NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ
令和元年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問1
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題








解き方のヒントを見る
条件が当てはまる範囲に注目
この分野を検討するときは、与えられた条件がどの範囲に当てはまるかに注目しましょう。条件を全体へ広げて受け取らず、対象や場面との対応を確かめると、考える際の前提を整理しやすくなります。
この問題で問われていること
問題に取り組む際は、各条件について「どこまで当てはまると読み取れるか」を一つずつ確認しましょう。明示された範囲と、自分で補った範囲を区別し、根拠のある前提に沿って考えることが着眼点です。
視点
条件の適用範囲とは、その条件を前提として扱える対象や場面の広がりです。同じ話題に関する条件でも、すべてに共通すると決めつけず、示された範囲を保って捉えましょう。
確認ポイント
- 条件が当てはまる対象を確認したか
- 条件が当てはまる場面を確認したか
- 明示されていない範囲へ条件を広げていないか
正解と解説を見る
解説
本問は、IaaSとクラウドPBXへの移行を題材に、アドレス変換、SIPによる呼制御、RTPの通信経路、移行期間中の環境分離とDNS変更を問う。図表と会話を結び付け、各サービスを利用する端末が残る期間まで考えることが解答の要点となる。
問題の全体像
D社は、老朽化した本社のサーバや各拠点のPBXをクラウドサービスへ移し、運用負荷を軽減しようとしている。スマホの活用と拠点ごとの段階的移行も計画に含まれる。出題趣旨では、クラウド利用のためのネットワーク、SIPによる音声通信、現行環境からの切替作業に関する実務能力を問うとしている。採点講評では、特に設問4はシステム全体の理解が必要であり、本文や会話の情報を慎重に読み解くことが求められている。
設問1(1)ア
現行構成の概要(3)にある、支店のPCから本社のWebサーバへのアクセスに着目する。この通信の送信元は支店のPCなので、支店のBBRでNAPTによって変換されるのはPCのIPアドレスです。公式解答例では「PC」としている。本社からインターネットへアクセスする場合のプロキシサーバと混同しないことがポイントとなる。
設問1(1)イ
図1では、本社のWebサーバはプライベートIPアドレスで運用されるDMZ内にあり、インターネットとの境界にFWが置かれている。支店から届く通信をWebサーバへ到達させるため、Webサーバ側のIPアドレスを変換する機器は本社のFWとなる。公式解答例では「FW」としている。
設問1(1)カ
スマホから取引先への電話を、本社の公衆電話網の電話番号からの発信にするという条件に着目する。図1で公衆電話網に接続され、スマホのSIP-APによる通信を本社の電話として扱う機器はIP-PBXです。公式解答例では「IP-PBX」としている。支店のPBXでは、本社の電話番号から発信する条件を満たせない。
設問1(2)ウ
本文では、SIP UAがIP-PBXへ位置情報の登録を依頼すると説明されている。この登録に用いるSIPメソッドがREGISTERであり、図3の位置情報登録にも同じメソッドが示されている。公式解答例では「REGISTER」としている。通話を開始するINVITEとは、リクエストの目的が異なる。
設問1(2)エ
認証情報のない登録リクエストを送り、401 Unauthorizedを受けて認証用のレスポンス値を返す主体を確認する。本文では、この一連の処理を行うのはSIP UAです。したがって、HTTPダイジェスト認証方式によって認証される対象もSIP UAとなる。公式解答例では「SIP UA」としている。
設問1(2)オ
空欄の直前では、SIP UAがチャレンジ値から生成した正しいレスポンス値を送っている。ここでは認証を経た登録処理の成功を示す応答が必要になる。公式解答例では「200 OK」としている。認証情報を要求する段階の401 Unauthorizedと、成功時の応答を区別して読む。
設問1(3)①
本文(5)では、SIPで通話セッションを確立し、RTPで通話すると説明されている。まず接続制御のため、IP-PBXとインターネット側のスマホ、及び本社のIP電話機とのSIP通信をFWで許可する必要がある。公式解答例では、30字以内で「インターネット及びIP電話機とIP-PBX間のSIP通信」としている。通信相手とSIPというプロトコルを押さえる。
設問1(3)②
通話セッションの確立後は、スマホのSIP-APと本社のIP電話機との間でRTPによる音声通信が行われる。したがって、FWではインターネット側と本社のIP電話機間のRTP通信も許可する必要がある。公式解答例では「インターネットとIP電話機間のRTP通信」としている。30字以内の答案では、音声通信の両端とRTPを明示する。
設問2(1)キ
Y-VPNは顧客が共用するIP-VPNであり、RFC 3031で標準化された技術を利用すると記されている。この規格に対応するのがMPLSです。公式解答例では「MPLS(Multi-Protocol Label Switching)」としている。IP-VPNというサービス名と、その網内で用いる技術名を区別する。
設問2(1)ク
本文の条件は、異なる拠点間の通話がD社の他の拠点を経由しないことです。各拠点間で直接通信できる接続関係が必要になるため、公式解答例では「フルメッシュ」としている。ここでいう直接通信とは、途中にD社の別拠点を挟まないという意味であり、Y-VPN内の中継装置を通らないという意味ではありません。
設問2(1)ケ
APはブリッジモードで動作するため、端末の通信を別ネットワークへ転送するルータとしては扱わない。図2で支店の内部LANからインターネット及びY-VPNへの接続を担う機器はY-BBRです。公式解答例では「Y-BBR」としている。DHCP情報を配布する機器と、デフォルトゲートウェイになる機器を区別することが重要です。
設問2(2)a
表2の項番3-2は、支店のスマホと本社のIP電話機との通話です。項番1-2の拠点間通話と同様に、音声はY-VPNを通って両端末間を流れる。公式解答例では「支店~Y-VPN~本社」としている。シグナリングはIP-PBXがあるY-VNWを経由するが、通話のRTP経路にはY-VNWを含めない点に着目する。
設問2(3)
表1と図2の注記には、Y-GWを設置する支店と設置しない支店がある。Y-GWがない場合はY-VNW側から公衆電話網へ出る項番2-1の経路を使い、設置されている場合は支店から公衆電話網へ出る項番2-2の経路を使う。公式解答例では、Y-GWの設置の有無を理由としている。30字以内では「Y-GWの設置の有無によって経路が異なるから」と要点をまとめられる。
設問3(1)コ
保留転送を行うスマホは、re-INVITE、INVITE、re-INVITE、REFERを順にIP-PBXへ送ると本文に示されている。図3でこれらを送信するのは、シーケンス(10)、(16)、(22)、(28)の本社のスマホです。公式解答例では「本社のスマホ」としている。最初に発信した支店のスマホではなく、転送操作のリクエストを送る端末を特定する。
設問3(2)b
空欄bの区間では、本社のスマホが(22)でre-INVITEを送り、IP-PBXが(23)で本社のIP電話機へ転送している。直前に本社のIP電話機との通話が成立しているので、ここは転送先を保留する段階に当たる。公式解答例では「本社のIP電話機の保留」としている。本文に示された四つのリクエストの順序と照合すると判断できる。
設問3(3)
二つのBYEは、本社のスマホが関わる二つの通話を終了させるためのリクエストです。一つは(5)のINVITEで本社のスマホへ着信した通話、もう一つは(16)のINVITEで本社のスマホから転送先へ発信した通話に対応する。公式解答例では「(5)、(16)」としている。re-INVITEは既存のダイアログを変更するものであり、新しい通話の開始とは区別する。
設問3(4)
本文では、支店のスマホが(11)のre-INVITE内のSDP情報に従って保留音を出すと説明されている。本社のIP電話機に対する同じ処理は、図3の(23)のre-INVITEに対応する。公式解答例でも(23)中のSDP情報と保留音を挙げている。35字以内では「(23)のSDP情報に従い、本社のIP電話機が保留音を出す。」と、番号、動作の根拠、動作内容を示します。
設問4(1)
図5では、現行端末を収容するL2SWと、新環境の端末を収容するPoE-SWが同じL3SWに接続されている。新旧のセグメントを分けるだけではL3SW経由で通信できるため、両者間のルーティングも禁止する必要がある。公式解答例はこの二点を挙げている。60字以内では「L3SWのPoE-SW収容ポートを新セグメントにし、L2SW収容ポートとのルーティングを禁止する。」とまとめられる。
設問4(2)c
表3のa3には、本社の公衆電話網の電話番号をY-DCへ移行する作業が含まれる。電話番号を受け持つ側と、IP電話機が収容されるIP-PBX側の切替えが前後すると、外線を使えない電話機が生じる。公式解答例では「公衆電話網の電話番号の移行」としている。20字以内では、この作業名をそのまま示せばよい。
設問4(2)d
電話番号の移行とIP電話機の切替えの順序がずれると、電話機の接続先が外線の電話番号を受け持つIP-PBXと一致しない期間が生じる。そのため、一部の電話機で社外との発信・着信ができなくなる。公式解答例では「本社と社外の電話との発着信」としている。20字以内ではこの内容を示し、直前に述べられた新旧電話機間の内線通話とは区別する。
設問4(3)設置場所
会話では、X-DCのプロキシサーバのDNS機能をスレーブDNSサーバとし、本社側からゾーン転送すると説明されている。Webサーバの名前解決先を変更するには、ゾーン情報の更新元である本社側のDNS設定を変更する。公式解答例では、設定変更を行うプロキシサーバの設置場所を「本社」としている。
設問4(3)変更内容
プロキシサーバはDNS機能も持つため、Webサーバのホスト名に対応するIPアドレスを変えることでアクセス先を切り替えられる。公式解答例では、WebサーバのAレコードをX-DCのWebサーバのIPアドレスへ変更するとしている。本社側の変更はゾーン転送でX-DC側にも反映される。50字以内では「WebサーバのAレコードを、X-DCのWebサーバのIPアドレスに変更する。」と示せる。
設問4(4)サ
表3のb2は、支店のPBXを停止し、Y-GWがある支店では公衆電話網の接続先をY-GWへ変える作業です。旧電話機の利用終了と新しいIP電話機の利用開始をそろえる必要があるため、b3と一斉に行う。公式解答例ではサを「b2」としている。ただし、公式解答例の備考ではサとシは順不同とされている。
設問4(4)シ
表3のb3は、新しいIP電話機をPoE-SWへ接続し、従来の電話機から利用を切り替える作業です。これをPBX停止のb2と合わせ、支店の電話利用を一斉に新環境へ移す。公式解答例ではシを「b3」としている。サとシは順不同なので、二つの空欄でb2とb3を挙げることが要点となる。
設問4(5)時点
図4では、IP-PBXとIP電話機は11月の連休、Webサーバは1月の連休に切り替わる。一方、本社PCはその後も段階的に切り替えるため、未切替えのPCが旧プロキシサーバと本社FWを使い続ける。公式解答例では「本社PCの切替期間が終了した時点」としている。20字以内ではこの条件を示し、Webサーバの切替えだけで全機器を撤去できると考えないことが重要です。
設問4(5)機器
会話では、PCを切り替えるa6の際に、利用するプロキシサーバを本社からX-DCへ変更すると説明されている。したがって、最後のPCが切り替わるまで本社のプロキシサーバが必要であり、そのインターネット通信を中継する本社FWも必要となる。公式解答例では「本社のFW、本社のプロキシサーバ」としている。本社のWebサーバとIP-PBXは、それぞれ先に切替作業が完了する。
学習のポイント
SIPとRTPの役割、ダイアログとCall-IDの関係、DNSのゾーン転送、段階的移行における作業の依存関係を重点的に学ぶ。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和元年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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