv6アドレスの生成処理 図3中の処理(i)~(vi)の概要を次に示す。 (i) ノード1は,仮のLLAを生成してNSメッセージに入れて送信し,ほかのノードからNAメッセージの応答がないことを確認する。 (ii) ノード1は,仮のLLAを正式なLLAとしてNAメッセージに入れて,全ノードマルチキャストアドレス宛てに送信する。 (iii) ノード1は,RSメッセージを全ルータマルチキャストアドレス宛てに送信する。 (iv) RSメッセージを受信したノード3は,GUAの生成に用いるサブネットプレフィックス,及びデフォルトルータを決定するための情報をRAメッセージに入れて,ノード1宛てに送信する。 (v) ノード1は,RAメッセージのサブネットプレフィックスと生成したインタフェース識別子を組み合わせた仮のGUAをNSメッセージに入れて送信し,ほかのノードからNAメッセージの応答がないことを確認する。 (vi) ノード1は,仮のGUAを正式なGUAとしてNAメッセージに入れて,全ノードマルチキャストアドレス宛てに送信する。 ノード1は,ノード3を経由して外部のノードと通信を行うために,処理(iv)で受信した,RAメッセージの送信元であるノード3のLLAを【g】に設定する。 Q社のネットワークにおけるIPv6アドレスの割当てについて,P主任が調査した結果の一部を次に示す。 ・Q社は,ISPから,プレフィックス長が48又は56のGUAの割当てを受けることができる。 ・ISPから割り当てられたGUAを,プレフィックス長が64のネットワークに分割して,利用することができる。 ・SLAACを利用して,PCのLLA,GUA,及び【g】を自動で設定することができる。 ・ルータB,FW及び各拠点のL3SWには,LLA及びGUAを静的に割り当てることができる。 ・固定のMACアドレスからModified EUI-64形式のインタフェース識別子を生成する方法は非推奨である。 PCのインタフェース識別子が疑似乱数関数を用いてランダムに生成される場合,②利用者のプライバシー保護に有用であるが,PC管理の観点で考慮が必要になるとP主任は考えた。 〔IPv6の名前解決〕 IPv4の名前解決と比べてIPv6の名前解決では,512バイトよりも大きなDNSメッセージを送受信する可能性が高い。DNSの機能を拡張するためにRFC 6891で規定されたExtension Mechanisms for DNS version 0(以下,EDNSという)では,スタブリゾルバとフルサービスリゾルバとの間,及びフルサービスリゾルバと権威DNSサーバとの間で,UDP上で送受信されるDNSメッセージのサイズの上限を緩和している。 P主任は,IPv6アドレスの名前解決について,フルサービスリゾルバであるキャッシュDNSサーバを管理する情報システム部のR係長に相談した。2人の会話を次に示す。 P主任:社内ネットワークをIPv6に対応させることになった場合に,キャッシュDNSサーバにIPv6アドレスを割り当てる必要がありますか。 R係長:不要です。キャッシュDNSサーバはIPv4のネットワーク上でDNSメッセージを送受信して,FQDNに対応するIPv6アドレスを解決できます。例えば,IPv6とIPv4の両方に対応するWebサイトの名前解決を行う場合に,PCはAAAAレコードとAレコードを用いて名前解決を要求することで,IPv6アドレスとIPv4アドレスの両方を取得します。 P主任:FQDNからIPv6アドレスとIPv4アドレスの両方を解決した場合,Q社のPCはどのように動作するのですか。 R係長:AAAAレコードとAレコードの応答をほぼ同じタイミングで受信した場合には,IPv6を優先して通信を行います。 P主任:IPv6のDNSメッセージは,IPv4のDNSメッセージよりもサイズが大きくなると考えています。UDP上で送受信されるDNSメッセージのサイズには上限がありますが,何か対応が必要でしょうか。 R係長:Q社のキャッシュDNSサーバはEDNSに対応済みです。PCから名前解決の要求を受けたキャッシュDNSサーバが,権威DNSサーバに問い合わせる場合を例に説明します。キャッシュDNSサーバは,まず,DNSを利用して権威DNSサーバのEDNSの対応可否を確認します。EDNSを利用できるときには,両方のサーバ間で調整した最大のメッセージサイズまでであれば,512バイトを超えるDNSメッセージであってもUDPで送受信します。DNSメッセージが最大のメッセージサイズを超えるときや,EDNSに対応していない権威DNSサーバと512バイトを超えるDNSメッセージを送受信するときには,【h】で送受信することになります。 P主任が作成したDNSの通信例を図4に,V社SaaSのFQDNに対するAAAAレコードの応答例を図5に示す。 図4 P主任が作成したDNSの通信例(抜粋) 図5 V社SaaSのFQDNに対するAAAAレコードの応答例(抜粋) ③IPv6のネットワークだけが不通となった場合に,利用しているOSやWebブラウザによっては従業員が異常に気付くことができず,情報システム部に異常を連絡できない可能性があるとP主任は考えた。IPv6のネットワークの異常を検知するために,データセンターに監視サーバを導入して,IPv6のインターネットへのアクセスや,各拠点のL3SWのGUAに対してping6コマンドによる監視を行うことにした。 〔IPv6ネットワークの設計〕 P主任は,図1の社内ネットワークを基に,IPv4とIPv6のデュアルスタックのネットワークを設計した。P主任が設計した社内ネットワーク構成を図6に示す。 図6 P主任が設計した社内ネットワーク構成(抜粋) 図6の概要を次に示す。 ・IPv4のネットワーク設計に関する変更はない。 ・PC,ネットワーク機器及び監視サーバには,IPv4アドレスに加えてIPv6アドレスを割り当てる。 ・ISPからQ社に割り当てられるGUAを,2001:db8:yyyy::/48として設計する。 ・ルータBには,ルータAのLLAをネクストホップとするデフォルトルートを設定する。 ・ルータB,FW及び各拠点のL3SWは,OSPFv3を用いてIPv6の経路制御を行う。 ・OSPFv3ではLLAを用いて隣接関係を確立してIPv6の経路制御を行うので,④FWと各拠点のL3SWとの間の,PCやサーバを接続しないネットワークにGUAを割り当てる必要はないが,静的に割り当てる。 ・ルータBは,OSPFv3でデフォルトルートを配布する。 ・⑤PCは,SLAACを用いてIPv6アドレス及びデフォルトルータを設定する。 ルータB,FW及びL3SW1のIPv6の経路情報を表1に示す。 表1 ルータB,FW及びL3SW1のIPv6の経路情報(抜粋) IPv6のネットワーク設計について,P主任は情報システム部のS課長に,図6及び表1を用いて説明した。2人の会話の一部を次に示す。 P主任:ISPには,Q社にプレフィックス長が48のGUAを割り当ててもらえることを確認しました。図6及び表1はISPから割り当てられるGUAを2001:db8:yyyy::/48として作成しています。ISPのルータAには,ルータBのLLAをネクストホップとする2001:db8:yyyy::/48宛ての静的経路が設定されます。 S課長:表1の経路情報について説明してください。 P主任:項番1は,ISPを経由してインターネットにアクセスするためのデフォルトルートです。項番2は,ISPから割り当てられるプレフィックス長が48のGUAのうち,使用されないGUAが存在するので設定します。⑥項番2の経路情報を設定しない場合,ルーティングループが発生します。⑦項番1と項番2の両方の経路情報に該当するIPパケットの転送では,ルータBは項番2の経路情報を選択します。社内ネットワークの経路制御にはOSPFv3を利用します。項番3と項番5は,拠点1のネットワーク宛ての経路情報です。項番4と項番6は,ルータBから配布されるデフォルトルートによって登録される経路情報です。 S課長:IPv6のネットワークは,IPv4のネットワークと比較して情報セキュリティ面で違いはありますか。 P主任:異なる点があります。IPv4のネットワークではFWによるアクセス制御に加えて,ルータBに【i】を設定しているので,インターネットから社内ネットワークには簡単に通信できない設計になっています。IPv6のネットワークでは【i】を利用しないので,FWのアクセス制御の設計については慎重に検討する必要があります。 S課長:FWでは,インターネットから社内ネットワーク宛ての全ての通信を拒否する設定を行えばよいのでしょうか。 P主任:IPv6の通信では,ICMPv6メッセージを通信の制御に利用しているので,ICMPv6メッセージを拒否すると通信障害を発生させるおそれがあります。例えば,中継する機器がMTUサイズよりも大きいサイズのIPパケットを転送できないときに,⑧中継する機器から送信元にタイプ2のICMPv6メッセージである“Packet Too Big”を送信するPMTUD(Path MTU Discovery)に利用されています。ほかにも,ICMPv6メッセージのタイプによってはFWで許可すべきものがあるので,調査する予定です。 P主任によるIPv6の調査とIPv6対応の検討の結果は情報システム部で承認されて,社内ネットワークへのIPv6導入において活用されることになった。 設問1 本文中の【a】~【c】に入れる適切な字句を答えよ。 設問2 〔IPv6アドレスの割当て〕について答えよ。 (1) 本文中の【d】~【f】に入れる適切な数値を答えよ。 (2) 本文中の下線①について,LLAが有効な範囲を20字以内で答えよ。 (3) 図3中の処理(i)及び(v)を行う目的を,55字以内で答えよ。 (4) 図3中の処理(ii)の正式なLLAがfe80::8:800:200c:417aであり,処理(iv)のRAメッセージに含まれるサブネットプレフィックスが2001:db8:aabb:1::/64であった場合に,処理(v)で生成される仮のGUA及びプレフィックス長を答えよ。 (5) 本文中の【g】に入れる適切な字句を答えよ。 (6) 本文中の下線②について,P主任がこのように考えた理由を,20字以内で答えよ。 設問3 〔IPv6の名前解決〕について答えよ。 (1) 本文中の【h】に入れる適切な字句を答えよ。 (2) 図5中のAAAAレコードの応答について,“saas.example.com.”にアクセスするためのV社SaaSのIPv6アドレス,及びV社SaaSのIPv6アドレスを管理している権威DNSサーバのFQDNを,図5中の字句を用いて全て答えよ。 (3) 本文中の下線③について,従業員が異常に気付くことができないとP主任が考えた理由を,45字以内で答えよ。 設問4 〔IPv6ネットワークの設計〕について答えよ。 (1) 図6中のa~dのインタフェース名について,GUAを割り当てない目的を,50字以内で答えよ。 (2) 本文中の下線④について,GUAを“静的に”割り当てることによって得られる利点を,経由するネットワーク機器を調べるときに使用されるコマンド名を用いて,45字以内で答えよ。 (3) 本文中の下線⑤の設定を行うために,各拠点のL3SWで行われる動作を,ICMPv6のメッセージ名を用いて40字以内で答えよ。 (4) 表1中の【ア】~【ケ】に入れる適切な字句を答えよ。 (5) 本文中の下線⑥について,表1中の項番2の経路情報を設定しない場合に,インターネットから未使用のGUA宛てに送信されたIPパケットを,ルータA及びルータBはどのように処理するか。IPv4の“TTL”と同じように用いられる,“ホップリミット”という字句を用いて35字以内で答えよ。 (6) 本文中の下線⑦について,表1中の項番2の経路情報が選択されるのはなぜか。25字以内で答えよ。 (7) 本文中の【i】に入れる適切な字句を答えよ。 (8) 本文中の下線⑧について,PMTUDによって何が検出されるか。20字以内で答えよ。
図1 Q社の現状の社内ネットワーク構成(抜粋)。インターネット・V社SaaS・ISPのルータAと社内ネットワークを示す構成図。データセンターにルータB、FW、L2SW、キャッシュDNSサーバ、DHCPサーバがあり、FWは広域イーサ網を経由して拠点1のL3SW1、L2SW1、PCに接続する。略語の凡例付き。
図1 Q社の現状の社内ネットワーク構成(抜粋)。インターネット・V社SaaS・ISPのルータAと社内ネットワークを示す構成図。データセンターにルータB、FW、L2SW、キャッシュDNSサーバ、DHCPサーバがあり、FWは広域イーサ網を経由して拠点1のL3SW1、L2SW1、PCに接続する。略語の凡例付き。
図2 2001:db8:aabb:1::1/64を例とするIPv6アドレスの構造。2001:0db8:aabb:0001:0000:0000:0000:0001を示し、前半64ビットがサブネットプレフィックス、後半64ビットがインタフェース識別子であることを矢印で示した図。
図2 2001:db8:aabb:1::1/64を例とするIPv6アドレスの構造。2001:0db8:aabb:0001:0000:0000:0000:0001を示し、前半64ビットがサブネットプレフィックス、後半64ビットがインタフェース識別子であることを矢印で示した図。
図3 ノード1におけるNDP及びSLAACを用いたIPv6アドレスの生成処理。ノード1〜3のシーケンス図。(i)NS、(ii)NA、(iii)RS、(v)NS、(vi)NAはマルチキャストで送信され、(iv)RAはノード3からノード1のLLA宛てに送られる。一部のノードはメッセージを破棄する。凡例と、宛先マルチキャストアドレスに関する注1〜注3付き。
図3 ノード1におけるNDP及びSLAACを用いたIPv6アドレスの生成処理。ノード1〜3のシーケンス図。(i)NS、(ii)NA、(iii)RS、(v)NS、(vi)NAはマルチキャストで送信され、(iv)RAはノード3からノード1のLLA宛てに送られる。一部のノードはメッセージを破棄する。凡例と、宛先マルチキャストアドレスに関する注1〜注3付き。
図4 P主任が作成したDNSの通信例(抜粋)。PC、キャッシュDNSサーバ、V社SaaSのシーケンス図。(i)AAAAレコードの問合せ、(ii)Aレコードの問合せ、(iii)AAAAレコードの応答、(iv)Aレコードの応答の後、(v)PCとV社SaaSがIPv6通信を行う。権威DNSサーバとの通信は省略するとの注記付き。
図4 P主任が作成したDNSの通信例(抜粋)。PC、キャッシュDNSサーバ、V社SaaSのシーケンス図。(i)AAAAレコードの問合せ、(ii)Aレコードの問合せ、(iii)AAAAレコードの応答、(iv)Aレコードの応答の後、(v)PCとV社SaaSがIPv6通信を行う。権威DNSサーバとの通信は省略するとの注記付き。
図5 V社SaaSのFQDNに対するAAAAレコードの応答例(抜粋)。DNS応答例。ANSWERではsaas.example.com.がdual-saas.example.net.のCNAMEで、AAAAは2001:db8:xxxx::10と::20。AUTHORITYはns1/ns2.example.net.、ADDITIONALはそれらのAレコード198.51.100.α/β。注記1〜3付き。
図5 V社SaaSのFQDNに対するAAAAレコードの応答例(抜粋)。DNS応答例。ANSWERではsaas.example.com.がdual-saas.example.net.のCNAMEで、AAAAは2001:db8:xxxx::10と::20。AUTHORITYはns1/ns2.example.net.、ADDITIONALはそれらのAレコード198.51.100.α/β。注記1〜3付き。
図6 P主任が設計した社内ネットワーク構成(抜粋)。図1に監視サーバを加え、インタフェースa〜hを示したネットワーク構成図。下にネットワーク機器に割り当てるIPv6アドレス一覧があり、a〜dはLLAだけでGUAは未割当て、e〜hはfe80::1または::2のLLAと2001:db8:yyyy:1〜3::のGUAをもつ。注記1・2付き。
図6 P主任が設計した社内ネットワーク構成(抜粋)。図1に監視サーバを加え、インタフェースa〜hを示したネットワーク構成図。下にネットワーク機器に割り当てるIPv6アドレス一覧があり、a〜dはLLAだけでGUAは未割当て、e〜hはfe80::1または::2のLLAと2001:db8:yyyy:1〜3::のGUAをもつ。注記1・2付き。
表1 ルータB,FW及びL3SW1のIPv6の経路情報(抜粋)。項番1〜6について、機器名、静的経路制御又は経路制御プロトコル名、宛先ネットワーク、ネクストホップのIPv6アドレス、出口インタフェース名を示す表。空欄ア〜ケを含み、項番2はNull宛ての静的経路。Nullインタフェースの注付き。
表1 ルータB,FW及びL3SW1のIPv6の経路情報(抜粋)。項番1〜6について、機器名、静的経路制御又は経路制御プロトコル名、宛先ネットワーク、ネクストホップのIPv6アドレス、出口インタフェース名を示す表。空欄ア〜ケを含み、項番2はNull宛ての静的経路。Nullインタフェースの注付き。
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ネットワーク管理の前提をそろえる

ネットワークの管理を考える際は、記述がどの範囲を対象としているかという一つの視点に絞って整理しましょう。対象範囲を自分の知識で補わず、与えられた条件に沿って検討することが大切です。

この問題で問われていること

この問題では、扱われている内容の対象範囲を確認することに注目しましょう。明示された範囲と、自分が想定した範囲を区別し、検討の途中で対象を広げたり狭めたりしていないかを確かめてください。

視点

対象範囲は、検討する内容がどこまでを扱っているかという境界です。知っている事例を当てはめる前に、与えられた条件から確認できる範囲を整理すると、思い込みによる範囲のずれを点検できます。

確認ポイント

  • 対象範囲の根拠を、与えられた条件に求めているか
  • 明示されていない範囲を、自分の想定で補っていないか
  • 検討の途中で、対象範囲を変えていないか
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解説

IPv4のみの社内ネットワークをデュアルスタックへ移行する事例を通じ、ARPとNDP、SLAAC、DNS、OSPFv3の経路制御を問う問題です。IPv4へのフォールバックで障害が見えにくくなる点や、未使用アドレス宛ての廃棄経路、ICMPv6を考慮したアクセス制御まで理解することが要点です。

問題の全体像

Q社は、IPv4のみで運用している社内ネットワークにIPv6を導入します。IPv6に未対応のSaaSやWebサイトもあるため、IPv4とIPv6のデュアルスタックを採用する方針です。公式の出題趣旨では、IPv6アドレスの割当て、SaaSやWebサイトとの通信前に行うDNS通信、IPv6の経路制御設計などの知識と理解力を問うとしています。本文の通信手順と図表を対応付け、設定の仕組みに加えて、管理・監視・セキュリティ上の目的まで説明する問題です。

設問1(a)

本文の「求めるMACアドレスに対応するIPv4アドレス」を入れる場所に着目します。ARPリクエストでは、問い合わせ対象のIPv4アドレスを指定して、そのアドレスを持つノードに応答を求めます。公式解答例では「宛先IPアドレス」です。これはARPメッセージ内の問い合わせ対象を表すフィールドです。

設問1(b)

要求元は相手のMACアドレスをまだ知らないため、ARPリクエストをブロードキャストで送信し、該当するIPv4アドレスを持つノードに応答してもらいます。公式解答例では「ブロード」です。本文が「【b】キャスト」となっているので、空欄には「ブロード」だけを入れます。IPv6のNSがマルチキャストで送信される点と区別しましょう。

設問1(c)

本文では、ARPリクエストを受信した対象ノードが、自身のMACアドレスを要求元へ返しています。要求に対する応答なので、使用するメッセージはARPリプライです。公式解答例では「リプライ」です。空欄の前に「ARP」があるため、答案には「リプライ」を入れます。

設問2(1)(d)

図2の省略されていないIPv6アドレスは、コロンで区切られた八つの組で表されています。128ビットを八つに分けると、各組は16ビットです。公式解答例では「16」です。図2では各組が16進数4桁で表されていることも確認できます。

設問2(1)(e)

ここでは、Modified EUI-64形式のインタフェース識別子を生成する元のMACアドレスの長さを問われています。元になるMACアドレスは48ビットであり、公式解答例では「48」です。生成後の識別子の長さを問う【f】と取り違えないようにします。

設問2(1)(f)

本文の「Modified EUI-64形式のインタフェース識別子」に着目します。生成される識別子は64ビットであり、公式解答例では「64」です。図2でも、/64のIPv6アドレスは上位64ビットのサブネットプレフィックスと下位64ビットのインタフェース識別子に分かれています。

設問2(2)

LLAの有効範囲は、本文にあるNDPの機能「データリンク層で通信可能な範囲」と対応します。GUAのようなグローバルな範囲ではなく、同じリンク内で有効なアドレスです。公式解答例では「データリンク層で通信可能な範囲」です。この表現で20字以内に収まり、有効範囲を具体的に示せます。

設問2(3)

図3の処理(i)では仮のLLA、処理(v)では仮のGUAをNSメッセージに入れ、ほかのノードからNAの応答がないことを確認しています。共通する目的は重複アドレス検出です。公式解答例では、同じデータリンク層上で同じIPv6アドレスを使うノードがいないことの確認を挙げています。55字以内の答案では「同じデータリンク層上で同じIPv6アドレスを使用するノードがいないことを確認するため」とまとめられます。

設問2(4)(GUA)

処理(v)では、RAで受け取ったサブネットプレフィックスと、生成したインタフェース識別子を組み合わせます。LLA「fe80::8:800:200c:417a」の下位64ビットは「8:800:200c:417a」です。これを上位64ビットの「2001:db8:aabb:1」と組み合わせるので、公式解答例では「2001:db8:aabb:1:8:800:200c:417a」です。LLAのプレフィックス部分は引き継ぎません。

設問2(4)(プレフィックス長)

RAメッセージに含まれるサブネットプレフィックスが「2001:db8:aabb:1::/64」と指定されています。GUAの生成では、この上位64ビットにインタフェース識別子を組み合わせるため、プレフィックス長は変わりません。公式解答例では「64」です。アドレス全体の長さである128ビットと区別します。

設問2(5)

本文の「ノード3を経由して外部のノードと通信を行うため」に着目します。ノード1は、RAを送信したルータであるノード3のLLAを、外部通信の送り先として設定します。公式解答例では「デフォルトルータ」又は「デフォルトゲートウェイ」です。SLAACでは、自身のアドレスだけでなく、外部通信に使うルータも設定されます。

設問2(6)

設問は、ランダムな識別子のプライバシー上の利点ではなく、PC管理で考慮が必要になる理由を問います。識別子がランダムに生成されると、固定の識別子を手掛かりにアドレスとPCを対応付けにくくなります。公式解答例では、20字以内で「PCを特定しづらくなるから」です。採点講評でも、この設問の正答率が低かったとされ、識別子のランダム化による利点と新たな管理上の課題を理解することが求められています。

設問3(1)

本文では、EDNSで調整したUDPの最大メッセージサイズを超える場合、又はEDNS非対応の相手と512バイトを超えるDNSメッセージを扱う場合を挙げています。このときの送受信方法は、公式解答例では「TCP」です。EDNSを利用できれば512バイトを超えてもUDPで送受信できるので、「512バイトを超えたら常にTCP」と覚えないことが重要です。

設問3(2)(IPv6アドレス)

図5のANSWER SECTIONで、まず「saas.example.com.」のCNAMEが「dual-saas.example.net.」を指していることを確認します。その名前に対応するAAAAレコードは二つあるので、両方の値を答えます。公式解答例では「2001:db8:xxxx::10、2001:db8:xxxx::20」です。ADDITIONAL SECTIONのAレコードはDNSサーバのIPv4アドレスであり、SaaSへアクセスするためのIPv6アドレスとは区別します。

設問3(2)(FQDN)

権威DNSサーバの名前は、図5のAUTHORITY SECTIONにあるNSレコードから読み取ります。「example.net.」について二つのNSレコードが示されているため、公式解答例では「ns1.example.net.、ns2.example.net.」です。「dual-saas.example.net.」はSaaSの別名が指す名前であり、権威DNSサーバの名前ではありません。図中の字句に合わせ、末尾のドットも含めて両方を答えます。

設問3(3)

Q社はデュアルスタックを採用し、PCはAAAAレコードとAレコードから両方のアドレスを取得します。IPv6が不通でも、OSやWebブラウザによってはIPv4へフォールバックし、同じWebページを利用できるため、従業員には障害が見えにくくなります。公式解答例では「IPv4にフォールバックしてSaaSの同じWebページにアクセスするから」で、45字以内です。採点講評でも、この設問の正答率が低かったとされ、IPv6の障害を検知する監視方法の必要性が指摘されています。

設問4(1)

図6のa~dは、ルータAとルータBの間、及びルータBとFWの間のインタフェースです。これらにはLLAだけを割り当て、インターネットからアクセスするためのGUAを持たせていません。公式解答例では、インターネットからルータA、ルータB及びFWにアクセスできないようにする目的を挙げています。50字以内では「インターネットからルータA、ルータB及びFWにアクセスできないようにするため」とまとめられます。

設問4(2)

本文では、OSPFv3の経路制御にはLLAを利用できるものの、FWと各拠点のL3SWの間にはGUAを静的に割り当てています。静的なアドレスなら、経路調査で表示されたアドレスを機器と対応付けやすくなります。公式解答例では「traceroute6を利用して調べるときに各機器を識別しやすくする」で、45字以内に収まります。採点講評でも、tracerouteが障害の切分けや復旧に役立つことを挙げ、関連コマンドを使いこなす力を求めています。

設問4(3)

図3の処理(iii)と(iv)を、PCと各拠点のL3SWに対応付けます。PCがRSメッセージを送信すると、L3SWはサブネットプレフィックスなどの情報を含むRAメッセージで応答し、PCの設定を可能にします。公式解答例では「PCが送信したRSメッセージに対してRAメッセージを応答する」です。40字以内の答案には、RSを受けることとRAで応答することの両方を入れます。

設問4(4)(ア)

項番1は、ルータBからインターネットへ向かうデフォルトルートです。本文に「ルータAのLLAをネクストホップ」とあるので、図6のルータAのインタフェースaを確認します。そのLLAは「fe80::1/64」であり、公式解答例ではネクストホップのアドレスとして「fe80::1」です。ルータB自身のアドレスを記入しないようにします。

設問4(4)(イ)

項番1の出口は、ルータBからネクストホップのルータAへ向かうインタフェースです。図6では、ルータBの上側がb、ルータA側がaとなっています。出口インタフェース名は経路情報を持つルータB側の名前なので、公式解答例では「b」です。

設問4(4)(ウ)

項番3の宛先「2001:db8:yyyy:3::/64」は、図6の拠点1のPCが接続されるネットワークです。ルータBからは、まず隣接するFWへ転送します。ルータBに接続するFWのインタフェースdのLLAは「fe80::2/64」なので、公式解答例では「fe80::2」です。最終的に到達するL3SW1ではなく、直近の隣接機器をネクストホップにします。

設問4(4)(エ)

項番3では、ルータBからFWへパケットを送り出します。図6でルータBのFW側インタフェースを確認するとcです。公式解答例では「c」です。ネクストホップはFW側のdのアドレス、出口はルータB自身のcと、両端を区別して読み取ります。

設問4(4)(オ)

項番4は、FWがOSPFv3で学習するデフォルトルートです。本文ではルータBがデフォルトルートを配布するとされているため、FWのネクストホップはルータBになります。図6のルータBのインタフェースcのLLAは「fe80::1/64」であり、公式解答例では「fe80::1」です。

設問4(4)(カ)

項番4のデフォルトルートでは、FWからルータBへ向かって転送します。図6でFWのルータB側インタフェースはdなので、公式解答例では「d」です。ルータB側のcではなく、経路情報を持つFW側の出口名を答えます。

設問4(4)(キ)

項番5は、FWから拠点1のPC用ネットワーク「2001:db8:yyyy:3::/64」へ向かう経路です。FWは広域イーサ網を通じて、隣接するL3SW1へ転送します。図6のL3SW1のインタフェースgのLLAは「fe80::2/64」なので、公式解答例では「fe80::2」です。PC側のインタフェースhのアドレスとは区別します。

設問4(4)(ク)

項番5では、FWから広域イーサ網へパケットを送り出します。図6でFWの広域イーサ網側インタフェースはfなので、公式解答例では「f」です。ネクストホップのアドレスはL3SW1側のgから、出口名はFW側のfから読み取ります。

設問4(4)(ケ)

項番6は、L3SW1から外部へ向かうデフォルトルートで、出口はgと示されています。この出口で隣接する機器はFWであり、FWのインタフェースfのLLAは「fe80::1/64」です。公式解答例では「fe80::1」です。同じLLAが別のリンクにも登場するため、接続関係と出口インタフェースを組み合わせて判断します。

設問4(5)

ルータAにはQ社の/48宛てをルータBへ送る静的経路があります。ルータBに項番2の廃棄経路がないと、未使用GUA宛てのパケットに対応する具体的な経路がなく、デフォルトルートでルータAへ送り返します。この往復でホップリミットが減少します。公式解答例では、35字以内で「ホップリミットが0になるまで相互に転送し合い、廃棄する」です。相互転送と最終的な廃棄の両方を押さえます。

設問4(6)

項番1の宛先は「::/0」、項番2は「2001:db8:yyyy::/48」です。両方に一致する宛先では、より長いプレフィックスに一致する経路が選択されるため、/48の項番2が優先されます。公式解答例では、25字以内で「ロンゲストマッチによって選択されるから」です。項番2が廃棄経路であること自体が選択理由なのではなく、宛先との最長一致が理由です。

設問4(7)

〔社内ネットワークの概要〕に、ルータBにはデフォルトルートとNAPTを設定していると明記されています。後半の会話は、このIPv4での設定と、NAPTを利用しないIPv6での設計を比較しています。公式解答例では「NAPT」です。IPv6では、NAPTによる通信の制約を前提にせず、FWのアクセス制御を設計する必要があるという文脈を読み取ります。

設問4(8)

本文では、中継機器がMTUを超えるパケットを転送できないとき、送信元にICMPv6のPacket Too Bigを送ると説明しています。PMTUDで検出する対象は、通信経路全体で通過できるサイズを制約する最小のMTUです。公式解答例では、20字以内で「通信経路における最小のMTU」です。送信元のインタフェースのMTUだけを答えないようにします。

学習のポイント

アドレス生成から外部通信までの流れを整理し、LLAと出口インタフェースの組合せ、最長一致による経路選択、IPv6固有の監視と通信制御を重点的に学習しましょう。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和7年度春期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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