AUシステム監査技術者試験 午後Ⅰ

平成23年度特別 システム監査技術者 午後Ⅰ 問4

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問4 コントロールの有効性の監査に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 D社は製薬会社であり,研究開発費の予算管理を支援するプロジェクト予算システム(以下,予算管理システムという)を運用している。D社の研究開発費は売上高の約20%にも上ることから,監査室は予算管理システムのコントロールの有効性に関するシステム監査を実施することにした。 〔予算管理システムの概要〕 予算管理システムはD社で開発され,研究開発プロジェクトで必要な物品・サービスの調達及びプロジェクト別予算実績を管理している。システムオーナは,研究開発センタ長であり,研究開発センタ内の五つの研究部(各研究部は,それぞれ研究開発を行う約10の課と庶務担当で構成)と購買部が利用している。 予算管理システムの概要は,図1のとおりである。担当者マスタでは,利用者ID,利用者名,所属部署,役職,権限レベル,パスワードなどの情報が管理されている。 また,プロジェクト基礎情報(以下,PJ基礎情報という)では,プロジェクト名,プロジェクト番号,目的,期間,リーダ名,リーダの利用者ID,予算,実績などの情報が管理されている。 図1 予算管理システムの概要 〔アクセス権限〕 入力画面へのアクセス権限は,担当者マスタ及びPJ基礎情報に基づいて,表1のように設定される。 表1 アクセス権限の設定(抜粋) (1) 担当者マスタは,人事システムから人事異動(退職を含む)データを日次で受信し,自動的に更新される。担当者マスタの初期権限レベルは,役職が部長であれば「部長」権限が設定され,それ以外は「一般」権限が設定される。一方,「管理者」権限は自動的に設定されないので,担当者マスタ登録後に庶務担当の中から部長が任命した社員(以下,管理者という)に付与する。また,社員のパスワードは,定期的な変更などによって適切に管理されている。 (2) 人事システムに登録されていない派遣社員のために,各課に「一般」権限の利用者ID(以下,派遣用IDという)が一つ作成され,課内の複数の派遣社員が共有している。また,派遣用IDのパスワードの管理は,各課長に任されている。 (3) 担当者マスタの追加登録,権限レベルの変更などは,部長の承認を受けた担当者マスタ更新依頼書に基づいて管理者が入力を行う。「管理者」権限の利用者IDのアクセスログはすべて保存され,週次で詳細ログレポートを出力し,不正なアクセスがないかを部長がチェックしている。 (4) PJ基礎情報は,リーダに任命された課長が申請入力を行い,部長がリーダからの申請に対してPJ基礎情報承認入力を行う。これによって,「リーダ」権限が任命された課長に付与される。この段階で,当該プロジェクトにおいて発注処理が可能となる。 〔発注処理〕 各プロジェクトで必要な物品などを発注する。 (1) 発注品目,内容,数量及びプロジェクト番号を発注入力すると,発注申請データが生成される。発注品目は,物品マスタと照合され,物品マスタの単価情報に基づいて発注金額が自動的に設定される。物品マスタは,仕入先との価格交渉の結果に基づいて,購買部がメンテナンスし,各研究部は追加・変更できない。 (2) 発注申請データに対して承認入力を行うと,承認者名及び承認済フラグが設定される。このとき,PJ基礎情報の予算残高と比較し,予算残高の範囲内であれば,発注確定フラグが設定され,発注確定データが作成される。 (3) 予算残高を超えた発注に対しては,部長が特別承認入力を行う。ただし,部長は不在の場合が多いので,部長が口頭で指示し,管理者が行うことも多い。 〔検収処理〕 納品された物品と納品書は,庶務担当から発注の申請者に渡され,検収処理が行われる。 (1) 発注の申請者は物品と納品書の内容を確認し,発注確定データを照会して検収入力を行う。ただし,発注確定データを超える数量・金額の検収入力を行うことはできない。検収入力を行うと,発注確定データに検収番号及び検収フラグが設定され,購買実績データが生成される。このとき,購買実績額をPJ基礎情報の実績額に加算し,予算残高を減額する。 (2) 検収入力後,発注の申請者は,納品書に検収番号を記入し,庶務担当に回付する。庶務担当は,回付された納品書の検収番号に基づいて,照会画面で購買実績データの品名と金額を照合し,検収入力が正しいかどうかを確認する。 (3) 購買実績データは,日次の夜間バッチ処理で会計システムに渡され,決済条件に従って本社経理部が支払処理を行う。 〔監査結果の検討〕 監査室では,予備調査及び本調査の結果に基づいて指摘事項を列挙し,システムオーナと指摘事項について意見交換を行い,それぞれの見解を表2のようにまとめた。 表2 指摘事項とその見解 設問1 表2の項番①について,(1),(2)に答えよ。 設問2 表2の項番②の監査室の見解にある「ほかのコントロールの運用」に関する有効性を確かめる監査手続について,35字以内で述べよ。 設問3 表2の項番③で,「チェックが不十分である」と指摘している理由を,40字以内で述べよ。 設問4 表2の項番④について,(1),(2)に答えよ。
図1 予算管理システムの概要。発注処理と検収処理を中心に,担当者マスタやPJ基礎情報と連携し,購買実績を会計システムへ渡す予算管理システムの概要図。
図1 予算管理システムの概要。発注処理と検収処理を中心に,担当者マスタやPJ基礎情報と連携し,購買実績を会計システムへ渡す予算管理システムの概要図。
表1 アクセス権限の設定(抜粋)。担当者マスタの一般・部長・管理者権限とPJ基礎情報のリーダ権限について,各入力画面のアクセス可否を示す表。
表1 アクセス権限の設定(抜粋)。担当者マスタの一般・部長・管理者権限とPJ基礎情報のリーダ権限について,各入力画面のアクセス可否を示す表。
表2 指摘事項とその見解。派遣用ID,特別承認,予算超過チェック,納品書照合に関する指摘事項と,システムオーナ及び監査室の見解を対比した表。
表2 指摘事項とその見解。派遣用ID,特別承認,予算超過チェック,納品書照合に関する指摘事項と,システムオーナ及び監査室の見解を対比した表。
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監査手続を考える一つの視点

この問題では、各処理が誰の権限で行われ、どの時点で承認や記録が残り、後続の確認とどう結び付くかを一つの流れとして捉え、設計面と実際の運用面を分けて考えることが重要です。

この問題で問われていること

設問ごとの細かな結論を先に決めず、権限付与から申請、承認、実績反映、会計連携までの流れを追い、想定された統制が実際に機能したと判断できる根拠をどこで確認するかに集中してください。

視点

コントロールの有効性は、仕組みが存在することだけでなく、担当者の役割分担、承認の根拠、操作記録、後続確認の関係を一連の証拠として見られるかという観点で整理します。個別の結論ではなく、統制目的と証跡の対応を考えてください。

確認ポイント

  • 権限や承認の流れを、担当者・入力・確認の関係として整理する
  • 処理結果だけでなく、承認の根拠と操作記録が残るかを確認する
  • 設計された統制と実際の運用を区別し、証拠の十分性を考える
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解説

本問は、予算管理システムにおけるアクセス権限、職務分離、予算超過防止、ログ確認、検収後の照合を関連付け、複数のコントロールが全体として有効に機能するかを評価する問題です。

問題の全体像

D社では研究開発費の予算管理システムを使い、発注申請、承認、特別承認、検収、購買実績の会計連携までを管理している。設問では、派遣用IDの共有による職務分離上の問題、管理者アクセスログの監査、予算残高の更新時点による予算超過リスク、検収後の照合の網羅性を問う。出題趣旨のとおり、各コントロールを単独で見るのではなく、システムの目的である適切な予算実績管理との関係で総合的に評価することが重要です。

設問1(1)

表2項番①では、各課の派遣用IDを複数の派遣社員が共有している。システムオーナは、派遣用IDが「一般」権限であり、承認入力を行えない点を根拠に、単独で発注確定データを作成できないためリスクは非常に低いと考えている。したがって、答案では、一般権限の派遣用IDだけでは承認入力ができず、発注確定データを作成できないという、権限の組合せに基づく理由を40字以内で示す。

設問1(2)

監査室は、共有IDによって職務分離が実質的に損なわれる可能性を指摘している。表1では発注入力は一般権限で可能であり、承認入力はリーダ権限で可能です。リーダである課長が派遣用IDも利用すれば、同一人物が発注入力と承認入力を行い、1人で発注確定データを作成できる。答案では、この具体的な権限の組合せを40字以内で示す。

設問2

表2項番②では、部長の口頭指示により管理者が特別承認入力を行うことが多い。システムオーナは他のコントロールがあると考えているが、監査室はその運用の有効性も確かめるべきだとしている。問題文には、管理者権限のアクセスログを保存し、週次で詳細ログレポートを出力して部長が確認する仕組みがある。したがって、答案では、部長が詳細ログレポートを漏れなく確認しているかを確かめる監査手続を35字以内で述べる。

設問3

表2項番③のポイントは、予算超過の判定時点と予算残高の更新時点のずれです。承認入力時にはPJ基礎情報の予算残高と比較するが、購買実績を加算して予算残高を減額するのは検収入力時です。そのため、検収前の発注が複数ある場合、それらを反映しない残高に基づいて発注でき、予算超過を防げない。答案では、この理由を40字以内で示す。

設問4(1)

検収後は、申請者が納品書に検収番号を記入して庶務担当へ回付し、庶務担当が検収番号を基に購買実績データの品名と金額を照合する。しかし、回付された納品書を基に確認するだけでは、すべての購買実績データが照合されたかを確認できない。答案では、照合の網羅性を確認できない点を35字以内で述べる。

設問4(2)

監査室の「新しくレポートを追加することによる対応」とは、照合対象を一覧化し、未照合の取引を把握できるようにすることです。公式解答例では、購買実績データを日次で出力し、照合が完了した取引を消し込む方法を示している。答案では、日次レポートと照合済み取引の消込みによって、未照合データを識別できる仕組みを35字以内で示す。

学習のポイント

個々のコントロールだけでなく、処理の順序と相互補完関係を読む力を養う。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成23年度特別 システム監査技術者試験 午後Ⅰ 問4(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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