DBデータベーススペシャリスト試験 午後Ⅱ
令和6年度秋期 データベーススペシャリスト 午後Ⅱ 問2
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題





解き方のヒントを見る
記述とスキーマの対応を追う
業務の説明に書かれた一つ一つの事実が、モデルやスキーマのどこに表現されているかを照合し、表現されていない事実を見つけ出す姿勢が検討の中心になります。推測で補わず、記述に根拠がある箇所だけを手掛かりにしましょう。
この問題で問われていること
この種の問題では、業務の条件として述べられた事柄のうち、モデルやスキーマ上でまだ根拠のない対応関係や項目がどれかを見極めることが焦点です。一つの観点として、記述の根拠と表現の有無の照合に絞って確認しましょう。
視点
概念データモデルは業務上の事実のつながりを、関係スキーマはそれを保持する項目の並びを表すもので、抽象度が異なります。ただしどちらでも、ある事実を表すには、それを記録する場所と、他の事実とつなぐ手段が必要です。業務の記述を一文ずつ区切り、その文が何と何のつながり、または何の性質を述べているかを言い換えてから、既存の表現に対応する箇所があるかを探すと、見落としを減らせます。
確認ポイント
- 業務の記述の各文が、どの対象同士のつながり、またはどの対象の性質を述べているかを自分の言葉で言い換えたか
- 言い換えた事実ごとに、モデルやスキーマ上で対応する表現がすでに存在するかを照合したか
- 補おうとしている内容が記述中の具体的な語句に根拠を持ち、推測や一般常識だけに頼っていないか
正解と解説を見る
解説
車体部品メーカーB社の資材調達業務を題材に、概念データモデルと関係スキーマを完成させる問題です。公式解答例では、資材の中に定量発注品という別の切り口のサブタイプを設け、金属材料ロール納入明細を長期発注・スポット発注の納入明細のスーパータイプとしています。また、保管条件付き発注の納入依頼を検収に従属させ、入庫を定量発注納入明細・保管条件付き発注納入・金属材料ロール納入明細の三つに関連付けています。業務事象の順序と識別の単位を読み解くことが鍵になります。
問題の全体像
B社は、組織・倉庫・棚・資材メーカー・品目分類・資材などのマスターと在庫、そして発注・納入依頼・納入・入庫のトランザクションを持ちます。資材は金属材料・樹脂材料・薬品類・梱包資材に分類され、発注は長期発注・スポット発注・定量発注・保管条件付き発注の4種類です。種類ごとに、納入依頼の有無、分割納入の有無、ロール単位の明細、資産となる時点(梱包資材だけは製造完了の通知時点)が異なります。出題趣旨では、トップダウンにエンティティタイプとリレーションシップを分析する能力と、ボトムアップに関係スキーマを導く能力を問うとしています。採点講評では、全体の正答率は平均的でしたが、資材と定量発注品の間のサブタイプを表すリレーションシップ(設問(1))と、入庫の属性ヌ(設問(4))の正答率が特に低かったとされています。理由は、状況記述に解答へ直結する記述がなかったためと述べられています。採点講評は、エンティティの位置付けと、どの業務事象でどのデータを記録すべきかを見抜く力を評価していると説明しています。
設問2(1)
図1(マスター及び在庫)で補うリレーションシップは、公式解答例では次のとおりです。
①組織の自己参照:組織は階層化され、上位組織を持つためです。
②倉庫から倉庫別在庫、資材から倉庫別在庫(それぞれ1対多):業務分析4①の「在庫は倉庫別と棚別の2階層で品目別にもつ」によります。
③棚から棚別在庫、資材から棚別在庫。
④資材のサブタイプとしての定量発注品と、その下の樹脂材料・薬品類。
最も難しいのは④です。業務分析5⑤では、樹脂材料と薬品類をまとめて定量発注品と呼び、購入LS・納入LT・購入単価を取り決めるとしています。この部分集合に固有の属性があるため、設計方針(5)に従ってサブタイプとして切り出します。公式解答例では、既存の品目分類による4分類とは別の切り口として資材から定量発注品へのサブタイプを設け、さらに定量発注品のサブタイプとして樹脂材料と薬品類を結んでいます。一つのエンティティが、複数の切り口で異なるスーパータイプに属し得ることに注意しましょう。
設問2(2)
図2(トランザクション)で補うリレーションシップは、公式解答例では次のとおりです。
①長期発注から長期発注納入依頼:納入開始年月から納入月数分、毎月依頼し、同月内に複数回もあり得ます。
②スポット発注からスポット発注納入:分割納入があり得ます。
③定量発注と定量発注納入明細の1対1、定量発注納入から定量発注納入明細への1対多:同日に納入できる発注をまとめて納入で括ります。
④保管条件付き発注検収から保管条件付き発注納入依頼:梱包資材は製造完了の通知(検収)の時点でB社の資産となり、その後の在庫補充として納入依頼をするため、発注本体ではなく検収に従属させます。
⑤長期発注納入から長期発注納入明細、スポット発注納入からスポット発注納入明細(ロールごとの明細)。
⑥金属材料ロール納入明細をスーパータイプとし、長期発注納入明細とスポット発注納入明細をサブタイプとする関係:ロール製造番号は全金属材料を通じて重複しないため、共通の識別子になります。
⑦入庫への関係:定量発注納入明細と保管条件付き発注納入からは1対多(棚に保管し切れない分は次の棚へ)、金属材料ロール納入明細からは1対1(一つの棚に1ロール)。
なお、長期発注納入依頼と長期発注納入は、関係スキーマ上、同じ主キーの構成で1対1に対応します(納入依頼ごとに納入を受けるため)。
設問2(3)
図3の空欄は、公式解答例では次のとおりです。
ア:上位組織C(外部キー)。組織の自己参照を表します。
イ:品目名、資材メーカーC、品目分類C(後の二つは外部キー)。
ウ:購入LS、納入LT、購入@。業務分析5⑤の、定量発注品で取り決める3項目です。
エ:規格Q、金属仕様。
オ:樹脂仕様。
カ:取扱注意事項。
キ:印刷サイズ、納入LS、納入LT。業務分析5⑥では、保管条件付き発注の納入LS・納入LTも資材メーカーと取り決めており、対象は梱包資材だけなので梱包資材に持たせます。購入単価は発注時に決めるため、マスターには置きません。
ク:倉庫C、品目C(主キー、かつ各マスターへの外部キー)、基準在庫Q、倉庫別在庫Q。基準在庫数量は、業務分析4③で倉庫ごと品目ごとに決めるためです。
ケ:倉庫C、棚#、品目C(主キー)、棚別在庫Q。
共通属性はサブタイプごとに重複させず、定量発注品や梱包資材など、適切な部分集合に置くのがポイントです。
設問2(4)
図4の空欄は、公式解答例では次のとおりです。
コ:金属資材品目C、月当たり納入予定Q、納入開始YM、納入月数、購入@。長期発注は品目別に決め、単価は発注時に決定します。
サ:金属資材品目C、納入先倉庫C、購入@、納入期限YMD、発注Q。
シ:納入先倉庫C、定量発注品品目C、納入予定YMD。数量と単価は、マスターの購入LSと購入@で決まります。
ス:梱包資材品目C、検収予定YMD、購入@、発注Q、保管期限YMD。
セ:検収YMD、購入¥。
ソ:購入対象YMと月内納入依頼#を主キーに加え、通知YMD、納入先倉庫C、納入予定YMD、納入依頼Q。
タ:保管条件付き発注#、納入先倉庫C、納入依頼YMDで構成する主キー。保管条件付き発注#は検収への外部キーでもあります。
チ:長期発注#、購入対象YM、月内納入依頼#(納入依頼と同じ主キー)、納入YMD、購入¥。
ツ:ロール製造#(主キー)と、長期発注納入への外部キー。
テ:スポット発注#と納入YMDで構成する主キー(1日1便のため)、購入¥。
ト:ロール製造#(主キー)、スポット発注#と納入YMD(外部キー)、ロール明細#。
ナ:定量発注納入#(外部キー)。
ニ:保管条件付き発注#、納入先倉庫C、納入依頼YMD(納入依頼と1対1)。
ヌ:発注#、ロール製造#、納入依頼YMD(外部キー)、入庫Q。
採点講評で正答率が特に低かったとされるヌは、入庫をどの納入に結び付けるかを考える問題です。発注#は全発注を通じて一意なので、定量発注納入明細と保管条件付き発注納入の両方への参照に使えます。これに納入依頼YMDと倉庫Cを組み合わせると、保管条件付き発注納入を特定できます。金属材料はロール製造#で明細を特定し、棚ごとの数量は入庫Qで記録します。
学習のポイント
業務記述の「〜ごとに」「1日1便」「資産となる時点」などの制約から、主キー・外部キー・サブタイプを導く練習をしましょう。特に、問題文に直接書かれていない関係(定量発注品のサブタイプ、入庫の参照先)を、エンティティの位置付けから推論する力が重要です。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和6年度秋期 データベーススペシャリスト試験 午後Ⅱ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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