NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ

令和元年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 ネットワークのセキュリティ対策に関する次の記述を読んで、設問1~6に答えよ。 W社は、IT製品の卸売会社であり、国内外のベンダ50社の製品を、500社の販売代理店に卸している。W社では、販売代理店向けに販売代理店支援システム(以下、代理店システムという)を、自社営業員向けに営業支援システム(以下、営業システムという)を稼働させている。W社の本社LANの構成を図1に示す。 図1 W社の本社LANの構成 本社LANの各システム又は各機器の構成、機能及び動作は、次のとおりである。 ・代理店システムは、DMZのLB、代理店サーバ及び内部LANのDBサーバから構成されている。代理店サーバは2台あり、LBで負荷分散されている。 ・営業システムは、DMZのRPサーバと内部LANの営業サーバから構成されている。外出先からの営業システムの利用は、RPサーバ経由で行われる。 ・内部LANの各部署のNPCから、インターネット上のWebサイトへのアクセス、及びDMZと内部LANのサーバから、マルウェア対策ソフトの定義ファイル更新のためのベンダのWebサイトへのアクセスは、FPサーバ経由で行われる。 ・外部DNSサーバは、DMZのゾーン情報を管理するだけでなく、再帰的な名前解決を行うフルリゾルバとしても機能している。外部DNSサーバはマスタDNSサーバであり、インターネット上のR社DNSサーバをスレーブDNSサーバとして利用している。 ・メール中継サーバは、社外のメールサーバ及び社内メールサーバとの間で、電子メール(以下、メールという)の転送を行う。 ・内部DNSサーバは、内部LANのゾーン情報を管理し、当該ゾーンに存在しないホストの名前解決要求は、外部DNSサーバに転送する。 ・社内メールサーバは、社員のメールボックスを保持し、内部LANのNPCとの間でメールの送受信を行う。 昨今、サイバー攻撃が増加しており、情報システムは、情報漏えい、Webサービスの妨害、サーバの不正利用などの脅威にさらされている。そこで、W社では、本社LANのセキュリティ対策を見直すことにした。情報システム部のM課長は、ネットワーク運用担当のN主任に、本社LANのセキュリティ対策の見直しを指示した。N主任は、部下のJさんへの指導を兼ねて、Jさんと一緒に本社LANのセキュリティ対策を見直すことにした。 〔本社LANのセキュリティ対策の状況〕 まず、N主任はJさんに、本社LANのセキュリティ対策の状況について確認した。その時の、2人の会話を次に示す。 N主任:本社LANのセキュリティ対策の状況を説明してくれないか。 Jさん:はい。本社LANは、FWでインターネットからのIPパケットをフィルタリングしています。また、FPサーバでは、フィルタリングソフトウェアを稼働させて、URLフィルタリングを行っています。DMZと内部LANのサーバではマルウェア対策ソフトが稼働しており、インターネット上のベンダのWebサイトにアクセスし、マルウェア定義ファイルが更新されているときは、自動でダウンロードするように設定されています。サーバOSやミドルウェアへのセキュリティパッチの適用は、サーバ運用担当が実施しているとのことです。 N主任:分かった。それでは、FWのフィルタリングの詳細を調べてくれないか。 Jさんは、FWの設定内容を調査し、通信を許可するFWのルールを表1にまとめた。 表1 通信を許可するFWのルール 〔FWのフィルタリング内容の調査結果〕 Jさんは、表1をN主任に説明した。その時の2人の会話を次に示す。 Jさん:調べたところ、FWで許可している通信は、表1のとおりになっていました。 N主任:現在の設定で、【a】スキャンとポートスキャンには対応できているようだ。DoS攻撃は、送信元IPアドレスを偽装して行われることがある。我が社が利用しているISPでは、①利用者のネットワークとの接続ルータで、uRPF(Unicast Reverse Path Forwarding)と呼ばれるフィルタリングを行っているので、偽装されたパケットが当社に到達することは少なくなっていると考えられる。しかし、DoS攻撃がなくなっているわけではない。DoS攻撃への対策状況について、Jさんの考えを聞かせてくれないか。 Jさん:②DMZの全ての公開サーバを対象とするブロードキャストアドレス宛てのスマーフ(smurf)攻撃のパケットは、FWでブロックされます。クローズのポート宛てにUDPパケットを送ると、RFC 792で規定された【b】パケットが送信元IPアドレス宛てに返送されるのを悪用し、サーバのリソースを消費させるUDPフラッド(UDP flood)攻撃も、FWの設定で防げていると思います。 N主任:そのとおりだ。しかし、SYNフラッド(SYN flood)攻撃については対策が必要だ。どのような対応が必要なのかを検討してくれないか。 Jさん:分かりました。SYNフラッド攻撃について調べてみます。 〔SYNフラッド攻撃手法と対策技術〕 Jさんが、SYNフラッド攻撃手法と対策技術について調査した内容を次に示す。 SYNフラッド攻撃は、SYNパケットを受信したサーバが、TCPコネクション確立のために数十バイトのメモリを確保しなければならない仕様を悪用し、攻撃者が大量のSYNパケットを標的のサーバに送りつけてサーバをダウンさせる攻撃である。 例えば、インターネットから図1中のメール中継サーバ宛てに送信される、TCP/25のSYNパケットは、表1中の項番【c】のルールによってメール中継サーバに転送される。SYNパケットを受信したメール中継サーバは、コネクション確立のためにメモリを確保し、ACKパケットの返送がなくても、確保したメモリを一定時間解放しない。また、ACKパケットが返送されて不正なコネクションが確立された場合は、更に長い時間メモリが解放されない。そのため、メール中継サーバが大量のSYNパケットを受信すると、大量のメモリを消費して正常に稼働できなくなるおそれがある。 SYNフラッド攻撃の防御技術には、ディレイドバインディングとSYNクッキーがある。ディレイドバインディング技術を図2に示す。 図2 ディレイドバインディング技術 図2の方式によって、サーバでの不要なメモリ確保を抑止できる。しかし、図2の方式には、装置のメモリ容量によって同時接続数が制限される弱点がある。一方、SYNクッキーでは、この弱点が改善されている。SYNクッキー技術を図3に示す。 図3 SYNクッキー技術 図3の方式は、パケット中の該当するコネクションに関連する情報などに、特別な演算によって計算した変換値をクッキーとして、TCPヘッダ中のシーケンス番号に埋め込んで、通信の状態を監視するものである。 Jさんは、二つの防御技術を比較した結果、③SYNクッキーの方式では同時接続数の制限が緩和されることが分かったので、SYNクッキー技術をもつIPS(Intrusion Prevention System)の導入をN主任に提案した。その時の2人の会話を次に示す。 Jさん:SYNフラッド攻撃への対策が必要です。SYNクッキー技術をもつIPSの導入を提案します。 N主任:分かった。IPSを導入すれば、SYNフラッド攻撃だけでなく様々な不正な通信も遮断できるので、導入を検討しよう。そのほかに、DMZのサーバが送信元偽装の目的で踏み台にされる可能性について、考えを聞かせてくれないか。 Jさん:④FPサーバについては、FWの設定で防止できています。⑤メール中継サーバについては、サーバ自体の転送設定で防止しています。外部DNSサーバについても大丈夫だと思います。 N主任:外部DNSサーバは、DNSリフレクタ攻撃の踏み台にされる可能性がありそうだ。安全面を考慮すれば、構成変更が必要になるかもしれない。対応策を考えてくれないか。 Jさんは、外部DNSサーバの構成上の問題点について考えた。外部DNSサーバは、ゾーン情報管理サーバ(以下、コンテンツサーバという)の機能と、フルリゾルバの機能をもつので、表1中の項番1と項番6の通信が許可されている。フルリゾルバによるインターネット上のホストの名前解決は、【d】と【e】からの要求に対応できればよいが、コンテンツサーバは、インターネット上の不特定のホストからの名前解決要求に応答する必要がある。そこで、外部DNSサーバを、コンテンツサーバとして機能するDNSサーバ1と、フルリゾルバサーバとして機能するDNSサーバ2に分離すれば、踏み台にされる可能性は低くなると考えた。その場合、表1中の項番6のルールの変更が必要になる。DNSサーバ1にα.β.γ.1、DNSサーバ2にα.β.γ.6を割り当てたときの、表1の変更内容を表2に示す。 表2 表1の変更内容 Jさんは、検討結果をN主任に説明した。Jさんの説明を受けたN主任は、外部DNSサーバの構成変更後の、DNSサーバへの攻撃についての調査を指示した。 〔DNSサーバへの攻撃と対策〕 Jさんは、DNSサーバへの攻撃の中でリスクの大きい、DNSキャッシュポイズニング攻撃の手法について調査した。Jさんが理解した内容を次に示す。 DNSキャッシュポイズニング攻撃は、次の手順で行われる。 (i)攻撃者は、偽の情報を送り込みたいドメイン名について、標的のフルリゾルバサーバに問い合わせる。 (ii)フルリゾルバサーバは、指定されたドメインのゾーン情報を管理するコンテンツサーバに問い合わせる。 (iii)⑥攻撃者は、コンテンツサーバから正しい応答が返ってくる前に、大量の偽の応答パケットを標的のフルリゾルバサーバ宛てに送信する。 (iv)フルリゾルバサーバは、受信した偽の応答パケットをチェックし、偽の応答パケットが正当なものであると判断してしまった場合、キャッシュの内容を偽の応答パケットを基に書き換える。 (ii)の問合せパケットと、(iii)の応答パケットの情報を表3に示す。 表3 (ii)の問合せパケットと、(iii)の応答パケットの情報(抜粋) 表3に示すように、(ii)の問合せパケットの送信元ポート番号には特定の範囲の値が使用されるケースが多いので、攻撃者は、(iii)の偽の応答パケットを正当なパケットに偽装しやすくなるという問題がある。調査の結果、この問題の対応策には、送信元ポート番号のランダム化があることが分かった。 Jさんは、⑦外部DNSサーバの構成変更によって、インターネットからのDNSサーバ2へのキャッシュポイズニング攻撃は防げると判断した。さらに、万が一の場合に備え、DNSサーバ2には、送信元ポート番号のランダム化に対応した製品の導入を提案することにした。 Jさんは、調査結果と対応策をN主任に説明し、DNSサーバ2には送信元ポート番号のランダム化対応の製品の導入が了承された。 〔マルウェアの内部LANへの侵入時の対策〕 次に、2人は、マルウェアの内部LANへの侵入時の対策について検討した。 ネットワークのセキュリティ対策を行っても、ソーシャルエンジニアリングなどによってW社内の情報が漏えいすると、内部LANのNPCは、マルウェアに侵入されるおそれがある。NPCに侵入したマルウェアは、攻撃者が管理・運営するC&C(Command & Control)サーバとの間の通信路を設定した後、C&Cサーバ経由で攻撃者から伝達された命令を実行して、自身の拡散やC&Cサーバへの秘密情報の送信などを行うことがある。このとき、C&CサーバのIPアドレスが特定できれば、FPサーバでC&Cサーバとの通信は遮断できる。しかし、Fast Fluxと呼ばれる手法を用いて、IPアドレスの特定を困難にすることによって、C&Cサーバなどを隠蔽する事例が報告されている。 Fast Fluxは、特定のドメインに対するDNSレコードを短時間に変化させることによって、サーバの追跡を困難にさせる手法である。Fast Flux手法が用いられたときのマルウェアによるC&Cサーバとの通信例を、図4に示す。 図4 Fast Flux手法が用いられたときのマルウェアによるC&Cサーバとの通信例(抜粋) 攻撃者は、example.comドメインを取得してコンテンツサーバ(ns.example.com)を設置する。図4中のns.example.comには、fast-fluxのFQDNに対するAレコードとして大量のボットのIPアドレス、及びDNSラウンドロビンが設定される。 図4には、W社の内部LANのNPCに侵入したマルウェアが、fast-flux.example.comにアクセスした後、ボットに備わる機能を利用して、C&Cサーバとの間で行われる通信を示している。⑧図4中のexample.comドメインのコンテンツサーバの設定の場合、マルウェアが、一定間隔でfast-flux.example.comへアクセスを行えば、毎回、異なるIPアドレスで、ボットを経由してC&Cサーバと通信することになる。 このような方法を用いることによって、C&CサーバのIPアドレスを隠蔽できる。しかし、マルウェアが同一のFQDNのホストにアクセスすることになるので、fast-flux.example.comへのアクセスによってC&Cサーバとの通信が行われることが判明すれば、FPサーバのURLフィルタリングでC&Cサーバとの通信は遮断できる。攻撃者は、これを避けるためにDomain Fluxと呼ばれる手法を用いることがある。 Domain Fluxは、ドメインワイルドカードを用いて、あらゆるホスト名に対して、同一のIPアドレスを応答する手法である。Fast FluxとDomain Fluxを組み合わせることによって、C&CサーバのFQDNとIPアドレスの両方を隠蔽できる。図4に示した構成のFast FluxとDomain Fluxを組み合わせたときの、ns.example.comに設定されるゾーンレコードの例を図5に示す。 図5 ns.example.comに設定されるゾーンレコードの例(抜粋) このような攻撃が行われた場合を想定し、2人は、現行のFPサーバをHTTPS通信の復号機能をもつ機種に交換し、プロキシ認証を併せて行うことにした。交換するFPサーバでのプロキシ認証のセキュリティを高めるために、社内のNPCのWebブラウザで、オートコンプリート機能を無効にし、ID、パスワードのキャッシュを残さないようにすることにした。また、内部LANに侵入したマルウェアの活動を早期に検知するために、⑨FPサーバとFWのログを定期的に検査することにした。 以上の検討を基に、N主任とJさんは、(1)IPSの導入、(2)外部DNSサーバの構成変更と新機種の導入、(3)FPサーバの交換、(4)NPCの設定変更、及び(5)ログの定期的な検査から成る5項目の実施案をまとめ、M課長に提出した。 2人がまとめた実施案は、経営会議で承認され、実施に移されることになった。 設問1 本文中の【a】~【e】に入れる適切な字句又は数値を答えよ。 設問2 表1中の【ア】に入れる適切なIPアドレスを答えよ。また、項番2のルールによって行われる通信の名称を答えよ。 設問3 〔FWのフィルタリング内容の調査結果〕について、(1)、(2)に答えよ。 (1) 本文中の下線①について、フィルタリングの内容を、70字以内で述べよ。 (2) 本文中の下線②のIPアドレスを答えよ。 設問4 〔SYNフラッド攻撃手法と対策技術〕について、(1)~(5)に答えよ。 (1) 図3中の【イ】~【エ】に入れる適切な字句又は数値を答えよ。 (2) 本文中の下線③の、制限が緩和されるのは、ディレイドバインディング方式よりメモリ消費量が少なくて済むからである。その理由を、35字以内で述べよ。 (3) 本文中の下線④について、防止できていると判断した理由を、40字以内で述べよ。 (4) 本文中の下線⑤について、防止するためにメール中継サーバに設定されている処理方法を、50字以内で述べよ。 (5) 表2中の【オ】、【カ】に入れる適切な字句を答えよ。 設問5 〔DNSサーバへの攻撃と対策〕について、(1)~(3)に答えよ。 (1) 表3中の問合せパケットに対して、フルリゾルバサーバが正当な応答パケットと判断するパケットの内容について、表3中の【キ】~【サ】に入れる適切な字句又は数値を答えよ。 (2) 本文中の下線⑥では、大量の偽の応答パケットが送信される。当該パケット中で、パケットごとに異なる内容が設定される表3中の項目名を、全て答えよ。 (3) 本文中の下線⑦について、防げると判断した根拠を、60字以内で述べよ。 設問6 〔マルウェアの内部LANへの侵入時の対策〕について、(1)~(5)に答えよ。 (1) 図4中で、fast-flux.example.comの名前解決要求と応答の通信をa~nの中から全て選び、通信が行われる順番に並べよ。 (2) 本文中の下線⑧について、DNSサーバ2がキャッシュしたDNSレコードが消去されるまでの時間(分)を答えよ。 (3) 図5のようにゾーンレコードが設定された場合、C&Cサーバを効果的に隠蔽するための、マルウェアによるC&Cサーバへのアクセス方法について、25字以内で述べよ。 (4) 本文中の下線⑨について、FPサーバのログに、マルウェアの活動が疑われる異常な通信が記録される場合がある。その通信の内容を、35字以内で述べよ。 (5) 内部LANのNPCに侵入したマルウェアが、FPサーバを経由せずにC&CサーバのFQDN宛てにアクセスを試みた場合は、マルウェアによるC&Cサーバとの通信は失敗する。通信が失敗する理由を、40字以内で述べよ。
図1 W社の本社LANの構成。インターネット、FW、DMZ、内部LAN、DNS・メール・プロキシ・業務サーバなどの接続構成とIPアドレス一覧を示す図。
図1 W社の本社LANの構成。インターネット、FW、DMZ、内部LAN、DNS・メール・プロキシ・業務サーバなどの接続構成とIPアドレス一覧を示す図。
表1 通信を許可するFWのルール。インターネット、DMZ、内部LAN間で許可される通信経路、送信元・宛先IPアドレス、プロトコルとポート番号の一覧表。
表1 通信を許可するFWのルール。インターネット、DMZ、内部LAN間で許可される通信経路、送信元・宛先IPアドレス、プロトコルとポート番号の一覧表。
図2 ディレイドバインディング技術。攻撃者または送信者と装置、装置とサーバ間でSYN、SYN/ACK、ACKを中継し、接続を遅延確立する手順図。
図2 ディレイドバインディング技術。攻撃者または送信者と装置、装置とサーバ間でSYN、SYN/ACK、ACKを中継し、接続を遅延確立する手順図。
図3 SYNクッキー技術。SYN受信時にメモリを確保せず、計算値をTCPシーケンス番号に設定し、ACK確認後に接続を確立する手順図。
図3 SYNクッキー技術。SYN受信時にメモリを確保せず、計算値をTCPシーケンス番号に設定し、ACK確認後に接続を確立する手順図。
表2 表1の変更内容。DNSサーバ分離後にFWルール6の送信元IPアドレスと宛先IPアドレスを変更する内容を示す表。
表2 表1の変更内容。DNSサーバ分離後にFWルール6の送信元IPアドレスと宛先IPアドレスを変更する内容を示す表。
表3 (ii)の問合せパケットと、(iii)の応答パケットの情報(抜粋)。DNS問い合わせと応答について、IPヘッダ、UDPヘッダ、DNSヘッダの各項目と値を対比した表。
表3 (ii)の問合せパケットと、(iii)の応答パケットの情報(抜粋)。DNS問い合わせと応答について、IPヘッダ、UDPヘッダ、DNSヘッダの各項目と値を対比した表。
図4 Fast Flux手法が用いられたときのマルウェアによるC&Cサーバとの通信例(抜粋)。感染NPC、FPサーバ、DNSサーバ、ボットネット、コンテンツサーバ、C&Cサーバ間の名前解決と通信経路を示す図。
図4 Fast Flux手法が用いられたときのマルウェアによるC&Cサーバとの通信例(抜粋)。感染NPC、FPサーバ、DNSサーバ、ボットネット、コンテンツサーバ、C&Cサーバ間の名前解決と通信経路を示す図。
図5 ns.example.comに設定されるゾーンレコードの例(抜粋)。example.comのNSレコードと、ワイルドカードによる複数のボットIPアドレスのAレコード例を示す図。
図5 ns.example.comに設定されるゾーンレコードの例(抜粋)。example.comのNSレコードと、ワイルドカードによる複数のボットIPアドレスのAレコード例を示す図。
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判断の前提と適用範囲を確かめる

この分野の問題では、知っている用語から結論を急がず、与えられた条件がどの範囲に当てはまるかに注目しましょう。明示された前提と自分が補った前提を分けて整理すると、検討の出発点をそろえられます。

この問題で問われていること

検討する内容について、どこまでが与えられた条件の範囲なのかを確かめてください。一つの場面での理解を別の場面にもそのまま当てはめていないか、判断に使う前提の範囲を意識して考えましょう。

視点

前提の適用範囲とは、ある条件を判断の根拠として使える範囲のことです。条件が明示されている部分と、経験や記憶から補っている部分を分けて捉えましょう。

確認ポイント

  • 与えられた条件の適用範囲を確認したか
  • 明示されていない前提を付け足していないか
  • 別の場面の前提をそのまま持ち込んでいないか
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解説

本問は、W社のネットワーク構成とFWルールを基に、DoS攻撃、サーバの不正利用、DNSキャッシュポイズニングへの対策を考える問題です。さらに、マルウェア侵入後の名前解決とプロキシ経由の通信を追い、認証やログ監視による対策を説明します。

問題の全体像

W社は、DMZに公開サーバやFPサーバを置き、内部LANに業務サーバとNPCを配置しています。FW、URLフィルタリング、マルウェア対策ソフトを導入済みですが、SYNフラッド攻撃やDNSの不正利用、侵入後のマルウェア活動への対策を見直します。出題趣旨では、攻撃手法とログ監視を理解し、安全なネットワークの設計・運用に結び付ける能力を問うとしています。各設問では、技術の知識を図表の通信経路と許可条件に当てはめることが重要です。

設問1(a)

空欄の直後が「スキャンとポートスキャン」なので、ポートを調べる前にホストの存在を探索する操作に着目します。公式解答例では「ホスト」又は「アドレス」です。採点講評でも、ポートスキャンの前に実施されることが多い、ホストの存在を探索する基本的な攻撃として説明されています。

設問1(b)

クローズされたUDPポートにパケットを送ったとき、送信元へ返される通知を問うています。本文の「RFC 792」と到達不能を通知する動作に着目すると、公式解答例の「ICMP」又は「ICMP Unreachable」になります。UDPの応答ではなく、ICMPによる通知である点を押さえます。

設問1(c)

図1でメール中継サーバのIPアドレスはα.β.γ.2です。表1から、インターネットを送信元とし、このアドレス宛てのTCP/25を許可する行を探すと項番3です。したがって、公式解答例では「3」です。許可されたサービスのポートであれば、SYNパケットもサーバに到達します。

設問1(d)

インターネット上のWebサイトへのアクセスはFPサーバ経由で行われるため、外部のWebサイトの名前解決を要求する機器としてFPサーバに着目します。公式解答例ではdは「FPサーバ」、eは「メール中継サーバ」で、両者は順不同です。内部の利用者に代わって外部へ接続する機器を考えることがポイントです。

設問1(e)

メール中継サーバは社外のメールサーバへメールを転送するので、配送先のメールサーバなどを名前解決する必要があります。公式解答例ではeは「メール中継サーバ」です。dの「FPサーバ」と順不同であり、この二つがインターネット上のホストに関する再帰的な名前解決を必要とする機器です。

設問2(ア)

本文では、W社の外部DNSサーバがマスタで、R社DNSサーバがスレーブです。表1の項番2は、インターネットからマスタのα.β.γ.1宛てにTCP/53を許可しています。この通信を必要とするスレーブだけを送信元に指定するため、図1に示されたR社DNSサーバの「x.y.z.1」が公式解答例です。

設問2(通信名称)

マスタDNSサーバが管理するゾーン情報を、スレーブDNSサーバへ同期する通信に着目します。公式解答例では「ゾーン転送」です。表1の項番2はR社DNSサーバからのTCP/53を許可しており、不特定のホストからの通常の名前解決要求を許可する項番1と役割が異なります。

設問3(1)

送信元IPアドレスの偽装対策として、受信パケットの送信元をルーティングテーブルで確認する処理を説明します。公式解答例では、送信元IPアドレスがルーティングテーブルに存在しない場合にパケットを廃棄するとしています。70字以内の答案では「受信パケットの送信元IPアドレスへの経路がルーティングテーブルにない場合、パケットを廃棄する。」という粒度で、確認対象・判定条件・廃棄処理を押さえます。

設問3(2)

図1の注記に、DMZの公開サーバ用ネットワークがα.β.γ.0/28とあります。/28ではホスト部が4ビットなので、アドレス範囲は末尾0~15です。ホスト部を全て1にした末尾15がブロードキャストアドレスとなり、公式解答例は「α.β.γ.15」です。

設問4(1)(イ)

図3の手順②では、SYNパケットの情報などから計算したクッキーをTCPヘッダに設定して、SYN/ACKを返します。本文にもクッキーを「シーケンス番号に埋め込む」とあるため、公式解答例は「シーケンス」です。装置が状態をメモリに保持する代わりに、返送パケットの番号へ情報を組み込みます。

設問4(1)(ウ)

図3の手順③は、送信者から返されたACKのどの番号を検査するかを問うています。送信者は、受け取ったSYN/ACKのシーケンス番号に対応する確認応答番号を返します。したがって、公式解答例は「確認応答」です。ACKフラグと、TCPヘッダの確認応答番号を区別して理解します。

設問4(1)(エ)

TCPではSYNがシーケンス番号を一つ消費するため、SYN/ACKへの確認応答番号は、そのシーケンス番号に1を加えた値になります。図3ではクッキーをシーケンス番号に設定しているので、ACKの確認応答番号が再計算したクッキーに1を加えた値と一致するか確認します。公式解答例は「1」です。

設問4(2)

図2ではSYNを受信した段階で装置がメモリを確保しますが、図3ではACKを検証してから確保します。この確保時点の違いが、SYNクッキーのメモリ消費を抑える理由です。公式解答例に沿って、35字以内では「コネクション確立の準備段階でメモリ確保が不要だから。」とまとめられます。

設問4(3)

表1のインターネット→DMZの許可ルールには、FPサーバのα.β.γ.4宛ての接続がありません。項番8はFPサーバから外部への接続を許可するルールであり、外部から新しく接続する許可ではありません。公式解答例に沿い、40字以内では「FPサーバにインターネットからのコネクションを確立できないから。」という要素を示します。

設問4(4)

メール中継サーバはインターネットからTCP/25で接続できるので、FWだけでは不正中継を防げません。外部から受けたメールの宛先を確認し、W社宛て以外を中継しない設定が必要です。公式解答例に沿い、50字以内では「インターネットから受信した、W社のメールアドレス宛て以外のメールを中継しない。」とまとめます。採点講評でも不正中継の防止策の理解が求められています。

設問4(5)(オ)

表1の項番6は、外部DNSサーバからインターネットへの名前解決用通信を許可するルールです。分離後はフルリゾルバの役割をDNSサーバ2が担当するため、送信元をDNSサーバ2に割り当てたアドレスへ変更します。公式解答例は「α.β.γ.6」です。

設問4(5)(カ)

DNSサーバ2は、名前解決のためにインターネット上の各ドメインのDNSサーバへ問い合わせます。問い合わせ先を一つのIPアドレスに限定できないので、項番6の宛先は分離前と同じ「any」とします。公式解答例でも「any」であり、変更の中心は送信元をDNSサーバ2にすることです。

設問5(1)(キ)

表3の問合せは、フルリゾルバからコンテンツサーバへ送られています。その正当な応答の送信元は、問い合わせ先のコンテンツサーバになります。したがって、公式解答例は「コンテンツサーバのIPアドレス」です。偽の応答も、このアドレスを送信元として装う必要があります。

設問5(1)(ク)

応答は、問い合わせを行った機器へ返されます。表3では問合せの送信元がフルリゾルバなので、応答の宛先はそのフルリゾルバです。公式解答例は「フルリゾルバサーバのIPアドレス」です。問合せと応答でIPアドレスの送信元・宛先が入れ替わる関係を確認します。

設問5(1)(ケ)

表3の問合せはコンテンツサーバのUDP/53宛てに送信されています。そのDNSサービスから返る応答の送信元ポート番号も53です。公式解答例は「53」です。応答では、問合せの宛先ポート番号が送信元ポート番号になります。

設問5(1)(コ)

表3では、フルリゾルバが送信元ポート番号nを使って問い合わせています。応答を元の問い合わせに対応付けるには、そのポートへ返す必要があるので、応答の宛先ポート番号は「n」です。公式解答例も「n」であり、送信元ポート番号のランダム化は、この値の推測を難しくする対策です。

設問5(1)(サ)

DNSヘッダの識別子は、問合せと応答を対応付けるための値です。表3の問合せの識別子がmなので、正当な応答にも同じmが必要です。公式解答例は「m」です。IPアドレスやポート番号に加え、DNSの識別子の一致も確認することを押さえます。

設問5(2)

攻撃者は、正当な応答として受け入れられる組合せを当てるため、大量の偽応答を送ります。表3では、問い合わせ側が選ぶ送信元ポート番号nに対応する応答の宛先ポート番号と、識別子mが推測対象です。公式解答例は「宛先ポート番号、識別子」です。応答の送信元ポート番号53と取り違えないようにします。

設問5(3)

本文の攻撃手順(i)では、攻撃者が標的のフルリゾルバへ名前解決要求を送ることから攻撃が始まります。分離後、インターネットからの要求を許可する宛先はDNSサーバ1であり、DNSサーバ2への要求はFWで廃棄されます。公式解答例に沿い、60字以内では「攻撃者がDNSサーバ2へ送る、攻撃のための名前解決要求がFWで廃棄されるから。」とまとめます。本文に示された攻撃の開始条件が成立しないことが根拠です。

設問6(1)

外部WebサイトへのアクセスはFPサーバ経由で行われるため、fast-flux.example.comを名前解決するのはFPサーバです。図4のeはFPサーバ→DNSサーバ1又は2への名前解決要求、gはそのDNSサーバ→ns.example.comへの問合せ、hはns.example.com→そのDNSサーバへの応答、fはそのDNSサーバ→FPサーバへの応答です。したがって、公式解答例は「e、g、h、f」です。構成変更後はフルリゾルバのDNSサーバ2がこの名前解決を担います。a~dはNPCと内部DNSサーバを経由する別の経路なので、今回の順序には含めません。

設問6(2)

図4のDNS応答では、fast-flux.example.comのAレコードのTTLが180と示されています。TTLの単位は秒なので、180÷60=3分です。公式解答例は「3」です。DNSサーバ2がキャッシュする対象のAレコードを確認し、別のレコードのTTLと混同しないことが重要です。

設問6(3)

図5では、ホスト名「*」のAレコードに多数のボットのIPアドレスが設定されています。ワイルドカードによってホスト名を変えても名前解決できるため、固定のFQDNによる通信の特定を難しくできます。公式解答例に沿い、25字以内では「アクセス先のホスト名をランダムに変更する。」とまとめます。Fast FluxのIPアドレスの変化に、ホスト名の変化を組み合わせる点が要点です。

設問6(4)

本文では、FPサーバにプロキシ認証を導入し、NPCのブラウザにID・パスワードのキャッシュを残さない設定にしています。マルウェアが認証を通過できずに接続を繰り返すと、FPサーバのログに認証失敗が続けて記録されます。公式解答例に沿い、35字以内では「FPサーバでの認証エラーが短時間に繰り返されている。」と示します。認証エラーという内容と、短時間の反復という特徴を押さえます。

設問6(5)

FPサーバを経由しない場合、NPCは接続先FQDNのIPアドレスを自ら取得する必要があります。内部DNSサーバは外部の名前解決要求を転送しますが、表1の項番13の宛先α.β.γ.1は、分離後はコンテンツサーバのDNSサーバ1です。この経路ではC&Cサーバの名前を再帰的に解決できません。公式解答例に沿い、40字以内では「C&CサーバのIPアドレスが取得できず、宛先を設定できないから。」とまとめます。

学習のポイント

通信端点とFWルールの対応、TCPの確認応答、DNSの権威応答と再帰的な名前解決の違い、プロキシ認証のログを重点的に学習しましょう。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和元年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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