NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ

平成30年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 サービス基盤の構築に関する次の記述を読んで,設問1~5に答えよ。 Y社は,データセンタ(以下,DCという)を運営し,ホスティングサービスを提供している。ホスティングサービスのシステムは,顧客ごとに独立したネットワークとサーバから構成されている。Y社が運営しているホスティングサービスのシステム構成を図1に示す。 図1 Y社が運営しているホスティングサービスのシステム構成(抜粋) このたび,Y社では,新規顧客へのサービスの提供やサーバの増設を迅速に行えるようにするとともに,導入コストや運用コストを削減してサービスの収益性を高める目的で,サービス基盤の構築を決定した。このサービス基盤では,ネットワークと物理サーバを顧客間で共用し,論理的に独立した複数の顧客システムを稼働させる,マルチテナント方式のIaaS(Infrastructure as a Service)を提供する。 サービス基盤構築プロジェクトリーダに指名された,基盤開発部のM課長は,部下でネットワーク構築担当のN主任に,次の3点の要件を提示し,サービス基盤の構成を検討するよう指示した。 (1) サーバの仮想化によって,サーバ増設要求に迅速に対応可能とすること (2) サービス基盤で稼働する顧客システムは,顧客ごとに論理的に独立させること (3) サービス基盤は冗長構成とし,サービス停止を極力抑えられるようにすること N主任は,SDN(Software-Defined Networking)技術を用いず,従来の技術を用いた方式(以下,従来方式という)とSDN技術を用いた方式(以下,SDN方式という)の二つの方式に関して,サービス基盤を構築する場合や顧客が増減した場合の作業内容などを比較して,構築方式を決めることにした。この方針を基に,N主任は,部下のJさんに,サービス基盤の構成について検討するよう指示した。 〔従来方式でのサービス基盤の構成案〕 Jさんは,まず,従来方式で構築する場合のサービス基盤の構成を検討した。Jさんが設計した,従来方式によるサービス基盤の構成案を図2に示す。 図2 従来方式によるサービス基盤の構成案 サービス基盤は,VLANによって顧客間のネットワークを論理的に独立させる。 図2中の既設のL2SW及びL3SWのサービス基盤への接続ポートには,それぞれリンクアグリゲーションを設定する。既設のL2SW又はL3SWに接続するL2SWaとL2SWbのポートには,接続先の顧客ごとにリンクアグリゲーションとVLANを設定する。L2SWaとL2SWbの間及びL2SWcとL2SWdの間は,【ア】接続して,それぞれ,一つのL2SWとして動作できるようにする。 FWは,①装置の中に複数の仮想FWを稼働させることができ,②装置の冗長化ができる製品を選定する。冗長構成では,アクティブの仮想FWが保持しているセッション情報が,装置間を直結するケーブルを使って,スタンバイの仮想FWに転送される。セッション情報を継承することで,仮想FWの【イ】フェールオーバを実現している。 LBは,負荷分散対象のサーバ群を一つのグループ(以下,クラスタグループという)としてまとめ,クラスタグループを複数設定できる製品を選定する。クラスタグループごとに仮想IPアドレスと【ウ】アルゴリズムが設定できるので,複数の顧客の処理を1台で行える。LBも冗長化が可能であり,FWと同様の方法で冗長構成を実現している。 図2の構成案では,FWとLBは,FWaとLBaをアクティブに設定する。スタンバイの装置がアクティブに切り替わる条件は,両装置とも同様であり,両装置は連動して切り替わる。 物理サーバには2枚のNICを実装し,【エ】機能を利用してアクティブ/アクティブの状態にする。L2SWcとL2SWdには,リンクアグリゲーションのほかに,③仮想サーバの物理サーバ間移動に必要となるVLANを設定する。 〔SDN方式でのサービス基盤の構成案〕 次に,Jさんは,SDN製品のベンダの協力を得て,SDN方式で構築する場合のサービス基盤の構成を検討した。 SDNを実現する技術の中に,OpenFlow(以下,OFという)がある。今回の検討では,標準化が進んでいるOFを利用することにした。 OFは,データ転送を行うスイッチ(以下,OFSという)と,OFSの動作を制御するコントローラ(以下,OFCという)から構成される。OFSによるデータ転送は,OFCによって設定されたフローテーブル(以下,Fテーブルという)に基づいて行われる。 Jさんが設計した,OFによるサービス基盤の構成案を図3に示す。 図3 OFによるサービス基盤の構成案 OFSは2台構成とし,相互に接続する。図3中の既設のL2SW及びL3SWのサービス基盤への接続ポートには,リンクアグリゲーションを設定し,OFS1とOFS2に接続する。物理サーバには,図2と同様に2枚のNICを実装して各NICをアクティブ/アクティブの状態にする。FWとLBには,仮想サーバ上で稼働する仮想アプライアンス製品を利用する。OFCは,OFS1とOFS2の管理用ポートに接続する。 これらのOFSは,起動するとOFCとの間でTCPコネクションを確立する。その後は,OFCとの間の通信路となるOFチャネルが開設され,それを経由してOFCからFテーブルの作成や更新が行われる。したがって,OFSの導入時には,④OFCとのTCPコネクションの確立に必要な最小限の情報を設定すればよく,導入作業は容易である。 Jさんは,二つの方式で設計したサービス基盤の構成をN主任に説明したところ,二つの方式を比較し,Y社に適した方式を提案するよう指示を受けた。 〔二つの方式の比較〕 Jさんは,図2と図3のサービス基盤を構築する場合について,二つの方式で実施することになる作業内容などを基に,比較表を作成した。Jさんが作成した二つの方式の比較を表1に示す。 表1 Jさんが作成した二つの方式の比較 以上の比較検討を基に,Jさんは,OFを用いると技術習得などに時間を要することになるが,今後のサービス拡大に柔軟に対応できるようになると判断し,OFによるサービス基盤の構築を,N主任に提案した。N主任は,Jさんの提案がY社にとって有益であると考え,Jさんの提案を基にサービス基盤の構築案をまとめ,M課長に報告したところ,テストシステムを構築して,OFの導入効果を確認するようにとの指示を受けた。 〔技術習得を目的とした制御方式の設計〕 テストシステムの構築に当たって,N主任とJさんの2人は最初に,OFの技術習得を目的として,MACアドレスの学習によるパケットの転送制御方式を考えることにした。 テストシステムは,図1中のP社,Q社及びZ社の3顧客向けのシステムを収容した構成である。テストシステムの構成を図4に,テストシステム中の機器と仮想サーバのMACアドレスを表2に示す。 図4 テストシステムの構成 表2 テストシステム中の機器と仮想サーバのMACアドレス 図4に示したように,P社にはVLAN IDに100,110,120,Q社にはVLAN IDに200,210,Z社にはVLAN IDに300,310を,それぞれ割り当てる。各顧客のWebサーバと業務サーバ間の通信は発生しない。 2人は,Fテーブルの構成について検討した。Fテーブルは,OFSのデータ転送動作を確認しやすくするために,最初に処理されるFテーブル0と,パケットの入力ポートに対応して処理されるFテーブル1~4の五つの構成とした。2人がまとめた,五つのFテーブルの役割を表3に示す。 表3 五つのFテーブルの役割 Fテーブルは,複数のフローエントリ(以下,Fエントリという)からなる。 Fエントリは,OFSに入力されたパケットがどのFエントリに一致するかを判定するためのマッチング条件,条件に一致したパケットに対する操作を定義するアクション,パケットが複数のFエントリに一致した場合の優先度などで構成される。入力されたパケットが,Fテーブル内の複数のFエントリのマッチング条件に一致した場合は,優先度が最も高いFエントリのアクションが実行される。また,どのマッチング条件にも一致しないパケットは廃棄される。一つのFエントリには,複数のアクションを定義できる。 OFCとOFSの間では,メッセージの交換が行われる。このメッセージの中には,OFSに対してFエントリを設定するFlow-Modメッセージ,OFSが受信したパケットをOFCに送信するPacket-Inメッセージ,OFCがOFSに対して指定したパケットの転送を指示するPacket-Outメッセージなどがある。 次に,2人は,3顧客で全てのサーバとの通信が正常に行われたとき(以下,正常通信完了時という)に,OFCによってOFSに生成されるFエントリを,机上で作成した。正常通信完了時のFテーブル0~4を,それぞれ表4~8に示す。 表4 正常通信完了時のOFS1とOFS2のFテーブル0 表5 正常通信完了時のOFS1とOFS2のFテーブル1 表6 正常通信完了時のOFS1とOFS2のFテーブル2 表7 正常通信完了時のOFS1とOFS2のFテーブル3 表8 正常通信完了時のOFS1とOFS2のFテーブル4 表8中の項番2は,イーサタイプがARP,VLAN IDが100及び宛先MACアドレスがFF-FF-FF-FF-FF-FFのパケットを,VLANタグを削除してp1から出力することを示している。 OFSにパケットが入力されると,OFSは表4のFテーブル0の処理を最初に実行する。例えば,図4中のQ社のIPsecルータからOFS1のp2にARPリクエストパケットが入力された場合,そのパケットは,表4中の項番2に一致するので,パケットにVLAN IDが200のVLANタグをセットし,次に表5のFテーブル1で定義された処理を行う。表5のFテーブル1では,項番1に一致するので,当該パケットはPacket-Inメッセージに収納されて,OFCに送信される。OFCは受信したパケットの内容を基に,Flow-ModメッセージでFエントリを生成したり,Packet-OutメッセージなどをOFSに送信したりする。 N主任とJさんは,作成したFテーブルの論理チェックを行い,五つのFテーブルによってテストシステムを稼働させることができると判断した。 パケット転送制御方式の机上作成を通してOFの動作イメージが学習できたので,次に,2人は,実際にテストシステムを構築して,動作検証と性能評価を行うことにした。 設問1 本文中の【ア】~【エ】に入れる適切な字句を答えよ。 設問2 〔従来方式でのサービス基盤の構成案〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1) 本文中の下線①の要件が必要になる理由を,30字以内で述べよ。 (2) 本文中の下線②の機能について,アクティブのFWをFWaからFWbに切り替えるのに,FWa又はFWbが監視する内容を三つ挙げ,図2中の機器名を用いて,それぞれ25字以内で答えよ。 (3) 本文中の下線③について,VLANを設定するポート及び設定するVLANの内容を,50字以内で具体的に述べよ。 設問3 本文中の下線④の情報を,15字以内で答えよ。 設問4 〔二つの方式の比較〕について,(1),(2)に答えよ。 (1) 表1中の項番2について,従来方式の場合,FWでは複数の仮想FWを設定することになる。仮想FWの設定に伴って,各仮想FWに対して設定が必要なネットワーク情報を三つ挙げ,それぞれ15字以内で答えよ。 (2) 表1中の項番3について,従来方式の場合,追加する顧客に対応したVLAN設定がサービス基盤の全ての機器及びサーバで必要になる。その中で,ポートVLANを設定する箇所を,図2中の名称を用いて,40字以内で答えよ。 設問5 〔技術習得を目的とした制御方式の設計〕について,(1)~(4)に答えよ。 (1) 本番システムにおいて,図4の形態で3顧客の仮想サーバを配置した場合に発生する可能性がある問題を,40字以内で述べよ。また,その問題を発生させないための仮想サーバの配置を,40字以内で述べよ。 (2) 表8のFテーブル4中には,FWpの内部側のポートからLBpの仮想IPアドレスをもつポートに,パケットを転送させるためのFエントリが生成されない。当該FエントリがなくてもFWpとLBp間の通信が行われる理由を,70字以内で述べよ。 (3) P社のWebサーバ利用者から送信された,Webサーバ宛てのユニキャストパケットがWebサーバp1に転送されるとき,パケットの転送は,次の【パケット転送処理手順】となる。 【パケット転送処理手順】 ルータ→L2SW→Fテーブル0,項番1→【オ】→FWp→LBp→【カ】→【キ】→Webサーバp1 【パケット転送処理手順】中の【オ】~【キ】に入れる適切なFテーブル名と項番を答えよ。Fテーブル名は,Fテーブル0~4から選べ。また,項番は表4~8中の項番で答えよ。ここで,パケット転送制御を行うOFSは特定しないものとする。 (4) P社のWebサーバp4が物理サーバ2に移動し,表7のOFS1のFテーブル3中の項番5によって,OFCにPacket-Inメッセージが送信されると,OFCは表8のFテーブル4中の二つの項番を変更する。Fテーブル4が変更されるOFS名を全て答えよ。また,項番3のほかに変更される項番及び変更後のアクションを答えよ。
図1 Y社が運営しているホスティングサービスのシステム構成(抜粋)。Y社のDCで顧客ごとに独立したネットワークとサーバを運用する構成。P社,Q社,Z社の接続経路とFW,LB,スイッチ,サーバの配置を示す。
図1 Y社が運営しているホスティングサービスのシステム構成(抜粋)。Y社のDCで顧客ごとに独立したネットワークとサーバを運用する構成。P社,Q社,Z社の接続経路とFW,LB,スイッチ,サーバの配置を示す。
図2 従来方式によるサービス基盤の構成案。顧客側の既設機器を,冗長化したL2SW,FW,LBと物理サーバ群に接続する従来方式の構成。物理サーバ内の仮想L2SWと仮想サーバ,接続の凡例及び注記を含む。
図2 従来方式によるサービス基盤の構成案。顧客側の既設機器を,冗長化したL2SW,FW,LBと物理サーバ群に接続する従来方式の構成。物理サーバ内の仮想L2SWと仮想サーバ,接続の凡例及び注記を含む。
図3 OFによるサービス基盤の構成案。顧客側の既設機器と物理サーバ群をOFS1,OFS2に接続する構成。OFCはL2SW1を介して両OFSを管理し,顧客サーバ,FW,LBは別の仮想サーバで稼働する。
図3 OFによるサービス基盤の構成案。顧客側の既設機器と物理サーバ群をOFS1,OFS2に接続する構成。OFCはL2SW1を介して両OFSを管理し,顧客サーバ,FW,LBは別の仮想サーバで稼働する。
表1 Jさんが作成した二つの方式の比較。従来方式とSDN方式を,導入機器の数,構築時の設定作業,顧客追加時の設定作業,サービス基盤の増設時の作業,必要技術の習得の五項目で比較する表。
表1 Jさんが作成した二つの方式の比較。従来方式とSDN方式を,導入機器の数,構築時の設定作業,顧客追加時の設定作業,サービス基盤の増設時の作業,必要技術の習得の五項目で比較する表。
図4 テストシステムの構成。3顧客のネットワークと3台の物理サーバを二つのOFSに接続する構成。各ポート番号,仮想サーバの配置,FWとLBの接続,VLAN IDの対応を示す。
図4 テストシステムの構成。3顧客のネットワークと3台の物理サーバを二つのOFSに接続する構成。各ポート番号,仮想サーバの配置,FWとLBの接続,VLAN IDの対応を示す。
表2 テストシステム中の機器と仮想サーバのMACアドレス。各顧客のWebサーバ及び業務サーバのMACアドレスと,ルータ,IPsecルータ,L3SW,LB,FWの内部側及びWAN側のMACアドレスを示す。
表2 テストシステム中の機器と仮想サーバのMACアドレス。各顧客のWebサーバ及び業務サーバのMACアドレスと,ルータ,IPsecルータ,L3SW,LB,FWの内部側及びWAN側のMACアドレスを示す。
表3 五つのFテーブルの役割。Fテーブル0は入力ポートによる処理の振分けを担当し,Fテーブル1は顧客側,Fテーブル2~4はそれぞれ物理サーバ1~3から入力したパケットを処理する。
表3 五つのFテーブルの役割。Fテーブル0は入力ポートによる処理の振分けを担当し,Fテーブル1は顧客側,Fテーブル2~4はそれぞれ物理サーバ1~3から入力したパケットを処理する。
表4 正常通信完了時のOFS1とOFS2のFテーブル0。入力ポートp1~p3,p11~p13に対応する六つのエントリを示す。顧客側からの入力にはVLANタグを設定し,入力元に応じてFテーブル1~4へ処理を渡す。
表4 正常通信完了時のOFS1とOFS2のFテーブル0。入力ポートp1~p3,p11~p13に対応する六つのエントリを示す。顧客側からの入力にはVLANタグを設定し,入力元に応じてFテーブル1~4へ処理を渡す。
表5 正常通信完了時のOFS1とOFS2のFテーブル1。顧客側から入力したパケットのマッチング条件,アクション,優先度を示す。ARPはOFCへ送信し,宛先MACアドレスに応じてp13又はp12から出力する。
表5 正常通信完了時のOFS1とOFS2のFテーブル1。顧客側から入力したパケットのマッチング条件,アクション,優先度を示す。ARPはOFCへ送信し,宛先MACアドレスに応じてp13又はp12から出力する。
表6 正常通信完了時のOFS1とOFS2のFテーブル2。物理サーバ1からの入力を処理するエントリを示す。ARP,VLAN ID,送受信MACアドレスによる条件と,仮想サーバの移動を知らせるRARPの処理を含む。
表6 正常通信完了時のOFS1とOFS2のFテーブル2。物理サーバ1からの入力を処理するエントリを示す。ARP,VLAN ID,送受信MACアドレスによる条件と,仮想サーバの移動を知らせるRARPの処理を含む。
表7 正常通信完了時のOFS1とOFS2のFテーブル3。物理サーバ2からの入力を処理するエントリを示す。Z社のARP及びWeb通信のp13への出力,業務通信のVLANタグ削除とp3への出力,移動通知の処理を含む。
表7 正常通信完了時のOFS1とOFS2のFテーブル3。物理サーバ2からの入力を処理するエントリを示す。Z社のARP及びWeb通信のp13への出力,業務通信のVLANタグ削除とp3への出力,移動通知の処理を含む。
表8 正常通信完了時のOFS1とOFS2のFテーブル4。物理サーバ3からの入力を処理する十二のエントリを示す。ARPの転送,LBからWebサーバへの出力,顧客側へ戻す通信のVLANタグ削除,RARPの処理を含む。
表8 正常通信完了時のOFS1とOFS2のFテーブル4。物理サーバ3からの入力を処理する十二のエントリを示す。ARPの転送,LBからWebサーバへの出力,顧客側へ戻す通信のVLANタグ削除,RARPの処理を含む。
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条件の適用範囲に注目する

この分野を考えるときは、記載された条件がどこまで適用されるかに注目しましょう。ある部分についての条件を全体にも当てはめていないか、判断の対象と条件の範囲を対応させて整理することが手掛かりになります。

この問題で問われていること

検討の焦点は、条件の適用範囲と判断の対象がそろっているかです。示された条件を使って考える際は、その条件が及ぶ範囲を確かめ、範囲を広げたり狭めたりする前提を自分で加えていないか振り返りましょう。

視点

条件を整理するときは、その内容だけでなく、どの範囲について述べているかを意識します。条件が及ぶ範囲と、そこから判断しようとしている範囲を区別して捉えましょう。

確認ポイント

  • 条件が適用される範囲を捉えているか
  • 判断の対象を条件の範囲と対応させているか
  • 条件の範囲を変える前提を加えていないか
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解説

顧客別の設備を共用するIaaS基盤への移行を題材に、VLANによる分離、FWの仮想化と冗長化、仮想サーバ移動への対応を理解する問題です。OpenFlowでは、入力ポートによる処理の振分けとMACアドレスによる転送、移動後の出力先変更を構成図と表から読み取ります。

問題の全体像

Y社は、顧客ごとに独立していたネットワークとサーバを共用し、迅速な増設とコスト削減を実現するマルチテナント方式のIaaS基盤を検討しています。要件は、サーバ仮想化、顧客ごとの論理的な独立、冗長化による停止の抑制です。従来方式ではVLANと専用装置の設定を、SDN方式ではOpenFlowによる転送制御を読み解きます。出題趣旨では、既存のネットワーク技術を基に本文を理解し、実務で活用できるかを問うとされています。

設問1(ア)

「それぞれ、一つのL2SWとして動作できるようにする」という記述に着目します。公式解答例では「スタック」です。図2のL2SWaとL2SWb、L2SWcとL2SWdを、それぞれ一つの論理的なスイッチとして動作させる接続を指します。

設問1(イ)

アクティブの仮想FWからスタンバイの仮想FWへ「セッション情報を継承する」という記述が根拠です。公式解答例では「ステートフル」です。通信の状態を引き継いで切り替えるため、切替え後も既存のセッションを扱えます。採点講評でも、この用語の理解が求められています。

設問1(ウ)

LBが、負荷分散対象のサーバ群をクラスタグループとしてまとめ、グループごとに仮想IPアドレスとアルゴリズムを設定する点に着目します。公式解答例では「負荷分散」です。各グループ内のどのサーバへ処理を振り分けるかを決めるアルゴリズムを意味します。

設問1(エ)

物理サーバの2枚のNICを「アクティブ/アクティブの状態にする」という記述が根拠です。公式解答例では「チーミング」です。複数のNICをまとめて利用する機能で、図2では2枚のNICをL2SWcとL2SWdへ接続しています。

設問2(1)

顧客システムを論理的に独立させながら、FW装置を共用する点に着目します。顧客によって許可する通信や経路が異なるため、仮想FWごとに設定を分ける必要があります。公式解答例では、顧客ごとに異なるフィルタリング設定、又は顧客ごとのルーティング設定が必要であることを挙げています。30字以内なら「顧客ごとに異なるフィルタリング設定が必要だから」とまとめられます。

設問2(2)(①)

図2ではFWaがアクティブ、FWbがスタンバイです。FWa自体が停止した場合にFWbへ切り替えるには、FWbがFWaの稼働状態を監視する必要があります。公式解答例の一つは「FWbによるFWaの稼働状態」で、25字以内に監視主体と対象を示せます。

設問2(2)(②)

FWaが動作していても、顧客側へつながるリンクが切れれば通信を継続できません。図2でFWaの上流にあるL2SWaとの接続を確認します。公式解答例に沿って「FWaによるL2SWa接続ポートのリンク状態」とすれば、25字以内で監視主体、接続先、監視内容を示せます。

設問2(2)(③)

FWaの下流にはLBaがあり、この接続リンクの障害も通信停止につながります。公式解答例に沿った25字以内の表現は「FWaによるLBa接続ポートのリンク状態」です。公式解答例では、FWaによるFWbの稼働状態や、FWbによるL2SWb・LBbへの接続ポートのリンク状態も挙げています。三つの回答では、装置の稼働状態と上流・下流のリンク状態を具体的に区別します。

設問2(3)

仮想サーバは物理サーバ間を移動しても、移動前と同じ顧客ネットワークで通信する必要があります。そのため、L2SWcとL2SWdの物理サーバ接続ポートでは、現在そこにいる仮想サーバのVLANだけでは不足します。公式解答例では、全顧客の仮想サーバに設定されたVLAN IDを設定します。50字以内なら「物理サーバ接続ポートに全顧客の仮想サーバのVLAN IDを設定する。」とまとめられます。採点講評でも、マイグレーションに不可欠な設定とされています。

設問3

下線④は、OFSがOFCとのTCPコネクションを確立するための情報です。Fテーブルの内容は接続後にOFCから設定されるので、ここでは接続先を示すIPアドレスに着目します。公式解答例では「OFCのIPアドレス」と「自OFSのIPアドレス」が挙げられています。15字以内の回答として「OFCのIPアドレス」と示せます。

設問4(1)(①)

仮想FWも、顧客ごとの通信を許可・拒否するFWとして動作する点に着目します。公式解答例の一つは「フィルタリングルール」で、15字以内です。仮想化によって装置を共用しても、顧客ごとの通信制御の設定は必要です。

設問4(1)(②)

従来方式ではVLANによって顧客間のネットワークを分離しています。各仮想FWがどの顧客のネットワークを扱うかを対応付ける情報が必要です。公式解答例の一つは「仮想FWのVLAN ID」で、15字以内で設定対象と情報を示せます。

設問4(1)(③)

各仮想FWがネットワーク上で通信するためのアドレス設定に着目します。公式解答例の一つは「仮想FWのIPアドレス」で、15字以内です。公式解答例では、サブネットマスク、仮想MACアドレス、ルーティング情報も挙げられています。採点講評では、仮想FWに設定するネットワーク情報も通常のFWとほぼ同じであることの理解を求めています。

設問4(2)

顧客ごとの既設L2SW又はL3SWからサービス基盤へ入る接続箇所に着目します。ここでは接続ポートによって顧客のVLANを識別できます。一方、物理サーバ側の接続では複数顧客のVLANを扱う必要があります。公式解答例に沿った40字以内の表現は「顧客のL2SW又はL3SWに接続するL2SWa及びL2SWbのポート」です。

設問5(1)(発生する可能性がある問題)

図4では、P社のFWp・LBp、Q社のFWq、Z社のLBzが全て物理サーバ3に配置されています。この物理サーバが停止すると、各顧客の通信に必要な機能が同時に失われます。公式解答例に沿った40字以内の表現は「物理サーバ3の障害によって3顧客のシステムが同時に停止する。」です。採点講評でも、この障害の影響範囲を構成図から見つけることが求められています。

設問5(1)(仮想サーバの配置)

防ぐべき問題は、一つの物理サーバの障害が複数顧客へ同時に波及することです。Webサーバや業務サーバだけでなく、仮想FW・LBも含めて顧客ごとの配置を考えます。公式解答例に沿った40字以内の表現は「3顧客向けの仮想サーバを、それぞれ異なる物理サーバに配置する。」です。これにより、物理サーバ障害の影響が複数顧客へ及ぶことを抑えます。

設問5(2)

図4では、FWpの内部側ポートとLBpのWAN側ポートは、どちらもVLAN IDが110で、同じ物理サーバ3の仮想L2SWに接続されています。この通信は仮想L2SWで転送され、OFSを経由しません。公式解答例に沿った70字以内の表現は「FWpの内部側ポートとLBpの仮想IPアドレスをもつポートは同一セグメントにあり、物理サーバ3内で処理されるから」です。

設問5(3)(オ)(Fテーブル名)

P社側からp1へ入ったパケットは、表4のFテーブル0の項番1でVLAN IDが100のタグを付けられます。同じ項番のアクションに、次はFテーブル1で処理すると明記されています。したがって、公式解答例では「Fテーブル1」です。

設問5(3)(オ)(項番)

表5のFテーブル1で、FWpのWAN側MACアドレスであるmFWpwを宛先とする条件を探します。該当するのは項番2で、アクションはp13からの出力です。p13はFWpのある物理サーバ3へつながるため、公式解答例では「2」です。Webサーバ宛てのIPパケットでも、この区間の宛先MACアドレスはFWpのものになります。

設問5(3)(カ)(Fテーブル名)

FWpからLBpへの通信は物理サーバ3内で処理されます。その後、LBpからWebサーバp1へ向かうパケットがOFSへ入ると、本文の規則に従い、最初にFテーブル0が処理されます。したがって、公式解答例では「Fテーブル0」です。

設問5(3)(カ)(項番)

LBpは物理サーバ3に配置されているため、LBpから出たパケットのOFS入力ポートはp13です。表4のFテーブル0で「入力ポート=p13」に一致するのは項番6で、Fテーブル4へ処理を振り分けます。したがって、公式解答例では「6」です。

設問5(3)(キ)(Fテーブル名)

直前の表4の項番6には、Fテーブル4で定義された処理を行うと記載されています。表3でも、Fテーブル4は物理サーバ3からp13経由で入力されたパケットを処理する表です。したがって、公式解答例では「Fテーブル4」です。

設問5(3)(キ)(項番)

LBpからWebサーバp1へ送るパケットは、送信元MACアドレスがmLBp、宛先MACアドレスがmWSp1です。表8のFテーブル4で、この条件に一致するのは項番6です。アクションのp11はWebサーバp1がある物理サーバ1へつながるため、公式解答例では「6」です。

設問5(4)(OFS名)

図4では、各物理サーバがOFS1とOFS2の両方へ接続され、NICはアクティブ/アクティブで利用されています。移動通知を受けたのがOFS1でも、移動後のWebサーバp4へ正しく転送できるよう、両方のOFSの設定を更新する必要があります。公式解答例では「OFS1、OFS2」です。

設問5(4)(項番)

表8でWebサーバp4のMACアドレスmWSp4を宛先とするユニキャストのFエントリを探します。該当するのは、送信元がmLBp、宛先がmWSp4である項番7です。項番3はVLAN IDが120のARPブロードキャストを扱い、項番7はWebサーバp4宛てのユニキャストを扱います。公式解答例では、項番3のほかに変更する項番は「7」です。

設問5(4)(変更後のアクション)

Webサーバp4の移動先は物理サーバ2です。図4と表3から、物理サーバ2に対応するOFSのポートはp12と分かります。項番7の宛先MACアドレスはそのままに、出力先を移動先へ変更するため、公式解答例では「p12から出力」です。これは項番7の変更後のアクションであり、ARPブロードキャストを扱う項番3とは区別します。

学習のポイント

顧客の論理的な分離と物理障害の影響範囲を区別し、構成図の接続先をFテーブルの条件・アクションと対応付けて学習しましょう。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成30年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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