NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ

平成27年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅰ 問1

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

シングルサインオンの導入に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。 A 社は、新興の広告代理店である。A社ではここ数年、業務の拡大傾向が続き、 営業システムや広告システムなど、PC の Web ブラウザからアクセスされる Web ア プリケーションを導入してきた。これらのWebアプリケーションの利用者認証は、 それぞれ個別に行っている。しかし、この方法は利用者の利便性が低いことから、 情報システム課に改善の要望が出されていた。 そこで、情報システム課のB課長は利用者からの改善要望を踏まえ、全ての社内 Webアプリケーションの認証を共通化するために、シングルサインオン(以下、 SSO という)の導入を考えた。SSOを導入すると、利用者は一度の認証操作で複数 のシステムの利用が可能となる。 [SSO の導入] 情報システム課は、A社の全システムにSSOを本格導入する前に、試験的に営業 システムと広告システムに SSOを導入することにした。そこで、B 課長が要件をと りまとめ、ネットワーク担当のC氏に検討を指示した。その指示の内容を次に示す。 ・PCからアクセスされる、営業システムと広告システムを対象範囲として、SSOを 可能にする。 ・SSO サーバは、障害に備えて負荷分散装置(以下、LB という)によって二重化を 行う。 ・LBは、DSR (Direct Server Return)方式を使用する。 ・関連するシステムのURLを、表1のように設定する。 表1 関連するシステムの URL システム名称 サーバ名称 URL 備考 SSO システム SSO サーバ http://sso.a-sha.example.jp 新規 営業システム 営業サーバ http://eigyou.a-sha.example.jp 現状のまま 広告システム 広告サーバ http://koukoku.a-sha.example.jp 現状のまま C氏が検討したA社のシステム構成を、図1に示す。 = 2 - A社 ルータ VIPアドレス LB VIPアドレス:仮想IPアドレス SW1、 SW2: レイヤ2スイッチ SW1 SW2 SSOサーバ1 SSOサーバ2 PC PC 営業 広告 サーバサーバ 内部DNSサーバ 注記 網掛け部分は、導入検討中の機器を示す。 図1 C氏が検討したA社のシステム構成(抜粋) [SSO についての検討] C氏はHTTP を用いたSSOの方式と認証処理シーケンスについて検討した。SSO の方式を分類すると、SSO で利用したいサーバにエージェントと呼ばれるソフトウ エアモジュールをインストールして実現するエージェント方式と、SSO サーバにお いて全ての通信の中継を行う【ア】方式がある。C氏は、エージェント方式の 検討を行い、エージェント方式を採用することにした。 エージェント方式における SSO認証処理のシーケンスは、次のとおりである。 1 PCからWebアプリケーションサーバに、サービス要求を行う。 2 Web アプリケーションサーバ内のエージェントは、サービス要求中の Cookie に認証済資格情報(以下、アクセスチケットという)が含まれているか確認す る。含まれていなければ、サービス要求は SSO サーバへ【イ】される。 3 SSO サーバからPCに、認証画面を送る。 4 PCからSSO サーバに、UserIDとPassword を送出する。 5 SSO サーバは、UserIDとPassword から利用者のアクセスの正当性を確認し たら、アクセスチケットを発行して、Cookie に含めて応答を返す。サービス要 求は、Web アプリケーションサーバへ【イ】される。 6 Web アプリケーションサーバ内のエージェントは、SSO サーバにアクセスチ ケット確認要求を送り、SSOサーバは、確認して応答を返す。 7 Webアプリケーションサーバは、6の応答によって利用者のアクセスの正当 性が確認できた場合、Webアプリケーション画面を送出する。 エージェント方式における SSO 認証処理のシーケンスの1~7を図示すると、 図2のようになる。 Webアプリケーション PC サーバ SSOサーバ サービス要求 → 応答 SSOサーバアクセス 認証画面 User ID/Password 送出 応答 サービス要求 → アクセスチケット確認要求 → 応答 Webアプリケーション画面 図2 エージェント方式におけるSSO認証処理のシーケンス 〔SSO サーバの動作確認] C氏は、図 1と同等構成の検証環境を本番環境とは別に用意し、SSO サーバを構 築した。また、営業サーバと広告サーバには、エージェントのインストールを行っ た。 検証環境を構築した後、動作確認として営業システムへのアクセスを行ったとこ ろ、認証画面が表示されるところまでは想定どおり動作したが、UserID と Password を正しく入力しても、営業システムの画面に遷移せず、SSOとして正しく動作しな かった。原因を調査したところ、SSO サーバから送出される HTTP 応答パケットの【ウ】ヘッダフィールドに、Domain 属性が付与されていないからであった。 そこで、表 1中のURL 情報を参照して、SSO サーバの設定項目中の(I) Cookie のDomain 属性を設定した。その結果、営業システムと広告システムにおいて SSO が正しく動作するようになった。 SSOで Cookieを用いる場合、Cookie が漏えいしたときにセキュリティの問題が生 じる。そこで、(II)Cookieが平文でネットワークを流れないよう、表1中のサーバ から返される全てのページを SSL/TLS対応ページに変更した。 = 4= 〔負荷分散に関する設定と動作確認〕 C氏は、検証環境において、図1と同じように、LBをSW2に接続してVIPアド レスと負荷分散ポリシを設定するとともに、PCから sso.a-sha.example.jp への認証リ クエストの宛先がこのVIPアドレスとなるように、【エ】サーバに設定を行っ た。SSO サーバをDSR 方式で負荷分散するときのLBの動作の要点を次に示す。 (1) PCから SSO サーバへのリクエストは、LBに設定されたVIPアドレスに送ら れ、LBは当該リクエストを負荷分散ポリシに従って、SSOサーバ1又は SSO サ ーバ2に転送する。 (2) 振り分け先については、TCP コネクション確立のためのSYN パケットがPCか ら届いた時点で、決定される。 (3) 振り分け先として決定された SSO サーバにリクエストパケットが転送される が、このリクエストパケットの宛先アドレスはVIPアドレスのままである。 要点(2)の動作から、DSR方式のLBは(III) Cookie などのレイヤ7の情報を基 にして振り分け先サーバを選定するような方式には対応できないことに注意する必 要がある。 要点(3)の動作から、SSO サーバは、自IPアドレスと異なるVIPアドレス宛ての パケットを受信しなければならない。そこで、VIPアドレスを付与した【オ】インタフェースをSSOサーバに設定することにした。 C氏が【オ】インタフェースをSSOサーバに設定した後にLBを再起動した ところ、(IV)IPアドレス重複エラーが検知された。そこで、このエラーの原因を調 査し、(V)SSO サーバに ARP 関連の設定を加えて対処した。この対処によってエ ラーが解消され、想定どおりに動作することが確認された。 その後、A社は、営業システムと広告システムを対象範囲とする SSO システムを 正式に導入することにした。 設問1 本文中の【ア】~【オ】に入れる適切な字句を答えよ。 設問2 図 2中の6で確認が行われるアクセスチケットは、PC に対して発行され たものである。PCはどの時点でアクセスチケットを得るかを、図2中の1 〜7の番号で答えよ。 設問3 [SSO サーバの動作確認〕について、(1)、(2)に答えよ。 (1) 本文中の下線(I)で、CookieのDomain 属性として設定した具体的な ドメイン名を答えよ。 (2) 本文中の下線(II)について、その対策を行っても、予期しなかったコ ネクションを介して、Webブラウザから Cookie が平文で、ネットワーク上 に意図せず流れてしまう可能性がある。これを防ぐために、SSOサーバが Cookieを発行するときに実施すべき方策を、25字以内で述べよ。 設問4 〔負荷分散に関する設定と動作確認〕について、(1)~(3)に答えよ。 (1) 本文中の下線(III)の理由を、30字以内で述べよ。 (2) 本文中の下線(IV)で、IPアドレス重複エラー検知に用いられるARPの 名称を答えよ。 (3) 本文中の下線(V)の対処について、SSOサーバに対してどのような設 定を行ったか。40字以内で述べよ。 = 6 =
表1 関連するシステムのURL。SSO・営業・広告システムのサーバ名とURLを示す。
表1 関連するシステムのURL。SSO・営業・広告システムのサーバ名とURLを示す。
図1 C氏が検討したA社のシステム構成。ルータ・LB・SSOサーバ・PC等を示す。
図1 C氏が検討したA社のシステム構成。ルータ・LB・SSOサーバ・PC等を示す。
図2 エージェント方式におけるSSO認証処理のシーケンス。①から⑦の通信を示す。
図2 エージェント方式におけるSSO認証処理のシーケンス。①から⑦の通信を示す。
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認証処理と負荷分散の着眼点

選択肢を比べるときは、認証を成立させるための役割分担と、複数の処理先へ要求を振り分ける設計を混同せず、両者の関係を一つの観点から整理して丁寧に見ます。

この問題で問われていること

焦点は、利用者の認証要求がどの構成要素を経由し、負荷分散の対象と対象外がどこに分かれるかを、処理の責務と要求の流れに沿って確認することです。この視点を保ちます。

視点

認証に関わる役割、要求の流れ、処理を受け持つ単位を切り分け、構成要素同士の依存関係と、負荷を分散する対象の範囲を同じ基準で照らし合わせます。

確認ポイント

  • 認証要求の開始点と到達先を、構成要素の役割に沿って追う
  • 負荷分散の対象が、認証処理そのものか周辺処理かを区別する
  • 説明に現れる前提条件と処理の順序が、全体の構成と矛盾しないか確かめる
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解説

本問は、Cookieを利用したエージェント方式のSSO認証と、DSR方式によるSSOサーバの負荷分散を題材に、HTTP通信、DNS、Cookie属性、VIP、ARPの知識を総合的に確認する問題です。

問題の全体像

A社は複数のWebアプリケーションで個別に行っていた認証を共通化するため、営業システムと広告システムにSSOを試験導入する。本文では、エージェント方式の認証処理、Cookieの共有範囲と漏えい対策、さらにLBによるSSOサーバのDSR方式負荷分散を扱っている。出題の狙いは、アプリケーション層のSSOと、パケットレベルの負荷分散・VIP・ARPを一連の通信として理解しているかを確認することです。

設問1(ア)

エージェント方式は各Webサーバにソフトウェアを導入する方式であり、対比されるのはSSOサーバが通信を中継する方式です。本文の「SSOサーバにおいて全ての通信の中継を行う」という説明から、公式解答例の「リバースプロキシ」が入る。

設問1(イ)

アクセスチケットがない場合、Webアプリケーションサーバが認証処理へ利用者を送り、認証後は元のサービス要求へ戻す。HTTPでこのように別のURLへ誘導する操作は「リダイレクト」であるため、両方の空欄に同じ語が入る。

設問1(ウ)

SSOサーバは認証後、アクセスチケットをCookieに含めてPCへ返す。HTTP応答でCookieを設定するヘッダフィールドは「Set-Cookie」なので、本文のヘッダ名としてこれを答える。

設問1(エ)

PCからsso.a-sha.example.jpへの名前解決結果をLBのVIPアドレスにする必要がある。図1には内部DNSサーバがあり、社内利用の名前解決を担うため、設定先は「内部DNS」サーバとなる。

設問1(オ)

DSRでは転送されたパケットの宛先がVIPアドレスのままなので、SSOサーバ自身がVIP宛てのパケットを受信できる必要がある。サーバにVIPを設定するインタフェースとして、公式解答例の「ループバック」が入る。

設問2

図2の⑤では、SSOサーバが認証成功後にアクセスチケットをCookieへ含めてPCへ返している。この時点でPCがチケットを取得し、その後の⑥でWebアプリケーションサーバがチケットをSSOサーバに確認させるため、答えは⑤です。

設問3(1)

営業サーバと広告サーバの両方で同じCookieを利用するには、個別のホスト名ではなく共通の上位ドメインをDomain属性に指定する。表1のホスト名はいずれもa-sha.example.jp配下なので、設定値は「a-sha.example.jp」となる。

設問3(2)

全ページをSSL/TLS化しても、Cookie自体がHTTP通信で送信される可能性が残る。Cookie発行時にSecure属性を付ければ、ブラウザはHTTPS通信時だけCookieを送信するため、公式解答例の「CookieにSecure属性を付ける」となる。25字以内では、この属性名と付与する対策を簡潔に書く。

設問4(1)

DSRの振り分け先はTCPコネクション確立のためのSYNパケット到着時に決定される。SYNはTCP接続開始用で、Cookieのようなレイヤ7情報を含まないため、Cookieなどを基準に選定できない。30字以内では「SYNパケットにはレイヤ7情報が含まれていないから」という因果を押さえる。

設問4(2)

LB再起動時などにIPアドレスの重複を検知するため、IPアドレスの所有を周囲へ通知するARPが用いられる。公式解答例では名称を「Gratuitous ARP」とし、「GARP」も示されている。

設問4(3)

VIPはLBが使用する仮想アドレスであり、SSOサーバがARP応答するとLBとの重複が発生する。そのため、SSOサーバではVIPアドレスに対するARPリクエストへ応答しないよう設定する。40字以内では、VIP宛てARPへの非応答という対処を明記する。

学習のポイント

SSOの認証シーケンスと、DSRでVIPを扱うためのARP設定を重点的に学ぶ。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成27年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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