NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ

令和元年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問1

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問1 クラウドサービスへの移行に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 D社は,本社及び複数の支店をもつ中堅の運送事業者である。ファイアウォール,Webサーバ,プロキシサーバ,IP-PBX,PBXなどから構成されているD社システムを使って,社内外の通信と運送管理業務を行っている。 D社の情報システム部は,D社システムの老朽化に伴い,システムの更改を検討中である。 〔現行のD社システム〕 現行のD社システムの構成を図1に示す。 図1 現行のD社システムの構成(抜粋) 図1の概要を次に示す。 (1) 全社のPCから,本社のWebサーバ及びインターネットにアクセスする。 (2) 本社のPCからインターネットへのアクセスは,プロキシサーバを経由する。 (3) 支店のPCから本社のWebサーバへのアクセスは,インターネットを経由する。 (4) 本社のDMZ及び全社の内部LANはプライベートIPアドレスで運用されており,FWとBBRではNAT機能及びNAPT機能が動作している。例えば,上記(2)中のインターネットへのアクセスでは,FWのNAPT機能によって,IPパケット中のプロキシサーバのIPアドレスが変換される。同様に,上記(3)中のインターネット経由のWebサーバへのアクセスでは,BBRのNAPT機能によってIPパケット中の[ア]のIPアドレスが変換される。さらに,[イ]のNAT機能によって,IPパケット中のWebサーバのIPアドレスが変換される。 (5) IP-PBXはSIPサーバの機能をもつ。また,IP電話機,及び電話用ソフトウェア(以下,SIP-APという)を搭載したスマートフォン(以下,スマホという)はSIPユーザエージェント(以下,SIP UAという)として機能する。IP電話機及びSIP-APの間では,SIPプロトコルによる接続制御によって通話セッションが確立し,RTPプロトコルによる通話が行われる。 (6) SIP UAがIP-PBXに位置情報登録を依頼する際,SIP UAはSIPメソッド[ウ]を使ってリクエストを行う。その際,[エ]を認証するために“HTTPダイジェスト認証方式”が用いられる。認証情報がないリクエストを受け取ったIP-PBXはチャレンジ値を含むレスポンス“401 Unauthorized”を返す。SIP UAはチャレンジ値から生成した正しいレスポンス値を送り,IP-PBXはレスポンス“[オ]”を返す。 (7) 一部の支店ではスマホを社員に貸与し,次のように利用させている。 ・支店では,BBR,インターネット及びFWを経由して,スマホのWebブラウザから本社のWebサーバへアクセスする。また,①同様にFWを経由して,スマホのSIP-APと本社のIP電話機間で通話を行う。 ・外出先では,携帯電話網,インターネット及びFWを経由して,スマホのWebブラウザから本社のWebサーバへアクセスする。また,スマホのSIP-APから取引先への電話については,本社の公衆電話網の電話番号からの発信となるように,携帯電話網,インターネット,FW及び[カ]を経由させる。 Bさんは情報システム部のネットワーク担当である。情報システム部長から指示があり,D社システム更改のネットワークに関する検討を行っている。 Bさんに伝えられたD社システム更改の方針を次に示す。 (1) 運用負荷の軽減 ・IaaSを利用し,本社のFW,Webサーバ及びプロキシサーバを撤去する。 ・クラウドPBXサービスを利用し,本社のIP-PBX及び支店のPBXを撤去する。 ・無線LAN及びPoE(Power over Ethernet)を利用し,構内配線を減らす。 (2) スマホの活用 ・全社員にスマホを貸与し,全社及び外出先で,電話機及びPCを補完する機器として利用させる。 (3) 新システムへの段階的移行 ・現行システムから新システムへの切替えは,拠点単位に段階的に行う。 〔クラウドサービスの利用〕 D社システムの更改では,X社が提供するIaaSと,Y社が提供するクラウドPBXサービスを利用する。利用するクラウドサービスの概要を表1に,Bさんが考えた新D社システムの構成を図2に,それぞれ示す。 表1 利用するクラウドサービスの概要 図2 Bさんが考えた新D社システムの構成(抜粋) 図2中のネットワークについてBさんが整理した内容を次に示す。 (1) Y-BBRは,二つのPPPoEセッションを提供する。一つはインターネット接続に,もう一つはクラウドPBXサービス利用に用いられる。 (2) Y-VPNは,Y社のクラウドPBXサービスを利用する顧客が共用するIP-VPNである。RFC 3031で標準化されている[キ]の技術が用いられている。 (3) D社の異なる拠点間の通話が他の拠点を経由しないように,Y-VPNの網内は[ク]構成となっている。 (4) 新たに構成する,X-VNW,Y-VNW及び全社の内部LANのIPアドレスは,現行のプライベートIPアドレスとは重ならないアドレス空間を利用する。 (5) 全社の内部LANでは静的ルーティングを用いる。全社のAPはブリッジモードで動作させ,PCとスマホを収容する。収容端末のIPアドレス及びデフォルトゲートウェイのIPアドレスは,APのDHCP機能を使って配布する。本社の収容端末のデフォルトゲートウェイはL3SW,支店の収容端末のデフォルトゲートウェイは[ケ]である。 (6) 電話に関する図2中の通信経路を表2に示す。 表2 電話に関する図2中の通信経路(抜粋) 〔スマホの活用〕 スマホのSIP-APを使うと,電話機と同等の操作ができる。その一例が,通話中の電話を別の電話機に転送する操作(以下,保留転送という)である。Bさんは,保留転送の通信仕様をY社に問い合わせた。Y社からの回答を次に示す。 (1) 開始されているダイアログ内で送信されるINVITEリクエストを,re-INVITEリクエストという。保留転送を行うスマホは,IP-PBXに次の四つのSIPリクエストを送信する。 - re-INVITEリクエストを送信し,相手の電話機を保留状態にする。 - INVITEリクエストを送信し,転送先の電話機を呼び出す。 - re-INVITEリクエストを送信し,転送先の電話機を保留状態にする。 - REFERリクエストを送信し,セッションを切り替える。 (2) 保留転送に関する通信シーケンス例を図3に示す。 図3 保留転送に関する通信シーケンス例 (3) 図3の通信シーケンスは,利用者が[コ]を操作して保留転送を行う例を示している。 (4) re-INVITEリクエストでは,SDP(Session Description Protocol)情報を用いて,通話に関するSIP UAの動作を指定する。Y社が指定するIP電話機以外の製品を使う場合,このような動作について事前に確認する必要がある。例えば,図3中の(11)を受信したSIP-APは,(11)中のSDPの情報に従って保留音を出す。②図3中の本社のIP電話機についても同様の動作が行われる。 Bさんは,導入するIP電話機を調べて問題がないことを確認した。 〔新システムへの段階的移行〕 Bさんは移行計画を検討した。Bさんが作成した拠点別の移行作業を表3及び図4に示す。 表3 Bさんが作成した拠点別の移行作業(抜粋) 図4 Bさんが作成した拠点別の移行作業(抜粋) 次にBさんは,表3を基に切替期間中のネットワーク環境を検討した。Bさんが作成した切替期間中の本社のネットワーク構成を図5に示す。 図5 Bさんが作成した切替期間中の本社のネットワーク構成(抜粋) Bさんは,表3,図4,5を持参し,移行計画について情報システム部長に相談した。その時のBさんと部長の会話を次に示す。 Bさん:図4をご覧ください。10月末までにネットワークの準備を終え,プロキシサーバを並行稼働させておきます。11月の連休を利用してIP-PBXを切り替え,1月の連休を利用してWebサーバを切り替えます。 部長 :図4を見ると,本社では2か月以上掛けてPCを切り替えるようだね。 Bさん:台数が多く利用者への配慮も必要なので,長めの切替期間を設けています。 部長 :なるほど。 Bさん:また,③切替期間中の本社の内部LANでは,現行環境と新環境を分離します。 部長 :その方が安全だ。ところで,本社のIP電話機は一斉に切り替えるのだね。PCと同様に段階的に切り替えた方が良いと思うが。 Bさん:Y社に相談しましたが,Y-DCのIP-PBXと本社のIP-PBXとの連携は複雑なので断念しました。二つのIP-PBXを同時に稼働させることは可能ですが,その場合には,それぞれに収容されたIP電話機間の内線通話ができません。また,[c]とIP電話機の切替えの順序関係によって,一部のIP電話機では,一時的に[d]ができなくなります。 部長 :了解した。次に,表3中の作業a2にあるプロキシサーバの並行稼働について説明してくれないか。 Bさん:プロキシサーバには,プロキシ機能とDNS機能をもたせています。並行稼働中は,それぞれの機能について,本社のプロキシサーバとX-DCのプロキシサーバの両方を稼働させます。さらに,X-DCのプロキシサーバのDNS機能をスレーブDNSサーバとし,本社のプロキシサーバのDNS機能からゾーン転送を行います。 部長 :プロキシ機能はどのように切り替えるのかな。 Bさん:現在,本社のPCからは本社のプロキシサーバを使っています。表3中の作業a6でPCを切り替えるときに,PCの設定情報を変更し,X-DCのプロキシサーバを使うようにします。 部長 :Webサーバは,1月の連休を利用して切り替えるのだね。 Bさん:はい。④切替えは,プロキシサーバの設定変更によって行います。 部長 :本社の切替えは大体良さそうだ。次に,支店の切替えを確認しよう。図4を見ると,本社と同様に長めの切替期間を設けるのだね。 Bさん:支店ごとに日程を調整することになります。3か月程度必要です。 部長 :支店ごとに作業b2~b5を実施するわけだが,日程調整の際,何か制約はあるのかな。 Bさん:一つの支店について,作業[サ]と作業[シ]は一斉に行う必要があります。それ以外の作業は切替期間内であればいつでも実施できます。 部長 :了解した。支店と早めに切替日程を調整して,それぞれの支店について,PBXがいつから撤去可能になるのかを図4に追記してほしい。⑤本社についても,FW,Webサーバ,プロキシサーバ及びIP-PBXがいつから撤去可能になるのか,図4に追記してくれないか。 Bさん:はい。分かりました。 その後,Bさんは,見直した移行計画を含む検討結果を情報システム部長に報告した。Bさんの検討結果に基づき,D社システムの更改が開始された。 設問1 〔現行のD社システム〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1) 本文中の[ア],[イ]及び[カ]に入れる適切な機器を,図1中の機器名で答えよ。 (2) 本文中の[ウ]~[オ]に入れる適切な字句を答えよ。 (3) 本文中の下線①のために,FWにおいて許可している通信を二つ挙げ,それぞれ30字以内で答えよ。 設問2 〔クラウドサービスの利用〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1) 本文中の[キ]~[ケ]に入れる適切な字句を答えよ。 (2) 表2中の[a]に入れる適切な字句を,表2中の字句を用いて答えよ。 (3) 表2中の支店のIP電話機から取引先の電話機への通信経路が,項番2-1と項番2-2の2通りになる理由を,30字以内で具体的に述べよ。 設問3 〔スマホの活用〕について,(1)~(4)に答えよ。 (1) 本文中の[コ]に入れる適切な字句を,図3中の字句を用いて答えよ。 (2) 図3中の[b]に入れる適切な字句を答えよ。 (3) 図3中のシーケンス番号(31),(32)の二つのBYEリクエストについて,BYEリクエストと同じCall-IDをもつINVITEリクエストのシーケンス番号を,一つずつ答えよ。 (4) 本文中の下線②について,同様の動作を,シーケンス番号を用いて35字以内で述べよ。 設問4 〔新システムへの段階的移行〕について,(1)~(5)に答えよ。 (1) 本文中の下線③に必要となる機器の設定を,図5中の字句を用いて60字以内で述べよ。 (2) 本文中の[c],[d]に入れる適切な字句を,それぞれ20字以内で答えよ。 (3) 本文中の下線④の設定変更を行うプロキシサーバの設置場所を答えよ。また,変更内容を50字以内で述べよ。 (4) 本文中の[サ],[シ]に入れる適切な字句を答えよ。 (5) 本文中の下線⑤中の全ての機器は,どの時点で撤去可能になるか。20字以内で答えよ。また,その時点まで撤去できない機器を,全て答えよ。
図1 現行のD社システムの構成(抜粋)。本社の内部LAN(L3SW・L2SW・PC・IP電話機)とDMZ(L2SW・IP-PBX・プロキシサーバ・Webサーバ)がFWでインターネットに接続し、IP-PBXは公衆電話網にも接続する。支店はBBR経由でインターネットに接続し、PBXと電話機をもつ。携帯電話網・外出先のスマホ・取引先も示す。
図1 現行のD社システムの構成(抜粋)。本社の内部LAN(L3SW・L2SW・PC・IP電話機)とDMZ(L2SW・IP-PBX・プロキシサーバ・Webサーバ)がFWでインターネットに接続し、IP-PBXは公衆電話網にも接続する。支店はBBR経由でインターネットに接続し、PBXと電話機をもつ。携帯電話網・外出先のスマホ・取引先も示す。
表1 利用するクラウドサービスの概要。IaaS(X-DC内のX-VNWと仮想サーバ、インターネット接続・専用線接続のオプション)と、クラウドPBXサービス(Y-DC内のY-VNW・IP-PBX・FW、専用線接続、Y-BBRによるPPPoE接続、Y-GWによるゲートウェイ接続、SIP-APの利用)の説明表。
表1 利用するクラウドサービスの概要。IaaS(X-DC内のX-VNWと仮想サーバ、インターネット接続・専用線接続のオプション)と、クラウドPBXサービス(Y-DC内のY-VNW・IP-PBX・FW、専用線接続、Y-BBRによるPPPoE接続、Y-GWによるゲートウェイ接続、SIP-APの利用)の説明表。
図2 Bさんが考えた新D社システムの構成(抜粋)。X-DC(X-VNW内にFW・プロキシサーバ・Webサーバ)とY-DC(Y-VNW内にFW・IP-PBX)、Y-VPN、インターネット、携帯電話網、公衆電話網の構成。本社はL3SW・PoE-SW・APを、支店はY-BBR・Y-GW・PoE-SW・APをもち、PC・スマホ・IP電話機を収容する。
図2 Bさんが考えた新D社システムの構成(抜粋)。X-DC(X-VNW内にFW・プロキシサーバ・Webサーバ)とY-DC(Y-VNW内にFW・IP-PBX)、Y-VPN、インターネット、携帯電話網、公衆電話網の構成。本社はL3SW・PoE-SW・APを、支店はY-BBR・Y-GW・PoE-SW・APをもち、PC・スマホ・IP電話機を収容する。
表2 電話に関する図2中の通信経路(抜粋)。項番1-1~3-2について、発信元(本社・支店のIP電話機、スマホ)と着信先ごとに、シグナリングと通話の経路(本社~Y-VPN~Y-VNW等)を示す表。項番3-2の通話経路が空欄aになっている。
表2 電話に関する図2中の通信経路(抜粋)。項番1-1~3-2について、発信元(本社・支店のIP電話機、スマホ)と着信先ごとに、シグナリングと通話の経路(本社~Y-VPN~Y-VNW等)を示す表。項番3-2の通話経路が空欄aになっている。
図3 保留転送に関する通信シーケンス例。支店のスマホ、IP-PBX、本社のスマホ、本社のIP電話機の間のSIPシーケンス(1)~(39)。位置情報の登録、発信、支店のスマホの保留、IP電話機への発信、空欄bの区間(re-INVITE)、REFER・BYEによる切替えの流れを示す。
図3 保留転送に関する通信シーケンス例。支店のスマホ、IP-PBX、本社のスマホ、本社のIP電話機の間のSIPシーケンス(1)~(39)。位置情報の登録、発信、支店のスマホの保留、IP電話機への発信、空欄bの区間(re-INVITE)、REFER・BYEによる切替えの流れを示す。
表3 Bさんが作成した拠点別の移行作業(抜粋)。本社の作業a1~a7(ネットワークの準備、プロキシサーバ・IP-PBX・Webサーバ・IP電話機・PCの切替え、スマホの導入)と、支店の作業b1~b6(ネットワークの準備、PBXの停止、IP電話機の導入等)の作業内容の一覧。
表3 Bさんが作成した拠点別の移行作業(抜粋)。本社の作業a1~a7(ネットワークの準備、プロキシサーバ・IP-PBX・Webサーバ・IP電話機・PCの切替え、スマホの導入)と、支店の作業b1~b6(ネットワークの準備、PBXの停止、IP電話機の導入等)の作業内容の一覧。
図4 Bさんが作成した拠点別の移行作業(抜粋)。10月~2月の移行日程表。本社はa2を10月末、a3を11月連休、a4を1月連休に実施する。各部署はa1・a5のあとa6・a7、各支店はb1・b6のあとb2~b5の日程を支店と調整する。
図4 Bさんが作成した拠点別の移行作業(抜粋)。10月~2月の移行日程表。本社はa2を10月末、a3を11月連休、a4を1月連休に実施する。各部署はa1・a5のあとa6・a7、各支店はb1・b6のあとb2~b5の日程を支店と調整する。
図5 Bさんが作成した切替期間中の本社のネットワーク構成(抜粋)。切替期間中の本社の構成。L3SWにAP・PoE-SW(新環境)とL2SW(現行のPC・IP電話機)が接続され、X-DC・Y-VPNにもつながる。既存のFWとDMZ(IP-PBX・L2SW・プロキシサーバ・Webサーバ)も並存している。
図5 Bさんが作成した切替期間中の本社のネットワーク構成(抜粋)。切替期間中の本社の構成。L3SWにAP・PoE-SW(新環境)とL2SW(現行のPC・IP電話機)が接続され、X-DC・Y-VPNにもつながる。既存のFWとDMZ(IP-PBX・L2SW・プロキシサーバ・Webサーバ)も並存している。
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条件が当てはまる範囲に注目

この分野を検討するときは、与えられた条件がどの範囲に当てはまるかに注目しましょう。条件を全体へ広げて受け取らず、対象や場面との対応を確かめると、考える際の前提を整理しやすくなります。

この問題で問われていること

問題に取り組む際は、各条件について「どこまで当てはまると読み取れるか」を一つずつ確認しましょう。明示された範囲と、自分で補った範囲を区別し、根拠のある前提に沿って考えることが着眼点です。

視点

条件の適用範囲とは、その条件を前提として扱える対象や場面の広がりです。同じ話題に関する条件でも、すべてに共通すると決めつけず、示された範囲を保って捉えましょう。

確認ポイント

  • 条件が当てはまる対象を確認したか
  • 条件が当てはまる場面を確認したか
  • 明示されていない範囲へ条件を広げていないか
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解説

本問は、IaaSとクラウドPBXへの移行を題材に、アドレス変換、SIPによる呼制御、RTPの通信経路、移行期間中の環境分離とDNS変更を問う。図表と会話を結び付け、各サービスを利用する端末が残る期間まで考えることが解答の要点となる。

問題の全体像

D社は、老朽化した本社のサーバや各拠点のPBXをクラウドサービスへ移し、運用負荷を軽減しようとしている。スマホの活用と拠点ごとの段階的移行も計画に含まれる。出題趣旨では、クラウド利用のためのネットワーク、SIPによる音声通信、現行環境からの切替作業に関する実務能力を問うとしている。採点講評では、特に設問4はシステム全体の理解が必要であり、本文や会話の情報を慎重に読み解くことが求められている。

設問1(1)ア

現行構成の概要(3)にある、支店のPCから本社のWebサーバへのアクセスに着目する。この通信の送信元は支店のPCなので、支店のBBRでNAPTによって変換されるのはPCのIPアドレスです。公式解答例では「PC」としている。本社からインターネットへアクセスする場合のプロキシサーバと混同しないことがポイントとなる。

設問1(1)イ

図1では、本社のWebサーバはプライベートIPアドレスで運用されるDMZ内にあり、インターネットとの境界にFWが置かれている。支店から届く通信をWebサーバへ到達させるため、Webサーバ側のIPアドレスを変換する機器は本社のFWとなる。公式解答例では「FW」としている。

設問1(1)カ

スマホから取引先への電話を、本社の公衆電話網の電話番号からの発信にするという条件に着目する。図1で公衆電話網に接続され、スマホのSIP-APによる通信を本社の電話として扱う機器はIP-PBXです。公式解答例では「IP-PBX」としている。支店のPBXでは、本社の電話番号から発信する条件を満たせない。

設問1(2)ウ

本文では、SIP UAがIP-PBXへ位置情報の登録を依頼すると説明されている。この登録に用いるSIPメソッドがREGISTERであり、図3の位置情報登録にも同じメソッドが示されている。公式解答例では「REGISTER」としている。通話を開始するINVITEとは、リクエストの目的が異なる。

設問1(2)エ

認証情報のない登録リクエストを送り、401 Unauthorizedを受けて認証用のレスポンス値を返す主体を確認する。本文では、この一連の処理を行うのはSIP UAです。したがって、HTTPダイジェスト認証方式によって認証される対象もSIP UAとなる。公式解答例では「SIP UA」としている。

設問1(2)オ

空欄の直前では、SIP UAがチャレンジ値から生成した正しいレスポンス値を送っている。ここでは認証を経た登録処理の成功を示す応答が必要になる。公式解答例では「200 OK」としている。認証情報を要求する段階の401 Unauthorizedと、成功時の応答を区別して読む。

設問1(3)①

本文(5)では、SIPで通話セッションを確立し、RTPで通話すると説明されている。まず接続制御のため、IP-PBXとインターネット側のスマホ、及び本社のIP電話機とのSIP通信をFWで許可する必要がある。公式解答例では、30字以内で「インターネット及びIP電話機とIP-PBX間のSIP通信」としている。通信相手とSIPというプロトコルを押さえる。

設問1(3)②

通話セッションの確立後は、スマホのSIP-APと本社のIP電話機との間でRTPによる音声通信が行われる。したがって、FWではインターネット側と本社のIP電話機間のRTP通信も許可する必要がある。公式解答例では「インターネットとIP電話機間のRTP通信」としている。30字以内の答案では、音声通信の両端とRTPを明示する。

設問2(1)キ

Y-VPNは顧客が共用するIP-VPNであり、RFC 3031で標準化された技術を利用すると記されている。この規格に対応するのがMPLSです。公式解答例では「MPLS(Multi-Protocol Label Switching)」としている。IP-VPNというサービス名と、その網内で用いる技術名を区別する。

設問2(1)ク

本文の条件は、異なる拠点間の通話がD社の他の拠点を経由しないことです。各拠点間で直接通信できる接続関係が必要になるため、公式解答例では「フルメッシュ」としている。ここでいう直接通信とは、途中にD社の別拠点を挟まないという意味であり、Y-VPN内の中継装置を通らないという意味ではありません。

設問2(1)ケ

APはブリッジモードで動作するため、端末の通信を別ネットワークへ転送するルータとしては扱わない。図2で支店の内部LANからインターネット及びY-VPNへの接続を担う機器はY-BBRです。公式解答例では「Y-BBR」としている。DHCP情報を配布する機器と、デフォルトゲートウェイになる機器を区別することが重要です。

設問2(2)a

表2の項番3-2は、支店のスマホと本社のIP電話機との通話です。項番1-2の拠点間通話と同様に、音声はY-VPNを通って両端末間を流れる。公式解答例では「支店~Y-VPN~本社」としている。シグナリングはIP-PBXがあるY-VNWを経由するが、通話のRTP経路にはY-VNWを含めない点に着目する。

設問2(3)

表1と図2の注記には、Y-GWを設置する支店と設置しない支店がある。Y-GWがない場合はY-VNW側から公衆電話網へ出る項番2-1の経路を使い、設置されている場合は支店から公衆電話網へ出る項番2-2の経路を使う。公式解答例では、Y-GWの設置の有無を理由としている。30字以内では「Y-GWの設置の有無によって経路が異なるから」と要点をまとめられる。

設問3(1)コ

保留転送を行うスマホは、re-INVITE、INVITE、re-INVITE、REFERを順にIP-PBXへ送ると本文に示されている。図3でこれらを送信するのは、シーケンス(10)、(16)、(22)、(28)の本社のスマホです。公式解答例では「本社のスマホ」としている。最初に発信した支店のスマホではなく、転送操作のリクエストを送る端末を特定する。

設問3(2)b

空欄bの区間では、本社のスマホが(22)でre-INVITEを送り、IP-PBXが(23)で本社のIP電話機へ転送している。直前に本社のIP電話機との通話が成立しているので、ここは転送先を保留する段階に当たる。公式解答例では「本社のIP電話機の保留」としている。本文に示された四つのリクエストの順序と照合すると判断できる。

設問3(3)

二つのBYEは、本社のスマホが関わる二つの通話を終了させるためのリクエストです。一つは(5)のINVITEで本社のスマホへ着信した通話、もう一つは(16)のINVITEで本社のスマホから転送先へ発信した通話に対応する。公式解答例では「(5)、(16)」としている。re-INVITEは既存のダイアログを変更するものであり、新しい通話の開始とは区別する。

設問3(4)

本文では、支店のスマホが(11)のre-INVITE内のSDP情報に従って保留音を出すと説明されている。本社のIP電話機に対する同じ処理は、図3の(23)のre-INVITEに対応する。公式解答例でも(23)中のSDP情報と保留音を挙げている。35字以内では「(23)のSDP情報に従い、本社のIP電話機が保留音を出す。」と、番号、動作の根拠、動作内容を示します。

設問4(1)

図5では、現行端末を収容するL2SWと、新環境の端末を収容するPoE-SWが同じL3SWに接続されている。新旧のセグメントを分けるだけではL3SW経由で通信できるため、両者間のルーティングも禁止する必要がある。公式解答例はこの二点を挙げている。60字以内では「L3SWのPoE-SW収容ポートを新セグメントにし、L2SW収容ポートとのルーティングを禁止する。」とまとめられる。

設問4(2)c

表3のa3には、本社の公衆電話網の電話番号をY-DCへ移行する作業が含まれる。電話番号を受け持つ側と、IP電話機が収容されるIP-PBX側の切替えが前後すると、外線を使えない電話機が生じる。公式解答例では「公衆電話網の電話番号の移行」としている。20字以内では、この作業名をそのまま示せばよい。

設問4(2)d

電話番号の移行とIP電話機の切替えの順序がずれると、電話機の接続先が外線の電話番号を受け持つIP-PBXと一致しない期間が生じる。そのため、一部の電話機で社外との発信・着信ができなくなる。公式解答例では「本社と社外の電話との発着信」としている。20字以内ではこの内容を示し、直前に述べられた新旧電話機間の内線通話とは区別する。

設問4(3)設置場所

会話では、X-DCのプロキシサーバのDNS機能をスレーブDNSサーバとし、本社側からゾーン転送すると説明されている。Webサーバの名前解決先を変更するには、ゾーン情報の更新元である本社側のDNS設定を変更する。公式解答例では、設定変更を行うプロキシサーバの設置場所を「本社」としている。

設問4(3)変更内容

プロキシサーバはDNS機能も持つため、Webサーバのホスト名に対応するIPアドレスを変えることでアクセス先を切り替えられる。公式解答例では、WebサーバのAレコードをX-DCのWebサーバのIPアドレスへ変更するとしている。本社側の変更はゾーン転送でX-DC側にも反映される。50字以内では「WebサーバのAレコードを、X-DCのWebサーバのIPアドレスに変更する。」と示せる。

設問4(4)サ

表3のb2は、支店のPBXを停止し、Y-GWがある支店では公衆電話網の接続先をY-GWへ変える作業です。旧電話機の利用終了と新しいIP電話機の利用開始をそろえる必要があるため、b3と一斉に行う。公式解答例ではサを「b2」としている。ただし、公式解答例の備考ではサとシは順不同とされている。

設問4(4)シ

表3のb3は、新しいIP電話機をPoE-SWへ接続し、従来の電話機から利用を切り替える作業です。これをPBX停止のb2と合わせ、支店の電話利用を一斉に新環境へ移す。公式解答例ではシを「b3」としている。サとシは順不同なので、二つの空欄でb2とb3を挙げることが要点となる。

設問4(5)時点

図4では、IP-PBXとIP電話機は11月の連休、Webサーバは1月の連休に切り替わる。一方、本社PCはその後も段階的に切り替えるため、未切替えのPCが旧プロキシサーバと本社FWを使い続ける。公式解答例では「本社PCの切替期間が終了した時点」としている。20字以内ではこの条件を示し、Webサーバの切替えだけで全機器を撤去できると考えないことが重要です。

設問4(5)機器

会話では、PCを切り替えるa6の際に、利用するプロキシサーバを本社からX-DCへ変更すると説明されている。したがって、最後のPCが切り替わるまで本社のプロキシサーバが必要であり、そのインターネット通信を中継する本社FWも必要となる。公式解答例では「本社のFW、本社のプロキシサーバ」としている。本社のWebサーバとIP-PBXは、それぞれ先に切替作業が完了する。

学習のポイント

SIPとRTPの役割、ダイアログとCall-IDの関係、DNSのゾーン転送、段階的移行における作業の依存関係を重点的に学ぶ。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和元年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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