NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ

平成24年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 ネットワークシステムの再構築に関する次の記述を読んで,設問1~5に答えよ。 A社は,従業員300名のコンピュータ関連製品の販売会社で,営業所が2か所ある。主に販売店経由で製品を販売しているが,一部の製品については,エンドユーザに直接販売している。A社では,販売店向けの販売店支援システムとエンドユーザ向けのインターネット販売システムを,Webサーバで稼働させている。 本社では,販売,購買,会計などの業務処理を支援する業務システムのサーバ(以下,業務サーバという)を,4台運用している。A社の現在のネットワークシステム構成を,図1に示す。 図1 A社の現在のネットワークシステム構成(抜粋) 〔ネットワークシステムの運用と利用〕 ネットワークシステムの運用は,本社の情報システム部が行っており,サーバ担当とネットワーク担当が役割を分担している。サーバ担当とネットワーク担当は,自席のPCとサーバルームのPCを使用して,サーバとLANの運用管理を行っている。 従業員は,自席のPCで各業務システムやインターネットを利用している。各業務サーバへのアクセスには,本社に設置された社内用DNSサーバを利用している。本社から営業所のLANへのアクセスは,サーバ担当とネットワーク担当だけが行っている。本社のPCのデフォルトゲートウェイには,FWのIPアドレスが設定されているので,営業所のLANにアクセスしようとする場合,パケットは,一旦,FWに送信されてしまう。その後,FWからPC宛てに送信される【ア】リダイレクトパケットによって,ルータ1が営業所のLANへのゲートウェイとなるが,余計なパケット転送が行われることになる。これを避けるために,サーバ担当とネットワーク担当が使用するPCだけには,営業所のLANにアクセスするための情報が登録されている。 〔障害の発生と対処〕 ある日,A社では,業務サーバ1で稼働する業務システムが利用できなくなった。連絡を受けた情報システム部では,まず,ネットワーク担当のM君が,自席のPCから業務サーバ1宛てにpingコマンドを発行したが,応答がなかった。そこで,サーバ担当のR君がサーバルームに行き,業務サーバ1のLANポートのリンク状態を示すランプを確認したところ,消灯していたので,M君と対応策について相談した。2人は①障害箇所を三つ想定し,接続を順に変更したところ,ランプが正常動作を表す点滅状態になった。R君は,サーバルームのPCから業務サーバ1にアクセスし,サーバが復旧したことを確認した。全社員には,業務サーバ1が復旧したことと,処理中のデータが消失した場合の対処方法を通知した。しかし,データの復旧を含めて,業務サーバ1での業務が約3時間停止してしまった。 復旧後,R君とM君は情報システム部のJ部長に,障害の経過報告を行った。J部長は,業務システム停止の影響が全社に及んだことから,早急にネットワークシステムを見直さなければならないことを痛感した。また,J部長は将来を見据えて,インターネットにおけるIPv4アドレスの枯渇に備えて,技術者にIPv6を体験させて,社内にIPv6の技術を蓄積しようと考えていた。R君とM君は,J部長の指示に従って,ネットワークシステムの問題点を洗い出し,J部長の考えを基に対応策を立案することになった。 〔ネットワークシステム再構築範囲の検討〕 R君とM君は,現状を調査した。今回の障害は,業務システム利用に関連するネットワーク機器が単一構成であったために回避できなかったので,これらの機器を冗長構成にする対応策を考えた。各サーバにはLANポートが二つ実装されているが,スイッチが単一構成なので,一つだけを使用している。そこで,サーバのLANポートを二つ使用することにして,PCを接続するスイッチからサーバにアクセスする経路(以下,アクセス経路という)を冗長化する。 FWとルータ1については,経路に障害が発生したとき,配線変更で対処する。 IPv6への第1ステップの取組みとしては,インターネット経由でIPv6端末からもWebサーバを利用できるように,IPv4とIPv6を変換する装置(以下,トランスレータという)を導入することにする。 2人は,これらを対応策としてまとめ,J部長に報告した。対応策がJ部長に承認され,2人は,ネットワークシステム再構築のためのネットワーク基盤の設計を指示された。 〔A社におけるネットワーク基盤の設計方法〕 A社では,ネットワーク基盤の設計を,方式設計と詳細設計の2段階で行っている。各設計段階の作業概要と設計書の記述項目を,表1に示す。 表1 各設計段階の作業概要と設計書の記述項目 〔WebサーバのIPv6対応策の方式設計と詳細設計〕 R君とM君は,トランスレータについて調査した。調査結果は次のとおりである。 トランスレータは,NATの延長線上の技術である。NATは,【イ】を変換するのに対し,トランスレータは,IPヘッダを変換し,必要に応じてポート番号も変換する。 IPヘッダの変換には様々な処理が必要である。IPv4ヘッダとIPv6ヘッダは,それぞれ20バイト,【a】バイトと長さが異なる。IPv6のIPアドレスは【b】ビットであり,それによって表せるIPアドレス数は,IPv4と比較して2の【c】乗倍である。また,IPv6には,標準ヘッダの他に,フラグメントヘッダやルーティングヘッダといった,IPv4にはない【ウ】ヘッダが導入されている。また,IPv4では,経路中のルータが必要に応じてパケットを分割することができるが,IPv6では許されていないという違いもある。トランスレータは,これらの違いを吸収して,IPv4とIPv6を相互変換している。 IPv6端末が,トランスレータを介してIPv4サーバにアクセスする際,サーバのIPv4アドレスはIPv6アドレスに対応付けられる必要がある。このIPv6アドレスは,トランスレータに設定する変換用プレフィックスを基に生成される。トランスレータは,IPv6端末がIPv4サーバ宛てに送信したパケットを受信すると,宛先のIPv6アドレスに変換用プレフィックスが含まれているかどうかをチェックする。変換用プレフィックスが含まれていれば,そのIPv6アドレスから宛先となるIPv4アドレスを抽出して,IPv4サーバとの通信を中継する。 2人は,トランスレータのこれらの機能を基に,WebサーバをIPv6端末に公開する構成を,図2のようにまとめた。 図2 WebサーバをIPv6端末に公開する構成 図2に示した構成は,DNSサーバにAAAAレコードを追加するだけなので,既設機器の変更が簡単で,Webサーバの稼働にほとんど影響を与えない。 M君は図2の構成を実現するための,WebサーバのIPv6対応策の方式設計書を作成した。 この方式設計を基に,R君とM君はB社のトランスレータを選定し,B社の技術者のT氏に詳細設計を依頼した。数日後,T氏から,トランスレータの導入までの手順や動作概要が記載された資料が提出された。T氏から提出された資料を,図3に示す。 図3 T氏から提出された資料(抜粋) 〔アクセス経路の冗長化の方式設計と詳細設計〕 次に,R君とM君は,アクセス経路の冗長化の方式を検討した。設計した構成は,各サーバからスイッチへの接続の二重化とスイッチの二重化による経路の冗長化である。2人は,図4に示すアクセス経路の冗長構成をまとめた。図4の構成では,PCの設定やIPアドレス体系の変更を伴わないので,既存環境の変更を最小限に抑えられる。 PCはセキュリティ面から,管理PCと利用者PCに分ける。管理PCは,情報システム部だけが所有し,ネットワークシステムの運用管理に使用される。利用者PCは,全社員が所有し,各種業務に使用される。PCを使い分けるのに伴い,業務用のLANと管理用のLANとをVLANで分離する。 2人は,図4の冗長構成を実現するための方式設計書を作成した。 図4 アクセス経路の冗長構成 次に,R君とM君は,図4の構成で要件どおり動作することを検証するために,テスト用サーバ1台とスイッチ5台を調達して,図4の冗長構成のテスト環境を構築した。SW1~SW5には,IEEE 802.1Dで規定されているSTP(Spanning Tree Protocol)を設定した。各スイッチに設定したSTP関連の情報を,表2に示す。 表2 各スイッチに設定したSTP関連の情報 テスト用サーバの二つのLANポートは,アクティブスタンバイ構成に設定した。 PCからサーバへのアクセステストの構成と結果を,表3に示す。 表3 PCからサーバへのアクセステストの構成と結果 表3の項番2のテストは,SW1とSW2の接続ケーブルを抜いてから,ツリーの再構成が完了するまで,約1分間待ってから行った。項番3のテストは,図4の構成に戻した後,SW1とSW5の接続ケーブルを抜いてから,同様の時間をおいて行ったが,【エ】PCから②サーバにアクセスできなくなった。このとき,ブロックされたポートの状態が想定したものと異なっていたので,2人は原因究明に取り組んだ。 STPを調査したところ,今回設定したSTPは,ツリーをVLANごとに構成できないことが分かった。詳しく調べると,VLANごとにツリーを構成するためには,IEEE 802.1sで規定されているMSTP(Multiple Spanning Tree Protocol)を使うことが必要であった。 MSTPは,複数のVLANをインスタンスと呼ばれるグループにまとめ,インスタンス単位でスパニングツリーの計算を行う。このとき,インスタンスごとにルートブリッジ及びブロッキングポートが決定され,インスタンス単位にツリーが構成される。図4中のSW1~SW5で,VLAN10とVLAN20にそれぞれ異なったインスタンス番号を割り当て,MSTPを設定する。このMSTPの設定に加え,パスコスト,ブリッジID及びポートIDの値を表2の状態のままにすると,表3の項番3のテストで問題は発生しないはずである。 以上の検証や調査結果を基に,R君とM君は,図4の冗長構成のテスト環境にMSTPを設定して動作テストを行い,要件どおりの動作を確認した。そこで,図4の冗長構成にMSTPを稼働させることにし,方式設計書を修正した後,詳細設計を行った。 〔ネットワークシステムの再構築作業〕 R君とM君が作成した,再構築後のネットワークシステム構成を,図5に示す。 図5 再構築後のネットワークシステム構成(抜粋) IPv6インターネット回線の設置工事は既に完了していたので,WebサーバのIPv6対応作業を実施した。トランスレータの設置は,B社に委託した。M君は,トランスレータの設置作業日を休日に設定し,当日,DNSサーバの設定変更も並行して行った。トランスレータの設置作業とDNSサーバの設定変更作業が完了した後,B社の技術者がT氏の指示に従って,B社内のIPv6環境からインターネット経由で,A社のWebサーバにアクセスして動作テストを行った。動作テストは問題なく完了したので,トランスレータを本稼働させた。後日,B社から,テスト結果の報告書,トランスレータ関連の詳細設計書などが提出された。R君とM君は,その内容を検査して問題ないことが確認できたので,J部長の承認を得てトランスレータ設置作業の検収を完了させた。 次の休日,アクセス経路の冗長構成の導入を行った。M君は,動作テストで使用したSW4とSW5をラックの所定の場所に設置した。設置後,既設のスイッチ間の接続ケーブルとSW1に接続されているケーブルを抜いてから,各スイッチに必要な情報を設定し,稼働できる状態にした。この後,FWとルータ1の設定変更を行い,FWとルータ1をSW1に接続した。最後に,スイッチ間の結線とPCの接続を行った。作業が完了した後,PCを使用して営業所のLAN,Webサーバ及びインターネットにアクセスして,スイッチ,FW及びルータ1の設定に問題がないことを確認した。M君は,これらの作業を作業手順書に従って実施した。③作業手順書は,詳細設計書に記述された項目のうち,一部の項目を参照している。 引き続き,R君は,作業手順書に従って業務サーバと社内用DNSサーバを停止させ,各サーバの二つのLANポートを,アクティブスタンバイ構成にした。作業が完了した後,業務サーバと社内用DNSサーバをSW1とSW4に接続し,PCから各業務サーバにアクセスして,サーバの利用に問題がないことを確認した。 この後,R君とM君は,新たに用意した管理PCに必要情報を登録し,営業所のLANへのアクセスについても問題がないことを確認して,再構築作業を完了させた。 設問1 本文中の【ア】~【エ】に入れる適切な字句を答えよ。 設問2 現在のネットワークシステム構成,利用及び障害対応について,(1)~(3)に答えよ。 (1) 業務サーバ以外に,故障によって全社員の各業務システム利用停止を引き起こす可能性がある機器を,図1中の名称で全て答えよ。 (2) 営業所のLANにアクセスするとき,余計なパケット転送を避けるために,サーバ担当とネットワーク担当が使用するPCには,どのような情報が登録されているか。40字以内で具体的に述べよ。 (3) 本文中の下線①で想定した三つの障害箇所を,それぞれ具体的に答えよ。 設問3 〔WebサーバのIPv6対応策の方式設計と詳細設計〕について,(1)~(4)に答えよ。 (1) 本文中の【a】~【c】に入れる適切な数値を答えよ。 (2) トランスレータのIPv4ポートの接続先は,図2中のSWaとSWbのどちらにすべきかを答えよ。また,その理由を,40字以内で述べよ。 (3) 図3中に記載した変換用プレフィックスを使用したとき,DNSサーバに追加するAAAAレコードのIPv6アドレスを答えよ。 (4) IPv6端末のリゾルバから名前解決を要求されたキャッシュDNSサーバが,図2中のA社のDNSサーバで名前解決ができるためには,キャッシュDNSサーバは,どのようなネットワーク環境に設置されなければならないか。30字以内で述べよ。 設問4 〔アクセス経路の冗長化の方式設計と詳細設計〕について,(1)~(4)に答えよ。 (1) 表3の項番2のテストで,ツリーの再構成後,SW2に接続された利用者PCからサーバ宛てに最初に送信されるフレームが,SW2のP2から転送されるのはなぜか。その理由を,SW2が保持する情報に着目し,25字以内で述べよ。ここで,PCのARPテーブルには,それまでの情報が保持されているものとする。 (2) 本文中の下線②の状態になったのはなぜか。その理由を,“パケット”,“SW1”及び“サーバ”という字句を用いて,50字以内で述べよ。 (3) 図4の構成で,本文中に記述した設定でMSTPを動作させると,二つのポートがブロッキングポートになる。二つのブロッキングポートを,図4中のスイッチ名とポート名を用いて,表3に記述された形式で答えよ。 (4) 図4の構成で,利用者PCと管理PCから業務サーバにアクセスできるようにするためには,業務サーバのLANポートと,これらを接続するSW1とSW4のポートには,どのような機能が必要か。その機能名又は規格名を答えよ。 設問5 方式設計書と詳細設計書について,(1)~(3)に答えよ。 (1) トランスレータ導入のための詳細設計に当たって,設置場所,ネットワーク構成及びインターネット接続LANのIPv4アドレスの情報以外に,A社がB社に提供すべき情報を,30字以内で具体的に述べよ。 (2) 本文中の下線③の詳細設計書に記述された項目の中で,作業手順書で参照されるべき記述項目について,その内容を表1を基に三つ挙げ,それぞれ15字以内で答えよ。 (3) 図4の構成の方式設計において,サーバがバックアップ経路に切り替えるときの処理方法について,方式設計書に記述されるべき内容を,表1を参考に二つ挙げ,それぞれ35字以内で述べよ。
図1 A社の現在のネットワークシステム構成(抜粋)。本社のインターネット接続LAN(ルータ2、SWa、FW、DMZのSWb・DNSサーバ・Webサーバ)とサーバルーム(SW1、ルータ1、社内用DNSサーバ、業務サーバ1~4、PC)、SW2・SW3配下のPC群、IP-VPN経由でつながる2営業所(ルータ、SW、FS、PC)の構成図。
図1 A社の現在のネットワークシステム構成(抜粋)。本社のインターネット接続LAN(ルータ2、SWa、FW、DMZのSWb・DNSサーバ・Webサーバ)とサーバルーム(SW1、ルータ1、社内用DNSサーバ、業務サーバ1~4、PC)、SW2・SW3配下のPC群、IP-VPN経由でつながる2営業所(ルータ、SW、FS、PC)の構成図。
表1 各設計段階の作業概要と設計書の記述項目。方式設計と詳細設計の2段階について、作業概要と設計書の記述項目を示す表。方式設計は構成・機能・経路制御方法・バックアップ方法・各種情報の設定規則など、詳細設計は構成・設置・配線・設定情報・管理表・テストなどを記述する。
表1 各設計段階の作業概要と設計書の記述項目。方式設計と詳細設計の2段階について、作業概要と設計書の記述項目を示す表。方式設計は構成・機能・経路制御方法・バックアップ方法・各種情報の設定規則など、詳細設計は構成・設置・配線・設定情報・管理表・テストなどを記述する。
図2 WebサーバをIPv6端末に公開する構成。インターネット上のIPv6端末とキャッシュDNSサーバ、本社のインターネット接続LAN(IPv4接続のルータ2・SWa・FW・SWb・DNSサーバ・Webサーバ203.0.113.1と、IPv6接続の新規ルータ・トランスレータ)の構成図。トランスレータの接続は省略されている。
図2 WebサーバをIPv6端末に公開する構成。インターネット上のIPv6端末とキャッシュDNSサーバ、本社のインターネット接続LAN(IPv4接続のルータ2・SWa・FW・SWb・DNSサーバ・Webサーバ203.0.113.1と、IPv6接続の新規ルータ・トランスレータ)の構成図。トランスレータの接続は省略されている。
図3 T氏から提出された資料(抜粋)。トランスレータ導入手順(IPv6プレフィックス2001:db8:1:2::/64を取得し、2001:db8:1:2:0:ffff::/96を変換用プレフィックスとする等)と、IPv6端末からのアクセス手順・トランスレータ動作(i)~(vi)を記した資料の抜粋。
図3 T氏から提出された資料(抜粋)。トランスレータ導入手順(IPv6プレフィックス2001:db8:1:2::/64を取得し、2001:db8:1:2:0:ffff::/96を変換用プレフィックスとする等)と、IPv6端末からのアクセス手順・トランスレータ動作(i)~(vi)を記した資料の抜粋。
図4 アクセス経路の冗長構成。サーバルーム内のSW1と新規のSW4を二重化し、社内用DNSサーバと業務サーバのN1をSW1に、N2をSW4に接続する構成図。SW2・SW3(利用者PC)とSW5(管理PC)はVLAN10/VLAN20でSW1・SW4に接続され、ポートP1~P4が示されている。
図4 アクセス経路の冗長構成。サーバルーム内のSW1と新規のSW4を二重化し、社内用DNSサーバと業務サーバのN1をSW1に、N2をSW4に接続する構成図。SW2・SW3(利用者PC)とSW5(管理PC)はVLAN10/VLAN20でSW1・SW4に接続され、ポートP1~P4が示されている。
表2 各スイッチに設定したSTP関連の情報。STPの設定表。パスコストは全ポートに同じ値、ブリッジIDはSW1<SW4<SW2<SW3<SW5とし、SW1をルートブリッジとする。ポートIDは各スイッチでP1<P2<P3<P4とし、P1の優先度が最も高い。
表2 各スイッチに設定したSTP関連の情報。STPの設定表。パスコストは全ポートに同じ値、ブリッジIDはSW1<SW4<SW2<SW3<SW5とし、SW1をルートブリッジとする。ポートIDは各スイッチでP1<P2<P3<P4とし、P1の優先度が最も高い。
表3 PCからサーバへのアクセステストの構成と結果。項番1は図4の構成で結果○、SW3・SW4・SW5のP2がブロック。項番2はSW1とSW2の接続なしで○、SW4・SW5のP2がブロック。項番3はSW1とSW5の接続なしで×、SW3・SW4のP2がブロック。
表3 PCからサーバへのアクセステストの構成と結果。項番1は図4の構成で結果○、SW3・SW4・SW5のP2がブロック。項番2はSW1とSW2の接続なしで○、SW4・SW5のP2がブロック。項番3はSW1とSW5の接続なしで×、SW3・SW4のP2がブロック。
図5 再構築後のネットワークシステム構成(抜粋)。本社内で、インターネットにIPv4接続・IPv6接続する図2中のインターネット接続LANと、図4中のサーバルーム、SW2・SW3及びPC群を示す構成図。サーバルームはIP-VPN経由で2つの営業所(ルータ、SW、FS、PC)に接続されている。
図5 再構築後のネットワークシステム構成(抜粋)。本社内で、インターネットにIPv4接続・IPv6接続する図2中のインターネット接続LANと、図4中のサーバルーム、SW2・SW3及びPC群を示す構成図。サーバルームはIP-VPN経由で2つの営業所(ルータ、SW、FS、PC)に接続されている。
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設計を考える前提条件をそろえる

ネットワークの設計や障害への対応を考える際は、判断の前提となる条件に注目しましょう。同じ内容でも、想定する状況や対象の範囲が変われば、その意味を捉え直す必要があります。まずは条件をそろえて整理することが大切です。

この問題で問われていること

考える内容が、どの状況と対象範囲を前提にしているかを確認しましょう。明示された条件と、自分が補っている想定を区別し、途中で前提が変わっていないかを確かめると、判断の根拠を整理しやすくなります。

視点

前提条件とは、検討の土台となる状況や対象範囲のことです。普段の経験から自然に補った想定も、与えられた条件とは分けて扱いましょう。何を前提に考えているかを言葉にすると、検討の途中で条件がずれることに気づきやすくなります。

確認ポイント

  • 判断の前提として明示されている条件を把握しているか
  • 自分で補った想定を、明示された条件と区別しているか
  • 検討の途中で、想定する状況や対象範囲が変わっていないか
正解と解説を見る

解説

本問は、単一構成による業務停止を契機に、IPv6トランスレータとアクセス経路の冗長化を導入する事例です。通信経路を図から読み取り、IPv6アドレスの生成、STPとMSTPの動作、方式設計と詳細設計の役割を具体的に説明することが要点となる。

問題の全体像

A社は、業務サーバへの接続障害で業務が約3時間停止したことを受け、サーバの二つのLANポートとスイッチを使ったアクセス経路の冗長化を計画している。同時に、既存のIPv4 WebサーバをIPv6端末から利用できるよう、トランスレータを導入する。出題趣旨では、STPとIPv6の活用例を通じて、記述内容を理解し、要件に合う解決策を導く能力を問うとしている。図の物理接続だけでなく、VLAN、ポート状態、サーバのアクティブ側を重ねて通信経路を判断することが重要です。

設問1(ア)

本社PCのデフォルトゲートウェイはFWだが、営業所への適切な転送先はルータ1です。このように、ゲートウェイが端末に適切な転送先を通知するリダイレクトはICMPの機能なので、公式解答例では「ICMP」となる。採点講評でも、アは基本的なプロトコルの働きを問う問題とされている。

設問1(イ)

「NATは何を変換するか」と、IPv4・IPv6間でIPヘッダを変換するトランスレータとの違いに着目する。公式解答例では「IPアドレス」です。アドレスを変換するNATに対し、本問のトランスレータは異なるIPバージョン間のヘッダ形式の違いも処理する。

設問1(ウ)

本文に挙げられたフラグメントヘッダとルーティングヘッダは、IPv6の標準ヘッダに追加して必要な機能を担う拡張ヘッダです。したがって、公式解答例では「拡張」となる。標準ヘッダと、必要に応じて付加するヘッダを区別して押さえる。

設問1(エ)

図4では、SW5に管理PCが接続され、SW5からSW1・SW4への経路はVLAN20です。表3の項番3はSW1とSW5の接続を切断するテストなので、影響を受けるのは管理PCであり、公式解答例では「管理」となる。切断後もSW4のP2がブロックされるため、管理用VLANの通信がサーバのアクティブ側に届かない。

設問2(1)

図1で、全社員による業務システム利用に共通して必要な機器を探す。各業務サーバはSW1に接続されており、本文では各業務サーバへのアクセスに社内用DNSサーバを利用すると明記されている。公式解答例では「SW1、社内用DNSサーバ」です。SW2・SW3の故障は接続されたPCに影響するが全社員には及ばず、FWは社内の業務サーバへの通信で必ず通過する機器ではありません。

設問2(2)

本文の「パケットは、一旦、FWに送信されてしまう」という記述から、営業所宛ての通信だけを最初から適切なゲートウェイへ送る経路情報が必要だと分かる。公式解答例では、PCのルーティングテーブルに営業所LANへの経路情報が登録されているとしている。40字以内なら「ルーティングテーブルに営業所LANへの経路情報。」とまとめられる。この経路情報によってルータ1へ直接送信できる。

設問2(3)①

業務サーバ1のLANポートのリンクランプが消灯しているため、まずサーバとスイッチの間の接続を構成する箇所を切り分ける。公式解答例の一つ目は「業務サーバ1を接続するSW1のポート」です。スイッチ全体と漠然と書かず、当該サーバを接続しているポートまで特定する。

設問2(3)②

リンクランプの消灯は、サーバとSW1を結ぶケーブルの障害でも発生し得る。公式解答例の二つ目は「業務サーバ1を接続するケーブル」です。本文の「接続を順に変更した」という対処は、ケーブルを交換するなどして接続部分を切り分ける考え方に対応する。

設問2(3)③

スイッチ側のポートとケーブルに加え、サーバ側も障害候補となる。公式解答例の三つ目は「業務サーバ1」、又は「業務サーバ1のLANポート」です。リンク状態を確認しているので、サーバ側のLANポートを具体的に挙げると、切り分け対象が明確になる。

設問3(1)(a)

IPv6の標準ヘッダは固定長の40バイトであり、公式解答例では「40」となる。本文で別に述べられている拡張ヘッダの長さは含めない。IPv4の20バイトという記述と対比して、基本となるヘッダの長さを答える。

設問3(1)(b)

IPv6アドレスの長さは128ビットなので、公式解答例では「128」となる。IPv6アドレスは16ビットの区切りを八つ並べて表現でき、16×8=128ビットと確認できる。

設問3(1)(c)

IPv4のアドレス長は32ビット、IPv6は128ビットです。表現できるアドレス数の比は2の128乗÷2の32乗=2の96乗となるので、公式解答例では「96」です。ビット長そのものの比ではなく、アドレス数の比を求める点に注意する。

設問3(2)接続先

図2で、SWaはFWの外側、SWbはWebサーバと同じDMZ側にある。変換後のIPv4通信にも既存のFWを通過させる構成を選ぶので、公式解答例では接続先は「SWa」となる。SWaからWebサーバへの経路はFWを経由する。

設問3(2)理由

着目点は、トランスレータでIPv4に変換された通信にもFWによる制御を適用できることです。公式解答例では、Webサーバへの通信がFW経由となり、セキュリティを維持できるとしている。40字以内の答案例は「Webサーバへの通信がFW経由となり、セキュリティを維持できる。」です。接続先だけでなく、その選択が既存の防御にどう結び付くかを書く。

設問3(3)

図3の変換用プレフィックスは2001:db8:1:2:0:ffff::/96であり、残る下位32ビットにWebサーバのIPv4アドレス203.0.113.1を埋め込む。各オクテットを16進数にすると203=cb、0=00、113=71、1=01なので、下位32ビットはcb00:7101となる。公式解答例では「2001:db8:1:2:0:ffff:cb00:7101」、又はIPv4部分を併記した「2001:db8:1:2:0:ffff:203.0.113.1」です。採点講評でも、IPv4アドレスを埋め込む際の16進数変換の理解が求められている。

設問3(4)

図2では、要求元の端末はIPv6で接続する一方、A社の既存DNSサーバはIPv4側にある。キャッシュDNSサーバはIPv6端末から要求を受けるだけでなく、IPv4でA社のDNSサーバへ問い合わせられる必要がある。公式解答例では、IPv6とIPv4の両方に接続できる環境とされている。30字以内なら「IPv6とIPv4の両方に接続できる環境。」と書ける。AAAAレコードを扱うことと、問い合わせに使うIPバージョンを区別する。

設問4(1)

設問はPCのARPテーブルではなく、SW2が保持する情報に着目するよう求めている。公式解答例では「MACアドレステーブルがクリアされたから」です。ツリー再構成後、SW2はサーバのMACアドレスに対応する転送先を保持していないため、最初のフレームを未知ユニキャストとして転送する。SW1への接続は切断されているので、残るスイッチ間経路のP2から転送される。答案例は25字以内であり、採点講評でも未知ユニキャストの転送動作の理解が求められている。

設問4(2)

表3の項番3ではSW1とSW5を切断しても、SW4のP2がブロックされたままです。通常のSTPはVLANごとにツリーを構成しないため、SW4とSW1の間で転送可能な物理経路が残っていても、管理用VLAN20の経路は通らない。管理PCのパケットはSW4側のスタンバイLANポートには届くが、SW1側のアクティブLANポートには届かない。公式解答例に沿った50字以内の答案例は「パケットがSW4からSW1に転送されず、サーバのアクティブLANポートに到達しないから。」です。

設問4(3)①

VLAN10とVLAN20を別インスタンスにすると、各VLANの接続関係に応じてツリーを計算できる。VLAN10では、SW2はSW1に直接接続され、SW3はSW4経由でSW1へ接続される。SW2の方がルートへのパスコストが小さいため、SW2とSW3を結ぶリンクではSW3側がブロックされる。公式解答例の一つ目は「SW3のP2」です。

設問4(3)②

VLAN20ではSW4とSW5がそれぞれSW1に直接接続され、ルートへのパスコストは等しい。表2のブリッジIDはSW4<SW5なので、両者間のリンクではSW4側が指定ポートとなり、SW5側がブロックされる。公式解答例の二つ目は「SW5のP2」です。VLAN20ではSW4とSW1の接続を利用できるため、通常のSTPで生じた管理用経路の問題を解消できる。

設問4(4)

利用者PCのVLAN10と管理PCのVLAN20の両方から、同じ業務サーバへアクセスする必要がある。したがって、サーバのLANポートと接続先スイッチのポートは、一本の接続で複数VLANのフレームを識別して扱える必要がある。公式解答例では「IEEE 802.1Q」、又は「タグVLAN」「トランクポート」です。LANポートのアクティブスタンバイ構成に加え、VLANを識別する機能が必要になる。

設問5(1)

図3では、ISPから取得したIPv6プレフィックスの中から変換用プレフィックスを決めている。詳細設計を担当するB社は、IPv4側の情報だけではIPv6側の設定を決定できない。公式解答例では「ISPから取得したIPv6プレフィックスの情報」、又は「トランスレータに割り当てるIPv6プレフィックス」が挙げられている。30字以内の答案例は「ISPから取得したIPv6プレフィックスの情報。」です。

設問5(2)①

表1の詳細設計の記述項目にある「設置」と、本文の「SW4とSW5をラックの所定の場所に設置した」を対応させる。作業手順書には、設置先を具体的に確認できる情報が必要です。公式解答例にある内容から、一つ目として15字以内の「機器のラックへの設置構成」を挙げられる。

設問5(2)②

表1の「配線」と、本文のケーブル取り外し、スイッチ間の結線、PCの接続に着目する。どの機器のどの接続を変更するかを作業手順書で確認するため、配線の詳細が必要です。公式解答例にある内容から、二つ目として15字以内の「ラック収容機器の配線」を挙げられる。公式解答例では「フロア設置機器間の配線」も示されている。

設問5(2)③

表1の「設定情報」と、本文の各スイッチ、FW、ルータ1への設定作業を対応させる。作業手順書では、実際に入力する設定内容を参照する必要がある。公式解答例にある内容から、三つ目として15字以内の「機器への詳細な設定情報」を挙げられる。公式解答例には「動作確認テストの方法」もあり、作業後の確認に対応する。三つの回答では、同じ内容を重複させずに選ぶ。

設問5(3)①

表1の方式設計では、制御方式やバックアップ方法を明確にする。サーバがバックアップ経路へ切り替えるためには、まず現在の経路に障害があることを検出する方法を決める必要がある。公式解答例の一つ目は、アクティブLANポートで経路障害を検出する方法です。35字以内の答案例は「アクティブLANポートで経路障害を検出する方法。」となる。採点講評では、この設問で求められる内容を理解できていない解答が散見されたとしており、切替処理の設計内容に絞って書くことが重要です。

設問5(3)②

障害検出に続いて、アクティブ側が切り替わる際に必要な情報をどう引き継ぐかを方式として決める。図4の注記1には、切替時にスタンバイ側へMACアドレスを引き継ぐと示されている。公式解答例の二つ目は、アクティブLANポートが切り替わるときの情報の引継方法です。35字以内の答案例は「アクティブLANポート切替時の情報の引継方法。」となる。方式設計書には、切替後も通信を継続するための処理方法を記述する。

学習のポイント

IPv6アドレスの埋込み表記、未知ユニキャストの転送、VLANごとのツリー構成、障害検出と切替時の情報引継ぎを重点的に学習する。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成24年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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