DBデータベーススペシャリスト試験 午後Ⅱ

平成31年度春期 データベーススペシャリスト 午後Ⅱ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 製パン業務に関する次の記述を読んで,設問1,2に答えよ。 Aホテルは,宿泊・料飲・宴会のサービスを提供するフルサービス型のホテルである。Aホテルでは,製パン業務の業務改革に向けて,現状と目指す姿の業務分析を行い,概念データモデル及び関係スキーマを設計した。 〔現状の業務分析の結果〕 1.自社組織,食材業者,品目 (1)自社組織 ① ホテルには本館と新館があり,この二つをロケーションという。 ② 本館には,メインダイニングルームというレストラン(以下,MDという)がある。 ③ 新館には,カジュアルダイニングルームというレストラン(以下,CDという),カフェ(以下,CFという)及び宴会場(以下,BQという)がある。 ④ 営業の時間帯には,朝食,昼食,夕食があり,MDは昼食時間帯及び夕食時間帯に,CDは朝食時間帯,昼食時間帯,夕食時間帯に営業する。また,CF及びBQは朝食~夕食の連続した時間帯に営業する。 ⑤ 機能単位の組織を部門と呼び,部門コードで識別する。部門はいずれかのロケーションに属する。 ⑥ 部門には,製造部門,貯蔵庫,要求元部門の種類があり,部門種別で分類する。本館と新館には,それぞれ製造部門,貯蔵庫,要求元部門が存在する。 ⑦ 製造部門は,製パンの3工程に対応した次の3部門の総称である。これら3部門は,工程区分で分類する。 ・撹拌部門(以下,撹拌をMixという):小麦粉,ミルク,バターなどを捏ねて生地材料を製造するMix工程を担う。 ・成型部門:生地材料を切り分けて成型材料を製造する成型工程を担う。 ・焼成部門:成型材料を天板に並べて焼いて製品を製造する焼成工程を担う。 ⑧ 要求元部門は,パンの製造を要求する部門であり,MD,CD,CF及びBQである。要求元部門には,要求先の焼成部門を設定する。 ⑨ 本館と新館の製造部門は,同じロケーション内の要求元部門にパンの供給を行う。 ⑩ 焼成部門全体の能力よりも,成型部門全体の能力が小さいので,成型の能力が不足する場合,後述する外注成型材料で不足分を補う。ただし,要求元部門の中には内製の成型材料だけを用いなければならない部門があり,その可否を示す内製限定フラグを設定する。 ⑪ 製造部門の3部門には,次の項目を設定する。 ・Mix部門:同時並行で生地材料を製造できるMixライン数 ・成型部門:同時並行で成型できる成型ライン数 ・焼成部門:同時並行で焼成できる窯の保有段数 ⑫ 貯蔵庫は,後述する貯蔵品目の在庫をもち,貯蔵品目の受払いを担う部門である。貯蔵庫からの払出しは,同じロケーション内の部門に限って行う。 (2)食材業者 食材業者は,原材料及び外注成型材料の仕入先業者である。 (3)品目 ① 原材料,生地材料,成型材料,製品を品目と呼ぶ。 ② 品目は,品目コードで識別し,品目名,計量単位及び次を設定する。 ・原材料,生地材料,成型材料及び製品のいずれかを表す品目分類 ・調達又は内製のいずれかを表す調達内製区分 ・貯蔵対象かどうかを表す貯蔵区分 ③ 成型材料には,成型部門が成型する内製成型材料と,食材業者から調達する外注成型材料がある。内製成型材料には,対応する代替外注成型材料を一つ決めて設定する。外注成型材料が代替できる内製成型材料は,一つだけである。 ④ 品目のうちの貯蔵品目には,原材料,生地材料及び外注成型材料が含まれる。貯蔵品目には,出庫のロットサイズを設定する。 ⑤ 品目のうちの調達品目には,原材料及び外注成型材料が含まれる。調達品目には,調達先食材業者,調達ロットサイズ,調達単価を設定する。 ⑥ 品目のうちの内製品目には,生地材料,内製成型材料及び製品が含まれる。内製品目には,製造仕様書番号を設定する。 ⑦ 原材料には,粉類,ミルク類などの分類を表す原材料分類を設定する。 ⑧ 生地材料には,1回の製造単位としての生地材料ロットサイズを設定する。 ⑨ 外注成型材料には,食材業者に成型材料の製造を依頼するための指定製法番号を設定する。 ⑩ 製品には,1回の製造単位としての焼成ロットサイズ,及び焼成に用いる内製成型材料を設定する。一つの内製成型材料からは,一つの製品だけ製造する。 ⑪ 内製成型材料を作るロットサイズは,焼成ロットサイズに等しい。 ⑫ 生地材料には,そのレシピとして,1回の製造に使用する,幾つかの原材料とその使用量を設定する。 ⑬ 内製成型材料には,そのレシピとして,1回の製造に使用する,幾つかの品目(生地材料又は原材料)とその使用量を設定する。例えば,レーズンパンの成型材料には,イギリス食パン用の生地材料の使用量と原材料のレーズンの使用量を決めている。 2.在庫補充のやり方 (1)在庫確認において,在庫数量が基準在庫数量を下回った貯蔵品目について,その品目ごとに決めているロットサイズの補充要求をかける。 (2)補充要求をかけたら補充要求済みフラグをセットし,入庫したら補充要求済みフラグをリセットする。補充要求済みフラグを見ることで,補充要求の重複を防いでいる。 3.物流パターン,物流の指示・実績の情報 (1)物流パターン 部門及び食材業者間の物流パターンを表1に示す。表1では,物流の始点と終点の1組を単位に説明している。例えば,行番号5は次の物流パターンを表している。 ・この物流は,本館貯蔵庫から本館Mix部門に原材料の払出しを行うものである。 ・この物流は,払出依頼書(本館Mix部門が発行)に基づいて行う。 ・この物流の実績として,払出伝票(本館貯蔵庫が発行)を記録する。 表1 部門及び食材業者間の物流パターン (2)表1中の指示情報及び実績情報 ① 要求伝票 各時間帯終了後に,3回先の時間帯を対象に,要求元部門から要求先の焼成部門に,パンの製造を要求する伝票で,要求番号で識別する。要求する製品とその数量を明細に記載する。 ② 供給伝票 要求に対してどのように供給したかを記録する伝票で,供給番号で識別する。要求明細に対応させて供給明細を起こし,実際の供給数量を記録する。製品は焼成ロット単位に製造するので,実際の供給数量は要求数量と異なることがある。供給明細に対して,どの焼成実績から幾つ引き当てたかを記録する。 ③ 焼成実績票 焼成ロットごとの焼成実績を記録する伝票で,製造番号で識別する。 ④ 成型材料製造依頼書 焼成に必要な成型材料の製造依頼を行う伝票で,1ロットごとに発番する成型材料製造依頼番号で識別する。依頼は成型部門の成型能力を超えることがあるので,成型部門からの製造可否の回答を記録する。 ⑤ 成型実績票 成型材料製造依頼に対して製造可否が可となった分について,成型ロット単位の成型実績を記録する伝票で,製造番号で識別する。 ⑥ 払出依頼書 次の場合に,貯蔵庫に対する払出しを依頼する伝票で,払出番号で識別する。 ・成型材料製造依頼に対して製造可否が可となった分について,成型に必要な生地材料及び原材料の払出しを依頼する。 ・成型材料製造依頼に対して製造可否が否となった分について,焼成に必要な外注成型材料の払出しを依頼する。 ・後述する生地材料補充要求について,その生地材料の製造に必要な原材料の払出しを依頼する。 ⑦ 払出伝票 払出依頼の明細について,払出実績数量を記録する。 ⑧ 補充要求書 補充を要求する伝票で,補充要求番号で識別する。貯蔵庫が在庫確認を行って貯蔵品目ごとに発行する。 ・貯蔵庫では,品目分類ごとに保管場所が分かれており,原材料及び外注成型材料は毎夕食時間帯終了後に,生地材料は毎時間帯終了後に,在庫確認を行う。 ・発行した補充要求書を,調達品目の要求(調達品目補充要求)と生地材料の要求(生地材料補充要求)に分類する。 ・調達品目補充要求は,食材業者ごとにくくって注文を発行する。調達品目補充要求は,注文に対する注文明細に位置付ける。 ・生地材料補充要求は,在庫確認の都度,Mix部門に送る。Mix部門では,生地材料補充要求を,1ロット分のMix指示として受け取る。 ⑨ Mix実績票 生地材料補充要求に対するMixの実績で,製造番号で識別する。Mixの実績を記録して入庫実績とする。 ⑩ 納品書 食材業者からの納品の際に受領する伝票で,納品番号で識別する。注文に対する納品は,ものによって複数回に分かれることがあるが,明細の単位は維持される。各貯蔵庫が検品し,納品数量を記録して入庫実績とする。 〔目指す姿の業務分析の結果〕 1.業務改革策とその背景 現状は,現場の判断で,何をどれだけ製造するかを決めているので,欠品,在庫偏在という問題が発生している。そこで,次の業務改革策によって問題解決を図る。 (1)集約可能な部門を集約することで,在庫偏在を減らす。 (2)要求から,製品ごとに必要な焼成ロット数を求め,焼成指示を作成する。その焼成指示をどの要求に引き当てるかを決める際,内製限定の部門の要求を先に引き当てる。それによって,焼成ロットの端数の無駄と,内製限定となる焼成ロットを最小にする。焼成指示に基づいて焼成を実施する。 2.業務改革策に基づく業務 (1)新館Mix部門と新館成型部門を廃止し,それぞれ本館Mix部門,本館成型部門に集約する。それ以外の部門は現状のままとする。 (2)製造計画の立て方 ① 要求を,要求先焼成部門別,製品別に集計し,必要な焼成ロット数を算出する。 ② ①で算出したロット数分の焼成指示を作成する。焼成指示では,対象の年月日,時間帯について,使用する焼成部門ごとの窯の段を割り当てて焼成する製品を決め,1枚の天板の焼成ごとに焼成番号を発番する。 ③ ②で作成した焼成指示について,要求元部門からの要求を,同じ製品について,内製限定の分を先に引き当てる。引き当てた要求が内製限定の場合,引き当てられた焼成指示を内製限定にする。 ④ 内製限定にした焼成指示を先に,成型部門に対して成型材料製造依頼をかける。成型部門は,成型能力がある限り製造可否を「可」と回答し,成型能力が不足する分について製造可否を「否」と回答する。成型部門が製造可否を否と回答した分は,焼成部門が,同じロケーション内の貯蔵庫に対して,代替の外注成型材料の払出依頼をかける。 〔概念データモデルと関係スキーマの設計〕 1.概念データモデル及び関係スキーマの設計方針 概念データモデル及び関係スキーマの設計は,次の方針に基づいて行う。 (1)関係スキーマは,第3正規形にする。 (2)概念データモデルでは,多対多のリレーションシップは用いない。 (3)リレーションシップが1対1の場合,意味的に後からインスタンスが発生する側のエンティティタイプに外部キー属性を配置する。 (4)リレーションシップについて,対応関係にゼロを含むか否かを表す“○”又は“●”は記述しない。 (5)認識可能なサブタイプにおいて,そのサブタイプ固有の属性がある場合,必ずそのサブタイプの属性とする。 (6)サブタイプが存在する場合,ほかのエンティティタイプとのリレーションシップは,スーパタイプ又はサブタイプのいずれか適切な方との間に設定する。 (7)サブタイプに継承するスーパタイプの属性は,サブタイプにおいて外部キーの役割をもつことができる。この場合,継承した属性は,サブタイプの関係スキーマ上で,前後を「[」と「]」で挟んで明示する。 2.設計した概念データモデル及び関係スキーマ まず,現状を対象に設計した。現状について確認を行った後,業務改革策に基づいてどのような修正が必要か検討した。 なお,概念データモデル及び関係スキーマは,マスタ及び在庫領域と,トランザクション領域を分けて作成し,マスタとトランザクションの間のリレーションシップは記述していない。 (1)現状を対象に設計した概念データモデル及び関係スキーマ マスタ及び在庫領域の概念データモデルを図1に,トランザクション領域の概念データモデルを図2に,マスタ及び在庫領域の関係スキーマを図3に,トランザクション領域の関係スキーマを図4に示す。 図1 現状のマスタ及び在庫領域の概念データモデル(未完成) 図2 現状のトランザクション領域の概念データモデル(未完成) 図3 現状のマスタ及び在庫領域の関係スキーマ(未完成) 図4 現状のトランザクション領域の関係スキーマ(未完成) (2)業務改革策に基づいて設計した概念データモデル及び関係スキーマ 業務改革策に基づいて,製造計画の結果である焼成指示を追加したトランザクション領域の概念データモデル及び関係スキーマを設計した。焼成指示に関わる範囲の概念データモデルを図5に,関係スキーマを図6に示す。 図5 焼成指示に関わる範囲の概念データモデル(未完成) 図6 焼成指示に関わる範囲の関係スキーマ(未完成) 解答に当たっては,巻頭の表記ルールに従うこと。ただし,エンティティタイプ間の対応関係にゼロを含むか否かの表記は必要ない。 なお,属性名は,それぞれ意味を識別できる適切な名称とすること。また,関係スキーマに入れる属性名を答える場合,主キーを表す下線,外部キーを表す破線の下線についても答えること。 設問1 現状を対象に設計した概念データモデル及び関係スキーマについて,(1)~(3)に答えよ。 (1)図1に欠落しているリレーションシップを補って,図を完成させよ。 (2)図2に欠落しているリレーションシップを補って,図を完成させよ。 (3)図3中の【a】~【f】,図4中の【g】~【k】に入れる適切な属性名を,一つ又は複数答えよ。 設問2 業務改革策に基づいて設計した物流パターン,概念データモデル及び関係スキーマについて,(1)~(3)に答えよ。 (1)表1は,部門の集約によって次の変更が必要になる。 ① 幾つかの行が不要になる。その行番号を全て答えよ。 ② 行番号15,17に必要となる指示情報を答えよ。 ③ 表2に示す行番号21を新たに追加する必要がある。表1に倣って表2を完成させよ。 表2 部門及び食材業者間の物流パターン(追加行) (2)図5は未完成である。欠落しているリレーションシップを補って,図を完成させよ。 (3)図6中の【l】~【n】に入れる適切な属性名を,一つ又は複数答えよ。ここで,図4にあっても図6に不要な属性は除くこと。 なお,外部キーの役割をもたせるためにサブタイプに継承した属性は,前後を「[」と「]」で挟んで明示すること。継承を明示する例を図7に示す。 図7 継承を明示する例
表1 部門及び食材業者間の物流パターン。部門・食材業者間の物流について、始点と終点、対象物、指示情報、実績情報を行番号ごとに示す表。
表1 部門及び食材業者間の物流パターン。部門・食材業者間の物流について、始点と終点、対象物、指示情報、実績情報を行番号ごとに示す表。
図1 現状のマスタ及び在庫領域の概念データモデル(未完成)。ロケーション、部門、品目、各種サブタイプ、レシピ及び貯蔵品目在庫の概念データモデル。右端の製品エンティティを含め全体を収録。
図1 現状のマスタ及び在庫領域の概念データモデル(未完成)。ロケーション、部門、品目、各種サブタイプ、レシピ及び貯蔵品目在庫の概念データモデル。右端の製品エンティティを含め全体を収録。
図2 現状のトランザクション領域の概念データモデル(未完成)。要求、供給、製造実績、各種製造・払出し・補充・納品関連エンティティの概念データモデル。
図2 現状のトランザクション領域の概念データモデル(未完成)。要求、供給、製造実績、各種製造・払出し・補充・納品関連エンティティの概念データモデル。
図3 現状のマスタ及び在庫領域の関係スキーマ(未完成)。ロケーション、部門、品目及びサブタイプ、レシピ、貯蔵品目在庫の関係スキーマと空欄属性。
図3 現状のマスタ及び在庫領域の関係スキーマ(未完成)。ロケーション、部門、品目及びサブタイプ、レシピ、貯蔵品目在庫の関係スキーマと空欄属性。
図4 現状のトランザクション領域の関係スキーマ(未完成)。要求、供給、製造実績、払出し、補充要求、注文、納品などの関係スキーマと空欄属性。
図4 現状のトランザクション領域の関係スキーマ(未完成)。要求、供給、製造実績、払出し、補充要求、注文、納品などの関係スキーマと空欄属性。
図5 焼成指示に関わる範囲の概念データモデル(未完成)。要求、要求明細、焼成指示、焼成指示要求引当、成型材料製造依頼、製造実績及び焼成実績の関係を示す概念モデル。
図5 焼成指示に関わる範囲の概念データモデル(未完成)。要求、要求明細、焼成指示、焼成指示要求引当、成型材料製造依頼、製造実績及び焼成実績の関係を示す概念モデル。
図6 焼成指示に関わる範囲の関係スキーマ(未完成)。焼成指示を中心とした要求、引当、成型材料製造依頼、製造実績及び焼成実績の関係スキーマ。
図6 焼成指示に関わる範囲の関係スキーマ(未完成)。焼成指示を中心とした要求、引当、成型材料製造依頼、製造実績及び焼成実績の関係スキーマ。
表2 部門及び食材業者間の物流パターン(追加行)。部門集約後に追加する行番号21の物流パターンを記入する空欄表。
表2 部門及び食材業者間の物流パターン(追加行)。部門集約後に追加する行番号21の物流パターンを記入する空欄表。
図7 継承を明示する例。概念データモデルと関係スキーマの例を並べ、サブタイプへ継承した属性を角括弧で示す説明図。
図7 継承を明示する例。概念データモデルと関係スキーマの例を並べ、サブタイプへ継承した属性を角括弧で示す説明図。
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業務ルールの変化とモデルの対応確認

業務改革によって何が変わるのかを記述から丁寧に拾い出し、その変化がデータモデル上のどの部分の前提に影響するのかを一つずつ対応づけて確かめる、という観点に絞って検討を進めましょう。

この問題で問われていること

改革前と改革後で業務上の約束事がどう違うかを整理し、その違いがモデルの構成要素、要素間の関係、識別の仕方のどこに波及するかを、根拠となる記述と結び付けて考えることが検討の中心になります。

視点

データモデルや関係スキーマは、業務の約束事を構造として写し取ったものです。そのため、業務の前提が一つ変わると、構造のどこかに見直しが必要になることがあります。まず業務の記述から変化点を洗い出します。次に、その変化点が構造上のどの前提を支えていたのかを突き合わせます。このように『記述の根拠』と『構造上の該当箇所』を対にして確かめる進め方が有効です。根拠のない変更や、変化点の見落としを防ぐことを意識してください。

確認ポイント

  • 業務改革の前後で変わる約束事と、変わらない約束事を、記述に基づいて区別できているか
  • 洗い出した変化点のそれぞれについて、モデル上で影響を受ける箇所を特定できているか
  • 検討した修正や判断の一つ一つに、根拠となる記述を対応づけて説明できるか
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解説

ホテルの製パン業務を題材に、現状の概念データモデルと関係スキーマの完成、部門の集約に伴う物流パターンの変更、焼成指示を追加したモデルの設計を問う問題です。出題趣旨では、トップダウンにエンティティタイプとリレーションシップを見抜く力、ボトムアップに関係スキーマを分析する力、業務改革に合わせてモデルを適切に変更する力を評価するとしています。採点講評では全体として正答率が低く、特に表1の行番号3が不要になる点、焼成指示から焼成実績へのリレーションシップ、図6のキー構造が弱かったと指摘されています。

問題の全体像

Aホテルには本館と新館があり、Mix(撹拌)、成型、焼成の3工程を担う製造部門、貯蔵庫、要求元部門(MD、CD、CF、BQ)があります。現状では、要求伝票、焼成実績、成型材料製造依頼、払出依頼、補充要求、注文、納品が連鎖して業務が進みます。目指す姿では、新館のMix部門と成型部門を本館に集約し、要求を集計して焼成指示を作り、内製限定の要求から先に引き当てます。設問1は現状モデルの完成、設問2は集約による物流パターンの変更と、焼成指示を追加したモデルの設計です。採点講評によると全体の正答率は低く、状況記述をインスタンスのレベルまで考え、業務がどう連鎖しているかを丁寧に読み取ることが求められています。

設問1(1)

公式解答例で図1に追加されているのは主に次の関係です。(a) 製造部門をスーパタイプとし、焼成部門・成型部門・Mix部門をサブタイプにする(工程区分による分類)。(b) 焼成部門から要求元部門への1対多。要求元部門には要求先の焼成部門を設定するためです。(c) 品目の下に、調達内製区分による調達品目・内製品目のサブタイプと、貯蔵区分による貯蔵品目のサブタイプを置く。(d) 貯蔵品目のサブタイプとして原材料・生地材料・外注成型材料、調達品目のサブタイプとして原材料・外注成型材料を置く。(e) 成型材料のサブタイプとして内製成型材料・外注成型材料を置く。(f) 内製成型材料と外注成型材料の1対1(代替)、内製成型材料と製品の1対1。(g) 生地材料と原材料から生地材料レシピへの1対多。(h) 内製成型材料から成型材料レシピへの1対多と、使用品目の参照元から成型材料レシピへの1対多。成型材料レシピの使用品目は生地材料と原材料のどちらもあり得るため、両方を表せる上位のエンティティタイプを参照します。採点講評では、調達品目のサブタイプと成型材料レシピに対するリレーションシップが不十分な解答が多かったと指摘されています。本文1.(3)の④~⑥と⑬を一つずつ図に当てはめることが大切です。

設問1(2)

公式解答例で図2に追加されているのは、(a) 供給明細と焼成実績から焼成実績供給引当への1対多(供給明細ごとに、どの焼成実績から幾つ引き当てたかを記録するため)、(b) 補充要求をスーパタイプとし、調達品目補充要求・生地材料補充要求をサブタイプにする関係、(c) 生地材料補充要求と払出依頼の1対1(生地材料補充要求に対して、原材料の払出しを依頼するため)、(d) 生地材料補充要求とMix実績の1対1(1ロット分のMix指示に対してMix実績が一つ記録されるため)、(e) 調達品目補充要求と納品明細の1対1(納品が分かれても明細の単位は維持されるため)です。採点講評では、生地材料補充要求をきっかけに払出依頼が発生する関係と、調達品目補充要求をきっかけに納品明細が発生する関係が不十分だったと指摘されています。

設問1(3)

公式解答例の要点は次のとおりです。a:要求先焼成部門コード(外部キー)。要求元部門には要求先の焼成部門を設定するためです。b:調達内製区分、貯蔵区分。サブタイプを分ける区分はスーパタイプの品目に置きます。c:代替外注成型材料品目コード(外部キー)。d:内製成型材料品目コード(外部キー。1対1の関係なので、後から発生する製品側に置きます)。e:生地材料品目コードと使用品目コードの組を主キーとし、それぞれが外部キー、ほかに使用量。f:内製成型材料品目コードと使用品目コードの組を主キーとし、それぞれが外部キー、ほかに使用量。g:製造番号、供給番号、供給明細番号の組を主キーとし、ほかに引当数量。h:成型材料製造依頼番号と補充要求番号(どちらも外部キー)。払出依頼は、成型材料製造依頼をきっかけとする場合と、生地材料補充要求をきっかけとする場合があるためです。i:補充要求番号(主キー)、要求先Mix部門コード(外部キー)、在庫確認時間帯。生地材料は時間帯ごとに在庫を確認し、Mix部門に送るためです。j:補充要求番号(主キー)、注文番号(外部キー)。調達品目補充要求は注文明細の役割をもちます。k:補充要求番号(外部キー)。採点講評では、hとkの正答率が低かったと指摘されています。

設問2(1)(1)

公式解答例では3、9、10、12、14です。新館Mix部門と新館成型部門が廃止されるため、これらが始点または終点になる行9、10、12、14は直接不要になります。さらに、新館に残る焼成部門が使うのは成型材料だけで、貯蔵庫からの払出しは同じロケーション内の部門に限られます。そのため、新館貯蔵庫で原材料を使う部門がなくなり、食材業者から新館貯蔵庫へ原材料を納める行3も不要になります。外注成型材料を扱う行4と行11は、新館焼成部門が代替の外注成型材料を使うため残ります。採点講評では、行番号3が不要になることをほとんど読み取れていなかったと指摘されています。直接の変更に連動して起きる変化まで考えることが大切です。

設問2(1)(2)

公式解答例では、行番号15、17とも指示情報は「焼成指示」です。現状は現場の判断で焼成しているため、指示情報は「-」になっています。業務改革策では、要求から焼成ロット数を求めて焼成指示を作成し、焼成指示に基づいて焼成を実施すると書かれています。そのため、焼成部門内の焼成という物流(FT)を起こす指示は焼成指示になります。

設問2(1)(3)

公式解答例では、行番号21は始点(F)が本館成型部門、終点(T)が新館焼成部門、物流の対象物が成型材料、指示情報が成型材料製造依頼書、実績情報が成型実績票です。新館成型部門が本館成型部門に集約されても、新館焼成部門は残ります。そのため、新館焼成部門が焼成に使う内製の成型材料は、本館成型部門から供給されることになります。これは、現状の行13(本館成型部門から本館焼成部門へ)や行14(新館成型部門から新館焼成部門へ)と同じ種類の物流です。そこで、表1に倣い、指示は成型材料製造依頼書、実績は成型実績票とします。採点講評では、この行がどのような物流パターンになるかについて不十分な解答が多かったと指摘されています。

設問2(2)

公式解答例では、(a) 焼成指示から焼成指示要求引当への1対多、(b) 要求明細から焼成指示要求引当への1対多、(c) 焼成指示と成型材料製造依頼の1対1、(d) 焼成指示と焼成実績の1対1が追加されています。一つの焼成指示(天板1枚分のロット)は複数の要求明細に引き当てられ、一つの要求明細も複数の焼成指示から引き当てられるため、焼成指示要求引当で多対多を解消します。成型材料製造依頼は1ロットごとに発番し、焼成指示に基づいて依頼をかけます。焼成は焼成指示に基づいて実施するため、焼成指示と焼成実績はそれぞれ1対1になります。採点講評では、焼成指示をきっかけに焼成実績が発生する関係が不十分だったと指摘されています。

設問2(3)

公式解答例の要点は次のとおりです。l:対象年月日、対象時間帯、焼成部門コード、焼成番号、要求番号、要求明細番号の組を主キーとし(焼成指示の4項目と要求明細の2項目は、それぞれ外部キーでもあります)、ほかに引当数量。m:対象年月日、対象時間帯、焼成部門コード、焼成番号(焼成指示を参照する外部キー)。図4にあった対象年月日、対象時間帯、依頼元部門コード、内製成型材料品目コードは、焼成指示と製品の設定からたどれるため、図6では不要です。n:[対象年月日]、[対象時間帯]、焼成番号。焼成実績は製造番号で識別されますが、焼成指示の主キーは対象年月日・対象時間帯・焼成部門コード・焼成番号の複合キーです。そこで、スーパタイプの製造実績から継承した対象年月日と対象時間帯を「[ ]」で明示し、既存の焼成部門コードと追加する焼成番号と組み合わせて、焼成指示への外部キーにします。採点講評では、このようなキー構造のずれをどう解消するかがポイントで、全体的に正答率が低かったとされています。

学習のポイント

サブタイプの切り口の見極め、伝票の連鎖から1対1・1対多を判断する方法、業務改革が連動して及ぼす影響の読み取り、既存トランザクションとのキー構造のずれを解消する方法を重点的に練習しましょう。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成31年度春期 データベーススペシャリスト試験 午後Ⅱ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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