AUシステム監査技術者試験 午後Ⅰ

平成25年度春期 システム監査技術者 午後Ⅰ 問4

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問4 販売プロセスに関するシステム監査について、次の記述を読んで、設問1~5に答えよ。 X 社は、生活雑貨用品メーカであり、販売先は量販店、卸業者である。X社では、受注から出荷、請求・債権管理に至る販売プロセスに関連する一連のシステムについて、監査部がシステム監査を行うことになった。 〔販売プロセスに関連するシステムの概要及びその環境〕 X 社の販売プロセスは、複数のシステムの密接な連携によって処理されている。販売プロセスに関連するX社のシステムは、表1のとおりである。 表1 システム一覧 表1に示す各システムは、導入時期も、ハードウェア、OSなどのインフラも異なっている。受注システムと会計システムの開発・保守に関しては、本社システム部は直接関与していない。また、システム管理規程、情報セキュリティ規程などの情報システムに関する管理規程・手順書は、概括的であり、利用者IDなどの申請フォームの記載もなく、パスワードの桁数などの具体的な数値も記載されていない。 〔販売プロセスの流れ〕 販売プロセスのシステム監査の現場責任者であるY氏は、予備調査によって販売プロセスの概要を次のように整理した。販売プロセスに関連するシステム間の情報・データの流れは、図1のとおりである。 図1 販売プロセスに関連するシステム概要 (1)各システムには、個別にアクセスコントロール機能が組み込まれている。利用者は、システムごとに申請を行い、適切な責任者の承認を受ける。各システムの管理部署は、申請に基づき、利用者IDの登録・削除を行う。 (2)ほとんどの顧客からの注文情報は、EDIシステムを経由して受信し、受注システムで受注データを生成する。しかし、EDIシステムを利用していない顧客及びEDIシステムで対応できない緊急注文に対しては、受注センタのオペレータが、ファックスで注文を受け付け、受注システムに注文情報を入力する。 (3)受注データは、1日に3回バッチ処理し、出荷指示データとして倉庫に送られる。倉庫業務は、倉庫業者に外部委託している。倉庫業者は、倉庫で独自の倉庫システムを使用し、出荷指示データに基づいて、出荷作業を行っている。 (4)倉庫業者から送信されてきた出荷実績データを1日に2回受信し、販売システムで売上単価情報に基づいて売上データが生成される。 (5)顧客ごとに設定された請求締め日を基準とし、各請求締め日の翌日に、販売システムにおいて請求データが生成される。生成された請求データを基に、請求書が発行され、顧客にEDIシステム又はファックス・郵便で送られる。 (6)会計システムでは、当日生成された請求データを取り込み、項目チェックを行った後に、債権データ及び仕訳データが生成される。項目チェックでエラーが検出されたトランザクションは、エラーリストに出力され、経理部で修正して、会計システムに入力される。 (7)月次ベースでは、販売システムと会計システムの売上高は、一致していなければならない。そこで、経理部は、会計システムに計上されていない売上データについて、販売システムからEUCで月次リストを出力し、対応している。 〔監査実施計画書案〕 Y氏は、予備調査の結果に基づいて、監査実施計画書案として、監査目的、監査範囲、監査担当者の割当て、監査要点及び監査手続を次のとおり策定した。 (1)監査目的は、販売関連情報である売上データ、債権データ及び仕訳データの信頼性の確認である。また、監査範囲は、表1のシステムを対象とする。 (2)システムごとにそれぞれ監査担当者を割り当て、各監査担当者はシステム管理部署に往査し、作業を実施する。また、作業終了日に、監査結果について被監査部署に十分な説明を行い、現場での作業を完了させる。 (3)策定した監査要点及び監査手続の抜粋は、表2のとおりである。 表2 監査要点及び監査手続(抜粋) 〔監査実施計画書のレビュー〕 監査部長は、監査実施計画書案をレビューし、次の事項に関してY氏に再検討を指示した。 (1)監査手続①aの実施に当たっては、各監査担当者の事前の統一した理解が必要なので、監査担当者への詳細なガイダンスを作成すべきである。 (2)監査手続①cの実施に当たっては、個々の監査担当者だけでは適切に評価できないおそれがあるので、各監査担当者が入手した情報を関連付けて総合的に判断する手続が必要である。 (3)監査要点②を満足させるためには、倉庫業者が使用している独自の倉庫システムを監査対象に含めることを検討すべきである。倉庫システムの監査が不可能ならば、自社システムで信頼性を高めるための追加的なコントロール機能を導入できるかどうか、現場で検討すべきである。 (4)監査要点③について、請求データの会計システムへのインタフェース処理が適切に運用されているか確かめるためには、監査手続③aだけでは不十分である。監査手続を追加すべきである。 設問1〔監査実施計画書のレビュー〕の(1)について、各監査担当者の事前の統一した理解が必要な理由を、40字以内で述べよ。 設問2〔監査実施計画書案のレビュー〕の(2)で指摘した、“適切に評価できない”理由を、40字以内で述べよ。 設問3〔監査実施計画書案のレビュー〕の(3)について、“自社システムで信頼性を高めるための追加的なコントロール”として考えられる機能を、45字以内で述べよ。 設問4〔監査実施計画書案のレビュー〕の(4)について、追加すべきであると指摘している監査手続を、40字以内で述べよ。 設問5 表2の監査手続③bの実施において、“月次リスト”に含まれていることを確かめるべき売上データを、35字以内で述べよ。
表1 システム一覧。EDI、受注、販売、会計の各システムについて、概要とシステム管理部署を整理した一覧表。
表1 システム一覧。EDI、受注、販売、会計の各システムについて、概要とシステム管理部署を整理した一覧表。
図1 販売プロセスに関連するシステム概要。顧客、EDIシステム、受注システム、販売システム、会計システム及び倉庫業者の間の情報・データの流れを示す図。
図1 販売プロセスに関連するシステム概要。顧客、EDIシステム、受注システム、販売システム、会計システム及び倉庫業者の間の情報・データの流れを示す図。
表2 監査要点及び監査手続(抜粋)。アクセスコントロール、売上データ、債権データ及び仕訳データに関する監査要点、監査手続、対象システムを整理した表。
表2 監査要点及び監査手続(抜粋)。アクセスコントロール、売上データ、債権データ及び仕訳データに関する監査要点、監査手続、対象システムを整理した表。
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販売プロセス監査の着眼点

販売に関する仕組みを考えるときは、業務の目的と統制の役割を切り分け、どの場面でどのようなリスクを抑えたいのかを整理してから、監査で確かめる観点を丁寧に結び付けます。

この問題で問われていること

一つの確認軸として、販売業務の各段階で想定されるリスクと、それを抑えるために設けられた管理の目的が対応しているかに注目し、記録や担当の関係も含めて一貫性を考えてください。

視点

監査では、業務の流れを追いながら、目的・リスク・管理・確認可能な証跡という関係を整理します。個別の仕組みを暗記するより、何を守るための管理かを問い直すと、検討の軸を保ちやすくなります。

確認ポイント

  • 販売業務の目的と、抑えたいリスクの対応を確認する
  • 各管理が担う役割と、確認できる記録のつながりを整理する
  • 担当や承認の関係が、業務の流れと矛盾しないか点検する
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解説

本問は、受注から請求・債権管理までを複数システムが連携して処理する販売プロセスを題材に、システム間の関係を踏まえた監査計画の見直しを問う問題です。

問題の全体像

X社では、EDI、受注、販売、会計など複数のシステムが受注・出荷・売上・請求・仕訳を連携して処理している。各システムの環境や管理部署が異なり、規程も概括的であるため、監査では個別機能だけでなく、システム間の権限関係、データの受渡し、外部委託先を含む処理全体を確認する必要がある。公式解答例の出題趣旨も、複数システムの関連性に着眼してリスクを評価する能力を問う点にある。

設問1

着目するのは、各システムのパスワード設定を確認する監査手続①aと、情報システムに関する規程・手順書が概括的で、パスワード桁数などの具体的基準を定めていないという状況です。担当者がそれぞれの経験や判断で妥当性を評価すると結果に差が出るため、事前に統一した判断基準を共有する必要がある。公式解答例では、規程が概括的で担当者によって妥当性の判断に差異が生じる可能性を理由としている。40字以内では「規程が概括的で、担当者によって妥当性の判断に差異が生じる可能性」を押さえる。

設問2

着目するのは、各システムの利用者IDと権限を個別に確認するだけでは、複数システムをまたぐ職務分離を評価できない点です。受注・販売・会計など他システムの権限を組み合わせると、一人の利用者が本来分離すべき業務を実行できる可能性がある。公式解答例では、他システムの権限を含めて検討すると職務分離が適切でない可能性があることを理由としている。

設問3

着目するのは、倉庫業者の独自システムから販売システムへ送られる出荷実績データです。販売システム側に、倉庫へ送った出荷指示データと受信した出荷実績データを照合する機能を設ければ、出荷実績の正確性と漏れを確認できる。公式解答例では、出荷実績データの正確性及び網羅性を保証するため、出荷指示データとマッチングする機能を示している。45字以内では「出荷実績データ」「正確性・網羅性」「出荷指示データとのマッチング」を含める。

設問4

着目するのは、会計システムの項目チェックでエラーになった取引がエラーリストに出力され、経理部が修正して再入力する流れです。請求データのインタフェース処理を監視するだけでは、エラーとなったデータが後続処理に取り込まれたか確認できない。したがって、出力されたエラーデータが全件会計システムへ入力されたことを確かめる手続を追加する。これは公式解答例の内容に対応する。

設問5

着目するのは、月次では販売システムと会計システムの売上高が一致すべきこと、及び請求データは顧客ごとの請求締め日の翌日に作成されることです。月末時点で売上は計上されているが、請求締め日前などの理由で請求データがまだ作成されていない売上は、会計システムとの照合対象として月次リストに含める必要がある。公式解答例では「月末において請求データが作成されていない当月の売上データ」としている。

学習のポイント

個別システムの確認にとどまらず、権限、データ連携、例外処理、月次照合を一体として考える力を身につける。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成25年度春期 システム監査技術者試験 午後Ⅰ 問4(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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