DBデータベーススペシャリスト試験 午後Ⅱ
平成31年度春期 データベーススペシャリスト 午後Ⅱ 問2
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題









解き方のヒントを見る
業務ルールの変化とモデルの対応確認
業務改革によって何が変わるのかを記述から丁寧に拾い出し、その変化がデータモデル上のどの部分の前提に影響するのかを一つずつ対応づけて確かめる、という観点に絞って検討を進めましょう。
この問題で問われていること
改革前と改革後で業務上の約束事がどう違うかを整理し、その違いがモデルの構成要素、要素間の関係、識別の仕方のどこに波及するかを、根拠となる記述と結び付けて考えることが検討の中心になります。
視点
データモデルや関係スキーマは、業務の約束事を構造として写し取ったものです。そのため、業務の前提が一つ変わると、構造のどこかに見直しが必要になることがあります。まず業務の記述から変化点を洗い出します。次に、その変化点が構造上のどの前提を支えていたのかを突き合わせます。このように『記述の根拠』と『構造上の該当箇所』を対にして確かめる進め方が有効です。根拠のない変更や、変化点の見落としを防ぐことを意識してください。
確認ポイント
- 業務改革の前後で変わる約束事と、変わらない約束事を、記述に基づいて区別できているか
- 洗い出した変化点のそれぞれについて、モデル上で影響を受ける箇所を特定できているか
- 検討した修正や判断の一つ一つに、根拠となる記述を対応づけて説明できるか
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解説
ホテルの製パン業務を題材に、現状の概念データモデルと関係スキーマの完成、部門の集約に伴う物流パターンの変更、焼成指示を追加したモデルの設計を問う問題です。出題趣旨では、トップダウンにエンティティタイプとリレーションシップを見抜く力、ボトムアップに関係スキーマを分析する力、業務改革に合わせてモデルを適切に変更する力を評価するとしています。採点講評では全体として正答率が低く、特に表1の行番号3が不要になる点、焼成指示から焼成実績へのリレーションシップ、図6のキー構造が弱かったと指摘されています。
問題の全体像
Aホテルには本館と新館があり、Mix(撹拌)、成型、焼成の3工程を担う製造部門、貯蔵庫、要求元部門(MD、CD、CF、BQ)があります。現状では、要求伝票、焼成実績、成型材料製造依頼、払出依頼、補充要求、注文、納品が連鎖して業務が進みます。目指す姿では、新館のMix部門と成型部門を本館に集約し、要求を集計して焼成指示を作り、内製限定の要求から先に引き当てます。設問1は現状モデルの完成、設問2は集約による物流パターンの変更と、焼成指示を追加したモデルの設計です。採点講評によると全体の正答率は低く、状況記述をインスタンスのレベルまで考え、業務がどう連鎖しているかを丁寧に読み取ることが求められています。
設問1(1)
公式解答例で図1に追加されているのは主に次の関係です。(a) 製造部門をスーパタイプとし、焼成部門・成型部門・Mix部門をサブタイプにする(工程区分による分類)。(b) 焼成部門から要求元部門への1対多。要求元部門には要求先の焼成部門を設定するためです。(c) 品目の下に、調達内製区分による調達品目・内製品目のサブタイプと、貯蔵区分による貯蔵品目のサブタイプを置く。(d) 貯蔵品目のサブタイプとして原材料・生地材料・外注成型材料、調達品目のサブタイプとして原材料・外注成型材料を置く。(e) 成型材料のサブタイプとして内製成型材料・外注成型材料を置く。(f) 内製成型材料と外注成型材料の1対1(代替)、内製成型材料と製品の1対1。(g) 生地材料と原材料から生地材料レシピへの1対多。(h) 内製成型材料から成型材料レシピへの1対多と、使用品目の参照元から成型材料レシピへの1対多。成型材料レシピの使用品目は生地材料と原材料のどちらもあり得るため、両方を表せる上位のエンティティタイプを参照します。採点講評では、調達品目のサブタイプと成型材料レシピに対するリレーションシップが不十分な解答が多かったと指摘されています。本文1.(3)の④~⑥と⑬を一つずつ図に当てはめることが大切です。
設問1(2)
公式解答例で図2に追加されているのは、(a) 供給明細と焼成実績から焼成実績供給引当への1対多(供給明細ごとに、どの焼成実績から幾つ引き当てたかを記録するため)、(b) 補充要求をスーパタイプとし、調達品目補充要求・生地材料補充要求をサブタイプにする関係、(c) 生地材料補充要求と払出依頼の1対1(生地材料補充要求に対して、原材料の払出しを依頼するため)、(d) 生地材料補充要求とMix実績の1対1(1ロット分のMix指示に対してMix実績が一つ記録されるため)、(e) 調達品目補充要求と納品明細の1対1(納品が分かれても明細の単位は維持されるため)です。採点講評では、生地材料補充要求をきっかけに払出依頼が発生する関係と、調達品目補充要求をきっかけに納品明細が発生する関係が不十分だったと指摘されています。
設問1(3)
公式解答例の要点は次のとおりです。a:要求先焼成部門コード(外部キー)。要求元部門には要求先の焼成部門を設定するためです。b:調達内製区分、貯蔵区分。サブタイプを分ける区分はスーパタイプの品目に置きます。c:代替外注成型材料品目コード(外部キー)。d:内製成型材料品目コード(外部キー。1対1の関係なので、後から発生する製品側に置きます)。e:生地材料品目コードと使用品目コードの組を主キーとし、それぞれが外部キー、ほかに使用量。f:内製成型材料品目コードと使用品目コードの組を主キーとし、それぞれが外部キー、ほかに使用量。g:製造番号、供給番号、供給明細番号の組を主キーとし、ほかに引当数量。h:成型材料製造依頼番号と補充要求番号(どちらも外部キー)。払出依頼は、成型材料製造依頼をきっかけとする場合と、生地材料補充要求をきっかけとする場合があるためです。i:補充要求番号(主キー)、要求先Mix部門コード(外部キー)、在庫確認時間帯。生地材料は時間帯ごとに在庫を確認し、Mix部門に送るためです。j:補充要求番号(主キー)、注文番号(外部キー)。調達品目補充要求は注文明細の役割をもちます。k:補充要求番号(外部キー)。採点講評では、hとkの正答率が低かったと指摘されています。
設問2(1)(1)
公式解答例では3、9、10、12、14です。新館Mix部門と新館成型部門が廃止されるため、これらが始点または終点になる行9、10、12、14は直接不要になります。さらに、新館に残る焼成部門が使うのは成型材料だけで、貯蔵庫からの払出しは同じロケーション内の部門に限られます。そのため、新館貯蔵庫で原材料を使う部門がなくなり、食材業者から新館貯蔵庫へ原材料を納める行3も不要になります。外注成型材料を扱う行4と行11は、新館焼成部門が代替の外注成型材料を使うため残ります。採点講評では、行番号3が不要になることをほとんど読み取れていなかったと指摘されています。直接の変更に連動して起きる変化まで考えることが大切です。
設問2(1)(2)
公式解答例では、行番号15、17とも指示情報は「焼成指示」です。現状は現場の判断で焼成しているため、指示情報は「-」になっています。業務改革策では、要求から焼成ロット数を求めて焼成指示を作成し、焼成指示に基づいて焼成を実施すると書かれています。そのため、焼成部門内の焼成という物流(FT)を起こす指示は焼成指示になります。
設問2(1)(3)
公式解答例では、行番号21は始点(F)が本館成型部門、終点(T)が新館焼成部門、物流の対象物が成型材料、指示情報が成型材料製造依頼書、実績情報が成型実績票です。新館成型部門が本館成型部門に集約されても、新館焼成部門は残ります。そのため、新館焼成部門が焼成に使う内製の成型材料は、本館成型部門から供給されることになります。これは、現状の行13(本館成型部門から本館焼成部門へ)や行14(新館成型部門から新館焼成部門へ)と同じ種類の物流です。そこで、表1に倣い、指示は成型材料製造依頼書、実績は成型実績票とします。採点講評では、この行がどのような物流パターンになるかについて不十分な解答が多かったと指摘されています。
設問2(2)
公式解答例では、(a) 焼成指示から焼成指示要求引当への1対多、(b) 要求明細から焼成指示要求引当への1対多、(c) 焼成指示と成型材料製造依頼の1対1、(d) 焼成指示と焼成実績の1対1が追加されています。一つの焼成指示(天板1枚分のロット)は複数の要求明細に引き当てられ、一つの要求明細も複数の焼成指示から引き当てられるため、焼成指示要求引当で多対多を解消します。成型材料製造依頼は1ロットごとに発番し、焼成指示に基づいて依頼をかけます。焼成は焼成指示に基づいて実施するため、焼成指示と焼成実績はそれぞれ1対1になります。採点講評では、焼成指示をきっかけに焼成実績が発生する関係が不十分だったと指摘されています。
設問2(3)
公式解答例の要点は次のとおりです。l:対象年月日、対象時間帯、焼成部門コード、焼成番号、要求番号、要求明細番号の組を主キーとし(焼成指示の4項目と要求明細の2項目は、それぞれ外部キーでもあります)、ほかに引当数量。m:対象年月日、対象時間帯、焼成部門コード、焼成番号(焼成指示を参照する外部キー)。図4にあった対象年月日、対象時間帯、依頼元部門コード、内製成型材料品目コードは、焼成指示と製品の設定からたどれるため、図6では不要です。n:[対象年月日]、[対象時間帯]、焼成番号。焼成実績は製造番号で識別されますが、焼成指示の主キーは対象年月日・対象時間帯・焼成部門コード・焼成番号の複合キーです。そこで、スーパタイプの製造実績から継承した対象年月日と対象時間帯を「[ ]」で明示し、既存の焼成部門コードと追加する焼成番号と組み合わせて、焼成指示への外部キーにします。採点講評では、このようなキー構造のずれをどう解消するかがポイントで、全体的に正答率が低かったとされています。
学習のポイント
サブタイプの切り口の見極め、伝票の連鎖から1対1・1対多を判断する方法、業務改革が連動して及ぼす影響の読み取り、既存トランザクションとのキー構造のずれを解消する方法を重点的に練習しましょう。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成31年度春期 データベーススペシャリスト試験 午後Ⅱ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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