AUシステム監査技術者試験 午後Ⅰ

令和6年度秋期 システム監査技術者 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 ITサービス管理システムの監査に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。 P社の情報システム子会社のQ社は,P社のグループ各社(以下,各社という)にITサービスを提供している。提供するITサービスの種類と規模が拡大してきたので,より効率的かつ迅速に提供することを目的として,ITサービス管理システム(以下,新システムという)を新規に導入する予定である。P社の内部監査室はP社グループ全体を監査する役割を担っているので,新システムの目的が実現できるように検討されていることを確かめるために,Q社に対するシステム監査を実施することとした。 〔現在のITサービスと申請方法の概要〕 現在,Q社が提供しているITサービスと申請方法の概要は次のとおりである。 (1)ITサービスの内容と申請方法 ITサービスには,PC,サーバ,電子メールや事務処理のソフトウェアなどを利用するための定型サービスと,業務で利用する情報システムの開発などのSIサービスの2種類がある。Q社は,P社グループ内での情報共有のための掲示板システムに,ITサービスの仕様などを記載したサービスカタログと申請方法を掲載している。各社のIT部門は,次の(2)と(3)に述べる手順で利用部門からの申請を取りまとめて申請一覧表を作成し,電子メールに添付してQ社へ送付している。 (2)定型サービスの申請 Q社では定型サービスの種類ごとに定型サービスチームが設置され,仕様と利用料単価がサービスカタログに記載されている。各サービスの仕様と利用料単価は原則として半年ごとに改定されるが,例外的に半年の間に改定される場合もある。 サービス提供を希望する利用者は,上長の承認を得た上で各社のIT部門へ申請する。人事異動などに伴い多くの申請が必要な場合には,職場ごとに担当者が取りまとめて申請一覧表を作成し,上長の承認を得た上でIT部門へ申請する。 (3)SIサービスの申請と見積り SIサービスは,Q社のSIサービスチームが提供している。各社の利用者はSIサービスの依頼内容を検討し,上長の承認を得た上でIT部門へ申請する。 SIサービスチームの担当者は,各社のIT部門から届いた申請について,必要に応じて個別にヒアリングした上で費用を利用料として見積もる。その結果は,リーダーが承認した上で,要員などの必要リソースが一定規模を超える場合はSIサービスチームの部長が承認した後,申請元のIT部門経由で利用部門へ通知する。見積りに対する利用部門からの回答が届いた後,正式な申請として受け付ける。 (4)ITサービス利用料管理 ITサービス利用料は,毎月15日締切りでQ社から各社のIT部門へ請求する。決算期の最終月には16日から月末までの金額を算出して会計処理を行う必要があり,Q社と各社の両方で手間が掛かっている。 〔新システムの概要〕 内部監査室の監査チームは,予備調査として,Q社内で検討中の新システムの導入企画書案を入手して閲覧するとともに,導入検討プロジェクトのリーダーを務めているQ社の技術管理部長にヒアリングした。その概要は次のとおりである。 (1)新システムの概要 各社の管理業務を削減するとともに,利用者のニーズに迅速に対応する狙いから,新システムでは利用者が自身でQ社へ申請する。新システムはクラウドサービスを利用して構築する予定で,その概要は図1のとおりである。 (2)定型サービスの申請 利用者はサービスカタログの内容を確認した上でサービス申請の画面に入力し,利用者の上長が申請を承認した後,関係する定型サービスチームへ通知される。 定型サービスチームの担当者が受付した後に定型サービスチームのリーダーが承認する。多くの申請を効率的に処理するために,定型サービスチームのリーダーが申請を一覧画面で承認できる機能を提供する予定となっている。 主要な定型サービスにおける申請の受付から提供までのリードタイムは,現在よりも短縮する予定であり,導入企画書案にリードタイムの目標が記載されている。 (3)SIサービスの申請と見積り 新システムでは,SIサービスの申請に対して,SIサービスチームの担当者が画面から見積りを入力し,リーダーが承認する。 (4)ITサービス利用料管理 新システムには,サービスコードをキーとして定型サービスの仕様や利用料単価などを管理する定型サービスマスターがあり,半年ごとに技術管理部が取りまとめて更新する。例外的に半年の間に改定があった場合は,各サービスを担当している定型サービスチームが更新する。 毎月末には,サービス申請のデータに基づき,サービスコードが一致する定型サービスマスターの利用料単価を使用して各社へのサービス請求明細が作成される。サービスコードが一致しなかったサービス申請はエラーとなりリストが出力される。 決算期の最終月の会計処理を効率よく行うために,経理部とITサービス利用料の締切日の変更を協議している。新システム導入の機会に,毎月末時点で当月分を各社へ請求して,当月中のITサービス提供の開始や終了による差額は翌月に精算する方法に変更することを検討している。新システム導入と同時に締切日を変更するので,開発とテストの作業量が多く,かなり厳しい日程となっている。 〔本調査のための検討〕 予備調査の結果を基に,監査チームのリーダーであるT氏は,内部監査室長と本調査のための検討を行った。その内容の抜粋は次のとおりである。 室長:現在は定型サービスで多数の申請がある場合,利用者の上長は一覧表で承認できますが,新システムは申請ごとの承認なので上長は手間が掛かりそうですね。 T氏:定型サービスチームのリーダーに提供予定の機能を活用すれば対応が可能ではないかと思われるので,技術管理部にヒアリングして[a]を確認します。 室長:SIサービスの見積りについて必要な承認が行われるためのコントロールが,新システムで実装されることはどのように確認しますか。 T氏:新システムに,[b]機能があるかどうかを確認します。 室長:定型サービスの仕様や利用料単価が半年の間に改定される場合は,定型サービスマスターが適切に更新されない可能性がありますね。 T氏:各定型サービスチームの担当者のために,[c]を定めるといったコントロールが必要と思われます。 室長:サービスコードが一致しなかった場合のエラーが適切に処理されなければ,[d]というリスクがありますね。 T氏:エラーに対処する部署や処理方法が明確になっているかどうかを確認します。 室長:今回の新システムは,多くの利用者に直接影響を与えることから,移行時のリスクは極力回避する必要がありますね。 T氏:監査手続としては[e]によって,新システム導入後に運用が定着してから締切日を変更することを検討したかどうかを確認します。 室長:主要な定型サービスのリードタイムは,現在よりも短縮する目標を掲げていますが,定型サービスの利用者にも明確にしておく必要がありますね。 T氏:定型サービスを申請する際に閲覧できれば,利用者にも目標が明確になると考えられるので,[f]を確認することにします。 設問1 T氏が確認すべきと考えた事項として,本文中の[a]に入れる適切な内容を,45字以内で答えよ。 設問2 T氏がコントロールとして実装すべきと考えた機能として,本文中の[b]に入れる適切な内容を,45字以内で答えよ。 設問3 T氏が必要と考えたコントロールとして,本文中の[c]に入れる適切な内容を,25字以内で答えよ。 設問4 室長が懸念したリスクとして,本文中の[d]に入れる適切な内容を,25字以内で答えよ。 設問5 T氏が確認するために行った監査手続として,本文中の[e]に入れる適切な内容を,35字以内で答えよ。 設問6 T氏が確認すべきと考えた事項として,本文中の[f]に入れる適切な内容を,45字以内で答えよ。
図1 ITサービス管理システムの概要。Q社、P社グループ各社及び各データの関係を示す。
図1 ITサービス管理システムの概要。Q社、P社グループ各社及び各データの関係を示す。
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監査観点を整理する基本視点

導入時の監査を考えるときは、制度や機能の有無だけでなく、業務上の重要な判断が誰により、どの記録を根拠に、どの頻度で確認されるかという統制のつながりに注目します。

この問題で問われていること

一つの観点として、サービス管理の各工程で生じる判断や承認について、責任の所在と証跡が後から確認できる設計になっているかを、業務目的との関係から見極めてください。

視点

監査では、導入した仕組みの名称や個別機能を覚えるより、業務の重要な判断を支える統制が、責任者・手続・記録・確認という流れで無理なく結び付いているかを整理します。

確認ポイント

  • 重要な判断について、担当者と承認者の役割が区別され、責任の所在を追跡できるか。
  • 実施した操作や確認の記録が、後から内容と時点を確かめられる形で残るか。
  • 統制の確認方法が、業務上のリスクと目的に対して過不足なく設定されているか。
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解説

ITサービスの申請、見積り、マスター更新、請求、締切日変更を対象に、新システム導入で生じるリスクと必要なコントロールを問う問題です。

問題の全体像

Q社は、グループ各社へのITサービス提供を効率化・迅速化するため、新しいITサービス管理システムを導入する。監査では、利用者による申請、承認、SIサービスの見積り、定型サービスマスターの更新、利用料請求、締切日変更、リードタイム目標の周知に着目する。公式解答例は、単なるシステム機能の有無ではなく、現行業務との比較から、承認漏れ・マスター不備・請求漏れ・移行リスクなどを防ぐ仕組みや、確認可能な監査証拠を答えることを求めている。

設問1

現行では、多数の定型サービス申請を利用者の上長が一覧表で承認できる。一方、新システムでは申請ごとの承認となるため、上長の負担増が懸念される。そこで、本文にある定型サービスチームのリーダー向け一覧承認機能を、利用者の上長にも提供できるか検討していることを確認する。公式解答例も、一覧画面で承認できる機能の利用者の上長への提供検討を挙げている。

設問2

SIサービスでは、要員などの必要リソースが一定規模を超える場合、現行業務でSIサービスチームの部長承認が必要です。新システムで担当者とリーダーだけが承認すると、この重要な承認が抜ける可能性がある。そのため、一定規模を超える見積りの回答をSIサービスチームの部長へ回付する機能を答える。字数内では、対象となる見積りと部長への回付を押さえる。

設問3

定型サービスの仕様や利用料単価は原則半年ごとに改定されるが、半年の途中でも改定される。途中改定を各定型サービスチームが行う設計なので、更新漏れや誤更新を防ぐ統制が必要になる。したがって、公式解答例のとおり、定型サービスの仕様や利用料単価を改定する手順を定めることを書く。25字以内では、改定対象と手順の整備を簡潔に示す。

設問4

請求明細は、サービス申請のサービスコードと定型サービスマスターのコードが一致する場合に作成される。一致しない申請がエラーのまま適切に処理されなければ、そのサービス分の明細が作成されず、利用料を請求できない。したがって、リスクは公式解答例のとおり、ITサービス利用料の請求に漏れが生じることです。

設問5

締切日を変更すると、開発・テスト量が増え、導入直後の運用が不安定なまま移行リスクを抱える可能性がある。そこで、締切日変更を経理部と協議した事実と内容を示す証拠を確認する。公式解答例は、締切日の変更についての経理部との協議の議事録を閲覧する監査手続としている。

設問6

主要な定型サービスでは、受付から提供までのリードタイムを短縮する目標が導入企画書案に記載されている。利用者が申請時にその目標を確認できれば、サービス提供の期待値を明確にできる。したがって、公式解答例のとおり、サービスカタログにリードタイムの目標が明記される予定になっていることを確認する。

学習のポイント

業務目的と変更点からリスクを特定し、具体的な機能・手順・監査証拠に落とし込む力を養う。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和6年度秋期 システム監査技術者試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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