NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ

令和4年度春期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅰ 問1

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問1 ネットワークの更改に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。 〔現状のネットワーク〕 A社は,精密機械部品を製造する中小企業であり,敷地内に事務所と工場がある。 事務所には電子メール(以下,メールという)送受信やビジネス資料作成などのためのOAセグメントと,社外との通信を行うDMZが設置されている。工場には工作機械やセンサを制御するための制御セグメントと,制御サーバと操作端末のアクセスログ(以下,ログデータという)や制御セグメントからの測定データを管理するための管理セグメントが設置されている。 センサや工作機械を制御するコントローラの通信は制御セグメントに閉じた設計としているので,事務所と工場の間は,ネットワークで接続されていない。また制御セグメントと管理セグメントの間には,制御サーバが設置されているがルーティングは行わない。 操作端末は,制御サーバを介してコントローラに対し設定値やコマンドを送出する。コントローラは,常に測定データを制御サーバに送信する。制御サーバは,収集した測定データを,1日1回データヒストリアンに送る。データヒストリアンは,ログデータ及び測定データを蓄積する。 A社ネットワークの構成を,図1に示す。 図1 A社ネットワークの構成(抜粋) ログデータの転送は,イベント通知を転送する標準規格(RFC 5424)の【a】プロトコルを利用している。データヒストリアンに蓄積された測定データとログデータは,ファイル共有プロトコルで操作端末に共有され,社員がUSBメモリを用いてOAセグメント内のPCに1週間に1回複製する。 制御サーバ,操作端末及びデータヒストリアンのソフトウェア更新は,必要の都度,OAセグメントのPCでインターネットからダウンロードしたソフトウェア更新ファイルを,USBメモリを用いて操作端末に複製した上で実施される。 A社の社員は,PCでメールの閲覧やインターネットアクセスを行う。OAセグメントからインターネットへの通信はDMZ経由としており,DMZには社外とのメールを中継する外部メールサーバと,OAセグメントからインターネットへのWeb通信を中継するプロキシサーバがある。DMZにはグローバルIPアドレスが,OAセグメントにはプライベートIPアドレスがそれぞれ用いられている。 社員のメールボックスをもつ内部メールサーバと,プロキシサーバは,ユーザ認証のためにLDAPサーバを参照する。プロキシサーバのユーザ認証には,Base64でエンコードするBasic認証方式と,MD5やSHA-256でハッシュ化する【b】認証方式があるが,A社では後者の方式を採用している。また,プロキシサーバは,HTTPの【c】メソッドでトンネリング通信を提供し,トンネリング通信に利用する通信ポートを443に限定する。 〔ネットワークの更改方針〕 A社では,USBメモリ紛失によるデータ漏えいの防止,測定データのリアルタイムの可視化,及び過去の測定データの蓄積のために,USBメモリの利用を廃止し,工場と事務所をネットワークで接続することにした。A社技術部のBさんが指示された内容を次に示す。 (a) データヒストリアンにあるログデータをPCにファイル送信できるようにする。またPCにダウンロードしたソフトウェア更新ファイルを操作端末にファイル送信できるようにする。 (b) 測定データの統計処理を行い時系列グラフとして可視化するサーバと,長期間の測定データを加工せずそのまま蓄積するサーバをOAセグメントに設置する。 (c) セキュリティ維持のために,工場の制御セグメント及び管理セグメントと,事務所のOAセグメントとの間はルーティングを行わない。 Bさんは,工場のネットワークを設計したベンダに実現方式を相談した。指示(a)と(c)については,ファイル転送アプライアンス(以下,FTAという)がベンダから提案された。指示(b)と(c)については,ネットワークパケットブローカ(以下,NPBという),可視化サーバ,キャプチャサーバがベンダから提案された。 Bさんがベンダから提案を受けた,A社ネットワークの構成を,図2に示す。 図2 ベンダが提案したA社ネットワークの構成(抜粋) 〔管理セグメントとOAセグメント間のファイルの受渡し〕 FTAは,分離された二つのネットワークでルーティングすることなくファイルの受渡しができるアプライアンスである。ファイルの送信者は,①FTAにWebブラウザを使ってログインし,受信者を指定してファイルをアップロードする。ファイルの受信者は,FTAにWebブラウザを使ってログインし,自身が受信者として指定されたファイルだけをダウンロードできる。 FTAの機能を使い,ファイルの受渡しの際に上長承認手続を必須にする。上長への承認依頼,受信者へのファイルアップロード通知は,FTAが自動的にメールを送信して通知する。承認は設定された上長だけが行うことができる。 Bさんが検討したFTAの利用時の流れを,表1に示す。 表1 FTAの利用時の流れ ②指示(c)のとおり,FTAには静的経路や経路制御プロトコルの設定は行わない。 ③FTAは,認証及び認可に必要な情報について,既存のサーバを参照する。 Bさんは,ベンダからFTAを借りて想定どおりに動作をすることを確認した。 〔測定データの可視化〕 NPBは事前に入力ポート,出力ポートを設定し,入力したパケットを複数の出力ポートに複製する装置である。NPBではフィルタリングを設定して,複製するパケットを絞り込むことができる。可視化サーバは複製されたパケット(以下,ミラーパケットという)を受信して統計処理を行い,時系列グラフによって可視化をすることができる。キャプチャサーバは大容量のストレージをもち,ミラーパケットをそのまま長期間保存することができ,必要時にファイルに書き出すことができる。 Bさんは,NPBの動作の詳細についてベンダに確認した。Bさんとベンダの会話を次に示す。 Bさん:L2SWとNPBの転送方式は,何が違うのですか。 ベンダ:L2SWの転送方式では,受信したイーサネットフレームのヘッダにある送信元MACアドレスとL2SWの入力ポートをMACアドレステーブルに追加します。フレームを転送するときは,宛先MACアドレスがMACアドレステーブルに学習済みかどうかを確認した上で,学習済みの場合には学習されているポートに転送します。宛先MACアドレスが学習されていない場合は【d】します。 これに対してNPBの転送方式では,入力ポートと出力ポートの組合せを事前に定義して通信路を設定します。今回のA社の構成では,一つの入力ポートに対して出力ポートを二つ設定し,パケットの複製を行っています。 NPBの入力は,L2SWからのミラーポートと接続する方法と,ネットワークタップと接続する方法の二つがあります。ネットワークタップは,既存の配線にインラインで接続し,パケットをNPBに複製する装置です。今回検討したネットワークタップを使う方法では,送信側,受信側,それぞれの配線でパケットを複製するので,NPBの入力ポートは2ポート必要です。 ④今回採用する方法では,想定トラフィック量が少ないので既存のL2SWのミラーポートを用います。NPBにつながるケーブルは全て1000BASE-SXです。 Bさんは,ベンダへの確認結果を基にA社におけるNPBによる測定データの送信について整理した。その内容を次に示す。 ・可視化サーバとキャプチャサーバをOAセグメントに設置する。 ・コントローラは,更改前と同様に測定データを制御サーバに常時送信する。 ・⑤制御セグメントに設置されているL2SWの特定ポートにミラー設定を行い,L2SWの該当ポートの送信側,受信側,双方のパケットを複製してNPBに送信させる。 ・NPBは受信したミラーパケットを必要なパケットだけにフィルタリングした後に再度複製し,⑥可視化サーバとキャプチャサーバに送信する。 Bさんは,FTA,NPBによるネットワーク接続方式を上司に説明し,承認を得た。 設問1 〔現状のネットワーク〕について,(1),(2)に答えよ。 (1)本文中の【a】~【c】に入れる適切な字句を答えよ。 (2)外部からアクセスできるサーバをFWによって独立したDMZに設置すると,OAセグメントに設置するのに比べて,どのようなセキュリティリスクが軽減されるか。40字以内で答えよ。 設問2 〔管理セグメントとOAセグメント間のファイルの受渡し〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1)本文中の下線①について,利用者の認証を既存のサーバで一元的に管理する場合,どのサーバから認証情報を取得するのが良いか。図2中の字句を用いて答えよ。 (2)本文中の下線②について,FTAにアクセスできるのはどのセグメントか。図2中の字句を用いて全て答えよ。 (3)本文中の下線③について,FTAにおいて認証と認可はそれぞれ何をするために使われるか。違いが分かるようにそれぞれ25字以内で述べよ。 設問3 〔測定データの可視化〕について,(1)~(5)に答えよ。 (1)本文中の【d】に入れる適切な字句を答えよ。 (2)本文中の下線④について,L2SWからミラーパケットでNPBにデータを入力する場合,ネットワークタップを用いてNPBにデータを入力する方式と比べて,性能面でどのような制約が生じるか。40字以内で述べよ。 (3)本文中の下線⑤について,1ポートだけからミラーパケットを取得する設定にする場合には,どの装置が接続されているポートからミラーパケットを取得するように設定する必要があるか。図2中の字句を用いて答えよ。 (4)本文中の下線⑥について,サーバでミラーパケットを受信するためにはサーバのインタフェースを何というモードに設定する必要があるか答えよ。また,このモードを設定することによって,設定しない場合と比べどのようなフレームを受信できるようになるか。30字以内で答えよ。 (5)キャプチャサーバに流れるミラーパケットが平均100kビット/秒であるとき,1、000日間のミラーパケットを保存するのに必要なディスク容量は何Gバイトになるか。ここで,1kビット/秒は10³ビット/秒,1Gバイトは10⁹バイトとする。ミラーパケットは無圧縮で保存するものとし,ミラーパケット以外のメタデータの大きさは無視するものとする。
図1 A社ネットワークの構成(抜粋)。工場の制御セグメントと管理セグメント,事務所のOAセグメント及びDMZを,FWやL2SW,サーバ類で接続したネットワーク構成図。
図1 A社ネットワークの構成(抜粋)。工場の制御セグメントと管理セグメント,事務所のOAセグメント及びDMZを,FWやL2SW,サーバ類で接続したネットワーク構成図。
図2 ベンダが提案したA社ネットワークの構成(抜粋)。FTA,NPB,可視化サーバ,キャプチャサーバを追加した更改後のA社ネットワーク構成図。
図2 ベンダが提案したA社ネットワークの構成(抜粋)。FTA,NPB,可視化サーバ,キャプチャサーバを追加した更改後のA社ネットワーク構成図。
表1 FTAの利用時の流れ。FTAへのファイルのアップロード,承認依頼,承認,通知,ダウンロードまでの5段階の利用手順を示す表。
表1 FTAの利用時の流れ。FTAへのファイルのアップロード,承認依頼,承認,通知,ダウンロードまでの5段階の利用手順を示す表。
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判断の前提をそろえて考える

ネットワークの更改を考えるときは、判断の前提がそろっているかに注目しましょう。与えられた情報の中で、明示されている条件と自分で補った想定を区別し、想定だけを根拠に結論を急がないことが大切です。

この問題で問われていること

この問題では、検討の途中で前提を無意識に足していないかを確かめてみましょう。知っている事例をそのまま当てはめず、今考えている判断が、与えられたどの条件に基づくのかを振り返ることが手掛かりになります。

視点

前提とは、判断の土台として置いている条件です。情報として示された条件と、経験や知識から補った想定を分けておくと、考えの根拠を確認しやすくなります。

確認ポイント

  • 判断の根拠にした条件は明示されているか
  • 経験から補った想定が紛れ込んでいないか
  • 考える途中で前提を置き換えていないか
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解説

工場のOTシステムと事務所のITシステムを、ルーティングによる分離の解除を避けながら連携させる問題です。FTAの認証・認可、NPBによるパケット複製、ミラーポートの帯域制約と保存容量の計算が要点です。

問題の全体像

A社は、分離していた工場と事務所を接続し、USBメモリによるファイル移送を廃止するとともに、測定データのリアルタイム可視化と長期保存を実現します。セグメント間ではルーティングを行わず、ファイルの受渡しにFTA、測定パケットの複製にNPBを利用します。公式解答例の出題趣旨では、ITシステムとOTシステムの接続を題材に、認証、認可、パケット転送の知識・経験を問うとされています。

設問1(1)(a)

「イベント通知を転送する標準規格(RFC 5424)」と、ログデータの転送に使うという記述に着目します。公式解答例では「Syslog」です。機器やサーバが生成したログを収集先へ転送するプロトコルとして捉えます。採点講評では、ログ収集は故障時やセキュリティインシデント発生時の分析によく用いられるため、名称だけでなく内容の理解も求めています。

設問1(1)(b)

Basic認証のBase64によるエンコードと対比して、MD5やSHA-256によるハッシュ化が示されています。公式解答例では「ダイジェスト」です。ダイジェスト認証は、パスワードそのものではなく、パスワードやサーバから提示された値などを用いて計算したダイジェストで認証する方式です。Base64によるエンコードとハッシュ化を区別することがポイントです。

設問1(1)(c)

「HTTPのメソッドでトンネリング通信を提供する」という記述に着目します。公式解答例では「CONNECT」です。クライアントはプロキシサーバにCONNECTで接続先を指定し、確立されたトンネルを通じて通信します。本文では、そのトンネルの接続先ポートを443に限定していると読み取れます。

設問1(2)

外部からアクセスされるサーバが侵入を受けた後、被害がOAセグメントへ広がる場面を考えます。DMZをFWで独立させることで、侵入されたサーバからOAセグメントの機器へのアクセスを制限できます。公式解答例では、社外からサーバに侵入されたときにOAセグメントの機器へ侵入されるリスクを挙げています。40字以内の答案では「公開サーバへの侵入を足掛かりにOAセグメントの機器へ侵入されるリスク」とまとめられます。

設問2(1)

既存の内部メールサーバとプロキシサーバが、ユーザ認証のためにLDAPサーバを参照するという記述に着目します。FTAもこの認証情報の管理先を参照すれば、利用者の認証を一元的に管理できます。公式解答例では、図2の字句を用いた「LDAPサーバ」です。内部メールサーバは認証情報を参照する側であることを区別します。

設問2(2)

図2では、FTAは管理セグメントとOAセグメントの両方に直接接続されています。一方、制御サーバは制御セグメントと管理セグメントの間でルーティングを行わず、FTAにも静的経路や経路制御プロトコルを設定しません。そのため、FTAへアクセスできるのは直接接続された二つのセグメントです。公式解答例では「管理セグメント、OAセグメント」です。

設問2(3)(認証)

下線③の認証は、FTAへログインする利用者が誰であるかを確認するために使われます。ファイルを取得できるか、承認できるかという権限の判断とは区別します。公式解答例では「FTAの利用者が本人であることを確認するため」で、25字以内の答案として示せます。採点講評でも、認証と認可をまとめて覚えるだけでなく、違いを理解することが求められています。

設問2(3)(認可)

本文では、指定された受信者だけがファイルをダウンロードでき、設定された上長だけが承認できるとされています。これらは、利用者に各操作の実行権限があるかを判断する認可の例です。公式解答例では「操作ごとに実行権限を有するかを確認するため」で、25字以内に収まります。本人確認を終えたことだけで、全ての操作が許可されるわけではありません。

設問3(1)

宛先MACアドレスがMACアドレステーブルに学習されていない場合の動作が問われています。L2SWは転送先を特定できないため、受信ポートを除く同一VLAN内の各ポートへフレームを転送します。この動作を、公式解答例では「フラッディング」としています。入力ポートと出力ポートの組合せを事前に設定するNPBとの違いを押さえます。

設問3(2)

送信側と受信側の双方をミラーする設定と、NPBにつながるケーブルが全て1000BASE-SXである点を合わせて読みます。L2SW方式では、双方向の複製を一つのミラーポートから出力するため、合計帯域が1Gビット/秒に制限されます。タップ方式では方向ごとにNPBの入力ポートを使用します。公式解答例の要点は、送受信の合計が1Gビット/秒までという制約です。40字以内では「送信側と受信側を合計して1Gビット/秒までしか取り込めない」と示せます。採点講評でも、このボトルネックを本文全体から読み取ることが求められています。

設問3(3)

コントローラが測定データを制御サーバへ常時送信するという記述に着目します。複数のコントローラからの測定データは、制御セグメントのL2SWから制御サーバへ向かうポートに集まります。そのポートをミラー元にすれば、1ポートの設定で測定データを取得できます。公式解答例では、接続装置の名称として「制御サーバ」です。

設問3(4)(モード)

NPBが送るのは、コントローラと制御サーバの通信を複製したミラーパケットです。その宛先MACアドレスは、受信する可視化サーバやキャプチャサーバ自身のMACアドレスとは限りません。これらのフレームも受信するため、インタフェースを宛先MACアドレスによる通常の受信制限を外すモードに設定します。公式解答例では「プロミスキャス」です。

設問3(4)(フレーム)

プロミスキャスモードにすると、自分を宛先としないユニキャストフレームも受信できるようになります。公式解答例では「宛先MACアドレスが自分のMACアドレス以外のフレーム」とされています。30字以内の答案では「自分以外のMACアドレスを宛先とするフレーム」と示せます。ミラーによって受信ポートへ届くことと、インタフェースがそのフレームを受け入れることを区別します。

設問3(5)

平均100kビット/秒を100、000ビット/秒に換算し、保存期間を秒に直します。1、000日×86、400秒/日=86、400、000秒なので、総データ量は100、000ビット/秒×86、400、000秒=8、640、000、000、000ビットです。8で割ると1、080、000、000、000バイト、さらに1Gバイト=10⁹バイトで割ると1、080Gバイトになります。公式解答例の「1、080」と一致します。100、000×1、000×86、400÷8の結果は1、080、000、000、000バイトであり、途中計算と最終解答をこの値で整合させます。

学習のポイント

図と本文から通信経路を読み取り、認証と認可の違い、双方向ミラーの帯域制約、ビットとバイトの換算を理解しましょう。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和4年度春期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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