NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ

平成29年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 無線LANシステムの導入に関する次の記述を読んで,設問1~5に答えよ。 Y社は,中規模のネットワーク関連製品販売会社であり,オフィスビルの2フロアを使用している本社の他に複数の営業所がある。本社の営業部には110名の営業員が,営業所には合計50名の営業員が在籍している。本社と営業所の営業員には,ノートPC(以下,NPCという)の他にモバイルWi-Fiルータ(以下,Wi-Fiルータという)が貸与され,社外での商品説明,在庫照会,電子メール(以下,メールという)の送受信などに使用されている。社内では,NPCを有線LANに接続して営業業務を行っている。インターネットアクセスは,本社DMZのプロキシサーバ経由で行われている。営業部のNPCは,同一VLANに属している。本社の現在のLAN構成を図1に示す。 図1 本社の現在のLAN構成(抜粋) 〔営業部の課題と対策〕 営業部のフロアには,営業部のオフィスエリアの他に,応接室,会議室などの接客エリアがあるが,取引先の増加に伴って,接客エリアの不足に悩まされている。 Y社を訪問する取引先の営業員(以下,来訪者という)の多くは,NPCを携帯しており,中にはWi-Fiルータを持参してLTE回線経由でインターネットを利用している者もいる。しかし,Wi-Fiルータを持たない来訪者から,インターネット接続環境を提供してほしいとの要望が挙がっている。 Y社では,書類の電子化を推進した結果,書類棚やサイドキャビネットに保管している書類が半減し,机上の書類も一掃された。そこで,営業部の座席をフリーアドレスにしてオフィスエリアを縮小し,接客エリアを拡大することにした。 これらを実現する目的で,営業部フロアに無線LANシステムを導入することを決め,無線LAN導入プロジェクトを発足させた。プロジェクト責任者には情報システム部(以下,情シスという)のM課長が任命された。M課長は,部下のN主任とJ君をプロジェクトメンバに指名し,無線LANシステムの設計を担当させることにした。 無線LANシステムの設計に当たって,N主任は,無線LAN技術の調査と選定をJ君に指示した。 〔無線LAN技術の調査と選定〕 N主任の指示を受け,J君は,無線LAN技術を調査し,その結果を表1~3にまとめた。IEEE 802.11で使用される周波数帯を表1に,無線LANのアクセス制御方式を表2に,無線LANのデータ暗号化方式を表3に示す。 表1 IEEE 802.11で使用される周波数帯 表2 無線LANのアクセス制御方式 表3 無線LANのデータ暗号化方式 Y社のNPCは,IEEE 802.11ac対応の無線LANアダプタを内蔵しているので,IEEE 802.11ac対応の無線LANアクセスポイント(以下,APという)を導入する。来訪者のNPCの中には,IEEE 802.11nしか使用できないものもあると考えられたので,IEEE 802.11nにも対応したAP製品を選定すれば,来訪者へのインターネットアクセス環境も提供できる。 無線LANでは通信に電波が使用されるので,盗聴や不正アクセスを防ぐ対策が重要である。そこで,J君は,暗号化方式と認証方式について検討した。 〔暗号化方式と認証方式の検討〕 無線LANのデータ暗号化方式についてJ君が検討した結果を,次に示す。 (1) WEPでは,1バイト単位の[f]暗号であるRC4を使用して,パケットの暗号化が行われる。WEPは,一つのAPと複数の無線LAN端末間でWEPキーを共有し,WEPキーとIV(Initialization Vector)を基に,暗号鍵であるキーストリームを生成する。WEPは,[g]のWEPキーが使用され続けることに加え,暗号化アルゴリズムも複雑ではないことから,短時間での暗号解読が可能になっているので採用しない。 (2) WPAでは,TKIPによって暗号鍵を生成する。TKIPでは,暗号鍵の基になる一時鍵(Temporal Key)が動的に生成される。エンタープライズモードの場合,一時鍵は,IEEE 802.1Xの認証成功後に[h]で動的に生成されてクライアントに配布されるPMK(Pairwise Master Key)を基に,無線LAN端末及び[h]の両者で生成される。TKIPでは,フェーズ1で,一時鍵,IV及び無線LAN端末の[i]の三つを混合してキーストリーム1を生成する。フェーズ2で,キーストリーム1にIVの拡張された部分を混合して,暗号鍵であるキーストリーム2を生成する。キーストリーム1とキーストリーム2は,通信途中に変更される。2段階の鍵混合,キーストリームの変更によって,WEPよりも高い安全性を実現しているが,脆弱性が報告されているので採用しない。 (3) WPA2では,AESをベースにしたCCMPが採用されている。 WPA2では,事前[j]の方法及びPMKの保持方法が規定されている。これらによって,無線LAN端末がAP間を移動(以下,ハンドオーバという)するタイミングでの認証や認証済みのAPに戻ってきたときのPMKの再生成が不要になることから,ハンドオーバ時間が短縮される。 AESはブロック暗号なので,暗号化するメッセージを一定サイズのブロック単位に分割して処理する必要がある。メッセージをブロック単位に分割すると,最後のメッセージがブロックサイズに満たない場合もあるので,CCMPではカウンタモードが採用されている。カウンタモードでは,暗号化するメッセージをダイレクトに暗号化するのではなく,ブロックサイズと同じバイト数のカウンタ値を暗号化して,暗号化したカウンタ値と暗号化するメッセージとをXOR(排他的論理和)して暗号文を生成する。カウンタモードによる暗号化手順を図2に示す。 図2 カウンタモードによる暗号化手順 CCMPでは,①暗号化と復号は同じ手順で行われ,復号時もAESが使用される。 以上の検討を基に,暗号化方式は安全性が高いWPA2を採用することにした。 次に,J君は,利用者認証方式について検討した。 WPA2の利用者認証には,パーソナルモードと,IEEE 802.1Xを利用するエンタープライズモードがある。営業員の認証にはエンタープライズモードを利用する。IEEE 802.1Xには複数の認証方式がある。その中でセキュリティが強固であるとともに,Y社のNPCでは標準サポートのEAP-TLSを利用することを考え,EAP-TLSの運用に適したRADIUSサーバ製品を選定することにした。 J君は,無線LANはIEEE 802.11acを採用し,IEEE 802.11nにも対応したAP製品を選定することと,暗号化方式はWPA2,認証方式はEAP-TLSを利用することをN主任に報告した。無線LANの規格,暗号化及び認証方式がN主任に了承され,次に,APの設置方法とディジタル証明書の配布方法についての検討を指示された。 〔APの設置方法の検討〕 J君は,フロア図面を基に,APの導入台数と設置について検討した。 現在,Y社では,NPCを100Mビット/秒で有線LANに接続しているので,無線LANでも100Mビット/秒程度の速度で通信できるようにしたい。 IEEE 802.11ac規格では,八つのチャネルを束ねる8チャネルボンディング(160MHzの帯域幅)を行えば,アンテナ1本当たり最大約867Mビット/秒の通信が可能である。8チャネルボンディングと8本のアンテナによるMIMO(Multiple Input Multiple Output)で8ストリームの同時伝送を行えば,理論上最大約6.93Gビット/秒で通信できる。②検討しているAP製品は,4チャネルボンディング(80MHzの帯域幅)まで行え,3本のアンテナが搭載されているので,1Gビット/秒以上の通信速度が達成できる。したがって,APに同時接続させるNPCを10台に制限すれば,1台のNPCで100Mビット/秒以上の通信速度を確保できる。そこで,APに同時接続させるNPC台数を10台に制限して,APの導入台数と配置を決めることにした。 現在,営業部には110名の営業員が在籍しており,営業部のオフィスエリアには120名の収容スペースがある。本社の営業員の在席率は最大で60%程度なので,オフィスエリアを80%に縮小して,削減した20%を接客エリアにすれば接客エリア不足の解消になる。オフィスエリアには,最大で約66名の営業員が同時に在席することになるが,余裕をもたせて8台のAPを設置し,接客エリアには4台のAPを設置する。合計12台のAPの個別管理は困難なので,無線LANコントローラ(以下,WLCという)も導入する。調査したところ,WLCには複数の方式があったが,次の三つの主要機能をもつ製品を選定することにした。 ・有線LAN経由での複数のAPに対する設定変更,ファームウェアのアップデートなどの一括処理機能 ・APの負荷分散制御,PMKの保持などによるハンドオーバ制御機能 ・利用者認証,認証VLANなどのセキュリティ対策機能 選定するWLC製品の概要を次に示す。 WLCは分散処理方式で,通信データの暗号化と復号をAPに任せるものである。WLCでEAP-TLSを利用するときは,APとWLC間でトンネルが設定され,無線LAN端末とWLC間で認証情報の交換が行われる。WLCは,利用者認証を行った後,利用者IDに対応したVLANをAPに設定する認証VLAN機能をもっている。③認証後に行われる無線LAN端末による通信は,WLCを経由しない。 APは,電波の到達性を考慮して天井に設置する。営業部のオフィスエリアに,営業員が自由に着席できる机が均等に配置されたときの,営業部フロアへのAPの設置イメージを図3に示す。 図3 営業部フロアへのAPの設置イメージ APの設置場所は,営業部フロアでの電波伝搬状態を測定してから決める。このとき,④外来電波による悪影響が発生する可能性があるかどうかを調査し,必要に応じて対策を講じる。電波伝搬状態の測定,外来電波の影響調査,APの設置設計及び設置工事は,業者に委託する。 APは天井に設置することから,天井裏でのケーブル配線が必要になる。APを接続するL2SWを営業部フロアに設置すれば,L2SWと全てのAPとをLANケーブルで直結できる。L2SWのPoE(Power over Ethernet)機能を利用することによって,LANケーブル経由でAPに電源が供給できるので,PoE対応のAPを導入する。このとき,APを収容することになる図1中のL2SW4は,PoE対応の製品に交換し,適切な場所に設置する必要がある。 以上の検討結果を基に,J君は,導入するAP,WLC及びRADIUSサーバ製品を選定した。選定したAP製品の消費電力は最大18Wなので,IEEE 802.3af規格では供給電力が不足することが分かった。そこで,⑤IEEE 802.3at対応のL2SWを1台導入することにした。 次に,J君は,ディジタル証明書の配布方法について検討した。 〔ディジタル証明書の配布方法の検討〕 ディジタル証明書の配布方法についてJ君が検討した結果を,次に示す。 選定したRADIUSサーバ製品は,EAP-TLSで必要になるディジタル証明書(サーバ証明書又はクライアント証明書)を発行するCA(Certification Authority)機能をもっている。サーバ証明書とクライアント証明書は,RADIUSサーバのCA機能を使って発行する。 クライアント証明書は,情シスの担当者が本社の営業員のNPCに直接インストールすれば安全であるが,情シスの負担が大きい。そこで,本社LANに,クライアント証明書をNPCにダウンロードさせるサーバ(以下,ダウンロードサーバという)を新規に構築して,LAN経由でクライアント証明書を配布すれば情シスの負担が抑えられる。 ダウンロードサーバによるクライアント証明書の配布案内は,無線LAN導入後に,情シスから全営業員宛てに一斉メールで通知する。案内文には,ダウンロードサーバの導入目的,利用方法,ダウンロードサーバのURLなどを記載する。その後,各営業員に,ダウンロードサーバ利用のための利用者IDとパスワードを個別に連絡する。営業員は,情シスからの案内を基に,クライアント証明書のインストールを行う。 J君は,ダウンロードサーバの機能とクライアント証明書の運用について検討した。検討結果を次に示す。 (1) クライアント証明書の管理機能 ダウンロードサーバは,RADIUSサーバで生成されたクライアント証明書と⑥その他にNPCで必要となる情報をRADIUSサーバからコピーし,RFC 7292で規定されているPKCS #12形式のファイルに変換して管理する。 (2) NPCへのダウンロード機能 ダウンロードサーバは,アクセスした営業員を利用者ID,パスワードで認証し,認証を受けた営業員のNPCに,PKCS #12形式のファイルを一度だけダウンロードさせる。NPCは,ダウンロードしたファイルを直接インポートできる。 (3) クライアント証明書の運用 情シスの担当者は,クライアント証明書の有効期限の1か月前に,RADIUSサーバでクライアント証明書を発行し,ダウンロードサーバに保管して,クライアント証明書の更新案内を当該営業員にメールで通知する。 次に,J君は,ダウンロードサーバの設置場所について検討した。 最初に,無線LAN経由でダウンロードサーバにアクセスさせる方法を検討した。この方法では,NPCにクライアント証明書がインストールされていないので,認証エラーになる。そこで,認証エラー時にWLCの認証VLAN機能によって,特別なVLANをAPに設定し,このVLANにダウンロードサーバを設置することを考えた。しかし,その場所にダウンロードサーバを設置すると,⑦クライアント証明書の配布に関してセキュリティ上問題がある。さらに,クライアント証明書の更新のためのダウンロードもできない。そこで,営業部オフィスエリアの有線LAN接続でアクセスできる場所にダウンロードサーバを設置することにした。無線LANに移行した後,営業部オフィスエリアをフリーアドレスにしてNPC接続用の有線LANは撤去するが,クライアント証明書の更新は無線LAN経由で可能である。しかし,⑧状況によっては,クライアント証明書をダウンロードできない本社の営業員も出てくる。その営業員には,情シスの担当者がクライアント証明書などの必要な情報をNPCにインストールして,当該営業員に渡す。 J君は,APの設置方法とディジタル証明書の配布方法についてN主任に説明し,了承されたので,最後に,既設LANへの無線LANの接続構成の設計を行った。 〔既設LANへの無線LANの接続構成の設計〕 J君が設計した,既設LANに無線LANシステムを導入したときのLAN構成を図4に示す。 図4 既設LANに無線LANシステムを導入したときのLAN構成(抜粋) Y社では,DHCPサーバでPCとNPCにIPアドレスなどのネットワーク情報を付与している。無線LAN導入後も,本社の営業員のNPCにはDHCPサーバでネットワーク情報を付与する。 EAP-TLSで認証を受けた本社の営業員のNPCには,営業員向けのVLAN(VLAN100)を割り当て,既設の有線LAN使用時と同じ作業ができるようにする。オフィスエリアのAPには来訪者のNPCは接続させないが,接客エリアのAPには営業員と来訪者が無線LANを同時に利用できる設定を行う。 NPCを持参した来訪者には,Y社の担当者が,⑨WPA2又はWPAのパーソナルモードで無線LANに接続するための情報を教える。来訪者は,教えられた情報をNPCに設定することで,無線LANの利用が可能になる。来訪者のNPCには,APがESSIDに対応した来訪者向けのVLAN(VLAN200)を割り当てる。VLAN200が割り当てられることによって,来訪者のNPCは,無線LANへのアソシエーション後に,ルータ2がもつDHCP機能でネットワーク情報が付与され,インターネットアクセスだけができるようになる。 J君は,以上の設計内容をN主任に説明した。N主任は,J君の設計内容を基に無線LAN導入計画書を作成し,J君と一緒にM課長に説明したところ,導入計画書はM課長に承認され,実施に移されることになった。 設問1 表1~3中の[a]~[e]に入れる適切な字句又は数値を答えよ。 設問2 〔暗号化方式と認証方式の検討〕について,(1),(2)に答えよ。 (1) 本文中の[f]~[j]に入れる適切な字句を答えよ。 (2) 本文中の下線①について,図2中の暗号文ブロックe1を平文ブロックm1に復号する手順を,40字以内で述べよ。 設問3 〔APの設置方法の検討〕について,(1)~(5)に答えよ。 (1) 本文中の下線②について,検討しているAP製品で最大約867Mビット/秒の通信速度を得るのに,最低限必要な周波数帯域幅とアンテナ本数を,それぞれ答えよ。 (2) 本文中の下線③の方式について,無線LAN端末による通信がWLCを経由する方式と比較したときの利点を二つ挙げ,それぞれ40字以内で述べよ。 (3) 本文中の下線④の悪影響の内容を,25字以内で述べよ。 (4) 図3の構成でAPを設置して,チャネルボンディングした周波数帯が重ならないようにするためには,少なくとも幾つの周波数帯のグループが必要になるかを答えよ。また,各APのセルを重ねる目的を,25字以内で述べよ。 (5) 本文中の下線⑤について,IEEE 802.3at規格のPoE機能の呼称,及び当該L2SWで今回必要になる最小供給電力を,それぞれ答えよ。 設問4 〔ディジタル証明書の配布方法の検討〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1) 本文中の下線⑥について,NPCで必要になる情報を二つ挙げ,それぞれ15字以内で答えよ。 (2) 本文中の下線⑦の問題を,60字以内で述べよ。 (3) 本文中の下線⑧について,ダウンロードできない本社の営業員を,25字以内で答えよ。ただし,NPCの紛失,故障などで新たに貸与されるケースは除く。 設問5 〔既設LANへの無線LANの接続構成の設計〕について,(1)~(6)に答えよ。 (1) 図4中で,IEEE 802.1Xのサプリカントとなる機器及びオーセンティケータとなる機器を,図4中の機器名でそれぞれ答えよ。 (2) 本文中の下線⑨について,来訪者に教える情報を二つ挙げ,それぞれ答えよ。 (3) 図4中で,今回新たにタグVLANが設定される箇所を,図4中の㋐~㋓から選び,記号で答えよ。 (4) 図4の構成で,来訪者のNPCにインターネットアクセスだけを可能にするための,L2SW5へのVLAN設定内容を,40字以内で述べよ。 (5) 図4中のNPCが認証された後にWLCに障害が発生した場合,当該NPCで発生する問題を,20字以内で答えよ。また,その理由を,40字以内で述べよ。 (6) 図4中で,認証後の営業員のNPCによるインターネットアクセスにおいて,経由する機器名又はサーバ名を,【転送経路】の表記法に従い,経由する順に全て列挙せよ。 【転送経路】 NPC → [経由する順に全て列挙] → インターネット
図1 本社の現在のLAN構成(抜粋)。DMZ内のSSL-VPN装置、DNS・Web・中継メール・プロキシの各サーバがL2SW1に接続し、FW、ルータ1経由でインターネットへ接続。L3SWの配下にL2SW2(ファイル・販売管理・営業支援・DHCPサーバ)、L2SW3、営業部フロアのL2SW4とNPCがある構成図。
図1 本社の現在のLAN構成(抜粋)。DMZ内のSSL-VPN装置、DNS・Web・中継メール・プロキシの各サーバがL2SW1に接続し、FW、ルータ1経由でインターネットへ接続。L3SWの配下にL2SW2(ファイル・販売管理・営業支援・DHCPサーバ)、L2SW3、営業部フロアのL2SW4とNPCがある構成図。
表1 IEEE 802.11で使用される周波数帯。規格、周波数帯、伝送速度の表。802.11nは空欄a GHzと空欄b GHzで最大600Mビット/秒、802.11acは空欄b GHzで最大6.93Gビット/秒。
表1 IEEE 802.11で使用される周波数帯。規格、周波数帯、伝送速度の表。802.11nは空欄a GHzと空欄b GHzで最大600Mビット/秒、802.11acは空欄b GHzで最大6.93Gビット/秒。
表2 無線LANのアクセス制御方式。アクセス制御方式と機能の表。SSID(又はESSID)、空欄cの接続拒否(SSIDが空白又は空欄cでの接続要求を拒否)、SSID隠蔽、MACアドレスフィルタリング、IEEE 802.1X認証の各機能を説明。
表2 無線LANのアクセス制御方式。アクセス制御方式と機能の表。SSID(又はESSID)、空欄cの接続拒否(SSIDが空白又は空欄cでの接続要求を拒否)、SSID隠蔽、MACアドレスフィルタリング、IEEE 802.1X認証の各機能を説明。
表3 無線LANのデータ暗号化方式。WEP(RC4を使用した空欄d鍵暗号方式)、WPA(RC4とTKIPで暗号強度を高めた方式)、WPA2(AESとCCMPを使用したIEEE 空欄e準拠の方式)の3方式を説明する表。
表3 無線LANのデータ暗号化方式。WEP(RC4を使用した空欄d鍵暗号方式)、WPA(RC4とTKIPで暗号強度を高めた方式)、WPA2(AESとCCMPを使用したIEEE 空欄e準拠の方式)の3方式を説明する表。
図2 カウンタモードによる暗号化手順。カウンタ値c、c+1、…、c+nをそれぞれ暗号鍵を使ってAESで暗号化し、その結果と平文ブロックm1、m2、…、mnをXORして暗号文ブロックe1、e2、…、enを得る手順を示す図。
図2 カウンタモードによる暗号化手順。カウンタ値c、c+1、…、c+nをそれぞれ暗号鍵を使ってAESで暗号化し、その結果と平文ブロックm1、m2、…、mnをXORして暗号文ブロックe1、e2、…、enを得る手順を示す図。
図3 営業部フロアへのAPの設置イメージ。営業部オフィスエリアに2行4列の8台、接客エリアに2行2列の4台のAPを配置し、各APのセル(円)が隣接するAPのセルと重なるように配置された平面図。
図3 営業部フロアへのAPの設置イメージ。営業部オフィスエリアに2行4列の8台、接客エリアに2行2列の4台のAPを配置し、各APのセル(円)が隣接するAPのセルと重なるように配置された平面図。
図4 既設LANに無線LANシステムを導入したときのLAN構成(抜粋)。図1の構成に、新規導入のルータ2、L2SW5、AP、WLC、RADIUSサーバ、ダウンロードサーバを追加した構成図。L2SW2にWLC等を接続し、L3SW-L2SW5間の㋒、L2SW5-AP間の㋑、AP-NPC間の㋐、ルータ2-L2SW5間の㋓の箇所記号がある。
図4 既設LANに無線LANシステムを導入したときのLAN構成(抜粋)。図1の構成に、新規導入のルータ2、L2SW5、AP、WLC、RADIUSサーバ、ダウンロードサーバを追加した構成図。L2SW2にWLC等を接続し、L3SW-L2SW5間の㋒、L2SW5-AP間の㋑、AP-NPC間の㋐、ルータ2-L2SW5間の㋓の箇所記号がある。
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判断の前提と適用範囲をそろえる

検討するときは、各情報がどの前提条件の下で成り立つものなのかに注目しましょう。条件の異なる情報をそのまま結び付けず、同じ範囲の話として扱えるかを確かめることが、考えを整理する手掛かりになります。

この問題で問われていること

この問題では、与えられた情報の前提条件を、どこまで共通して扱えるかという一点に着目してください。明示された条件と自分で補った想定を区別し、適用範囲を広げて受け取っていないかを丁寧に確かめましょう。

視点

前提条件は、情報をどの範囲で扱うかを考えるための手掛かりです。ある条件の下で述べられた内容を、別の条件にも当てはまると考える前に、その読み方が与えられた情報に支えられているかを確認しましょう。

確認ポイント

  • 情報が成り立つ前提条件を意識しているか
  • 明示された条件に、自分の想定を加えていないか
  • 条件の適用範囲を、根拠なく広げていないか
正解と解説を見る

解説

本問は、営業部のフリーアドレス化に伴う無線LAN導入を題材に、無線規格と暗号化・認証、APの配置と給電、証明書の配布・更新、営業員と来訪者のVLAN分離を一体として設計する力を問います。

問題の全体像

Y社は営業部の座席をフリーアドレス化して接客エリアを拡大し、来訪者にもインターネット接続を提供しようとしています。営業員にはWPA2とEAP-TLSによる認証、来訪者にはパーソナルモードによる接続を用い、両者をVLANで分離します。出題趣旨では、無線LAN導入に必要な技術面と運用面の課題について、設計・構築・運用の能力を実務で活用できるかを問うとしています。無線性能だけでなく、証明書の初回配布や更新、WLC障害時の影響まで読み取ることが重要です。

設問1(a)

表1では、802.11nに二つの周波数帯が示されています。公式解答例ではaは「2.4」です。単位のGHzは表に印刷されているので、空欄には数値を入れます。802.11nが2.4GHz帯と5GHz帯に対応することを押さえます。

設問1(b)

bは表1の802.11nと802.11acに共通する周波数帯です。公式解答例では「5」です。表を完成させると、802.11nは2.4GHz帯と5GHz帯、802.11acは5GHz帯を使用するという関係になります。

設問1(c)

表2の「SSIDが空白又は[c]での接続要求を拒否する機能」という説明に着目します。公式解答例では「any」です。「any接続拒否」という機能名と、接続先のSSIDを明示しない要求を拒否する説明を対応付けます。

設問1(d)

表3のWEPの説明は「RC4と呼ばれる暗号化アルゴリズムを使用した[d]鍵暗号方式」です。公式解答例では「共通」です。本文にもAPと複数の端末がWEPキーを共有するとあり、鍵を共有する共通鍵暗号方式と結び付けられます。

設問1(e)

表3では、AESとCCMPを使用するWPA2が準拠するIEEE規格を問うています。公式解答例では「802.11i」です。採点講評では、この空欄の正答率が低かったとし、IEEE 802.11iは幅広く利用されている無線LANのセキュリティ規格なので知っておいてほしいと述べています。

設問2(1)(f)

「1バイト単位の[f]暗号であるRC4」という記述に着目します。公式解答例では「ストリーム」です。RC4を用いるストリーム暗号と、後段で説明される一定サイズのブロック単位で処理するAESのブロック暗号を区別します。

設問2(1)(g)

WEPの不採用理由として、WEPキーが使用され続けることが挙げられています。公式解答例では「同一」です。APと端末が共有する同一のWEPキーを継続して使う点を、WPAの動的な鍵生成や通信途中のキーストリーム変更と対応させて読み取ります。

設問2(1)(h)

hは、本文で認証成功後のPMKの生成・配布を担うものとして説明され、後続の一時鍵の生成に関する記述にも現れます。公式解答例では「認証サーバ」です。本問の空欄は本文の説明に従って補い、IEEE 802.1Xによる認証と鍵生成に関わる主体を押さえます。

設問2(1)(i)

TKIPのフェーズ1で、一時鍵、IVとともに混合する無線LAN端末の情報を問うています。公式解答例では「MACアドレス」です。端末を識別するMACアドレスが鍵混合の材料に含まれるという対応を押さえます。

設問2(1)(j)

空欄の直後では、AP間を移動するタイミングでの認証が不要になり、ハンドオーバ時間が短縮されると説明されています。公式解答例では「認証」で、「事前認証」となります。移動前に認証を済ませることと、PMKを保持して再生成を省くことを分けて理解します。

設問2(2)

図2では、カウンタ値cをAESで暗号化した結果とm1をXORしてe1を生成しています。同じ値をもう一度XORすると元の値に戻るため、復号時もcをAESで暗号化し、その結果をe1とXORします。公式解答例もこの手順を示しています。40字以内では「カウンタ値cをAESで暗号化し、結果とe1をXORする。」とまとめられます。

設問3(1)周波数帯域幅

検討中のAPは最大80MHzの4チャネルボンディングに対応するという条件に着目します。本文の160MHz・アンテナ1本で約867Mビット/秒という基準から、80MHzではアンテナ1本当たり約433.5Mビット/秒となり、2本で約867Mビット/秒になります。公式解答例では周波数帯域幅は「80」で、単位を付けると80MHzです。

設問3(1)アンテナ本数

APの最大帯域幅は80MHzなので、160MHzを使ってアンテナ1本で約867Mビット/秒を得る構成は選べません。80MHzでアンテナ1本当たり約433.5Mビット/秒を得て、MIMOで2ストリームを同時伝送する構成を考えます。公式解答例では最低限必要なアンテナ本数は「2」です。

設問3(2)①

下線③では、認証後の端末通信がWLCを経由しないと明記されています。各APから有線LANへデータを転送するため、全端末の通信をWLCに集める方式と比べて、WLCへの通信負荷の集中を抑えられます。公式解答例の一つ目もこの点です。40字以内では「WLCに通信の負荷が集中するのを抑制できる。」とまとめられます。

設問3(2)②

認証後のデータ転送はAPが担当し、WLCを経由しません。このため、認証済み端末はWLCに障害が発生しても通信を継続できるという利点があります。公式解答例の二つ目もこの点です。40字以内では「認証後にWLCが故障しても、端末の通信を継続できる。」と書けます。ただし、AP間の移動に関する影響は設問5(5)で別に問われています。

設問3(3)

外来電波の調査は、APの電波伝搬状態の測定と合わせて行われます。着目すべき悪影響は、他の電波との干渉によって無線通信が妨げられることです。公式解答例では「電波干渉によって、通信障害が発生する。」としています。25字以内の答案では、原因の電波干渉と結果の通信障害を押さえます。

設問3(4)周波数帯のグループの数

図3の上下2段で隣り合う2列を見ると、四つのAPのセルが相互に重なる配置になっています。この四つに同じ周波数帯のグループを割り当てないためには、少なくとも4グループが必要です。離れたセルではグループを再利用できます。公式解答例では「4」です。

設問3(4)目的

セルの重なりがある場所では、端末が移動するときに接続先APを切り替えやすくなり、複数のAPを接続先の候補にできます。公式解答例では「ハンドオーバをスムーズに行わせるため」と「APの負荷分散を行わせるため」を挙げています。25字以内では、例えば「ハンドオーバをスムーズに行わせるため」と、一つの目的を簡潔に示します。

設問3(5)呼称

本文では、最大18Wを消費するAPに対してIEEE 802.3afでは供給電力が不足し、IEEE 802.3at対応のL2SWを導入するとしています。公式解答例では、そのPoE機能の呼称は「PoE+」です。採点講評では、この呼称の正答率が低かったとし、技術者間の会話でも使われる用語として知っておいてほしいと述べています。

設問3(5)最小供給電力

オフィスエリアのAP8台と接客エリアのAP4台を、1台のL2SWから給電するという条件を使います。APは合計12台で、1台の最大消費電力は18Wなので、18×12=216Wです。公式解答例では最小供給電力を「216」としています。1ポートの給電能力と、スイッチ全体に必要な給電電力を区別します。

設問4(1)①

EAP-TLSでは、NPCが認証サーバの証明書を検証するための情報も必要です。本問ではRADIUSサーバのCA機能で証明書を発行するため、そのCAを信頼するための証明書をNPCに配布します。公式解答例では「CAの自己証明書」です。この表現で15字以内に収まります。

設問4(1)②

NPCがクライアント証明書を使って認証を受けるには、その証明書に対応する秘密鍵が必要です。証明書だけを受け取っても、対応する秘密鍵を用いた認証処理はできません。公式解答例では「クライアントの秘密鍵」です。採点講評でも、証明書による認証の仕組みと認証時に必要な情報を理解するよう求めています。

設問4(2)

認証エラー時の特別なVLANにダウンロードサーバを置くと、正規のクライアント証明書を持たない端末からもサーバへ接続できます。そこでダウンロードサーバの利用者IDとパスワードが漏えいすると、来訪者も証明書などを取得できてしまいます。公式解答例もこの問題を挙げています。60字以内では「ダウンロードサーバの認証情報が漏えいすると、来訪者も証明書などを取得できる。」とまとめられます。

設問4(3)

有線LAN撤去後は、証明書を取得するために無線LANの認証を通過する必要があります。公式解答例では「クライアント証明書の有効期限を切らせた営業員」と「無線LAN導入後に営業部に配属された営業員」を挙げています。前者は有効な証明書を失い、後者は初回の証明書をまだ取得していない状況です。25字以内の答案では、例えば「クライアント証明書の有効期限を切らせた営業員」と対象を具体的に示します。

設問5(1)サプリカントとなる機器

サプリカントは、IEEE 802.1Xで認証を受ける側の機器です。本問では営業員のNPCがクライアント証明書を使ってEAP-TLSによる認証を受けるため、該当する機器はNPCです。公式解答例でも「NPC」としています。

設問5(1)オーセンティケータとなる機器

本文では、NPCとWLC間で認証情報を交換し、WLCが利用者認証後に対応するVLANをAPへ設定するとしています。この構成で認証の可否に基づく処理を担うのはWLCです。公式解答例では「WLC」としています。採点講評も、WLCがRADIUSサーバへ問い合わせ、その結果を基に認証の可否を処理するという本文の記述から導くよう説明しています。

設問5(2)①

来訪者のNPCには、接続先の無線LANを識別する情報が必要です。本文では、APがESSIDに対応した来訪者向けのVLAN200を割り当てると説明されています。公式解答例の一つ目は「ESSID」です。来訪者用の無線LANを選ぶ情報として押さえます。

設問5(2)②

来訪者はWPA2又はWPAのパーソナルモードで接続するため、事前に共有する鍵の情報が必要です。公式解答例の二つ目は「PSK」です。接続先を識別するESSIDと、その接続に使う事前共有鍵を対にして考えます。

設問5(3)

接客エリアのAPでは、営業員のVLAN100と来訪者のVLAN200を同時に扱います。そのため、APとL2SW5を結ぶ有線区間では、フレームがどちらのVLANに属するかをタグで識別する必要があります。図4の該当箇所は㋑で、公式解答例でも「㋑」です。

設問5(4)

来訪者のVLAN200は、社内側のL3SWへ接続させず、DHCP機能を持つルータ2へ接続させます。AP側ではタグVLANで受け取り、ルータ2へ接続するポートをVLAN200のポートVLANにします。公式解答例では、その設定先を「ルータ2への接続ポートだけ」としています。40字以内では「ルータ2への接続ポートだけにVLAN200のポートVLANを設定する。」とまとめられます。

設問5(5)問題

認証後のデータ通信はWLCを経由しない一方、AP間のハンドオーバはWLCの制御機能を使います。このため、WLC障害時には現在のAPでの通信継続と、別のAPへの移動を区別して考えます。公式解答例では問題を「ハンドオーバができなくなる。」としています。この表現で20字以内に収まります。

設問5(5)理由

本文のWLCの機能に「PMKの保持などによるハンドオーバ制御」がある点に着目します。公式解答例では、NPCに配布したPMKと認証関連情報がWLCで保持されていることを理由としています。40字以内では「NPCのPMKと認証関連情報をWLCが保持しているため」とまとめられます。採点講評でも、PMKの保持方法とWLCの機能を結び付けて考えるよう求めています。

設問5(6)

営業員はVLAN100を使い、認証後のデータ通信はWLCを経由せず、従来どおりDMZのプロキシサーバ経由でインターネットへアクセスします。図4をたどると、プロキシまでの経路と、プロキシから外部への経路でL2SW1とFWを再び通ります。公式解答例に従う転送経路は「NPC→AP→L2SW5→L3SW→FW→L2SW1→プロキシサーバ→L2SW1→FW→ルータ1→インターネット」です。来訪者用のルータ2と、認証処理を担うWLCはこの経路に含めません。

学習のポイント

WLCの認証・ハンドオーバ制御とデータ転送の違い、EAP-TLSに必要な情報、証明書更新の接続条件、VLAN別の通信経路を重点的に学習します。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成29年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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