DBデータベーススペシャリスト試験 午後Ⅱ

平成24年度春期 データベーススペシャリスト 午後Ⅱ 問1

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問1 自動車ディーラの販売促進用の物品及び展示車を管理するシステムのデータベース 概念設計及び論理設計に関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。 A社は自動車メーカB社の系列ディーラで、C県に本部があり、県内に30の店舗をもつ。A社の事業内容は、B社の新車販売、車の整備、部品販売、中古車販売である。 A社では、新たに販売促進用の物品(以下、販促品という)及び展示車の管理業務をシステム化することになった。システム化に当たって、販促品及び展示車の管理業務(以下、販促品管理業務という)の分析を行い、概念データモデル、関係スキーマ及びテーブル構造を設計した。 〔販促品管理業務の分析結果〕 1. 販促品管理業務に関する部門及び担当社員 (1)部門 ① 販促品管理業務に関連する部門として、本部及び店舗があり、部門番号で一意に識別される。 ② 本部は、販売促進のためのキャンペーン(以下、キャンペーンという)の企画、販促品の企画・発注、店舗ごとの販促品の必要数量のとりまとめ、販促品の在庫管理、展示車の配置計画などを行う。 ③ 店舗は、本部への販促品必要数量の連絡、本部からの販促品の受取り、展示車の配置換えなどを行う。 ④ 本部の部門番号を本部番号、店舗の部門番号を店舗番号と呼ぶ。 (2)担当社員 ① 販促品管理業務に従事する担当社員がおり、社員番号で一意に識別される。 ② 担当社員は、本部又は店舗のいずれか一つの部門に所属している。 2. 仕入先 仕入先は、B社、その他の販促品製作会社など、約50社あり、仕入先番号で一意に識別される。 3. 顧客 顧客は、A社で車の購入・修理・整備、展示車の試乗や試乗予約を行った顧客であり、顧客番号で一意に識別される。 4. キャンペーン (1)本部では、季節ごと、イベント(新車発売、特別仕様車発売など)ごとに、初売り、成約者向けプレゼント、特別仕様車販売キャンペーンなどのキャンペーンを企画している。 (2)キャンペーンは、キャンペーン番号で一意に識別される。 (3)キャンペーンごとに、実施期間、告知開始年月日が定められている。 (4)キャンペーンを、全店舗で実施する場合と一部の店舗で実施する場合がある。 5. 販促品 (1)販売促進用のカタログ、チラシ、のぼり、ポスタ、景品などを総称して、販促品と呼ぶ。 (2)販促品は、販促品番号で一意に識別される。 (3)販促品ごとに、仕入先は一つである。 (4)販促品は、“定番品キャンペーン品区分”によって“定番品”と“キャンペーン品”に分類される。また、“単品キット品区分”によって“単品”と“キット品”に分類される。 (5)定番品とキャンペーン品 ① 新車カタログ、部品カタログ、新車のポスタ、のぼりなどの販促品でキャンペーン以外に使用されるものを定番品と呼ぶ。 ② 定番品は、B社が企画、製作している。B社は、定番品の販促品リストを作成する。定番品はいずれか一つの販促品リストに含まれる。販促品リストは、B社からA社の本部に配布され、本部から店舗に配布される。 ③ 本部は、販促品リストに基づいて、B社に定番品を発注する。発注可能期間は、新車のモデルチェンジの時期に合わせて決められている。 ④ 定番品の発注単価は、あらかじめ決められている。 ⑤ キャンペーンだけに使用する新聞折込チラシ、ダイレクトメール用チラシ、ポスタ、のぼり、景品などの販促品をキャンペーン品と呼ぶ。キャンペーン品は、キャンペーンごとに、本部が企画する。 ⑥ 一つのキャンペーン品が、複数のキャンペーンで使用されることはない。 (6)単品とキット品 ① 単独の定番品又はキャンペーン品を単品と呼ぶ。本部で複数の単品を組み合わせて袋詰めにしたものを“キット品”と呼ぶ。 ② キット品は、キャンペーン品だけに存在する。 ③ キット品に組み合わされる単品には、キャンペーン品のほかに、定番品も含まれることがある。 ④ 袋詰めのために、キット品と、キット品に含まれる単品及びその構成数量の組合せを“キット品構成”として管理する。 6. 展示車 (1)店舗に展示している車を、展示車と呼ぶ。 (2)展示車は、個体管理を行うために、車台番号で一意に識別される。 (3)展示車には、公道を走れる試乗車が含まれる。 7. 販促品の購買業務 (1)発注数量の決定 ① 定番品 ・本部が、仕入先に対して毎月、定期的に発注する。その際、各店舗に必要数量(以下、店舗別定番品必要数量という)を問い合わせる。 ・本部は、キット品に組み合わされる定番品の必要数量を決定する。 ・本部は、各店舗の店舗別定番品必要数量とキット品に組み合わされる定番品の必要数量を合計し、本部で保持しておく予備数量を加えて、発注数量(以下、定番品発注数量という)を決定する。 ・各店舗の必要数量の合計を超える発注分は、本部で在庫として保持する。 ② キャンペーン品 ・本部が、必要数量(以下、キャンペーン品必要数量という)を決定する。 ・本部は、キャンペーン品必要数量に基づいて、各店舗に配布する割当数量(以下、店舗別キャンペーン品割当数量という)を決定する。 ・単品の場合は、必要数量が発注数量となる。 ・キット品の場合は、キット品を構成する単品を発注する。単品の発注数量は、キット品の必要数量とキット品構成の構成数量に基づいて、算出する。 ・キャンペーン品の場合は、1回の発注で必要数量を全て発注し、追加発注は行わない。 (2)見積りの取得 ① キャンペーン品は、キャンペーンごとに特注するので、その都度仕入先から見積りを取得する。 ② 見積りは、各キャンペーンにおいて必要なキャンペーン品の仕入先ごとに取得する。 ③ 1回の見積りに、一つ以上のキャンペーン品が含まれる。 ④ 定番品は、あらかじめ発注単価が決まっているので、見積りを取得しない。 ⑤ 見積りに記録される属性及び記録内容を、表1に示す。 表1 見積りに記録される属性及び記録内容 (3)発注 ① キャンペーン品は、見積結果を基に発注する。 ② 定番品は、販促品リストから必要な販促品を選んで発注する。 ③ 仕入先ごとに、1回に一つ以上の販促品を発注する。 ④ 発注に記録される属性及び記録内容を、表2に示す。 表2 発注に記録される属性及び記録内容 (4)入荷 ① 仕入先に発注した販促品は、発注数量分全てが本部に入荷される。 ② 通常は、1回の発注に対して入荷は1回である。ただし、発注数量が多い場合は、1回の発注に対し、複数回で入荷されることがある。逆に、発注数量が少ない場合は、複数の発注に対し、まとめて1回で入荷されることがある。 ③ 発注明細単位では、複数の発注明細が一つの入荷明細にまとまることはない。逆に、一つの発注明細に対し、入荷明細が複数となることがある。 ④ 入荷に記録される属性及び記録内容を、表3に示す。 表3 入荷に記録される属性及び記録内容 8. 販促品の出荷業務 (1)販促品が発注数量分全て入荷した後、本部から各店舗へ出荷する。 (2)各店舗への出荷数量は、“7.(1)発注数量の決定”で決まった店舗ごとの必要数量又は割当数量とする。 (3)出荷の際に、出荷伝票を発行している。 (4)出荷伝票に記録される属性及び記録内容を、表4に示す。 表4 出荷伝票に記録される属性及び記録内容 9. 展示車の管理業務 (1)本部は、B社から展示車を仕入れ、店舗別の展示車配置計画を立案する。また、店舗単位の販売促進活動のために、不定期に展示車配置計画を見直す。各店舗は、展示車配置計画に基づいて、店舗間で展示車の配置換えを行う。 (2)試乗車については、後述する試乗予約と試乗実績を記録する。 10. 展示車・試乗車の検索・試乗予約処理 顧客が展示車・試乗車を検索し、試乗予約するための、Web画面を用意する。試乗予約をした顧客は、“試乗予約顧客”として扱う。Web画面の要件は、次のとおりである。 (1)展示車・試乗車の検索初期画面では、車名一覧と店舗一覧を表示し、顧客に車名による検索又は店舗による検索のどちらかを選択させる。 (2)車名による検索の場合、ミニバン、コンパクト、セダン、スポーツ、SUV、軽自動車、ハイブリッドの車種区分ごとに表示された車名一覧の中から、希望する車名を顧客に選択させる。選択された車名の展示車・試乗車を検索する。検索結果は、検索日時点で展示車・試乗車が配置されている店舗名、車名、展示車・試乗車(試乗申込ボタン)、及び展示車・試乗車の仕様が一覧表形式で表示される(図1)。展示車・試乗車の仕様には、タイプ、排気量、駆動方式、変速機、主要装備、ディーラオプション装備などが含まれる。 図1 展示車・試乗車の一覧表の例 (3)店舗による検索の場合、店舗一覧の中から、希望する店舗を顧客に選択させる。選択された店舗の展示車・試乗車を検索する。検索結果は、車名による検索の場合と同じ一覧表形式で表示される。 (4)(2)又は(3)で表示された一覧表中の試乗申込ボタンがクリックされると、試乗申込画面を表示する。この画面では、申込日から1か月以内の希望する試乗年月日、試乗時間帯、氏名、フリガナ、郵便番号、住所、電話番号、メールアドレス、連絡方法(電子メール又は電話)、連絡時間帯などを、顧客に入力してもらう。顧客が車を所有している場合は、その車のメーカ名、車名、年式、車検満了日、次回購入予定時期を入力してもらう。入力後、顧客は、予約ボタンをクリックして、試乗申込は終了となる。 (5)店舗の営業担当社員が、顧客から電話で試乗の依頼を受けた場合は、Web画面で試乗申込を代行する。また、来店した顧客が試乗を希望した場合も、同様に試乗申込を代行する。 (6)顧客が試乗を終えた場合は、試乗時の感想をアンケート用紙に記入してもらい、営業担当社員が試乗実績として登録する。 〔概念データモデル及び関係スキーマの設計〕 業務分析結果から、概念データモデル及び関係スキーマを設計した。設計したマスタ領域の概念データモデルを図2に、トランザクション領域の概念データモデルを図3に、関係スキーマを図4に示す。 なお、図2と図3の概念データモデル間のリレーションシップは、省略している。 図2 マスタ領域の概念データモデル(未完成) 図3 トランザクション領域の概念データモデル(未完成) 図4 関係スキーマ(未完成) 〔テーブル構造の設計〕 図2、3の概念データモデルと図4の関係スキーマに基づいて設計したテーブル構造を、図5に示す。 なお、図5では、販促品に関するテーブルを一部省略している。 図5 テーブル構造(一部の列名は省略) 〔展示車・試乗車の検索・試乗予約処理に関する指摘・要望〕 図5のテーブル構造を前提に、展示車・試乗車の検索・試乗予約処理について次のような指摘・要望が出された。 指摘・要望① 車種区分でミニバン、コンパクト、セダンなどを選択した場合、ハイブリッドの当該車名の展示車を検索できない。ハイブリッドと、それ以外のミニバン、コンパクト、セダンなどは、分類の観点が異なるので、一つの車種区分ではこれらを区分して検索するのは無理である。 指摘・要望② 試乗予約をせずに来店した顧客が試乗する場合は、試乗予約の登録を簡略化したい。 指摘・要望③ 展示車配置計画と試乗予約が矛盾しないようにする必要がある。 解答に当たっては、巻頭の表記ルールに従うこと。ただし、エンティティタイプ間の対応関係にゼロを含むか否かの表記は必要ない。 なお、エンティティタイプ間のリレーションシップとして“多対多”のリレーションシップを用いないこと。エンティティタイプ名及び属性名は、その意味を識別できる適切な名称にすること。また、識別可能なサブタイプが存在する場合、他のエンティティタイプとのリレーションシップは、スーパータイプ又はサブタイプのいずれか適切な方との間に記述せよ。また、テーブル構造は第3正規形の条件を満たしていること。 設問1 図2のマスタ領域の概念データモデル、及び図3のトランザクション領域の概念データモデルについて、(1)~(3)に答えよ。 (1)図2のマスタ領域の概念データモデルは、販促品関連の領域のエンティティタイプ及びリレーションシップが未完成である。[ア]、[イ]のエンティティタイプ名と、必要なエンティティタイプ、サブタイプ及びリレーションシップを追加し、図2を完成させよ。 なお、サブタイプを補うことで、外部キーは値が空値(NULL)にならないように、リレーションシップを修正する。修正は、修正前のリレーションシップに×印を付け、新たに修正後のリレーションシップを記入せよ。 (2)サブタイプが存在するエンティティタイプ“販促品”について、スーパータイプ側にまとめた“販促品”テーブルのインスタンスの有無を明確にする。そのために、定番品キャンペーン品区分と単品キット品区分について、値の組合せによるインスタンス発生の有無を表5の形式で整理する。表5に組合せパターンを記入して、表を完成させよ。 なお、“インスタンス発生の有無”欄には、発生する場合は“Y”を、発生しない場合は“N”を記入せよ。 表5 値の組合せによるインスタンス発生の有無 (3)図3中の販促品購買領域のエンティティタイプと、図2中の網掛けをしたエンティティタイプ“仕入先”、“販促品”、“ア”、“イ”とのリレーションシップについて、販促品購買領域のエンティティタイプの外部キーとその参照先のエンティティタイプを、表6の形式で整理する。表6中の一部記入されている内容に倣って空欄を埋め、表を完成させよ。 表6 販促品購買領域のエンティティタイプの外部キーと参照先のエンティティタイプ 注記 “-”は、図2中の網掛けをしたエンティティタイプとのリレーションシップが存在しないことを示す。 設問2 図3のトランザクション領域の概念データモデル及び図4の関係スキーマについて、(1)、(2)に答えよ。 (1)図3の販促品購買領域では、リレーションシップが一つ欠落している。当該リレーションシップを補い、図を完成させよ。さらに、補ったリレーションシップに対応する外部キーを、図4の関係スキーマに追加する。外部キーを追加する関係名と、追加する属性名を答えよ。 (2)出荷時のエンティティタイプの各属性に設定する値の取得を表7の形式で整理する。表7中の[a]~[j]に入れる適切なエンティティタイプ名と属性名を、“エンティティタイプ名.属性名”の形式で答えよ。 なお、該当する字句が存在しない場合は、“-”で示せ。 表7 出荷時のエンティティタイプの各属性に設定する値の取得元 設問3 〔展示車・試乗車の検索・試乗予約処理に関する指摘・要望〕について、(1)~(3)に答えよ。 (1)指摘・要望①を実現するための対応として、“展示車”テーブルに新たな列を一つ追加する。追加する列名と、その列がどのような値をもつかを25字以内で答えよ。 (2)指摘・要望②を実現するための対応として、予約なしの場合は、試乗実績だけを記録できるように、“試乗実績”テーブルの構造を見直した。その変更内容を、40字以内で述べよ。 (3)指摘・要望③を実現するための対応として、展示車配置計画と試乗予約の間で満たすべき制約条件を二つ挙げ、それぞれ35字以内で述べよ。
表1 見積りに記録される属性及び記録内容。見積りに記録する属性と、それぞれの記録内容を一覧にした表。
表1 見積りに記録される属性及び記録内容。見積りに記録する属性と、それぞれの記録内容を一覧にした表。
表2 発注に記録される属性及び記録内容。発注に記録する属性と、それぞれの記録内容を一覧にした表。
表2 発注に記録される属性及び記録内容。発注に記録する属性と、それぞれの記録内容を一覧にした表。
表3 入荷に記録される属性及び記録内容。入荷に記録する属性と、それぞれの記録内容を一覧にした表。
表3 入荷に記録される属性及び記録内容。入荷に記録する属性と、それぞれの記録内容を一覧にした表。
表4 出荷伝票に記録される属性及び記録内容。出荷伝票に記録する属性と、それぞれの記録内容を一覧にした表。
表4 出荷伝票に記録される属性及び記録内容。出荷伝票に記録する属性と、それぞれの記録内容を一覧にした表。
図1 展示車・試乗車の一覧表の例。店舗、車名、展示車・試乗車、車両仕様、主要装備などを行単位で示す一覧表の例。
図1 展示車・試乗車の一覧表の例。店舗、車名、展示車・試乗車、車両仕様、主要装備などを行単位で示す一覧表の例。
図2 マスタ領域の概念データモデル(未完成)。部門、顧客、店舗、展示車、販促品などのマスタエンティティと関係を示す未完成モデル。
図2 マスタ領域の概念データモデル(未完成)。部門、顧客、店舗、展示車、販促品などのマスタエンティティと関係を示す未完成モデル。
図3 トランザクション領域の概念データモデル(未完成)。見積、発注、入荷、販促品出荷、試乗予約などの取引エンティティを領域別に示す未完成モデル。
図3 トランザクション領域の概念データモデル(未完成)。見積、発注、入荷、販促品出荷、試乗予約などの取引エンティティを領域別に示す未完成モデル。
図4 関係スキーマ(未完成)。マスタ及びトランザクションの関係スキーマを、主キー・外部キーを含む形式で列挙した図。
図4 関係スキーマ(未完成)。マスタ及びトランザクションの関係スキーマを、主キー・外部キーを含む形式で列挙した図。
図5 テーブル構造(一部の列名は省略)。図2と図3に対応する各テーブルの構造を、列名の一部を省略して示した図。
図5 テーブル構造(一部の列名は省略)。図2と図3に対応する各テーブルの構造を、列名の一部を省略して示した図。
表5 値の組合せによるインスタンス発生の有無。定番品・キャンペーン品区分と単品・キット品区分の組合せを整理する空欄表。
表5 値の組合せによるインスタンス発生の有無。定番品・キャンペーン品区分と単品・キット品区分の組合せを整理する空欄表。
表6 販促品購買領域のエンティティタイプの外部キーと参照先のエンティティタイプ。販促品購買領域の各エンティティタイプについて、外部キー属性と参照先を整理する表。
表6 販促品購買領域のエンティティタイプの外部キーと参照先のエンティティタイプ。販促品購買領域の各エンティティタイプについて、外部キー属性と参照先を整理する表。
表7 出荷時のエンティティタイプの各属性に設定する値の取得元。定番品出荷とキャンペーン品出荷について、各属性値の取得元を整理する表。
表7 出荷時のエンティティタイプの各属性に設定する値の取得元。定番品出荷とキャンペーン品出荷について、各属性値の取得元を整理する表。
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業務ルールと対応関係の読み取り

データベース設計の問題では、記述された業務のルールが、どのエンティティ同士をどの対応数で結び付けるかを読み取ることが出発点になります。一つの観点として、各ルールの記述とモデル・スキーマ上の表現が矛盾なく対応しているかを照合しましょう。

この問題で問われていること

問われているのは、業務の説明に含まれる一つひとつの条件を、エンティティ間の関連の多重度や参照の向きとして正しく解釈できるかどうかです。条件の主語と対象、その数量の表現に注目して読み進めることが求められます。

視点

概念データモデルでは、業務上のルールがエンティティ間の関連と多重度として表されます。関係スキーマやテーブル構造では、その関連が主キーと外部キーの配置として表れます。ルールの記述、モデル上の関連、スキーマ上のキー配置という三つの表現が、同じ意味を一貫して示しているかを確かめることが、この分野を学ぶ際の基本的な検討手順です。

確認ポイント

  • 業務ルールの各記述について、何が何に対して「一つ」なのか「複数」なのかを、両方向から読み取れているか
  • 読み取った対応数が、モデル上の関連やスキーマ上のキー配置とどう結び付くかを、自分の言葉で説明できるか
  • 期間や時点などの条件で対応数が変わる記述がないかを確かめ、その条件をどこで表すべきかを考えたか
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解説

自動車ディーラA社の販促品と展示車を管理するデータベースの設計問題です。販促品には「定番品/キャンペーン品」と「単品/キット品」という二つの分類軸があり、サブタイプの切り出し、外部キーの置き場所、明細同士の1対多の関連、出荷時に設定する値の取得元を業務記述から読み取ります。さらに、車種区分とハイブリッドの分類観点の違い、予約なしの試乗に対応する主キーの変更、展示車配置計画と試乗予約の間の制約条件まで、要件の追加に合わせた見直しが問われます。

A社の販促品と展示車の管理を題材に、概念データモデル、外部キー、属性値の取得元、追加要件に応じたテーブル構造と制約条件を検討する。問題17頁では、多対多を使わず、識別可能なサブタイプへ適切に関連を配置し、第3正規形を満たすことを要求している。以下は添付原本に基づく学習用解説です。

設問1(1):アは定番品、イはキャンペーン品。販促品には定番品/キャンペーン品と、単品/キット品の二つの分類軸があるので、それぞれ別の切り口としてサブタイプを表します。販促品リストから定番品へ、キャンペーンからキャンペーン品へ、それぞれ1対多の関連を追加する。キット品構成を追加し、キット品と単品のそれぞれからキット品構成へ1対多で関連付ける。本部で袋詰めするキット品には仕入先を持たせず、既存の仕入先→販促品に×印を付け、仕入先→単品へ修正する。問題7~8頁、図2、解答例1頁及び講評1頁に基づく。

設問1(2):定番品×単品はY、定番品×キット品はN、キャンペーン品×単品はY、キャンペーン品×キット品はY。キット品そのものはキャンペーン品だけに存在する一方、その構成要素には定番品の単品も含められる。この二つを区別する。設問1(3):表6の参照対象に直接関連する外部キーは、見積の仕入先番号→仕入先、見積明細の販促品番号→キャンペーン品、定番品発注の仕入先番号→仕入先、定番品発注明細の販促品番号→定番品です。他の行は-となる。キャンペーン品発注やその明細は見積を経由して仕入先や品目をたどれる。表6は、他の全外部キーを列挙する表ではありません。

設問2(1):発注と入荷は分割入荷・まとめ入荷があるため、ヘッダ間では多対多になり得る。しかし問題10頁の7.(4)③では、複数の発注明細を一つの入荷明細へまとめないとされている。したがって発注明細→入荷明細は1対多です。関係「入荷明細」に複合外部キー(発注番号、発注明細番号)を追加し、発注明細の主キーを参照させる。図3及び解答例2頁の関連と対応する。

設問2(2):問題11頁の8.(2)により、定番品の出荷には店舗別定番品必要数量を、キャンペーン品の出荷には店舗別キャンペーン品割当数量を使う。a・bはそれぞれの店舗番号、dは店舗別キャンペーン品割当数量のキャンペーン番号、eは店舗別定番品必要数量の発注年月、g・hはそれぞれの販促品番号、iは必要数量、jは割当数量です。c・fは該当するサブタイプがその出荷区分では発生しないため-となる。定番品の発注数量には本部の予備数量等も含まれるので、店舗への出荷数量の取得元には使わない。

設問3(1):車種とハイブリッドかどうかは分類の観点が異なるため、ハイブリッド区分を独立した列にする。例えばハイブリッド車を1、それ以外を0で表せば、車種区分と組み合わせて検索できる。問題20頁の設問と解答例2頁の「列名」「値」の別欄に対応し、値の説明を25字以内とする。列名と値を連結した文字数へ一つの上限を適用しない。設問3(2):図5の試乗実績の主キー(車台番号、予約番号)を(車台番号、実績番号)へ変更し、(車台番号、予約番号)を試乗予約への複合外部キーとして保持する。予約なしの場合には予約番号をNULLにできる構造とし、予約ありの場合の参照関係を保つ。

設問3(3):問題20頁、解答例2頁及び講評1頁に基づき、配置計画を変更する場合と試乗予約を受け付ける場合の二つの観点で整合性を確保する。配置変更では、既存予約の試乗日時・店舗に当該試乗車が配置される状態を維持する。予約受付では、希望する試乗日時に当該店舗へ配置される車であることを確認する。「予約日」だけでは申込日と試乗日が区別できず、配置換えの実施日だけを制限しても試乗時の不在を防げない。試乗前の全ての移動を一律に禁止する必要はなく、予約済みの試乗を妨げる配置計画を防ぐことが要点です。各答案はそれぞれ35字以内に収める。

学習のポイント

直交する二つの分類軸によるサブタイプの設計、NULL を避けるリレーションシップの付け替え、明細単位での多対多の解消、主キーの変更と参照関係の維持、期間データ間の制約条件を重点的に練習しましょう。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成24年度春期 データベーススペシャリスト試験 午後Ⅱ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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