AUシステム監査技術者試験 午前Ⅰ
令和2年度10月 システム監査技術者 午前Ⅰ 問30
問題文と選択肢を読んで答えを考えてから、下の「正解と解説を見る」で確認しましょう。
問題
選択肢
- ア明らかに不当な権利侵害がなされている場合でも,情報の発信者から事前に承諾を得ていなければ,特定電気通信役務提供者は送信防止措置の結果として生じた損害の賠償責任を負う。
- イ権利侵害を防ぐための送信防止措置の結果,情報の発信者に損害が生じた場合でも,一定の条件を満たしていれば,特定電気通信役務提供者は賠償責任を負わない。
- ウ情報発信者に対して表現の自由を保障し,通信の秘密を確保するため,特定電気通信役務提供者は,裁判所の決定を受けなければ送信防止措置を実施することができない。
- エ特定電気通信による情報の流通によって権利を侵害された者が,個人情報保護委員会に苦情を申し立て,被害が認定された際に特定電気通信役務提供者に命令される措置である。
解き方のヒントを見る
送信防止措置は立場と相手方で整理
送信防止措置を考える際は、措置を行う側・情報を発信した側・権利を侵害されたと主張する側という複数の立場があります。問題が誰のどのような責任を問うているのかを先に整理してから、問われている内容を検討する姿勢が大切です。
この問題で問われていること
この問題で確認したいのは、送信防止措置をめぐる場面で、どの立場の者が、誰に対して、どのような場面の責任を問われているのかという関係の整理です。立場の取り違えを避けることが検討の出発点になります。
視点
法律の規定を学ぶ際は、規定が想定する当事者と、その当事者が負う可能性のある責任の向き(誰との関係で問題になるか)を対応づけて整理すると理解しやすくなります。同じ行為でも関係する相手が変わると検討の観点が変わるため、当事者関係を簡単な図にして確認する方法が有効です。
確認ポイント
- 問われている場面で、措置を行う主体がどの立場の者として扱われているかを確認する
- その主体の責任が、どの当事者との関係で問題になっているのかを確認する
- 知識を当てはめる前に、当事者の組み合わせや責任の向きを取り違えていないか見直す
正解と解説を見る
正解
イ
解説
プロバイダ責任制限法では、送信防止措置が必要な限度で行われ、権利侵害を信じる相当の理由があったとき、または発信者に照会して7日以内に不同意の申出がなかったときは、役務提供者は発信者の損害について賠償責任を負いません。したがって正解はイです。
理由
出題当時(2020年)のプロバイダ責任制限法第3条第2項は、送信防止措置によって発信者に損害が生じても、措置が送信防止に必要な限度で行われ、次のどちらかに当たれば、特定電気通信役務提供者は賠償責任を負わないと定めています。①他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったとき。②権利を侵害されたとする者から送信防止措置の申出があり、役務提供者が発信者に措置に同意するかを照会したのに、照会から7日を経過しても発信者から同意しない旨の申出がなかったとき。イの「一定の条件」は、この「必要な限度」と①または②の要件を指します。
比較
この法律は、役務提供者が削除などを自ら判断して行う前提で、削除しすぎた場合の発信者への責任(第3条第2項)と、削除しなかった場合の被害者への責任(第3条第1項)を一定の範囲で制限するものです。発信者の事前承諾(ア)、裁判所の決定(ウ)、個人情報保護委員会の命令(エ)は、送信防止措置の要件として定められていません。
選択肢ア
これは不正解だよ。送信防止措置が必要な限度で行われ、他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があった場合、役務提供者は発信者に生じた損害の賠償責任を負わないんだ。明らかに不当な権利侵害があるなら、発信者の事前承諾がなくても措置はできるよ。承諾がないことだけで賠償責任を負うわけではないんだ。
選択肢イ(正解)
これは正解だよ。法第3条第2項では、措置が必要な限度で行われ、①権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったとき、または②権利を侵害されたとする者の申出を受けて発信者に同意するかを照会し、7日を経過しても不同意の申出がなかったときは、発信者に生じた損害の賠償責任を負わないとしているよ。
選択肢ウ
これは不正解だよ。送信防止措置は役務提供者が自分で判断して行う措置で、裁判所の決定は要件になっていないんだ。表現の自由などに配慮して、措置を必要な限度にとどめることや、相当の理由・発信者への照会といった免責の条件が設けられているよ。でも、裁判所の決定がなければ実施できないという仕組みではないんだ。
選択肢エ
これは不正解だよ。送信防止措置は、権利を侵害されたとする者の申出などを受けて、役務提供者が自分で判断して行う措置なんだ。個人情報保護委員会は個人情報保護法に基づく監督機関だよ。プロバイダ責任制限法には、この委員会が苦情を受けて被害を認定し、役務提供者に送信防止措置を命令する仕組みは定められていないんだ。
学習のポイント
送信防止措置で発信者に対する賠償責任が免除される具体的な条件(相当の理由、発信者への照会と7日間)を押さえる。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和2年度10月 システム監査技術者試験 午前Ⅰ 問30(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例)
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