NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ

平成24年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅰ 問1

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問1 Web サイトの構築に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。 J社は、インターネットで情報を提供する Web サイト(URL は、http://www.web.j-sha.example.com)を運営しており、C社のデータセンタ(以下、DC-Cという)に設備を設置している。図1に、J社のシステム構成を示す。 図1 J社のシステム構成(抜粋) DNS-P と DNS-S は、J社のドメインを管理する DNS サーバであり、DNS-PからDNS-Sへ【ア】転送を行い、2台の DNS サーバ間でリソースレコードの同期を取っている。 J社では、サービス利用者の増加に伴い、毎年 Web サーバを増強してきた。来年度も増強が計画されているが、長期間又は復旧不能なサービス停止による利益損失を防ぐことを目的とした【イ】の観点から、他のデータセンタにもサーバを設置し、ディザスタリカバリにも対応する方針が出された。そこで、情報システム部のE主任がシステム構成を検討することになり、次の要件が決められた。 ・増設先のデータセンタは、D社のデータセンタ(以下、DC-Dという)とする。 ・Web ブラウザから Web サーバへのアクセス(以下、Web アクセスという)の数、サーバ負荷に応じて、Web アクセスを二つのデータセンタに分散する。 ・一方のデータセンタにアクセスできない場合、他方のデータセンタに Web アクセスを切り替える。一つのデータセンタだけでサービスを提供する場合は、サービスレベルの低下を容認する。 〔DNS ラウンドロビン方式の検討〕 E主任は、DC-Dについては、DC-Cと同様に、ルータ、FW、SLB及びWeb サーバを設置することにした。Web アクセスを処理する能力は、DC-Cが約70、000セッション/秒、DC-Dが約30、000セッション/秒である。また、Web アクセスの分散については、DNS ラウンドロビンを利用した分散方式を考えた。次に、E主任が考えた方式を示す。 ・Web アクセスを処理する能力から、DC-CとDC-Dに対する Web アクセスの分散割合は7対3とする。 ・Web サイトの URL のFQDNに対応するIPアドレスを10個準備し、DNS-Pの【ウ】レコードに登録する。 ・仮想サーバのIPアドレスとして、10個のIPアドレスのうちの7個を【a】のSLBに設定し、3個を【b】のSLBに設定する。 ・DNS-Sは、DC-Dに置くことにする。 情報システム部内で DNS ラウンドロビン方式について議論したところ、次の指摘を受けた。 ・①Web サーバの負荷に応じた分散ができない。 ・②データセンタの故障時に、故障しているデータセンタへ Web アクセスが継続する。 〔新方式によるシステム設計の検討〕 E主任は、指摘された点について SLB の納入ベンダに相談した。その結果、SLBと連携して動作する SLB マネージャ装置(以下、SLB-Mという)を導入すれば、解決できそうなことが分かった。SLB-Mの主な機能は、次のとおりである。 ・J社のサブドメインである Web サイトのドメインを管理する DNS サーバとして機能し、複数台のSLB-Mを設置することで冗長構成を実現できる。 ・SLBから、Web サーバの負荷情報とセッション情報を収集する。 ・収集した情報を、SLB-M間で共有する。 ・共有した情報から、DC-C又はDC-Dのどちらに Web アクセスを振り分けるかを判断して、DNSの名前解決の要求に対し、最適な応答を返す。 E主任は、SLB-Mの機能を検討した結果、次の方針で設計を行うことにした。 ・③DNS-Pの設定を変更し、SLB-Mを Web サイトのドメインの DNS サーバとして動作させる。 ・SLB-Mは、DC-CとDC-Dに、それぞれ1台ずつ設置する。 ・SLB-Mは、同一データセンタ内のSLBから、Web サーバの負荷情報とセッション情報を収集する。 ・Web サーバの負荷情報とセッション情報を、SLB-M間で共有する。 E主任が考えた新方式のシステム構成案を、図2に示す。 図2 新方式のシステム構成案(抜粋) E主任は、④データセンタをまたがるSLB-M間の通信による影響を懸念し、調査を行ったが、問題ないことが分かった。そこで、新方式のシステム構成案の動作検証を行い、次の処理手順で負荷分散が行われていることを確認した。 (1)Web ブラウザ(又は Web ブラウザが利用する ISP のキャッシュ DNS サーバ)は、DNS-P又はDNS-Sに対して Web サイトの名前解決を要求する。 (2)DNS-P又はDNS-Sは、Webサイトのドメインの【エ】DNS サーバとして、DC-CとDC-DのSLB-Mを応答する。 (3)Web ブラウザは、SLB-Mに対して Web サイトの名前解決を要求する。 (4)SLB-Mは、Web サーバの負荷情報とセッション情報を基に、Web ブラウザに対して最適なIPアドレスを応答する。 (5)Web ブラウザは、応答があったIPアドレスにアクセスする。 (6)SLBは、保持しているセッション情報を確認し、その Web ブラウザのセッション情報が既に存在する場合は、適切な Web サーバに Web ブラウザを接続する。 (7)一方、Web ブラウザのセッション情報が存在しない場合、SLBは、新規セッションとして登録し、最適な Web サーバに Web ブラウザを接続する。 次に、E主任は冗長機能について確認した。その結果、SLB-Mの故障時に、データセンタ間で Web アクセスが適切に分散されないことが分かった。そこで、E主任は、SLB-M間の情報共有はせず、両方のデータセンタのSLBから情報を収集するように、SLB-Mの設定を変更した。 この変更の動作検証によって、片方のデータセンタのSLB-M故障時にも Web アクセスが適切に分散されることが確認できた。その後、新方式によるシステム設計は企画会議で了承され、次年度計画に盛り込まれた。 設問1 本文中の【ア】~【エ】に入れる適切な字句を答えよ。 設問2 〔DNS ラウンドロビン方式の検討〕について、(1)~(4)に答えよ。 (1)本文中の【a】、【b】に入れるデータセンタ名を答えよ。 (2)DNS-SをDC-Dに置く目的を、要件に基づき、40字以内で述べよ。 (3)本文中の下線①の理由を、DNS ラウンドロビン方式が Web アクセス数を分散する方式であるという観点から、30字以内で述べよ。 (4)本文中の下線②の事象を回避するために、故障時にDNSサーバで実施する設定変更の内容を、40字以内で述べよ。 設問3 〔新方式によるシステム設計の検討〕について、(1)~(4)に答えよ。 (1)本文中の下線③における DNS-Pの設定変更の内容を、30字以内で述べよ。 (2)本文中の下線④について、SLB-M間の通信による影響とは何か。SLB-M間の通信によって発生が懸念された事象と、その結果、Web ブラウザ通信で発生が懸念された事象について、それぞれ20字以内で述べよ。 (3)処理手順(4)において、最適なIPアドレスを応答するためにSLB-Mが利用する Web サーバの負荷情報の具体例を、二つ挙げよ。 (4)処理手順(6)において、Web ブラウザを接続する適切な Web サーバを、30字以内で述べよ。
図1 J社のシステム構成(抜粋)。サービス利用者からインターネットを経由し、DC-C内のルータ、ファイアウォール、SLB、DNS-P・DNS-S、複数のWebサーバへ接続する構成図。
図1 J社のシステム構成(抜粋)。サービス利用者からインターネットを経由し、DC-C内のルータ、ファイアウォール、SLB、DNS-P・DNS-S、複数のWebサーバへ接続する構成図。
図2 新方式のシステム構成案(抜粋)。インターネットを介してDC-CとDC-Dを接続し、各データセンタにDNSサーバ、SLB-M、SLB、複数のWebサーバを配置した構成図。
図2 新方式のシステム構成案(抜粋)。インターネットを介してDC-CとDC-Dを接続し、各データセンタにDNSサーバ、SLB-M、SLB、複数のWebサーバを配置した構成図。
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DNS分散構成を考える視点

DNSを使ったWebアクセス分散と冗長化を考えるときは、利用者から見た名前解決後の経路と、障害時にどの構成要素へ到達できるかを一つの流れとして整理しましょう。

この問題で問われていること

確認する観点は、通常時と一部障害時で、名前解決の結果から実際の接続先までの経路がどう変わるかです。役割の重なりや前提条件も同じ図で見比べます。

視点

構成を読む際は、名前解決、接続先の選択、サービス提供箇所、障害時の切替という役割を分け、各段階の関係を時系列に並べて整理します。個別方式の細部より、経路全体の一貫性に注目しましょう。

確認ポイント

  • 通常時に、利用者の要求がどの段階を経てサービスへ届く想定かを確認する。
  • 一部の構成要素が利用できない場合、残る経路が成立する前提を確認する。
  • 分散と冗長化の役割が混同されていないか、構成図の各要素を照合する。
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解説

複数データセンタにWebサーバを分散し、DNSとSLB-Mを連携させて、負荷状況に応じたアクセス分散と障害時のサービス継続を実現する問題です。

問題の全体像

J社はWebサーバをDC-Cだけで運用していたが、利用者増加への対応と事業継続のため、DC-Dにも設備を配置する。単純なDNSラウンドロビンでは、サーバ負荷に応じた分散や故障時の切替ができないため、負荷情報・セッション情報を収集するSLB-MをDNSとして動作させる新方式を検討している。設問では、DNSの基本用語、ラウンドロビン方式の限界、SLB-Mによる動的な振分けと冗長化が問われている。

設問1(ア)

DNS-PからDNS-Sへリソースレコードを転送して同期するとある。これはDNSゾーンの転送なので、公式解答例は「ゾーン」としている。単なる一般的なデータ転送ではなく、DNSの同期対象を表す用語に着目する。

設問1(イ)

長期間または復旧不能なサービス停止による利益損失を防ぐ目的で、別データセンタにもサーバを設置している。この目的は事業を継続できるようにすることなので、公式解答例は「事業継続」としている。

設問1(ウ)

FQDNに対応する複数のIPアドレスをDNS-Pに登録する記述です。ホスト名からIPv4アドレスを対応付けるDNSレコードはAレコードなので、公式解答例は「A」としている。

設問1(エ)

DNS-PまたはDNS-Sが、WebサイトのドメインについてDC-CとDC-DのSLB-Mを応答するとある。ドメインの正式な情報を管理するDNSサーバは権威DNSサーバなので、公式解答例は「権威」としている。

設問2(1)(a)

DC-Cの処理能力は約70、000セッション/秒で、全体の7割に対応する。したがって、10個のIPアドレスのうち7個を設定するSLBはDC-Cであり、公式解答例も「DC-C」としている。

設問2(1)(b)

DC-Dの処理能力は約30、000セッション/秒で、全体の3割に対応する。したがって、残り3個のIPアドレスを設定するSLBはDC-Dであり、公式解答例も「DC-D」としている。

設問2(2)

要件には、一方のデータセンタにアクセスできない場合、他方へ切り替えるとある。DNS-SをDC-Dに置けば、DC-Cが障害になってもDNS-Sを利用してDC-Dでサービスを提供できる。この目的を40字以内で、DC-C障害時・DNS-S利用・DC-Dでのサービス継続という要素に絞って書く。

設問2(3)

DNSラウンドロビンは、登録されたIPアドレスを順番に返してWebアクセス数を分散する方式です。一方、Webアクセス数と各Webサーバの負荷は比例するとは限らないため、アクセス数を均等にしても負荷に応じた分散にはならない。公式解答例はこの非比例関係を理由としている。

設問2(4)

故障したデータセンタのIPアドレスをDNSが返し続けると、アクセスが継続してしまう。したがって故障時には、故障データセンタの仮想サーバIPアドレスに対応するAレコードをDNSから削除する。40字以内では、対象が故障データセンタの仮想サーバであることとAレコード削除を明記する。

設問3(1)

新方式ではSLB-MをWebサイトのドメインのDNSサーバとして動作させる。本文のDNS-P設定変更とは、サブドメインの名前解決をSLB-Mへ任せる設定であり、公式解答例は「SLB-MにWebサイトのドメインの権限を委譲する」としている。

設問3(2)(a)

SLB-M間で負荷情報やセッション情報を共有する設計なので、情報量の多い通信がデータセンタ間のインターネット接続回線を流れる。その結果として懸念される事象は回線の帯域圧迫であり、20字以内ではこの因果関係を簡潔に示す。

設問3(2)(b)

SLB-M間の情報共有によって回線帯域が圧迫されると、WebブラウザとWebサーバ間の通信にも影響が及ぶ。公式解答例では、Webサーバへのアクセス遅延を挙げているため、結果として通信が遅くなる事象を書く。

設問3(3)

処理手順(4)では、SLB-MがWebサーバの負荷情報とセッション情報を基に最適なIPアドレスを選ぶ。負荷情報の具体例として、公式解答例はWebサーバの応答時間とWebサーバのデータ通信量を挙げている。設問は二つなので、これらをそのまま具体的に示す。

設問3(4)

既存セッションがある場合は、別のサーバへ振り分けるとセッションを維持できない。したがって、接続先はそのWebブラウザのセッションを既に保持しているWebサーバです。公式解答例もこのセッション維持を条件としている。

学習のポイント

DNSの基本用語と、負荷分散・冗長化を要件に対応付けて説明する力を身につける。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成24年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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